どんな勝負にも
真正面からぶつかりにいく
それが私の
覗き犯や盗撮犯の連中を警察に引き渡す。どうやら地元の人たちだったようだ。久しく訪れた宿の客が美人揃いだったために、ちょっと欲望に走ってしまったという。
今は反省している………というか怯えていた。何があったんだろうねー。ぼくわからなーい。
ちなみに覗き犯と盗撮犯グループは関係なかった。たまたま居合わせただけだとか。
「Good bye」
風呂から上がり外人ズと別れる。彼らは1泊するのではなく、日帰りで来たのでもう帰るらしい。名残惜しいモノはあるが、こればかりは仕方が無い。
「グッバーイ」
士郎さんたちはそのまま部屋に。女子勢はまだ風呂から出てきてないようで、誰もいなかった。フェレットは士郎さんに捕まって一緒に連れてかれた。
さて、1人になってしまったな。宿でも探索するか?
(確か、アルフがいたと思うんだが………この世界にはいないのか?)
1人でぶらぶらと探索している。もしかしたらアルフがいるかなぁと思ってたんだが、それらしい姿は見受けられない。
本来ならアルフのポジションには何故か生存しているアリシアがいたことだし、もしかしたらこの世界に来ていない………か、存在していないか。
(存在はしているが、来ていないというのが一番確立的には高いかもな)
隅々までではないが、さくっと宿内を見て回った。残念ながら、その中にアルフらしい人影は見つからなかった。
ぬぅ、わしゃわしゃと撫で倒したかったのに。もちろん犬の姿のだよ? あ、狼か。
「残念なり」
「あ、裕也くん。みっけ」
ちょうどなのはたちが風呂から出てきたようで、ばったりと出くわした。
「私たち、これから卓球するんだけど、一緒にやらない?」
「ほー」
「ま、旅行で温泉ときたら、卓球よね」
「だねー」
ずいぶんと庶民じみたお嬢様たちだ。が、それには頷ける。
「いいぜ」
その足で卓球がある娯楽室へと向かった。
◆
そしてやってきた卓球台。台はあってもラケットが1セット分しかなかったので、順番で遊ぶことにした。
まずはジャンケンで決めて、初戦はなのはとすずかの勝負だ。
―――シュバッ
―――ズカンッ
「すげーな。卓球って」
「すずかもすごいけど、それに付いていけるなのはもすごいわね」
予想に反して物凄いラリーが続いている。
カンコンとかそういった軽い音ではない。シュバッとかラケットが風切る音とか、スマッシュとか打つとズガンッとか音してる。
何よりもすごいのはラケットとかボールが壊れないってところだ。2人がそれすら考えて叩いてるのか、それとも単純にラケットたちが頑丈なのか。俺の予想としては前者だな。
「ぬわっ!?」
すずかが取れなかった球が俺の方に飛んできた。豪速球である。
「ごめーん。大丈夫?」
「あ、あぁ………」
壁に半分ほどめりこんで、ポロッと落ちた。
なるほど、後者だったか。壁よりも頑丈ならなのはたちのラリーにも耐えられるわな。
「………もうちょっと、離れてようか」
「それがいいみたいね」
俺たち見物人は距離をもう少し取って、2人の戦いを見守ることにした。
◆
「やるね、なのはちゃん。ここまで本気出したのに、しがみつくのがやっとだよ」
「えへへ、すずかちゃんもね。少しでも気を抜いたら負けちゃいそうだよ」
今は僅差でなのはが勝っている。しかし、なのは自身が言うようにそれは気を抜いた瞬間に逆転されるような薄いものだ。
「いくよ!」
ボールを軽く上に投げる。さすがにサーブ時まで豪速球ではない。ボールがラケットに当たった瞬間―――それは始まる。
重力とか慣性とかどうなってるのかな? と思うような軌道を描いてボールが飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。
「あっ!」
なのはがボールを取り零した。これで同点だ。
「―――あの時だけ、逆回転にさせたんだね?」
「ふふ、さすがだね。なのはちゃん」
どこかで見たような既視感を覚えたが………そうだ。熱血マンガだ
「―――俺たち、卓球で遊んでるんだよな?」
「えぇ、そうよ………そのはずよ」
そして再び始まる豪速球のラリー。風を切る音が充満し、時々破砕音に似た音が響く。しばらくは途切れなさそうだ。
「卓球ってすごいねぇ」
そんな諏訪子の言葉に頷くが、これは特別だと思う。これがデフォルトではない、はず。
そんな名勝負だったが、決着がようやくついた。接戦に次ぐ接戦だったが、集中力が切れたのか一瞬の隙をついて、すずかが勝利を収めた。
「私の勝ち、だね」
「………うん、私の負け、だね」
握手を交わす2人。どうやら、友情が深まったらしい。すごいな卓球。常人では真似できないよ卓球。
「はい、次は裕也くんたちの番だよ」
「はい、アリサちゃん」
一応、順番では次は俺とアリサの勝負の番だけど………。
「「……………」」
お互い見つめる。恐らく、心は同じだ。
「「パスで」」
「「え?」」
もう見てるだけで疲れたよ。だから、部屋に戻って休もうぜ。
名勝負と言うか迷勝負と言うべきか―――そんな卓球勝負を見て疲れた俺たちは、さっさと自分たちの部屋に戻った。既に部屋には布団が敷かれていたが………ちょっと、早くね?
