とある魔王の魔法戦記 (WARA)
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TURN02   悪 魔 襲 撃 の 日


 

 その日は珍しく雪の降る朝だった。

 しんしんと降り続き、景観を白く彩り、ただその存在残すことなく、地面に吸い込まれていく雪は美しくも儚い。

 視界にちらつく白を意識しながら、俺は朝から読書に励む。

 スタン爺さんはいつもの朝と同じように紅茶を片手に新聞を読んでいる。

 その隣で俺がココアを飲みながら、本を開くのが、ここ数日の俺の日課だった。

 さて、そんな一時を過ごして、俺はスタン爺さんの家を出る。

 最近めきめき冷え込みが増してきた天気のなか、大通りを歩いていた。

 辺鄙なところだからか、それとも魔法使いが多いという性格柄からだろうか、はたまたその両方だからか、この村には若い人が少ない。

 同年代の子供だってアーニャぐらいしか知らない。

 アーニャにしたって去年から魔法学校に行っている。

 そうやって若い人はこの村から離れていくのだろう。

 この村に住む老人達からしたら寂しい限りだろう。

 俺が可愛がってもらえるのもそこらへんに理由があるのかもしれない。

 そんなことを考えながら道行く人たちに挨拶を返していく。

「朝からルルーシュくんは元気ねえ」

「今日もご本読みに行くのかい?」

「今日のお昼はウチでどう」

 声をかけてくれる人の表情は柔らかい。

 時々そういう人以外からなんとも妙な視線を向けられている。

 視線の理由は分かっているが特に害はないので気にしないようにしていた。

 袖を指で寄せむき出しの手を庇いながら、俺は叔父の家の離れに向かっていた。

 

     ●

 

 翌日の午後。

 少し遅めの昼食を終えた俺は、ネカネ姉さんが村に着く夕方までの時間を少々村から離れた湖で過ごすことにした。

 水辺に座る俺の手には簡易な釣り竿が握られ、釣り針を左手でつまみ、呪文を唱えてやる。

 呪文を唱え終わり、釣り糸は湖の中へと垂らす。

 俺は何匹かの魚を釣り上げた時、そういえば今日はネカネ姉さんが帰ってくる日だったことを思い出し、帰路についた。

 その帰る途中、だんだんと空気が蒸し暑くなった。

 何かと思いふと空を見上げると、何処かで山火事があったのか黒い煙が上へと上っていく。

「あれは・・・村の方か!」

 釣り竿と魚の入ったバケツを放り投げ、走り出す。

 カントゥス・ベラークス
 ―戦いの歌!!―

 魔力が少年の全身を巡り、身体能力を大幅に向上させる。

 身体強化魔法を使ったルルーシュは全速力で走る。

 その速度は、3歳児の子供が出せる速度ではなく、アスリートに近い速度だった。

 

     ●

 

