不器用な彼の物語   作:ふぁっと

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第26話 赤い「結界」、白黒の砲撃

 

 

 

 

全てを拒む檻

 

白と黒から生まれる光

 

 

こことは違う、されど同じ力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何個だ?』

『んー、遠すぎる上に結界が張ってあるから………でも、たぶん5個』

 

 場所は海鳴の海上―――から離れたビルの上。広範囲の結界の外に今はいる。

 なのはたちが管理局に協力してからしばらく―――ついに残りのジュエルシードが見つかった。それもまとめていっぺんに。

 

『俺が今3個。なのはたちが確か13個。あそこに5個で、合計21だな』

『だね~』

『そして、ジュエルシードは全部で21個の存在』

『ということは、これで全部揃った?』

 

 この海戦で全てのジュエルシードが揃うことはなかったはず。というか、物語の中で封印の描写があったのはホントに数個だけだったような気がする。

 もうおぼろげになってきたが、原作ではプレシアさん“足りないけどこれで無理矢理やっちゃうよ!”的なことを叫んでいたはずだし。

 むしろ、原作以上に揃ってる? 俺や霧谷が絡んでいる以上、原作通りに話が進むとは思っていなかったが、まさかな。

 

『まただ。何か嫌な予感がするなぁ』

『………止めてよね。前みたいになるのは』

『善処はする』

 

 さすがに俺だって血まみれで帰宅はもうしたくない。

 

(それに、確か―――管理局も近くで見てたはずだな)

 

 流れ的には、ジュエルシード発見→そしたらフェイトが先にいた→封印しようとしたら暴走→近くのもの全て暴走→なのは突貫します、だったはず。

 諏訪子の話では5個のジュエルシードからは暴走している気配がするとのこと。ただ、結界越しの所為か距離がある所為か、確実にしているとは分からない。

 

(が、結界を展開してるってことは暴走してるってことだよなー)

 

 今回はフェイトたちも味方についているのに何故暴走しているのかは分からないが、これも世界の修正力だろうか。

 

『結界だから中に入るのは………なんとかなるだろ』

『どうする? なのはっぽい気配が中に入ったよ』

『なのはのみか?』

『フェイト……、アリシア? 5つ………いや8つかな?』

『ずいぶんと多いな』

 

 なのは、フェイト、アリシアがいるとして………後は、ユーノとアルフか? 可能性としては、クロノと霧谷か? もしくはプレシアさんか。

 

『おかしい………突撃してるメンバーが強すぎてチート乙と言いたいぞ』

『過剰戦力だねぇ。帰る?』

『―――どうしようか。ぶっちゃけ、必要なさそうだ』

『でも、例の思念体が出てきたら?』

『なのはたちならなんとかなるだろ?』

『前回ならなかったじゃん』

『3度目の正直』

『2度あることは3度ある』

『……………』

『……………』

 

 向かっても意味がなさそうだが、予備戦力として待機もありかもしれない。なので、コインに運命を任せることにした。

 

『表なら行く。裏なら帰る。いざ!』

 

 さぁ、俺の行く道を示せ!

 としたところで、連絡が来た。スカさんだ。

 

『およ? スカさん。何か用?』

『今はクロかい? ということは、彼女たちの近くにいるのかな?』

 

 肯定。

 どうやら、中にいるプレシアさんから連絡が来たようで苦戦しているらしい。中にいるメンバーは、なのは、フェイト、アリシア。そして、ユーノ、アルフ、リニス、クロノの計7人だ。

 

『8人じゃなくて、7人?』

『あっれー? 1、2………4、6、8……んん?』

『外から分かるのかい?』

『『なんとなしに』』

 

 ただここで気になることが1つ。

 

『霧谷は?』

『それが………姿が見えないらしい。私も詳しくは聞いていないが、どうも管理局内にはいないみたいだ』

 

 ん~、いない? 奴にとっては見せ場なところではないか? 今は。

 

『それと例のジャケットだが、ようやく出来たよ。今チンクに渡してそちらに向かっているよ』

『ほほぅ。それは楽しみ』

 

 ついに出来たか祟りを抑えるジャケット。ジャケットというかマント的な形になったらしい。たまたま見てたアニメに影響されたとか何とか。スカさん、よくアニメ見るよね。

 

『そうそう、例の思念体が3体も現れたそうだよ』

『わーぉ』

 

 そいつは素敵だ。面白くなって………こねぇよ! 涙が出てきたよ!