まだ夕飯も食ってないよ。
「私はここよ」
「じゃあ、私はアリサちゃんの隣」
さっと動いてアリサが自分の寝る場所を決める。布団は2つと3つ並んだ2列にあり、アリサは2つ並んだ場所の右。それに続いてすずかが左を取った。
「じゃあ、私端っこー」
「こっち側が私なのー」
諏訪子となのはが続いて3つ並んだ列の両端を取る。
必然的に俺が真ん中になり―――
「端っこがいいんでありんす」
「却下。遅いあんたが悪いのよ」
「素直な話、俺寝相悪いよ?」
「いっつもベッドから落ちてるよねー裕也」
「ベッドから落ちるって………」
自分のベッドで寝てたはずなのに、朝気づいたら諏訪子をホールドしていたとかよくある話です。
などと色々言ったのだが、許可が下りることはなかった。まぁ困るのは俺ではないからいいや。謝るのは俺だが。
「さて、伝説をやらなければな」
布団に入り、おもむろに荷物からPFPを取り出す。もちろん、七龍伝説だ。
「あ、もしかして七龍伝説?」
「おぅよ。諏訪子とプレイ中」
「だよ~」
「私たちも混ざって良い?」
「なぬ?」
どうやらなのはたちも七龍伝説もとい、PFPを持って来ていた。なのはは分かるが、アリサやすずかまで持っているとは………ちょっと驚いた。
というのも、ゲーマーなのはが2人に薦めたらしい。興味が沸いたのかソフトと同時に本体もまとめて買うとは………やっぱこいつらは金持ちだねぇ。
「今何話?」
「こっちは3話ー裕也くんたちは?」
「マジで? 早くね? 俺たちまだ2話のラスト」
「残念だったね! 裕也! 私は既に4話まで進めたよ!」
「ひでぇ!? てかはえぇ!!」
基本的には1人プレイだが、仲間を呼んで協力プレイもできる。その場合は、パーティゲームみたいにストーリーとは関係なく遊ぶか、自分のストーリーに相手を召喚して手伝ってもらうかのどちらかを選択できる。
今回は、一番ストーリーが進んでない俺を手伝ってもらうことにした。
――――――――――――――――――――――――――――
【YOUちゃん】しょーかーん!
俺はサムライという前衛型。攻守共にバランスが良く、対象は自分のみだが回復などのスキルもある。一人プレイ時には強いが、仲間との協力だと少々考えさせる。
ちなみに名前は諏訪子につけられ、グラフィックも俺に近いものが選択されている。
【スズカ】やっほー
すずかはハッカーで後方型。完全な支援タイプだ。状態異常、回復、蘇生など色々できる反面、攻撃力が心許ない。
【アリサ】YOUちゃんって、あんた……
【YOUちゃん】うっせ
アリサはデストロイヤーで俺と同じ前衛型。アリサらしく、攻撃力が高いキャラを選んだようだ。こと、攻撃力の一点に関してはサムライよりもデストロイヤーの方が高い。成長すれば尚更その差が分かる。
【ナノハ】YOUちゃん、可愛いの
なのははサイキッカーで遠距離型。ハッカーと似て色々と出来るが、こちらはどちらかというと攻撃寄りになっている。ハッカーには負けるものの、支援もできる。
この3人はよくグラフィックをいじってある。小さい自分といったところか。
【スワちゃん】ハロハロ~
諏訪子はトリックスターで後方型。攻撃と支援と両立が難しいキャラだが、支援をメインに育て、余力があったら火力もあげていく方面らしい。
【ナノハ】スワちゃん、レベルたかーい
【スワちゃん】私、がんばった!