 村の近くの小高い丘に着いて見えた光景は、まさに地獄絵図という言葉がお似合いだった。

 村は業火に包まれ、生きている人間など数えるほどももう残っては居ない。

 石像にされた者は砕かれ、体に火を放たれた者は怨嗟の叫びを上げながら命を落とした。

 悪魔達は嬲る様に人を殺し、死体すらも蹂躙した。

 家は焼かれ、破壊され、村の広場は見る影も無く焼き尽くされていた。

 大地は血に染まり、村人達の奮闘も虚しく、悪魔達の数は殆ど減っていなかった。

 それどころか、醜悪な姿をした悪魔達はその数を秒毎に増していく。

 小高い丘から、その光景を見たルルーシュは、ここにいるとまずいと村から離れようとする。

 だがルルーシュが村から離れることはできなかった。

 何故なら数歩と行かぬ内に、地中から這い上がってきた者達がルルーシュの行く手を遮ったからだ。

 ズ・・・ズズズ・・

「!?」

 次々と地中から湧いてくる異形の軍団。

 湧き出てくる姿は、歪に盛り上がった水溜まりの様なスライム…液状生物がいる。

 風に消えそうな程幽かに揺らめく痩身のローブ姿がある。

 両手に刃をぶら下げ、気味の悪い笑みをへばりつけた人形の様な姿がある。

 捩れた角と飛び出す牙、二足で立ち上がり両手をぶら下げる。

 人に似たシルエットを持ちながら、その翼が、その尾が、その歪な骨格が、捩れた筋肉がある。

 悪魔。

 召還されてこの世界にやってくる異世界の者達。

 どうやら奴らがこの惨状の首謀者らしい。

 俺はこの惨劇の元凶と思われる犯人達を怒りに満ちた目で睨みつける。

 その瞬間――ルルーシュの両目が紅く染め上がる。

 そこには奇妙なマークが浮かんでいた。

 眼球だ。

 その中だ。

 本来であれば、澄み切っているその瞳に内部から侵食していくかの様にそれはある。

 両目の奥底から光が生まれ、赤く輝く奇怪な不死鳥の模様。

「リベル・リベリス・リベリオン

 来たれ雷精、風の精!!」

 練習杖を懐から抜き、ラテン語の詠唱を紡いでいく。

 魔力の籠った言霊が世界へと働きかけ、その理を改変する。

 そして、何もない虚空にルルーシュは脳を通じ、術式を一瞬でイメージする。

 細部の意味から辿り形成される大きな意味。

 詠唱に伴い、魔法媒体である杖から、術式が展開、同時に体の底にわずかに揺らいだ力を無理やりに引っ張り上げ、放出。

 術式と魔力が外に出ると、大気中に漂う精霊が共鳴し、術式に組み込まれていく。

 精霊とは有り体に言えばお願いを聞いてくれる存在だ。

 お願いを術式に形を変え、魔力を報酬として与えることで、術式に変換されたお願いを現象として具現化してくれる。

 科学とは異なった法則の下で成立する、古より続く神秘。

 人はそれを『魔法』と呼んだ。

「雷を纏いて吹けよ南洋の嵐!!」

 術者の怒りに同調して溢れだした魔力が雷と嵐となって右腕を包み込み、その解放の時を待つ。

 放たれるはルルーシュの持つ最強呪文。

 借りた魔法の本の中で見つけた、雷と嵐の混合呪文。

 ―雷の暴風!!!―

 ルルーシュは気合いと共に、帯電した右腕を突き出した。

 その拳に押しだされる様に、雷風が渦を巻いて疾る。

 稲妻を纏った旋風が漆黒の軍団に襲いかかり、その陣中を食い破って行く。

 黒の中に空く僅かな隙間。

 されどそれは、地中からの漆黒の増援によって埋め尽くされた。

『があぁぁあああ』

「ちぃっ!」

 状況は最悪に近い。

 ルルーシュの最強魔法は数を増やし続ける魔の軍勢に対して焼け石に水程度の効果しかなく、後数分もすれば自分は漆黒の海に呑まれることになるだろう。

(ここから逃げ出せるか?)

 はっきり言って厳しい。

 正直不可能だと言ってもいい。

(やれるとは言えない。

 けど、やるしかないんだ!)

 ここにはネカネ姉さんも、スタンの爺さんもいないのだ。

 なら、一人で突破するしかない。

 時間をかければそれだけ悪魔の数は増えて状況は悪くなっていく。

 また体力的にも精神的にもそう長くは持たない。

 故に強行突破。

 右手で杖を握りしめる。

「行くぞ!」

 魔力を全て『戦いの歌』と障壁に注ぎ込み、大地を蹴った。

 それに向かい打つは、山羊や牛の顔を持った低級悪魔達。

 ―魔法の射手・連弾・光の七矢―

 無詠唱から発せられた七つの光の弾丸が突出していた悪魔に着弾する。

 ……噴煙で視界の遮られる中、すかさず過重力で超高速を得るギアス「ザ・スピード」を用いて軍団を振り切り、森の入り口を目指す。

『グァァアアアァ』

「ええいっ、鬱陶しい!」

 襲い来る鋭い爪や拳を当たらない様かわし、時には障壁で受け流し、無詠唱で魔法の射手を連射しながらひたすら外を目指す。

 どこかぎこちない、無駄の多い動きでありながらも決定的な一打を受けずに済んでいたのは、ルルーシュの非凡な才能の証明に他ならなかった。

 もしかしたら、召喚された悪魔が低級の悪魔達だけだったら、ルルーシュは脱け出すことができたかもしれない。

 そもそも、低級の悪魔達だけだったら、総力は本国の一個大隊にも引けを取らない…村人達だけで勝っていただろう。

 だが――

 低級の悪魔達と違う悪魔がルルーシュへと一瞬で肉薄し、漆黒の魔力を纏った拳を振り上げる。

「なっ!」

 咄嗟にルルーシュは右腕をガードに回す。

 直後、圧倒的な衝撃がルルーシュを襲った。

「がっ!?」

 障壁越しだと言うのに、凄まじい威力。

 受け止めきれず、ルルーシュは十数メートルをノーバウンドで吹き飛ばされた。

 魔力とギアスによる身体強化と障壁が無ければ死んでもおかしくない攻撃だ。

「ちっ!」

 空中で何とか体勢を整え、二本の足で着地の勢いを和らげる。

 右腕を見てその表情は険しいものになる。

(……まずいな)

 攻撃を受けた右腕は魔力とギアスの身体強化と障壁もあって多少痛む程度だが、杖の方はそうもいかなかったらしい。

 星飾りの部分に大きな罅が入っている。

 元々木の棒程度の耐久性しかない杖は粉砕され、魔法媒体としての働きを失っていた。 

(おまけに……)

 チラリと周囲を見渡せば、一面黒の海。

 どうやら少々時間をかけ過ぎたらしい。

 魔法は使えなくなった、周りは敵の海。

 もはや最悪を通りこして絶望的な状況。

 だが諦めるわけにはいかないのだ。

『ウォォォオオオオ!!!』

 怒号と共に、漆黒の軍団がルルーシュを蹂躙せんと襲いかかる。

 魔法も使えない状況で、絶望的な状況で、目を逸らさず、迫りくる黒の軍団を睨みつけた。

 漆黒の海へと飲み込まれる――その時だった。

 金色の稲光が視界を埋め尽くす。 

 目を焼かんばかりの光が世界を包みこみ、ルルーシュを覆わんとしていた黒を蹂躙した。

 出来の悪いSF映画を見ている様な、安直すぎる展開。

 呆けるルルーシュの前に、ふわりと男は降り立った。

 全身をすっぽりと覆うボロボロのローブに、男の身長よりもあるかもしれない長い杖。

 顔はフードに覆われてはっきりとは見えないが、先程僅かに見えた髪の色は燃えるような赤。

「っつ…………まさか!!」

 男は僅かにルルーシュの方へと振り返った。

「ルルーシュか……大きくなったな」

 ここにナギ・スプリングフィールドが参戦した。

 

 




後書き
原作では、何で村人達を永久石化で生かしておいたのでしょうかσ(^_^;)?
元老院の連中なら村人全員皆殺ししても可笑しくないと思うのですが(´Д`)
まあ、この映像を見た元老院の連中は、ドン引きすることでしょうね(笑)
三歳児の戦闘力じゃねぇって感じでww
ルルーシュはまだギアスを【使う】事は出来てもまだ【使いこなす】は出来ていません。
ルルーシュの始動キーはどうだったでしょうか?
自分でもこれはねぇわと思いましたが(笑)


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