Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「愛って何ですか? 私はどうすればいいんですか?」

アリサ、はじめての○○○


15. Quel est amour? Comment est-ce qu'elle devrait aller?

 五月下旬。

 

「そうですか……じゃあシャルロットさんはやはり男子生徒として入学させるということですね」

『――――――――――――――――――――』

「いえ、私はそんな。一番大変なのは本人でしょうから」

 

 社長さんとの連絡。

 デュノア社の方から電話をかけてこられるといろいろと面倒なので普段は私から定期的に連絡を取るようにしているのですが、今回はいつもとは違い社長さんの方から電話がかかってきました。

 つまり、よほど大事で緊急な連絡ということです。

 

「ええ、なるべく彼女の正体が気付かれないように助けるつもりです。ですが部屋は……ですよね。いえ、彼女が織斑一夏と白式のデータを手に入れられればデュノア社にとっても有益でしょうけれど」

『――――――――――――――――――――』

「もちろんです。そのために私はここに来たんですから」

 

 とうとうシャルロットの……いえ、残念ながらシャルル・デュノアの転入が決まってしまいました。転入先は1組、日付は6月第1週の月曜日の予定です。

 今日が5月20日なので再来週……ですか。

 まぁ、すでに私にできることはありませんし座して待つしかないんでしょうね……とりあえず髪を染め直しましょう。シャルロットに会うときは一番可愛い私でいたいですから。

 ……それにしても我ながら一途ですよねー。シャルロットに惚れてからもう2年も経つんですよ? しかもその間に直に顔を合わせたのは2回だけ。遠くから眺めることすら避けていましたから。

 

 ガララッ

 

「アリサー、タオル持ってきてくれない? 多分、下から2番目の棚に入ってるから」

 

 いや、鈴ちゃん? お風呂入る前に持っていきましょうよ。この前は下着を忘れるし……いくら女二人での生活とはいえ気が抜けすぎですよ?

 あと、鈴ちゃんのタオルは下から3番目です。2番目のは私のですよ。何枚もあるので別に使っちゃってもいいんですけどね。

 

「ルームメイトの方に呼ばれたので失礼します。また来週こちらから電話しますね」

 

 携帯電話を操作しながら、タオルを取ってシャワールームで待つ鈴ちゃんの元へ。

 ……って、なんで更衣室まで出てきちゃってるんですか。タオルマットが無駄に濡れるじゃないですか!

 

「いつも風邪引いちゃうから身体を拭くまで外に出ちゃダメって言ってるのに……」

「そうは言うけどさ。私は温まった身体が一気に冷やされる感覚が好きなのよ」

「それが身体に悪いんです。まして私たちは女の子なんですから身体を冷やしちゃだめなんですよ……好きな人の子供は元気に生みたいでしょう?」

「なっ、ばっ! べ、別に一夏の子供なんて……女の子なら1文字ずつ取って夏音(かのん)、ううん、一音(かずね)とかでも」

「…………」

 

 織斑君とは誰も言ってないんですけどねぇ、なんてからかおうと思っていたのに鈴ちゃんが思った以上に暴走しちゃいました。

 えっと、これ、どうしましょう。

 

「娘ならやっぱりIS適性も高いと思うし、将来はIS操縦者の家庭なんて有名になるかも。でも織斑(おりむら)鈴音(リンイン)じゃイマイチだし……りんね、って読むようにしようかな。アリサー! 名前変える時って役所にわぷっ!?」

「いいから、身体を拭いて下さい!」

 