【アリサ】で、どこにいけばいいの?
【YOUちゃん】とりま、ボス倒して次に進むべ
現在地はボス戦前のセーブポイント。この扉の先に進めば、後はボスとバトルが待っている。
【YOUちゃん】準備はいいかー?
【アリサ】問題ないわよ!
【スワちゃん】いざとなったら私が倒すし
1人プレイと違って、協力プレイだと協力している人数によって敵のレベルもあがってくる。最大で5人参加が出来、今が最高難易度だ。諏訪子1人では、たぶん無理じゃないかなぁ。
◆
案の定、苦戦を強いられている。
【YOUちゃん】やっべ、ボスつえー!
【スワちゃん】YOUちゃんが弱いだけだからwww
【アリサ】ちょっと、裕也! あんたも攻撃に参加しなさいよ!
【YOUちゃん】今の私はYOUちゃんであって、裕也ではないのだー
【アリサ】だったらYOUちゃんって学校でも呼ぶわよ!
【YOUちゃん】マジすいませんでした。でも、私のHPも見てくだしあ
5人中、俺だけHPバーが赤い。まぁつまり、ギリギリ生き残ってるというところだ。
【スズカ】YOUちゃん、回復するから下がって
【スワちゃん】一人だけHP赤いwwwプゲラwww
一番レベルが低い俺はすぐにHPがピンチになる。支援で防御力を最高までブーストしてこれである。ブーストがなかったら即死だ。
【スワちゃん】ぬぅ、私の攻撃じゃ全然ダメージが通らない
【ナノハ】スワちゃん、支援に力入れすぎだよ
諏訪子は支援に力いれつつ、アイテムの物量でボスを倒してきたようで、アイテムがなくなれば弱体化してしまうのは仕方が無い。
ただ、弱体化した諏訪子にもブースト最高の俺は負けるレベルで弱い。運がよければ、ギリギリ勝てるかもしれないが………レベル差が違いすぎる。
【スズカ】はい、YOUちゃん。回復したよ
【YOUちゃん】サンクス、スズカ。今いくぞ、アリサ
【アリサ】遅いわよ!
【YOUちゃん】私は帰ってきたぞー!
【スワちゃん】でもすぐに後ろに戻るんですね。分かりますw
【スズカ】あ、回復の用意する?
【YOUちゃん】スワちゃんもヒドいが、スズカもひでぇ!
でもたぶんお世話になると思います。その時はよろしくお願いします。
【ナノハ】私も攻撃に加わるね!
【YOUちゃん】おk。じゃあ、俺が真ん中に入るから、アリサとナノハは左右から叩いてくれ
【ナノ】分かったの
【アリサ】スワちゃん、YOUちゃんのお守り任せるわよ
【スワちゃん】任された。生かさず殺さずを保つね
保つなよ。なんだその生き地獄は。
【YOUちゃん】俺をいじめて楽しいかー!?
【アリサ】楽しい
【スワちゃん】楽しい
【YOUちゃん】ヌッコロス! いつか!
すずかと諏訪子の支援を受けながら、なのはとアリサと協力してなんとかボス龍を倒すことができた。2話のボスにしてはかなり強すぎね? これも協力プレイの弊害か。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「みなさん、お夕飯の時間ですよ」
咲夜さんが襖を開けてやってきた。咲夜さんは家ではいつもメイド服姿だからか、浴衣姿はとても珍しく見える。
「「「「はーい」」」」
「あーい」
ちょうどボスを倒してタイミングが良かったので、そこでセーブして終了。家に帰ったらこっそり進めてようかな、なのはに負けてるのはちょっぴり悔しい。
――深夜。
ジュエルシードが動き出したようだ。
「――――」
隣でなのはが起きる気配がする。と同時に、いつの間にか諏訪子の布団にもぐりこんでいたようで、すぐ近くに諏訪子の顔があった。
(うにゅ、ゆうや。けはい)
(やはりか……起きてる?)