 

 

 

 

 

 

「裕也」

「おす」

 

 指定された場所で待ってると、チンクが現れた。手には………腕輪?

 

「これがジャケット?」

「あぁ。使い方は通信機と同じで、起動パスを言えば展開される」

「なるほ」

 

 腕輪を受け取って起動、バリアジャケットの上にマントがくっついた感じになった。

 

「これで………いいのか?」

「じゃないのか?」

「まぁいいや。サンクス」

 

 礼を言って別れる。チンクはスカさんからの指示がなければ、このまま隠れながら俺や管理局の行動を観察するらしい。

 まぁ、うん。いいよね? 別に。

 

『さて、結界の突破か』

 

 結界は、中に在るモノを外に出さないようにするためのもの。故に、中に入ろうとすれば容易………ではないが、可能ではある。これとは逆にシールドやバリアーといったものは、外からのモノを中に入れないようにするためのものだ。内側からの攻撃には弱い。

 

『破壊なら力づくでやれるが………』

『きゅっとしてドカーンって感じにね』

『破壊しないで突破となるとなー』

 

 

 

 

 

 

 

 

―― なら、手伝ってあげるよ ――

 

 

 

 

 

 

 

 

『『ん?』』

 

 俺たちの後方から飛んできたナニカが結界にぶつかり、破壊した。

 ガラスの割れるような音とともに、小さいけれど穴が―――人が入り込めるような穴が作られた。

 

『今のは………』

『あいつのデバイスじゃない?』

 

 霧谷のデバイスだ。結界とぶつかった一瞬しか見えなかったが、確かにあいつのデバイスだった。しかし、何故俺の後ろから飛んできた?

 

『霧谷は中にいない………というか、行方不明だというのに』

『とりあえず、塞がる前に入った方がいいんじゃない?』

『それもそうだ』

 

 どういった理由かは知らないが、これはラッキーだ。俺たちもこの穴を利用して中に入れさせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 侵入した結界の中では例の思念体と思われる存在が3体と2匹の水で出来た龍が存在していた。

 

 

――大蝦蟇神

 

 

『管理局の監視下だ。変装を解かれないようにな!』

『誰に言ってるのさ!』

 

 

――祟られた大地

 

 

『途中で潰れたら容赦しないよ!』

『おぅ!』

 

 

――ミシャグジ様の祟り

 

 

 順番にスペカを使い、周囲に祟りを充満させる。それらを一気に吸収し、強制ブースト―――祟り神化を行う。さぁ、これで準備は万端だ。

 

『『神遊びを始めようか!』』

 

 出現した思念体は紅と白の改造巫女服を纏う少女―――“博麗霊夢”と白と黒のコントラストの昔の魔法使いのような三角帽子を被った魔女―――“霧雨魔理沙”の主人公組みだ。その間に挟まれている存在がいまいち理解できないが、3体目だ。

 

『なんだ、あれ?』

『毛玉、かな?』

 

 もさもさと気持ちよさそうな大人並の大きさを持つ毛玉。( ゚д゚ )の顔がちょうどこちらをよく見ている。

 侵入早々、なんか目があった。相変わらずのハイライトの無い瞳をしている。だが、毛玉だけはよく分からない。あのつぶらな瞳にハイライトはあるのかないのか。

 

『なんか来たよ!』

『3人(?)も来たよ!?』

 

 とか見てたら、思念体が揃ってこっちに標的を定めた。何故だ!?

 毛玉に乗った霊夢と並走して突撃してくる魔理沙。両者とも速いな!

