Plongez dans le "IS" monde. 作:まーながるむ
『空中要塞、墜ちる。サンタエルバ、奇跡的に死傷者少数』
『グレイプニル墜落。千人強の乗組員の多数が死亡』
『オーレリア兵、市民の救出に尽力』
「…………はぁ」
いくつかの新聞が兵舎にも届きましたが、いずれも先日のグレイプニル墜落のことしか書いていません。
まああれだけの巨体がレナル河に堕ちたんですから当然なんでしょうけど……
それに伴うレサス兵千数名の死は置いておくにしても、市民の死傷者が約五十名。
学園のクラスを丸々一つと半分程度ということですね。
それでも私のせいだと思えないことから考えるに、私は命を奪うことに慣れてしまったのかもしれません。
敵兵殺しにだけ抵抗を感じないようにしてもらったはずとはいえ、あれだけの数を殺してしまえば民間の死にも慣れても不思議ではありません。
……慣れたくはなかったですけどね。
現在サンタエルバのうち、グレイプニルが墜落した河の周辺二キロメートルが立ち入り禁止になっています。
機関部を壊していないとはいえ、何がきっかけで爆発、大破するかも分からないということを考慮しての措置です。
「グレイプニルが無くなった今、レサスはオーレリアを進行するだけの余力は無いはずですね」
なら、可能な限り早くレサス中央を叩くべきです。占領されたオーレリアの首都、グリスウォールにレサス軍の司令部が置かれているらしいので、そこまで攻め込むことができれば戦争も終わるでしょう。
オーレリアの目的はレサスの制圧ではなくて、占領された領土の回復なんですから。
それにしても、この戦争はなにかおかしいです。
いえ、何かなどという曖昧模糊としたものではなく、レサスの動き自体が不可解すぎます。
私が来たときには既に戦争に入っていたので調べる余裕がありませんでしたが、グレイプニルを落としたことで話を聞きにきた記者の方がいろいろと教えてくれました。
去年までレサスは内戦状態にあり、それが終わった今も国民の食料すら満足にないという現状。
そして、オーレリアはそんなレサスに対して莫大な食料購入資金を援助していること。
それにも拘わらず、未だに食料事情は解決される目処がたっていないこと。
……レサスの宣戦布告ではオーレリアからの不当な搾取から脱却するということを大義名分にしていたはずです。
レサス国民も戦争に対し肯定的とのことなので、私はその布告内容が真実だと思っていたのですが……
というかグレイプニルなんかを作るだけの資金があるんなら、それで国民に……あ、そっか……
「
確かにこれならば低い国力に見合わない軍事力と、事実無根の布告がレサス国民に事実されている理由になります。
つまり、レサス軍はオーレリアから援助された食料購入資金の存在を国民に伏せ、そのお金をそのまま軍事費に流用したということでしょう。
全く……不義理なのは許せませんね。
戦争を早く終わらせなければいけない理由が増えました。
この戦争、オーレリア国民だけでなくレサス国民も助けることができそうです。
……人助けのための人殺しなんて何の免罪符にもなりませんけど、人殺しの結果助けられる人が多いなら、それに越したことはありません。
「そこのところ、勘違いしないようにしないと……」