不器用な彼の物語   作:ふぁっと

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第04話 原作開始「準備」

 

 

 

 

歯車が揃い

 

回り始めた

 

 

もう止めることはできない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更に時間が経過した。

 

 中身がそこそこの年齢なだけに、小学生レベルの問題は簡単だった。まぁ目立たない程度に適度に手を抜きながらこなしている。目標は中の中。テストで取る点は平均点を目指す。

 さて、現在の様子だが、なのはたちとは運がいいのか悪いのか、小学生に入ってから同じクラスになりっぱなしである。どうも関係はよく分からなくなってきているが。

 向こうから話しかけることはないが、気づけばちらちらと見られてたり。かといってこちらから話そうとすれば、逃げられる。嫌われてるとは思わないが、避けられてるのは事実。最近はこれの繰り返し。

 

 今は小学三年生―――

 

 原作開始までもう間近である。

 

 そんな関係な所為でなのはたちと接触する機会がなかったおかげか、霧谷には絡まれなくなった。そういや、一時期長期間休んでいた時があったなぁ………インフルエンザだかにかかったとかで、我らの担任様である“斎条冷姫”様が皆に注意を呼びかけていた。

 ちなみに担任様は通称で“姫様”と呼ばれる恐ろしい方である。名前に姫があるからそう呼ばれる。様を付けるのは恐怖の対象だからだろうな。特技はアイアンクローとチョークレーザー。どちらも相手を一発で気絶させる程の威力を持つ。

 一度だけ姫様の授業中に居眠りをして、チョークレーザーを喰らった覚えがある。その時に「お前は頑丈だな」と呟かれた言葉を俺は忘れない。続いて「本気でやってもいいか?」などという言葉も忘れない。

 

 話がずれた。

 

 あ、そういえばなのはと言えば、月村やバニングスたちと原作通りに喧嘩をして、仲良くなっていた。

 ただまぁ、仲良しになるきっかけなんだが、今回は霧谷というイレギュラーが原因となっていた。謎である。

 噂話を聞けば、霧谷が月村とバニングスの二人を鉢合わせ、お互いを喧嘩するように仕向けて、そこになのはが通って原作通り―――が、終わった後、落ち着いて話したら、霧谷が原因ということが分かり、三人娘VS霧谷という喧嘩が起こった。

 ま、結果は言うまでもなく、三人娘の勝ちである。バニングスはまだ分かる。月村も………性格は大人しいが、あれは一度火が付けば激しく燃えるタイプだな。怒らせたら怖い人だ。そしてなのは。運動音痴さんは後ろで可愛らしく睨んでいただけだったよ

 騒ぎになっていたので、たまたま廊下から一部始終を見ることができた。ま、俺が言えることはただ一つ。

 

(霧谷wwwざまぁwwww)

 

 これで懲りるとは思わないが、少しは彼女たちの迷惑になっていることを自覚してほしい。いや、無理か。

 少し溜飲が下がった。

 

 

 今までなのはのことや霧谷のことを見てきたが、どうも霧谷は三人娘たちからは嫌われている節がある。というのも、三人娘VS霧谷の時には、溜めに溜まった不満が爆発した、という感じに見られたからだ。

 まぁどうでもいいことだな。その後、バニングスに攻められたことを除けば。

 たまたま通りかかった俺に対して、見てたなら助けろとかってのは少々厳しいものがあると思うのだがね。

 

 

 

≪―――誰か!≫

 

 

 

 瞬間、声が聞こえた。

 

(今のは………念話か?)