 

「クロさん!?」

 

 誰かの声が聞こえたが、今はそれどころではない。とりあえず、逃げよう。迎撃できる程強くはないし、さすがに3対1はきつい。追いかけてくるので逃げてるが、ふむ。これは………。

 

『裕也! 逃げ道が!』

『あぁ、誘い込まれてるな』

 

 なのはたちから離れるように奥へ奥へと、そして龍たちはなのはたちの邪魔をするように前へ前へとけしかけていく。

 やばいな、分断される。

 

≪いかせません!≫

 

 そこに速さに定評のあるテスタロッサ姉妹が駆けつけてきた。その後ろにはなのはも見える。

 だが、

 

 

――結界「博麗大結界」

 

 

『なに!?』

 

 魔理沙が急遽反転し、フェイトとアリシアの前に立ち塞がり―――

 

≪フェイト!≫

≪はい!≫

 

 アリシアが逆に魔理沙の動きを牽制し、フェイトを奥へと進ませた。ナイス姉妹の連携。

 そして閉まる巨大な結界。結界の中には俺とフェイトと霊夢と毛玉の3人と1体。結界の前にはアリシアと魔理沙。

 

『念話が使えない! 遮断された!』

『なんとまぁ』

 

≪クロさん………≫

≪あぁ、外と念話が繋がらないみたいだな≫

 

 どうやら外と結界内での念話は遮断されたが、内部同士ならば問題ないようだ。結界の前に遅れて辿りついたなのはも同じように驚いているのが見える。と思っていたが甘かった。

 諏訪子から強い魔力を感じると聞いて見れば、なのはの前に何かが集束されているではないか。

 

『あらやだ。あれを撃つつもりかしら?』

『でしょうねー』

 

 もしあれで結界が壊れたら中の俺たちはどうなるか、おわかりいただけるだろうか?

 せめて直線上からは逃げなきゃ………あれ? 足が動かない。脳裏で走馬灯が流れるにはちょっと早くないかな?

 そしてフェイト。さりげなく俺の背後に回るとは………。こやつ! できる!

 

 

 

――ドォンッ!

 

 

 

『躊躇なく撃ったぁ!』

『また強力なの撃ったねぇ』

『それでもビクともしてないこの結界パネェ』

 

 なのはの砲撃でもビクともしない。なんと強力な結界なのだろうか。そのおかげで俺たちが無事なのでありがたいことではあるが、複雑な心境である。

 

≪なのはの砲撃でも無理なんて………≫

≪外からの援護は期待しない方がいいな≫

 

『全員相手するよりかはマシだけどねぇ』

 

 状況的には2対2だ。しかし、攻撃力的にはどうだろうか。フェイトもそこそこの強さを持っていたはずだが、俺の中のイメージでは速さ重視の手数で勝負するキャラになっていて、一撃の重さは小さいイメージだ。

 そして問題は毛玉だ。原作では雑魚敵として存在していたが、目の前の存在はどうなんだろうか。( ゚д゚ )の顔からは想像ができん。

 

 

―――(プク)ーッ

 

 

 毛玉を見ていたら、突然膨れ上がった。元々大きかった体が更に大きくなり、

 

 

―――破氾(パアン)ッ!

 

 

「破裂! 分裂!?」

「きゃ!」

 

 巨体が風船が割れるように破裂し、無数の小さい毛玉が生まれた。直線行動だけのようで、避けてしまえば終わりだが、法則性もなく次から次へと飛んでくるのは厄介だ。

 

「フェイト!」

「だ、大丈夫です!」

 

 厄介だが避けるのは早々難しくない。ある程度の速さは求められるものの、フェイトも俺もその点に関しては問題なかった。

 

『とはいえ、』

『敵は一人じゃないよ』

『ま、当然』

『いるよねー』

 

 そこに当然のように霊夢が割り込んできた。狙いは俺。肘から足にお札と接近戦を挑まれたが、なんとか受け流すことに成功。それで諦める訳ではなく、続けて流れるように―――それでいて的確にこちらの攻撃を受け流して、攻撃してくる。

 こちらは祟りを纏っているので、少しでも触れれば相手を呪うことが出来るのだが、

 

『効いてないな』

『効いてないね』

 

