不器用な彼の物語   作:ふぁっと

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第13話 天才と「天災」

不器用な転生者

第十三話 天才と「天災」

 

筆者 Fat

 

 

 

新たな力

 

新たな出会い

 

 

波乱の予感

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、現在の我が家。時刻は夜になるかどうかの頃。俺の部屋には2人の客人がきていた。

 言わずもがな、フェイトとアリシアであった。

 

「ご、ごめんね。ホントは明日来るつもりだったんだけど………」

「痛い痛いって言ってたじゃん」

「それは姉さんが触るから………」

 

 同じ顔が横に並んでお互いを非難する。ツインテールとポニーテールで判断しているので、2人が髪を下ろしたら分からなくなりそうだ。

 しかし、中身はまったく持って違うので少し会話すれば看破はできそうだ。

 

「まぁ、気にしてないよ」

 

 夕方から夜になる時間帯は、咲夜さんは大抵いない。何故かは知らないがいない。ちょうど俺が帰って来た瞬間で、咲夜さんがいない時間帯で、その間に訪れてくれて本当に良かったと思う。

 母さんにはバレないように家にあげて、部屋の中へと連行した。

 

「ただ、来るのはいいが、あの格好はどうかと思うぞ」

「あ………おかしい、かな?」

「あんたらの世界ではどうかは知らんが、この世界ではな」

「ほら、やっぱり」

 

 フェイトの今の格好は黒のワンピース。アリシアは白とこちらは正反対の色。だが、生地が薄く夜の今では少々寒い。だからといってバリアジャケットの格好で来たというのだから困りものだ。

 確かに普通の服とは違うが、よく恥ずかしくないものだ。

 

「突然きてなんだけど、準備がいいわね」

「あぁ、クロから話は聞いてたからな。あと、俺が魔導師なのは秘密で頼むぞ」

「うん。分かった」

 

 まるで一人芝居である。

 ここにいない諏訪子は念のために下に行ってもらっている。主に母さんの足止めだ。あの母さんが上に来ることは早々ないが、予測できない行動を取るが故に誰かがついていないと危険なのだ。

 

「何をしてたらこんな全身に火傷を負うんだ?」

「えっと…………」

「喧嘩、かな?」

 

 知ってるけど尋ねる。

 ただ、子供の喧嘩で全身火傷って通報レベルじゃね? 魔導師とはいえ、子供なんだから。

 

「まぁいいが。ある程度の治療道具は揃えておけよ。それか回復魔法が使える奴を」

「う、うん………」

 

 少なめだが医薬品を渡す。お金が~とか受け取れないとか言い出したので、アリシアの方に渡すことにした。こちらは素直に受け取った。

 

「ごめんね。助かるわ」

「何してるかは知らんが、無茶はするなよ」

「私もそうして欲しいんだけどね………」

「う………ごめんなさい、姉さん」

「突撃癖というか突貫癖というか、もう少し落ち着いてくれればねぇ」

 

(あー………確かに、そんな空気はあったなぁ)

 

 当の本人であるフェイトは、顔を赤くしながら縮こまっている。可愛いのぅ。

 

「とりあえず、俺がやったのはあくまでも応急処置だ。幸い、軽いものだったけどなるべく早いうちに病院で診てもらった方がいいぞ」

「うん」

「分かったわ」

 

 氷で冷やして………は遅いかもしれないけど、火傷用に冷やすシートを張ったり、薬を塗ったりとした程度。なるべくならちゃんとした病院できちんと診察を受けて欲しいが………。

 

「次はないとは思うが、来る時は格好に気をつけてな」

「うん。ありがとう。じゃあ、バイバイ」

「じゃあね」

 

 咲夜さんが帰ってきているかを確認し、まだ帰ってきていなかったのでその間にそそくさと2人を帰した。

 

「……………はぁ~」

 

 ずるずるとその場に崩れ落ちる。

 先ほどの戦闘で若干残った体力が全てなくなったようだ。

 

「あ、終わった?」

「なんとかな」

 

 変な一人芝居をしていたみたいで、妙に気恥ずかしい。顔赤くないよな?

