中庸を行くつもりがいつの間にか修羅道歩んでた   作:アブさん

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多分、主人公の仙術の修行法は間違っている。


お外に出たい、でもお外怖い

 訓練を初めて、約5年位が経った。

 

 外気を感じる事はいちいち、手のひらに気を集める必要は無くなり、素のなにも特別な事をしていない状態でも感じることはできるようになった。

 

 次の訓練は、外気を取り込むという法というものらしいい。これをマスターできれば、身体は歳を取らなく成るようになるそうだ。つまりは不老になるとの事だ。

 俺は特別、不老というものに興味がある訳ではないが、気の扱いというものには特別興味を持っていた。

 自身の気を感じることにより、心地よさを。

 外気、大自然の気を感じることにより、世界というものを感じた。

 そして、外気を取り込むという行為……即ち、それは捉えようによっては世界そのものと一体となる行為なのでは無いだろうか?

 それは、今の自分にとってとても魅力的に思えた。

 

 早速実践を試みた、まずは自分の気を外に出し、外気と混ぜるイメージを行う。

 

 すると外に出した、自身の気が例えるならば磁石のS極とN極を合わせるかのごとく反発し合った。

 

 原因は分かる。俺の気と外気が異質すぎて反発しあうのだ。ならばどうするのかと、問われれば答えはすぐに言うことができる。俺の気が外気と合うように調整すればいいのだ。

 この世界の気というものはとても穏やかで凪いでいる。それに合わせるように俺の気も穏やかなものに変えようとする。

 この時、問題がある、精神と気というのは綿密に関係しているようで気が変質すれば精神もそれに引っ張られてしまう、逆もまた然りだ。

 これの何が問題かと言われれば、敵対する存在と相対した時だろう。

 外気を取り込むたびにいちいち精神を変容させていたら、戦うのが困難になることが予想できる。

 まぁ、まだ出来ないことでうだうだ考えていても仕方ない、出来るようになってから考えればいい、そう考え早速自身の気の調整を始める。

 

 とは言っても、まだ俺に自身の気を直接変質させるのは非常に困難だ。

 だが、発想を変えれば容易に解決できる問題だ。気と精神の関係の密接さは先に述べた通りだ。気の調整は難しい、ならば精神を調整すればいい。

 幸い、この世界の気質は非常に穏やかなものだ。ならば俺の気持ちを落ち着かせ自身の気をこの世界の気のものに近づける。

 

 気を放出し外気を混ぜ合わせる、今度はまるで別々の粘土を混ぜてこねくり回すのような感覚に変わっていた。

 そして、混ぜたものをゆっくりと自分に戻す。

 一度混ぜ合わせたものだからか、すんなりと身体に馴染んでいく。

 

 「はぁん」

 

 何とも言えない快感に、思わず精神を乱し外気は直ぐに身体の外に弾け飛んでいった。

 

 だが、感じた!一瞬だが、得た!世界をこの身体に取り込んだ!それがとてつもない快感で忘れられそうにない……

 

 慣れた者は、呼吸や肌でこれを行う事が出来るそうだが、その域は遠そうだ。

 

 この快感をもう一度得ようと、精神を落ち着かせようとしたがこの興奮状態はそう簡単に落ち着きそうにない。

 

 仕方ないので、武術の方を勧めてみる。

 

 初期から、この家にある備品の中で今まで動かしていなかったものを動かしてみることにした。

 

 木人師範・5体あるうちの上級悪魔レベルのものを起動させてみた。

これまでは、套路という連続的な攻撃法や防御法、立ち方、歩き方などを

組み合わせた、日本の武術の型のようなものをひたすら一人で繰り返してきたが、流石にそろそろ対人の技術が欲しくなったので漸く起動させてみた。

 

 それというのも、そろそろ外界に出て探索してみたくなったからだ。理由はとても単純なものでそろそろ生豆以外のものを口にしたいと言うものがある。でも、外の現状が不明でどんな化物がいるのかが全くわからなくて怖い。だから、生き残る術だけでも得たいという考えだ。

 

 そういった理由で木人を起動させたわけだが……

 

「どう見ても、マネキンなんだよなぁ。顔無くて何だか怖いし……」

 

 木人が起き上がるのを確認すると、声をかけてみる。

 

「よ、よろしく木人」

 

 と気安く声をかけると、頭に衝撃が走った。

 

「っうぅ」

 

 衝撃を叩き付けたであろう木人に目をやると、木人という名のマネキンは拳骨を握りしめて、顔の無い頭をこちらに向けていた。

 そして、どこから出したのやらか不明だがプラカードを反対の手で持っていた。

 そのプラカードには……

 

 『私の事は、老師、師匠、先生のうちどれかで呼ぶように』

 

 「へ?」

 

 思わず気の無い声が出た。

 

 『何、気の無い声を出しとるかぁああああああ。これを着ていつも走っているコースを20週して来い』

 

 どこからか出した、鉛色のベストのようなものが投げ渡される。

 

 ドスリという擬音が聞こえそうな音を立てて俺の手に投げ渡された。

 

 「お、重。何キロあるんだこれ?」

 

 『20キロある。そしてぇええ、師に対する口のきき方ではなぃいいよって10週周追加だぁ』

 

 「ぐへ」

 

 目にも止まらぬ、拳が飛んできた。一応美少女の類だと思う俺の顔面に向かって。

 

 「何で、俺の走ってるコース知っているんだよ……」

 

 『我がAIはこの世界限定であるが、お前の鍛錬方法を休眠状態から常に監視していたのだぁあ。そして、さらに10周追加だぁ』

 

 さらに、周回を追加と同時に拳も追加されていた。

 

 「がぁ」

 

 立ち上がりながら思う、このままでは無限ループだ。

 気力を奮いたてて、立ち上がり返事をした。

 

 「はい、先生」

 

 『よろしい、ならばいけ。1時間で戻らなければ明日はさらに10周追加だ』

 

 「な!?っう。はい、先生」

 

 全然納得できないけど、反応できない速度の拳を顔面でこれ以上受けるのはごめんだったから。素直に頷き、走ることにした。

 

 

 

 

 

 




気の扱い(チュートリアル)終了。老化も非常に遅くなりました。
武術鍛錬(チュートリアル)終了。本番スタート
次回、クマorトラ対主人公 デュエルスタンバイ。(予定は未定)
モチベが下がっていなければ来週の土日までに1話あげたい。

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