 相手が巫女だからか、祟りが触れる先から消滅していく。後から後から沸いてくるので、一時の消滅ならば問題はない。だが、祟りとて無限ではない。このままでは俺の祟り神化が解けて一気にピチューンされてしまう。

 

「はぁっ!」

 

 俺の後ろからフェイトが飛び掛る。弾が尽きたのか、毛玉の破裂攻撃も今は成りを潜めていた。

 

「フォトンランサー!」

 

 今度はこちらの番だとばかりに、フェイトから霊夢に向かって金色の槍が無数飛ぶ。誘導性はないらしく、直線飛行のみだが、

 

「カバーするぞ!」

 

 

――合掌「だいだらぼっちの参拝」

 

 

 本来ならば巨大な手が地面から湧き出て敵を潰すのだが、ここは海の上なうえに空中だ。既に改良済みである。

 空気の壁が左右から迫る中、直線状のフェイトの攻撃。これにどう対処するかと思えば、

 

『札?』

 

 霊夢は冷静に札を取ると、それを槍に向かって放った。札は霊夢の手から離れると巨大化し、槍を見事防ぎきった。

 そして、

 

―――怒音(どぉん)っ!

 

 空気の壁と化した2つの手が見事に合わさった。が、霊夢は潰されることなく健在であった。

 

『防いだ?』

『後ろ見て』

 

 霊夢の後ろで毛玉が潰れされた後みたいに縦長に体を伸ばし、一生懸命元に戻していた。

 

『毛玉で防いだのか? というか毛玉に防がれたのか!?』

『そうなるねぇ』

 

 相手に害がないならば見てて和みたい光景だが、あの毛玉はただの雑魚敵ではない。霊夢並みに強靭かつ厄介な敵と考えていいだろう。

 

≪ならば! フェイト少し離れろ!≫

 

 

――ミシャグジ様の祟り

 

 

 霊夢に関しては漏れる祟りでは無意味。なので、直接祟りをぶつけて試してみることに。ついでに毛玉にも効くかどうかを試す。

 

『しかし、これは避けられたー』

『素早いな』

 

 原作の霊夢は恐ろしく勘が鋭かったと聞くが、もしかしてもしかするのか? そして毛玉が更に上をいくのが納得できない。( ゚д゚ )が尚更イラつかせる。毛玉のくせに生意気な!

 

≪赤い人の動きが速い上に、まるでこっちの動きを読んだかのように動きますね≫

≪個人的にはあいつよりも、毛玉の存在が厄介なんだが≫

≪素早い上に、攻撃もあまり通りそうにないですね………≫

 

 

――霊符「夢想封印 円」

 

 

≪フェイト! 一旦退くぞ! 体勢を立て直す!≫

≪わ、分かりました!≫

 

 追いかけてきた七色の球を、鉄の輪で弾き飛ばす。接触したら爆発というどこかの霧谷みたいな効果で助かった。

 まぁ撤退といっても、限られた結界内。とりあえず、出来る限り離れ、状況を変更しなければ。このままでは俺たちが倒される。

 

『裕也! まずは後方支援から潰そう!』

『そうしたいがな! はてさて、どっちが後方だ?』

 

 後方にいたはずの毛玉は今度は猛スピードで前進を開始。霊夢は逆に後ろへと下がった。今度の後方支援は霊夢である。

 

≪フェイト。今から来る奴の相手を1人で出来るか?≫

≪大丈夫です。倒せるかは分かりませんが、足止め程度なら問題はありません≫

≪分かった。すぐに、赤い方を倒してくる≫

 

『速攻だ! 速攻で奴を倒すぞ!』

『よっしゃー!』

 

 霊夢か毛玉か、どちらの相手をフェイトに任せるかを考えた。厄介度で言えば霊夢が上だろうと考え、こっちを俺が担当。原作通りの力があるかは分からないが、なんとかするしかあるまい。

 

「おらおらおらおらおらっ! 攻撃するのは洩矢の鉄の輪だ!」

 

