Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
オーレリア連邦共和国首都・グリスウォール。
その旧市街地区をぐるりと囲むシンクトロン施設――通称・アトモスリング。
……これがなかなか手強い施設です。
円形粒子加速施設の中で加速させた陽子ビームを利用し、
「自分でも何を言っているのかよく分かりませんが、現行ISでは再現できないようです」
そしてアトモスリング自体も市壁の役割を果たすため、現在レサスの司令部が置かれているガイアスタワーになかなか攻め込めません。
メソン・カノンの威力は十数秒間照射されればISでも墜ちるほどです。
作戦としては私達が空からメソン・カノンを無力化、アトモスリングの内側に潜伏期間した仲間が封鎖されているゲートを開き、陸上部隊がそこから突入、ガイアスタワーを包囲するという分かりやすいものです。
なので私達が重要な役割を担っているのですが……これがなかなか大変なんです。
レサスが占領しているとはいえ、ここの施設は全てオーレリアのものなんです。壊してしまったときの経済的・時間的損失の大きさは測り知れません。
なので、私達はアトモスリングを破壊することなくメソン・カノンだけを無力化しなければならないのです。
……しかも上からはできればメソン・カノンも壊してほしくないという声もありますし。
ある意味、私のISは火力至上主義の元に作られているので……こういう作戦には不向きなんですよね。
ミサイルでも装備していればよかったのですが……流石に生身でつっこむのも勇気が必要すぎますし。
幸い、砲塔の頂点以下の高度で飛行をすれば狙われないのですが……これがまたビル程度の高さでしてね。私には苦でもないですが戦闘機を駆る他の方々は大変でしょう。
「ラストサン隊、出ます」
……なんて言っても、隊員は私だけですけどね。
隊を離れた二人はまた別の作戦に従事しています。
……目標は司令部の制圧。それさえ成し遂げれば十分です。
なぜならレサスは再びオーレリアに攻め込む余力がないことは分かってますからね。開戦期もあのような電撃侵攻でなければオーレリア内に入ることすらできなかったでしょう。
「メソン・カノンは稼働域こそ広いですが偏向に時間がかかるため砲塔に向かって飛びさえしなければ照射から逃れられるはずです! 私は地上の戦車や
『
グレイプニルを単身で撃墜してから戦闘機乗りの方たちから信頼されるようになりました。
親しくなればなるほど守らなければいけないものが増えます……でも、そのお陰で私は今も飛べているのです。
守るものがなければ私もとっくに……
『お、おい! オーレリアの人型だ!』
『グレイプニルを墜とした奴か!? っくそ! 死神が……』
カゲロウが勝手にレサス兵の無線を傍受します。
止めることもできるのですが相手の行動とかが分かったりしますからね。
『死神か……なぁ、十年前、ベルカ事変でのオーシア側のエース達を知ってるか?』
『は?』
『大統領直属のラーズグリーズってな非公式の隊があったんだよ。そいつら超弩級の潜水艦を二隻沈めたり、機体のカラーリングも漆黒でな……まさに、じゃないか?』
『バカ言うな……大体、あの人型のパイロットは少女だって話だぞ?』
む、いつの間にか撮影されていましたか……それとも殺さなかった間の生存者の証言でしょうか?
まぁ、なんにしても、やることは変わりません。
『年端の行かない女の子がグレイプニルを? ……まぁ、分別のつかないような歳なら自分がしたことも分からないのかもな。可哀相に』
「……同情される謂われはありませんよ。理解しているつもりですから」
『誰だっ!? うゎっ! ……………』
「人型でも死神でも……なんなら先程のラーズグリーズとやらでも構いませんよ?」
まぁ、もう聞こえていないでしょうし、呼ぶこともないでしょうけれど。
……さすがISですね。
戦車程度ならPICを切った状態での重さだけで潰せます……一体どれだけの重量があるんでしょうね?
「南側はほとんどの対空兵器を破壊したはずです!」
『
「こう見えてまだ十五歳なので賭け事は……というかそちらの方が数が多いんですから私不利じゃないですか」
まったく。
十五歳相手に賭けをふっかけるなんて……まぁ、結果は分かりきってますけどね。
『バレたか……アトモスリングのゲートが開いた! こっちはもういいから地上部隊を援護してやってくれ』
「お断りです」
『あんだって!?』
「……両方、援護しますよ」
『ひゅー♪ かっこいいねぇ!』
「ありがとうございます」
語尾にハートマークがつきそうな調子で軽口の応酬をします。
今も人は死に続けているのに……ですが、この戦いで最後ですね。
「もう……私の仲間は誰一人やらせません」