 

 今までする機会がなかったので初体験だが、今届いたのが念話で間違いない………だろう。頭の裏側から直接響くような不思議な感じ。エコーをかけながら囁かれたような感じがするが、何と言っているかはクリアに聞こえた。

 

(時期的に相手はユーノだろうな。ということは、原作が始まるのか………)

 

 まだ随所は覚えているが、細かな部分は忘れてきている。が、原作では念話があったのは放課後ではなかっただろうか。今はまだ学校の時間内である。休み時間ではあるが、放課後はまだ遠い。

 ふと見れば、なのはが不思議そうに辺りを見渡している姿が見られた。あとは難しそうな顔をしている霧谷がいるが、あいつも聞こえたのだろう。

 

(まぁいいや。今の俺では向かったところで邪魔にしかならないし、なのはは向かうとして、霧谷も行くんだろうな………)

 

 奴とはまだ会いたくなかったし、俺が転生者であることをバラすには早すぎる。そもそも、俺の問題がまだ解決していない。

 

「はーい、みんな席についてねー!」

 

 担当の教師がきたので、集まっていた人垣が散り散りになっていく。俺も目立ちたくはなかったので、大人しく席に着く。

 ついに原作だ。俺はどう動くべきかな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(原作開始か………)

 

 まだ俺はデバイスを手に入れていない。そうそう見つからないとは思っていたが、まさか見つかる前に原作が始まるとは思ってもなかった。

 

(いや、そもそも地球上に存在していない以上、原作が始まってミッドガルドだかミッドチルドだかの世界の人が来ないと………あれ? ミッドチルダだっけ?)

 

 ともかく、異世界の人たちが来てくれない限りデバイス入手は難しいのでは?

 

(だが、ユーノというケースがある。デバイスといっしょに誰かがいてもおかしくはない)

 

 おかしくはないが、その人が素直にデバイスを渡してくれるかはまた別な話。話を総合すると、希望はなかったようである。

 

(むぅ、毎日とはいかないがカオス部屋に入って咲夜さんに怒られた俺の犠牲はいったい)

 

 デバイスとは関係ない話だが、カオス部屋に誰かが住んでいるのはないかという形跡が見られた。まぁ、ミイラ男とか空飛ぶ珍獣とかはアウトの方向で。

 明らかに人間ではない何かがここにいました的な跡をたまたま見つけた。

 

 それは紅茶のカップ。

 

 小さい女の子用の紅茶のカップが何故そこにあったのかは知らないが………って、

 

(そういえば、小さい女の子いたな………棺の中に)

 

 あの子のものだろうか。というか、紅茶とかあの部屋にあったのだろうか。水とか紅茶の葉とかはどうしているんだろう………野生、のもの?

 確かに生えていてもおかしくはないが………ないが。大丈夫なのか?

 

「影月くん」

「ん?」

「これ向こうから」

「サンクス」

 

 隣の席から渡された紙クズ。視線の先を変えれば、友人がこちらに向けてサムズアップしていた。

 開いて中を見れば、

 

『放課後、いつもの場所で練習な!』

 

 なるほど。

 これ程度なら別に今じゃなくても良かったよね? あとケータイという便利なものを持っていたよな? まぁ授業中だけど。

 

――グッ

 

 とりあえず、友人に了承の意味を込めて合図する。

 

 

 部活とかには興味がなかったのだが、ひょんなことから俺はサッカーが得意と友人に知られてしまい………実際には違うんだが、毎日鍛えていたため、周りよりは体力があることが勘違いに繋がったのだと思う。

 そんな訳で、半強制的にサッカーチームに入れられてしまった。まぁ、学校外の活動だからいいかな? と思って了承してしまったのだが、まさかねぇ。

 

―――翠屋JFC。

 

 まさか、なのはの父親の“士郎さん”がオーナー兼コーチのチームに誘われるとは思ってなかったよ。

 士郎さんには喫茶店の経営があるため、あまりこっちの練習には来られない。姿を見たことはあるのだが、話をしたことは数度しかない。仕事が忙しい中の時間を見て来てくれるおかげか、すぐに消えてしまうからだ。

 的確な指示をしてくれるので、少しの時間とはいえ居てくれるのはとてもありがたいことではあるが。

 

(しかし、試合か………)

 

 俺がこのチームに入ってから初めての試合である。前々からいるメンバーたちにとっては因縁深い相手とも言える強豪チームと試合があるらしい。

 

 

――キーンコーンカーンコーン

 

 

「さて、授業終わりっと」

「よっしゃ! 裕也! 行こうぜ!」

「落ち着け、アホ共。まだ担任がいるぞ」

「その通りだ。影月の言うように、まだHRが残っているから座れバカ」

 