 スピードこそ速いものの馬鹿正直に真っ直ぐにしか飛ばない毛玉をやり過ごす。俺を追いかける気配がしたが、そこはフェイトが丁寧にブロックしたようだ。そのまま弾幕を捌きながら、霊夢のところへと向かう。

 が、接触する直前になって霊夢の姿が掻き消えた。催眠術とか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ(ry

 

「ぬっ!?」

 

 だが俺の勘がすぐ近くの場所に違和感があると告げる。何かは分からないが、悪寒を感じたので即座に退避。

 

「ふおっ!?」

 

 違和感を感じた場所から霊夢が飛び出してきた。即座に退避したのが功を成したのか、避けることは問題なかった。

 

(亜空穴か………厄介なものを)

 

 そう。霊夢には亜空穴というテレポートする力があったのだ。分かりやすく言うならば、スキマ移動だろう。相変わらずのチート能力である。今はそれが恨めしい。

 

『裕也、さっきのよく避けたね』

『もっと褒めてもいいのよ』

 

 とはいえ、マグレに近い回避だ。そう何度もやられたらいつかは必ず喰らってしまう。亜空穴を使われそうになったら邪魔をしたいところだが、

 

(予備動作なんてあったか?)

 

 まるで右から左に移動するかの如く、あっという間に亜空穴に消えた霊夢を思い出す。そこに予備動作と呼べるモノがあっただろうか。

 

『諏訪子。さっきの消えるのをやりそうになったら教えてくれ。邪魔をしてやらせないようにする』

『了解………と言いたいけど、私もあまり知覚できなかったよ』

 

 だが、ここは神としての諏訪子の勘に頼るしかない。俺の勘よりかは役に立つだろう。

 

(さて、問題は亜空穴だけではないが………)

 

 お互いに攻撃を全て回避と防御しているのでダメージは0。だが、精神の余裕度で言えばこちらが圧倒的に不利。現状の千日手から脱する前に、なんとか攻略法を考えないといけない。

 ちらりとフェイトを見れば、足止めは成功しているが向こうも決定打には欠けているようだ。

 

(ここらで何か手を打たないとマズいな)

 

 フェイトも毛玉相手に長期戦は無理だろう。本来ならば雑魚敵なはずなのにムカツクな。それに外にいる魔理沙のことも気になる。

 

(何にしても、まずは俺が倒さないとダメか)

 

 

――生贄「神へ繋げる翡剣」

 

 

『おや?』

 

 スペカを使ったはいいものの、何も起こらなかった。出現するはずの剣はなく、手は虚しく空気を掴むだけだった。

 

『どったの?』

『失敗? 前に使った剣が出で来ん。あの時はどうやったんだ?』

『えぇー』

 

 もう一度使ってみるが、やはり何も起こらない。試しに鉄輪を、とこちらは問題なく出来た。剣を出現させるには何か条件があるのだろうか。

 とりあえず初めからやってみよう。まずは祟りを集中―――

 

『祟りを集中ってどうやるんだ!?』

『えぇー!?』

 

 

――繋縛陣

 

 

『なんかきたよ!』

 

 座布団のような札が2枚飛んできた。あんな大きさのものでも札は札だろう。巫女が使う札と言えば、防御。でも、ここで防御は考えにくい。となれば―――

 

「束縛・封印系か!」

 

 即逃げる。が、追跡機能が備わっているようで、しつこく追いかけてくる。試しにと出現させた鉄輪を放り投げて1枚は弾いた。

 

≪クロさん! そっちに攻撃が!≫

≪なにぃ!?≫

 

 フェイトの念話に遅れて、追い討ちをかけるように毛玉から再び無数の毛玉が展開された。最初の時よりも圧倒的に数は少ないが、弾幕と言えるだけのことはある。

 目の前のフェイトよりも、あくまでも標的は俺って訳か。何故執拗に俺を狙うのか理由は不明だが、うっとおしいな!

 

(これは、抜くか!? 防ぐか!?)

 

 避けられそうにない一撃がきたので、反射的に手が出てしまった。ただの小さい毛玉と侮った気はなかったが、

 

―――(ばち)っ!