 

「もう決めたんだから。最後まで関わってやるさ………物語はハッピーエンドがいいしな」

 

 しかし、フェイトはともかくとして、アリシアはもっと警戒してくるもんだと思った。そこまで信頼されるようなことはしていないと思う。裕也としては初対面だし。

 警戒されるもんだと思っていたが、本人は終始こちらの世界のマンガが気になっていたようで、あまり俺たちを意識はしていなかったように見える。

 

「まぁ、警戒されるよりかは信頼される方がいいよな」

「どうしたの?」

「いや、なんでも」

「ところで、体の方はどう?」

「ギリギリセーフ的な感じ」

 

 今回の戦闘も後半は魔力切れを起こしかけていた。なんとかフェイトたちと別れるまでは持たせることが出来たが………。

 

「まともに戦闘を続けられないのが辛いところだなー」

 

 短期決戦に持ち込んで速攻で終わらせないと魔力切れで倒れてしまう。敵の増援や、長期戦などになったらピンチだ。

 早々に魔力量についてなんとかしないとマズい。

 

「はぁ、もう今日は飯食って早々に寝たい。今日は何かって聞いてる?」

「チャーハンだって」

「へぇ、中華鍋とかないけど、咲夜さんどう作るんだろ? 以前も出たような気がするけど」

「澪、張り切ってたよ」

 

 その言葉に思考停止した。

 誰が張り切ってるって?

 

「裕也の母親だよ」

「止めろ。今すぐにだ」

 

 諏訪子が来る前に咲夜さんが来たおかげで、諏訪子はまだ母さんの料理を味わっていない。なので危機意識が低いのは分かるが、あれはマジで影月家が崩壊するレベルのものだ。

 通常の具材から未知の物を作り出す錬金術師だぞ!?

 

「貴様はしゃべるコロッケとかを食いたいのか!?」

「は? え?」

「くそっ! 咲夜さんはまだ戻らないのか!?」

「どしたの?」

「死者が出るぞ! 俺はまだ死にたくなーい!」

 

 

 

 

 

 幸いにも料理は始めたばかりで、被害は少なかった。

 チャーハンを作ると聞いてたけど、何故か用意されていた湯銭鍋には紫色の湯気をあげる謎の液体が入っていた。まな板の上を見る限り、使われている材料は普通の一般家庭のものだった。ただし、チャーハンに使われるような材料ではなかったが。

 

―――ジャボボボボボボッ

 

「ねぇ、裕也。チャーハン作るって言ってたけど………」

「これが母さんクオリティだ」

 

 てか、目に滲みるなぁ。涙が出てきたよ。

 

―――ジャボボボボッ

 

「これ、流していいの?」

「―――原材料は問題ない」

 

 

「シャギィィィ!!」

 

 

―――ジャボンッ!

 

「……………」

「……………」

 

―――ジャボボボッ

 

「ねぇ、裕也。今………」

「言うな。俺は何も見てない」

 

 地球上に存在しないような生物が鍋から排水溝へと落ちていったなど、俺には見えなかった。

 捨ててからこれらは本当に捨てて良かったのだろうか。と思案したが、元は普通の食材だったので問題ないと判断。

 

 

 

 

 

 後日、スカさんにそのことを話したら

 

『ぜひとも研究材料として欲しかったね』

 

 影月家が滅ぶ可能性があるので、次はないと思う。思いたい。

 

『あぁ、それとだがね………』

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――翌日の放課後

 

 緊急ニュースで“下水道で新種の生物が見つかった”という報道がされたが、うちは関係ないと思う。そんな午後の一時、俺と諏訪子はとある家の前にきていた。

 

「………………………」

「………………………」

 

 スカさんに言われた場所に来てみれば、表札には何故か【ジェイル】と書いてあった。しかもうちの近くだ。

 何をしているんだ、あの次元犯罪者。管理外世界とはいえ、自由過ぎないか?