なのはやフェイトはジュエルシードの気配を感じられるみたいだが、俺には分からない。なので、こうして諏訪子が教えてくれないと知ることができない。
「――――いいなぁ」
ボソッと呟いてからなのはは静かに部屋を後にした。
(んじゃ、俺らも行きますかね)
(あふ、今回も戦になるかなー)
(私的には無い方がいいがな)
少し間を置いてから俺たちを部屋を後にした。廊下は静まり、皆寝ているようである。宿の人たちは数人起きて仕事をしてるみたいだが、問題ない。
『ジュエルシードの気配は?』
『外の森だね。たぶん、フェイトたちかな? が、いるよ』
『なるほど』
周囲を確認、誰もいない。
『へ~んしん!』
裕也からクロへと変わり、外へと出る。
◆
「えっと………」
「その………」
俺が現場に着いた時には、既になのはとフェイト、そしてアリシアが3人揃っていた。だが、戦闘になった様子はない。かといって仲良く話し込んでいるという訳でもない。
『なぁ、諏訪子。アレ、何してると思う?』
『お互いにどう切り出すか迷って呆然と立ってるように見える』
『なるほど』
いつまでも立っている訳にもいかないだろう。アリシアなら当たって砕けろ精神持ちっぽいので、こういった場合は率先していくと思ったが………当の本人は何かを警戒しているように周囲に注意を注いでいる。
『仕方が無い』
「―――何をしているんだ?」
「「あ………」」
「クロさん? どうしてここに?」
「魔力反応があったのでな。もしやと思って来てみたのだが………外れだったようだな」
フェイトが持つジュエルシードを見て、おもむろに肩を落とす。もちろん演技だ。最近、こういった技術が磨かれてきてるような気がする。
将来はハリウッドでも行くか?
「あ、その………すいません」
「君が謝ることではない。それで、君たちは何をしている? 子供は寝る時間だぞ」
「「あぅ」」
― 閑話休題 ―
話を聞けば、お互いにどう話しかけていいか迷っていたらしい。初めて会った時は成り行きとはいえ、敵同士だったためにかける言葉が見つからなかったそうだ。
アリシアはアリシアで霧谷を警戒して、それどころではなかった。ユーノはユーノで警戒しているアリシアを見て、そっちを警戒して動けなかったと。
「なんだ、それは…………」
「「うぅ………」」
「あぁ、じゃあ来てないのね? あのクズは」
「うん。来てないよ。誘ってないもん。誘いたくないし」
霧谷がいないというのが分かったようで、アリシアも警戒を解いた。よほど嫌いなご様子で。気持ちは分かるけど、もう少しオブラートに包んでね。女の子なんだから。
「あなたとは良い関係でいられそうね」
「同感なの」
がしっと握手するなのはとアリシア。仲いいな。黒いオーラさえ見えなければ、微笑ましいものに見えたのに。
これが後に言われる、魔王と阿修羅の邂逅である………いやいやまさかごじょうだんです。
「えっと、フェイトちゃん………で、いいのかな?」
「うん………君は?」
「私はなのは。高町なのは。よろしくね!」
「うん」
「じゃあ、私たちはこれで友達だね♪」
「とも………だち?」
「そぅ。名前を呼んで。それだけでいいの。初めはそれだけで」
「なの、は……?」
「うん!」
「なのは………」
「フェイトちゃん!」
フェイトの手を握りながら、なのはが笑顔で答える。なんだか分からないけど、暖かい気持ちだ。どっかで見たことあるような気がするけど、はて?
あ、やべ。涙腺が。
「なのは、ね。私はアリシア。フェイトの姉よ。よろしくね」
「アリシア……ちゃん、でいいのかな? 同い年?」
「同い年よ。私たち、双子だもの」
ほぅ、双子だったのか。ということは、フェイトはクローンとかではなく、プレシアの実子ってことか? やはり原作とは違うようだな。
アリシアの次はユーノがフェイトたちに自己紹介していた。その際に、ジュエルシードのことも話したようで、フェイトたちの顔色が変わった。
「ジュエルシード………君、えっと、ユーノが?」
「うん。僕が発掘したものなんだ………」
その後、ちょっと待って欲しいとアリシアがどこかに消えて、残ったフェイトも一転して落ち込んだように黙ってしまった。
なのはもユーノも理由が分からず、フェイトも姉さんが来るまで待って欲しいの一言でだんまり。
「………………」
「………………」
そして何故かこっちを見つめる2つの目。
なにさ? 俺に何を求めている? この空気を払拭しろってのはかなり無理があるぞ。
「―――なんだ?」
「えっと、名前を教えてほしいなぁって」
「―――あぁ、そうか。クロだ」
「よろしく、クロさん。それで、フェイトちゃんのことは………」
「分からん。まぁ待って欲しいと言ってたのだから、待ってればいいだろう?」
『戦はなさそうだね~』
『眠いのか?』
『うん。なんか、気が抜けちゃって………あふぅ』
『もう少しだけ耐えてくれ』
この状態で眠られても困る。
「お待たせ」
程なくしてアリシアが戻ってきた。
「ユーノだったっけ? ちょっと話があるんだけど……」
「僕に?」
「えぇ、母さんから」
――ブンッ
突如として何もない空間にディスプレイが浮かび上がった。スカさんにもらった通信機みたいに画面が浮かんだと思ったら、そこに一人の女性が現れた。
『あなたが、ユーノさんかしら?』
「あ、はい。そうです。あなたは……?」
『初めまして。私はフェイトとアリシアの母親のプレシア・テスタロッサです』
わーぉ。ラスボスが現れたよ。ただ、やはりというか本来の優しい性格のようである。
◆
謝罪から始まったプレシアさんの話は、まとめるとこうである。ついでになのは。お前理解できてないだろうから、3行にまとめてやる。
・使えない上司の所為で事故勃発。責任が自分にあるというが、裁判にて勝訴。
・管理局なんか辞めてやる! 現在は辺境で静かに暮らしてるよ。
・家族旅行中に次元跳躍魔法キター! 防いだら近くの輸送艦が巻き添えに!