 全く、いくら好きだからって妄想が行きすぎですよ。相手がシャルロットだとしても私じゃそこまでしません。

 でも、シャルロットと……ですか。当然、同性なので夫婦にはなれませんがフランスには民事連帯契約(PACS)があるので同性カップルの権利も部分的に認められてるんですよね。残念ながら2人の子供という形での養子は取れないのですが……まぁ、私かシャルロットどちらかと養子縁組を結べばいいですね。もし、デュノア社のIS開発許可が剥奪されなければ会社を継ぐことはできなくても私もシャルロットもそれなりの地位に就くことは確実です。まぁ、社長さんが私達の関係を認めてくれたら、ですけど……気に入られているとは思いますがあくまで娘の友達として、みたいな感じですし。いえ、諦めるのはまだ早いですよね。一度ダメと言われても2回3回と説得を続ければきっと分かってくれるはずです。でも不破の名前は私じゃなくて弟が継ぐことになっているので、私の名前はアリサ・デュノアになるわけですか。いい感じじゃないですか? アリサ・デュノア。それで子供ですけど、どうしましょうかね。やっぱりデュノア社を引っ張っていけるような優秀な子に……あーでも私ケーキ屋さんもやりたいんですよねー。じゃあ子供は私とシャルロットで1人ずつ養子にしてデュノア社と私の開くケーキ屋さんを継いでもらうのが良いですね。そしてゆくゆくはデュノア社の社員食堂にも私のお店のケーキを……

 

「アリサ!」

「ひゃい!?」

「変な声出さないでよ。急に真剣な顔して黙っちゃうんだから」

 

 これは……私の方が相当、ですね。反省反省。鈴ちゃんのことを言えないじゃないですか。

 というか鈴ちゃんも身体を拭いたなら早く下着を付けて下さい。それ以前に女の子相手でも隠しましょう。最低限の礼儀です!

 

「もー、アリサは固いなぁ……あ、さっき電話してたみたいだけど、なに? 恋人?」

「恋人なんていませんよ」

「とか言っちゃって、見た目の割にアリサって大人びてるし恋人の1人や2人くらいいたんでしょ?」

「いませんよ、というか早く下着を、」

「そんな汚いもんじゃないんだし、これでも自信はあるのよ? ……あっ! 私の裸見て照れちゃってるのね。なんだ、やっぱりアリサは初心(うぶ)ねー」

 

 照れてるって、なんで見慣れてる女の子の裸を見て照れなきゃいけないんですか……あれ、でも多分男の裸を見ても照れないような気がします。昔は男だったわけですし。

 でも逆に考えてみると両方に照れるのかもしれないですね。鈴ちゃんに向かって服を着てください、って騒ぐのだって照れてるからかもしれませんね。

 訳が分からなくなってきたのでとりあえず鈴ちゃんで試してみましょう。

 

「え、なに?」

「ちょっと動かないでください。あ、下着も付けなくていいですよ?」

「へ?」

 

 程良く筋肉が付いてすらっとしなやかな肢体。やっぱりお肌にも気を付けているのでしょうか? シミなんて見当たりませんし小さい傷痕すらありません。

 

「ちょ、ちょちょちょ、なに!?」

 

 まぁ、ほっそりしているので胸は……絶対的な数値で見ても私より小さいのですが、全体的にスレンダーな印象ですね。遺伝的なものなのか毛もあまり目立たないですし……総じていえば鈴ちゃんの裸は綺麗ですね。

 

「ちょっと失礼します」

「ちょ、アリサ……ゃん!」

 

 太腿、お腹、二の腕と触りますがやっぱり無駄な脂肪も付いていませんね。しかし、なんでしょう。こうして人の身体を触るのは楽しいかもしれません……楯無先輩とお風呂に入るたびに体中を触られる理由が分かったような気がします。

 

「あれ、こういう感情も興奮していることになるんでしょうか?」

「興奮って!? ちょ、ちょっと待ってアリサ! 女の子同士よ!?」

 

 でも思い返してみれば私に嗜虐嗜好はあるのかもしれませんね。織斑君と戦った時も楽しんでいたような気がしますし。あ、でも楯無先輩に弄られるのもヤじゃないんですよね……やっぱり相手によって違うのかもしれませんね。

 鈴ちゃんの場合は確実に弄る方が楽しいです。

 

「んー、私、女の子とか男の子とか、そういう細かい違いは気にしない性格みたいなんですよね。それより鈴ちゃん顔真っ赤ですよ? 初心ですねー」

 