 

「づっ!?」

 

 こちらの防いだ手を弾いて、小さい毛玉は真っ直ぐ飛んでいった。見た目に反して、かなりの威力がある。つくづく、こいつは原作通りではない奴だ。

 

『防ぐのは得策ではないみたいだね』

『だな。避けて進む』

 

 最初よりも密度は薄い。最小限の動きで、避けて進むしかないようだ。背後からは座布団のような札が迫っていることだし。

 

『グレイズッ! グレイズッ!』

 

 たまに掠るのも必要最小限に止めて、小毛玉の波の中を泳ぐ。それも慣れて被弾しなくなった頃、

 

「うぉあっ!?」

 

 小毛玉の多さが一段階増えた。

 

≪フェイト! そっちはどうなってる!?≫

≪すいません! この毛玉、動きが素早い上に無数の小さい毛玉を放出して止まらないんです!≫

 

 フェイトの方を視界の隅に収めれば、こちらに向けて毛玉を放出するデカい毛玉が見えた。それもノーコンマで。口からマシンガンのように放出しつつ、フェイト対策か数体がフェイトの邪魔をしていた。

 それをフェイトが懸命に追って妨害しているが、毛玉はその上を行った。俺と毛玉の直線状に身を置いてシールドで防ごうと考えても、すぐに毛玉が移動してしまう。なので、防ぐことも出来ない。

 

≪クロさん! すいません!≫

≪大丈夫だ。とりあえず、今の状態を続けてくれ。それだけでも助かる!≫

≪分かりました!≫

 

 嬉しいやら悲しいやら。話している間に霊夢の姿が消えたことに諏訪子が気付き―――すかさず霊夢が亜空穴から襲撃してくる。

 

 

――土着神「洩矢神」

 

 

「だが断る!」

 

 全身から赤いオーラを出して襲撃してきた霊夢を吹き飛ばす。どこに消えようが、最終的には姿を現して攻撃するのだ。ならば、俺の周囲全てに向けて攻撃すれば当たるだろう。ついでに小さい毛玉も吹き飛んだのは嬉しい誤算だ。なるほど、スペカの攻撃ならば、小さい毛玉は飛ばせるのか。

 これで一旦、仕切り直しだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Story

 

 

「ディバイン……バスターーー!」

 

 なのはが砲撃を撃つ。

 

 

――恋符「マスタースパーク」

 

 

 それと同時に黒い魔女―――魔理沙がスペカを掲げ、砲撃を撃ち返す。

 

「なのは並の砲撃使い………洒落にならないわね」

「……………」

 

 なのはの視線の先は例の結界だ。結界の中ではクロとフェイトが苦戦しているのが見える。

 とはいえ、強力な砲撃でもあの結界を壊すことはできなかった。今は後方待機のメンバーがリンディを筆頭に解析と破壊に勤しんでいるはずだ。ただ、報告がないところをみると、あまり好ましい状況ではないようである。

 

「なのは! 気になるのは分かるけど、今はこっちに集中しなさい!」

「う、うん!」

 

 アリシアに注意され、知らず知らずのうちに結界に向いていた視線をなのはは前に向けた。目の前には箒に跨った黒い魔女が上空に佇んでいる。

 ちらりと視線の横ではクロノ、リニス、アルフ、ユーノの4人が2匹の水龍を相手に戦ってるのが見える。

 また視線が移動していたのを首を振って取り消し、再び前を見る。

 

「あの子、速さはアリシアちゃんとほぼ同しだよね」

「えぇ。威力に関してはなのはと同等よ」

 

 なのはたちの良いところを集めたかのような存在である。それに技も豊富だ。星を象った弾を放出したり、箒で近接に挑んでみたりと。ただ、なのはみたいに遠近を得意としている訳ではなく、近接ではこちらに分があった。遠距離では同等だろう。もしかしたら瞬間的な威力では向こうが上ではなかろうか。

 

 

――魔符「スターダストレヴァリエ」

 

 

「うわっ!?」

 