・母さんは魔法使ったバカをヌッコロスから、フェイトたちは散らばったジュエルシードの回収をお願い。
「4行になってしまったな」
「なるほどなの」
『言い方はあれだけど、まぁだいたい合ってるわ。それで………あなたがクロさんかしら?』
「あぁ、あいさつが遅れて申し訳ない。俺がクロだ」
『そう。確か、“闇の書”を探しているのよね?』
「――――あぁ」
ちょっと話が大きくなりすぎてきたような………。どうするか? 修正するにしてもどう修正するか。いや、このまま突っ走るのも手、か。
「―――あんたの娘にも言ったが、これに関しては俺がすべきことだ」
『………危険性を考えた上で、言ってるのかしら?』
「無論。むしろ、危険ならばあんたの娘を巻き込むことの方が重大だろう」
起こったら最終的に関わってしまうとは思いますがね。話的な意味で。
「じゃあ――」
「お前も除外だ」
嬉しそうな顔してレイジングハートを握り締めるなのは。確かに言ってはなかったが、除外は当然だろうに。
とはいえ、あなたも関わってきますがね。主人公的な意味で。
「俺の手伝いをする前に、おたくらはジュエルシードを集める方が重要じゃないのか?」
『そうね―――』
今なのはが7個。フェイトが2個で、俺が内緒で4つか。合計で13個か。
『残り12個ね………多いわね』
俺が持ってる4個は伝えてないので、なのはたちは合計が9個となる。
「ごめんなさい。母さん」
『気にしていないわ。むしろ、私がいけなくてごめんなさいね』
プレシアさんは今裁判やら何やらでバカと闘ってる最中のため、こちらに来ることが出来ない。なので、フェイトたちだけ先に来させてジュエルシードを集めるように指示したのだ。
ちなみにアルフとリニスと思われる女性が見えた。2人はプレシアさんのサポートをしているんだろう。一瞬だが、見えた。
『管理外世界とはいえ、他にも魔導師がいるかもしれないわ。気をつけてね』
「はい、母さんも気をつけて」
「こっちは任せてよ!」
事故を知った管理局が近々こちらに来るそうだ。ジュエルシード探索も引き継いで行うらしいが、さすがは足の遅いというか腰の重い管理局。管理外世界へ赴くには色々と手続きが必要らしく時間がかかるとか。
それまでは現在この世界にいる魔導師たちで捜索して欲しいとのこと。つまり、フェイトたちのすることはしばらく変わらないということだ。
軽く近況を話して、プレシアさんとの通信は終了。なのはとフェイトたちは協力するにしても、今後どう動いていくかを話し合っている。
さて、俺はどうするか。
『やっぱ、ジュエルシードは渡した方がいいよな?』
『まーねー。私たちが持っててもあまり意味はないような気がするし』
ただ、2つは既にスカさんのところだ。なので、今渡せるのは2つだけ。それでもないよりかはマシだろう。
「ちょっと待て」
ひょいっとフェイトたちに投げ渡す。
「これは………」
「ジュエルシード? でも、なぜあなたが………」
「何かに使えると思って持っていた。必要ないと感じたので渡した。それだけだ」
向こうの話も終わりそうだし、何かを言われる前にさっさと戻ることにした。なのはたちよりも早く部屋に戻らなければならないのが辛いところ。
『てか、俺来る意味なくね?』
『なかったねー』
何しにきたのか………。まぁプレシアさんと会えたことや、予想外の裏情報が聞けて損はなかったが。