 そうじゃなきゃシャルロットに一目惚れもしなかったでしょうし。

 

「バイなの!? というか細かくないし、私は気にするわよ!?」

 

 思いのほか強い力で私の腕を振り払って後ろに跳んで両手で身体を隠そうとする鈴ちゃん……あぁ、やっと女の子としての常識が身についてきましたか。

 

「安心して下さい鈴ちゃん。食べちゃおうとか考えていたわけではないですから」

「絶対、嘘よ!」

「信じてくれないなんてひどいですね……あぁ、関係無い話ですけど二木さんに女の子へのお仕置きの仕方を教えてもらったんですよ。正直あれじゃ気持ちいいだけだと思ったんですが、」

「いい! いらないから! というかアリサのことは信じてるからもう許して……ね?」

「ふふふ」

「待って! 私初体験は男の子相手がいいから!」

「冗談ですよ。そんな怯えなくても……」

「分かったから! アリサが初心じゃないのは分かったからー!!」

 

 慌てふためく鈴ちゃんが可愛くて可愛くて。ついついやり過ぎてしまうんですよね。

 織斑君に対してもツンケンしてないでこういうところを魅せればすぐに落とせると思うんですけどねぇ。こう、ギャップ萌えみたいな感じで。

 

 コンコンコンコン!

 

 ……誰ですか、こんな時間に。

 いえ、騒いでいた私達が言えることでもないですけど、もう9時も回っていますよ?

 部屋の中で騒ぐならまだしも人の部屋を訪ねるような時間じゃありません。

 

「やけに暴力的なノックですね……セシぃはもっと静かに、というかこんな時間に訪ねてくるような子じゃないですし、鈴ちゃんの友達ですか?」

「私にもあんなバカでかい音たててノックしてきそうな友達はいないわ」

 

 コンコンコンコン! バンバン!

 

「えっと……1人、いません?」

「思い当たる人はいるけど……友達っていう程の仲じゃないわよ。というかあの子ってアリサのクラスでしょ? アリサこそ友達じゃないの?」

「なんか敵視されてる感じがするんですよねー。まぁ第一印象がお互いに悪かったのでしょうが無いと思いますが」

 

 バンバンバンバン! ガチャガチャ!

 

「必死ですねぇ。正直、面倒事だと思うので遠慮したいのですが」

「同感だけど、あの子木刀でドア壊すらしいわよ? 2組の子が見たんだって」

「つまり、扉を人質に取っていると……いやらしい作戦です」

 

 ガチャガチャガチャガチャ!

 

 うーん、ホントに壊されそうな勢いですね。聞き覚えのある声で、いるのは分かっている! 出てこい! なんて言ってますし……先生を呼ぶのも面白そうですが、後で恨まれそうなので大人しくあけましょう。

 いえ、卑劣な作戦に屈したわけではないです。

 

「まったく、少し騒がしいですよ。何の用ですか篠ノ乃さん」

「む、不破……そうか、お前もこの部屋だったな」

 

 私が扉を開けると意外そうな顔をしている篠ノ乃さんが立っていました。というか右手に持った木刀で何をする気だったんですか?

 まぁ、私に用が無いんだとしたら鈴ちゃんに会いに来たってことですよね? 幸運にも面倒事は私に関係ないみたいです。鈴ちゃんには悪いですが避難しましょうかね。

 

「待て、不破にも第三者として聞いてもらいたいのだが……いいか?」

「……そうですか」

 

 口調こそ私の答えを聞く気があるみたいにしていますが既に首を掴まれて部屋の中に引きずり込まれかけています。ええ、分かってましたよ? どうせ面倒事からは逃げられないって。

 ただ、お邪魔しますくらいは言ってもいいんじゃないでしょうかね。日本人として。あぁ、でも靴は脱がなくていいですよ。

 

「鳳(ファン)、といったな? 一夏の幼馴染というのは本当か?」

「そうよ? というか前にも言ったはずだけど?」

「いや、今のはただの確認だ。しかし、そうか……」

 