 素早く魔理沙が移動していき、8つの魔方陣が空中に展開された。それらは独自に動き出し、背後からはカラフルな星型の弾が生まれた。

 

「星!?」

「見た目にだまされちゃダメよ!」

 

 2人を囲むように生まれるカラフルな星は曲線を描くように動き、避けているうちに魔理沙を見失ってしまった。あくまでも星を出しているのは魔法陣。魔理沙ではない。

 星を避けながら気配を探し―――

 

「上!」

 

 上空から見下ろすようにこちらを見る魔理沙。手には先ほどの砲撃を放ったナニカ―――八卦炉が握られている。

 そして―――

 

「レイジングハート! 例のアレをやってみよ!」

 

 何かを感じ取ったなのはがその場で停止して、魔力集束を始めた。

 

「なのは!」

 

 アリシアの声も弾き、集中する。時間は限り少ない。今は威力………も必要だが、速度も必要だ。

 

「こっちは任せて、そっちに集中しなさい」

 

 アリシアはなのはに当たりそうな弾を積極的に消していき、当たらないようにする。幸い、星型の弾はこちらの魔力弾で相殺できるようだ。魔法陣と同じようにぐるりぐるりと回りながら、近づく星たちを消していく。

 

「―――――はぁ、ふぅ」

 

 自分を落ち着けて、深呼吸。

 

 

―――ドクンッ

 

 

 なのはの目の前に、桜色の光球が生まれる。それは周囲から魔力を集めて塊り―――

 

「もっと………」

 

―――ドクンッ

 

「もっと………」

 

―――ドクンッ

 

 アリシアが放出した魔力も、相殺して消えた星の魔力も全てを吸収し、飲み込む。足りないとばかりに、魔法陣から生まれる星型の弾も飲み込んで行った。

やがて、目の前に巨大な光球が生まれる。

 

「うわぁ」

「いくよ! スターライト………」

 

 

――魔砲

 

 

「ブレイカーーーーー!!」

 

 

――魔砲「ファイナルスパーク」

 

 

 先ほどよりも極大な砲撃が2つ。魔理沙となのはから生まれ、激突し、拮抗する。やや、なのはの方が押され気味だが―――

 

「ま、だ! まだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 不利を弾き返すかのように更に力を込めて放出する。やがて、魔力が切れてきたのか魔理沙の砲撃の威力が減衰してきた。

 

「なのは!」

「い、っけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 魔理沙の砲撃さえ、本人ごと飲み込んでなのはの砲撃が勝った。余談だが、この時にこちらの張った結界までをもぶち壊していった。これに気付いたリンディ・プレシアの2人が慌てて結界を再度張ったのだった。

 

「アリシアちゃん!」

 

 この隙をついてアリシアが魔理沙に接近する。

 

「なのはは援護を!」

「うん!」

 

 鈍重という訳ではないが、速さではアリシアに負けるなのははその場から後方支援を行うことにした。幾つもの光球を生み出し、

 

「ディバインシューター!」

 

 援護射撃を放った。

 SLBの爆発の影響で煙が巻き上がっているため、魔理沙の姿は見えない。あの場所から移動した形跡は無いから近くにはいるはずである。

 

「スターライトブレイカー、上手くいったね!」

『However, there is an improving point plentifully still more(しかし、まだまだ改善点は多々あります)』

「うん! もっとがんばらないと!」

 

 煙の中から逃げる魔理沙を発見し、前方を塞ぐようにディバインシューターを操作して、追うように接近するアリシアを助ける。それが、レイジングハートの仕事。

 なのはは同時に再びSLBを撃つために、魔力集束を始めていた。さすがに構想だけでまだ練習さえもしていない技術をいきなり実践で使ったためか、反動は少々大きい。だが、体を鍛えているおかげか動けなくなるようなものではなかった。

 

「もう一発くらいなら、いけるかな?」

『Although considering a future thing the use can seldom carry out a recommendation(今後のことを考えると、あまり使用はオススメできませんが)』

「ごめんね。お願い、レイジングハート」

『It is unavoidable(仕方がないですね)』

 

Side Out

 

 

 




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