 我らが担任の姫様のご登場だ。

 

「えぇ!? 姫様! それはないでs」

 

――ゴキンッ

 

「「イエス、マム」」

 

 何も言わず、片手をあげて音を鳴らす。それだけの行為にすごい圧力を感じる。きっとあのまま立っていたら問答無用でアイアンクローでもしていたのだろう………いや、していたはずだ。絶対。

 

「さて、連絡事項だが特にない。あまり寄り道せずに帰るものは帰れよ」

「「「はーい」」」

「それから道端に落ちてるものを拾ったり食ったりするなよ。特にそこのバカども」

「「「はーい」」」

「では、委員長」

「きりーつ! れーい!」

「「「おつかれさまでしたー!」」」

 

 普通、こういったところでは「さようなら」が一般的ではなかろうか。何故かこのクラスでは姫様に向かって「お疲れ様でした」になっているが。

 どこの会社だ、と突っ込んではいけないのだろう。

 

「それを疑問に思っていないクラスメイトもクラスメイトだが………」

「よーし、今度こそ終わったな! いくぜ、裕也!」

「おー」

 

 さて、練習するか。やり始めたからには、ハッピーエンドは迎えたいしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 友人に連れられてやってきたのは河原近くにあるサッカーコート。ここで翠屋JFCは練習している。俺のポジションは何故かFWでストライカーを与えられている。

 

「とりあえず、前へ行け。前へ行ったらシュートしろ。シュートしたら点を入れろ」

「おk把握」

 

 前半二つはともかく、最後の一つは中々難しいものだと思うのだが、俺だけだろうか。シュートしたらかといって必ず点が入る訳ではあるまいに。

 

「まぁそれはともかく、相手チームの特徴は?」

 

 今までは個人練習を重点的に置いてきたが、今日からはチーム全体での練習に重点を置く。試合が近いから、個々人の連携をあげておきたい。

 そしてこれも何故かは知らないが、俺が指揮官も勤めている。本来の指揮官が匙を投げたというか、面倒だと逃げたからだ。

 

「あまり攻撃性はなかったはず」

「相手のストライカーは一人だったな。目立ちたがり屋かどうかは知らないが、必ず決まった奴が最後にはいる」

「何番?」

「10番だ」

「なら10番に圧力をかけつつ、まずは様子見をするか」

「様子見?」

「あぁ、10番のみってのがこっちにバレてるなら、何かしらの手は考えてるはずだろ? 向こうも」

「考えてなかったら?」

「そのまま10番を封じつつ、残ったメンバーで攻める」

 

 大まかな流れを決めつつ、それに沿った形で練習再開。あくまでもこの身は代役なので、最終的なことは喫茶店にいるコーチに任せる。

 今はいないけど、きっと士郎さんならなんとかしてくれる。俺はそう信じている。メイビー。

 

「今日は15人か、7:7で分かれてやるかー」

「「「おー!」」」

 

 

 

 しばらく練習に明け暮れていたら、再び念話が聞こえた。

 

≪誰か! 助けて!≫

 

(念話、ユーノか。どうやら、もうすぐなのはたちと出会うところかな)

 

 最初の念話とは比べてずいぶんと切羽詰まった空気を感じる。

 

(あれ? ジュエルシードと戦うのって夜じゃなかったっけ? 放課後は違うよな)

 

≪誰か! クッ!≫

 

 とかなんとか考えている間に念話が途中で途切れた。よほど、状況が慌しいのか。まぁ、霧谷がいる以上原作通りに進むとは思えんが、奴は奴で原作通りに進ませようとしているはず。

 その一点に関しては信用している。

 

(問題はないだろう………命に関しては)

 

「裕也―!」

「―――っ!」

 

 気が散っていた間に目の前にボールが送られた。

 

「ボーっとしてるなよー!」

「おーわりぃわりぃ」

 

 考えるのは後だ。今はユーノの無事と、魔法少女の誕生を願っていよう。

 

「いっくぞー!」

「「おっしゃー!」」

 

 次の日から、なのはの様子がまた少し変わることになった。

 

 

 

 

 


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