 顔を合わせた瞬間にキャットファイトが始まると思っていたのですが……むしろ二人とも冷静に話し合っていますね。嵐の前の静けさにしか見えなくて怖いです。

 

「じゃあ聞かせてもらうが、一夏のことを、その……あ、あ、愛して、いるのか?」

「ぶっ!」

 

 愛て、そんな重たい言葉使わなくても好きなのか? とかでいいじゃないですか。

 私達はまだ高校生になったばかりの子供です。ISに乗れたってその事実は変わりませんし、周囲と比べて精神が円熟しているわけでもないんですから。

 無理に愛しているなんて言っても上滑りするだけです。愛って人生を懸けることでしょう?

 それなのに、

 

「ええ、愛してるわ」

 

 鈴ちゃんの答えは自然で、無理に言っているという感じがしませんでした。

 

「そうか、なら私はお前と対等な立場でいたいと思う。だから、隠し事もしない……私が今度の学年別個人トーナメントで優勝したら付き合ってもらうと約束した」

「な……そういうこと。じゃあ、私も1つ教えるわね。私、一夏とキスしたわ」

「鈴ちゃん!? 私そんなの聞いてないですよ!?」

「だって、恥ずかしかったから……というか、なんで当たり前のように私がアリサに話すと思ってるのよ」

 

 鈴ちゃんと軽口を言い合っている間も脳では別のことを考えてしまいます。

 ……シャルロットを愛しています。

 私がそんなことを言っても、どこか違和感があるのに……私と鈴ちゃんの違いは何なのでしょう。

 私だって心の底からシャルロットのことは好きですし、一生を彼女の傍で過ごす、過ごしたいという覚悟もあります。それでも愛じゃないような気がするんです……シャルロットの本当の奥底まで知らない独り善がりな感情だからですかね。

 でも、それなら……こう言ってしまうのもなんですが、鈴ちゃんも独り善がりなはずです。だって織斑君は鈴ちゃんに幼馴染以上であることを望んでいないんですから。だから、鈴ちゃんの気持ちに気付かないんです。

 じゃあ一緒に過ごした時間の長さでしょうか。でも、これも違う気がします。例え、私がシャルロットとの接触を避けずに友好関係を結んだとしても、愛していますとは言えない気がします。

 私は、どうしてシャルロットを愛せていないのでしょう。

 

「……サ……リ……アリサ!」

「へ? あれ、篠ノ之さんは?」

「何言ってんのよ。さっき帰ったじゃない。アリサも見送ってたわよ?」

 

 全然、記憶にないですね。確かに時計を見ると篠ノ之さんが来た時間から随分と経っているのですが……

 

「さっきも考え込んでたけど、何か心配事? 私でよければ力になるわよ?」

「……じゃあ、少し聞かせてください」

「少しといわずドンときなさい」

「どうして、織斑君を愛していると言えたのですか?」

「え、えぇ!?」

 

 好き、という言葉を言い換えただけではないはずです。そして、鈴ちゃんの答えはきっと私と彼女の違いを明らかにするもののはずです。

 

「まぁ、どうしてって……うん、そうね。多分、私が好きになるのは一夏しかいないからじゃない?」

「?」

「親が離婚したってのは前に話したけど、一夏とはちょうどその頃知り合って、アイツのおかげで元気でいられたのよ」

 

 ありがち、と言えばありがちな話ですよね。それが愛することに繋がるのでしょうか?

 助けてもらったから、というだけで愛という強い感情を持つとは思えません。

 それとも、私が愛することと好きということを難しく考え過ぎなんでしょうか?

 

「私の両親が離婚しちゃった理由は分からないけど、私は離婚なんてしないように1人だけをずっと好きでいようって考えて……」

「だから、織斑君しかいないってことですね」

「うん。アイツに私とは付き合えないって言われるまでは一途に想っていようって。だから愛」

「私には、よく分かりません。一途でも愛しているって言い切れないと思いますから」

 

 鈴ちゃんの話したことも、過程が違うだけで結果の感情は私と似ています。それなのに、私のは愛じゃなくて恋……

 感情の問題だから考えて分かることではないのかもしれませんが、かえって混乱してしまった気がします。

 こんな、半端な気持ちでシャルロットをしっかり迎えられるのでしょうか……彼女のため、と言い訳して自分に利することをしてしまいそうです。

 

「でも、アリサもこういうことを気にするのね。恋愛には淡白な方だと思ってたから、ちょっと意外」

「いつも考えているわけじゃないですよ……たまたまです」

 

 少し、シャルロットに関係することを考え過ぎてしまうだけなんです。私がシャルロットに干渉することに意義はあるのか……例えデュノア社の経営が傾くことになっても、私が手を出さないで全て織斑君に任せた方がシャルロットにとっては幸せなのかもしれません。

 どこに行っても同性間での恋愛は白い目で見られますしね……

 

「だーかーらー、悩みがあるなら話してよ。恋愛のことでしょ? 人に話すだけで楽になるし、悩んだまま放っておくと歪むわよ?」

「人に相談する程ではないですし……それに歪むほど悩んでいるわけではないですよ」

「意地っ張り……アリサは相手のことを気にしすぎよ。自分のことも考えられるようにならないと共倒れになるわ」

「大丈夫って言ってるじゃないですか! 鈴ちゃん、ちょっとしつこいですよ? それとも、織斑君とキスできたからって先輩風吹かせたいんですか!? なにも……なにも知らないくせに」

 

 シャルロットの事情も、もしかしたら私の行動で、デュノア社で働く人たちの未来が決まってしまうかもしれないことも……

 

「なっ……! なによそれ、なにも言ってくれないんだから分かるわけないじゃない! いつもと様子が違うから心配してあげて、」

「心配して“あげて”って、私をバカにしてるんですか!? 見下してるんですよね? 私が歪んでいて、鈴ちゃんみたいに綺麗な身体じゃないから……!」

 

 一度叫んでしまえば、あとは売り言葉に買い言葉。

 お互いに言われたくないこと、言いたくないことを言ってしまいます。全然、思ってもないことまで。

 

「そんなこと思ってないって、前にも言ったでしょ! アリサこそその傷があるからなんでも許されると思ってない? アンタの性格が歪んでるのも傷痕のせいじゃないかもね。だって、同じような傷を持っててもしっかり生きている人もいるんだから」

「私が、もとから異常だったって……そう言いたいんですか? やっぱり鈴ちゃんに話さなくて良かったです! そういう風に考えている人に私の悩みを言ってもどうせ笑うだけですから!」

 

 口喧嘩なんて、したことがないから引き際も分からない。分からないから、感情のままに叫んで……このままじゃ嫌われちゃうのに。

 

「笑わないわよ! 前にも勝手に人のこと決めつけるなって…………はぁ、いい、もう寝るわ。電気消すわよ。おやすみ」

「ぁ……」

 

 だから、鈴ちゃんに引かれちゃうとどうしていいか分からなくなって、怖くなってしまうんです。頭では嫌われていない、怒らせてしまっただけだって解るのに、感情がその理性とは真逆のことを感じてしまいます。理性と感情、瞬間的な勢いなら感情の方が強くて……

 思い返してみれば鈴ちゃんは怒りながらも私のことを心配してくれていたのに……私は変に深読みしてネガティブに捉えて、最低でした。

 

「あの、鈴ちゃん……ごめんなさい」

「………………」

「……おやすみなさい」

 

 もうちょっと早く謝っていれば、鈴ちゃんも眠ってなかったかもしれませんね。いつだって、こういうときは上手くいきません。

 

 次の日の朝は、久しぶりに目覚まし時計で起きました。

 セットしてくれたのは鈴ちゃんでしょう。

 

 鈴ちゃんは既に学校に行ってしまっていて、お礼が言えないのが悔しくて悲しかったです。

 

「でも、やっぱりこんな私じゃ……」

 

 後で後悔することになる日々の始まりでした。


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