 

「なぁ、諏訪子。俺は疲れてるのかなぁ?」

「そうかもしれないね」

「帰ってゲームでもするか?」

「ぷ○ぷよでもやる?」

『いいからとっとと入ってきなさい。2人とも』

 

 インターホンからスカさんの声が聞こえてきた。しぶしぶと俺と諏訪子はスカさん宅へとお邪魔することにした。

 

 

 

 

 

 

「クックック、どうだい? 我が研究所は」

「てか、何してるんですか? あ、これお土産です」

「ドクターの考えることは私には分かりかねます。あ、これはご丁寧にどうも。後で持って行きますね」

「ウーノも大変だねぇ」

「おやおや、私は無視かい? 寂しいねぇ」

 

 影を背負いながら「クックック」と怪しく笑う物体は放置して、家の中を見渡す。見た目は普通の家なのだが、中は超ハイテクだった。いつかの研究所よろしく、何に使うのか分からないポッドなども多数置かれている。あと地下室もあるみたいだが、勝手に作ってはダメだろうに。

 ことハイテク技術に関しては最早“スカさんだから”で納得できる領域に達しているので、疑問に思うが疑問に感じない。とりあえず、今は別なことを尋ねる。

 

「この家を作った意味は?」

「強いて言うならば、君の近くにいた方が面白そうだからかな」

「人を争いの元凶みたいに言わないで欲しいです」

「でも、この短い期間で色々起きてるよね」

「うぐぅ」

 

 幽香との出会い。フェイトとの邂逅。霧谷との戦闘。その他にもジュエルシード3つを手に入れることがあったりした。

 合計4つだが、スカさんに渡してあるのは2つだけだ。残りの2つはフェイトに頼みごとをする時に渡す用だ。それも必要なさそうな雰囲気だが、念のため。

 スカさんに頼んでジュエルシード自体は封印済みなので俺が持っていても問題はない。

 

「そういえば、プレシアとは出会えそうかい?」

 

 ウーノさんに渡した翠屋のケーキが運ばれてきたところで、スカさんから話を切り出してきた。何故、プレシアさんの話かというと、フェイトが現れたと話したら、スカさんがプレシアさんのことを教えてくれたのだ。2人の後ろにいるのはプレシアさんで間違いない、と。

 なんでも、2人は研究者仲間で知り合い同士だったとか。

 

「どうだろうね………フェイトたちには会えたけど、まだ伝えてはないし。スカさんの方は?」

「ダメだね。前の連絡アドレスは既に破棄されたようで繋がらなかったよ」

「ま、地道になんとかするよ」

「何かをする前には連絡を頼むよ。君が動くと面白いことになりそうだから、ぜひとも近くで観察させてくれ」

「………善処はする」

 

 以前渡したジュエルシードに関しては、まだ時間がかかるという。かなり無茶をすれば抽出することも可能だろうが、その場合海鳴が地図から消える可能性もあるという。

 現状、武器が鉄の輪しかないので、スカさんには新たな武器をお願いしている。わざわざジュエルシードじゃなくてもいいのだが、管理外世界故に武器となりうる材料が手に入りにくいのだ。加えて目の前の研究者は次元犯罪者で、気安く材料を手に入れることができない存在だ。

 まぁ攻撃手段は多々あるので必ずしも必要という訳ではないが、あるとないとでは結構違う。

 

「武器とは関係ないが………」

「?」

「高台だったかな? あそこで見かける【白蛇伝説】は知ってるかい?」

「あぁ、地元の人なら皆知ってると思うぞ」

 

 高台の奥に迷い込むと、小さな白蛇が出迎えてくれる。その白蛇は人語を話し、善き者には幸福を、悪しき者には災いを齎すという伝説。

 目立たない奥の場所に小さな社があり、何の神を祭っていたのかは地元の人ですら知られていない。もしかしたら、そこで白蛇が祭られていたのかもしれない、という話だ。

 

「限られた者しか見つけられないとか、白蛇じゃなくて蛙だったとか、逸話はそこそこあるみたい」

「ふむ。そうなのか。神とかは信じてなかったけど、諏訪子くんのケースがあるからねぇ」

「うん。俺もあまり信じてはなかったけど、諏訪子がねぇ」

 

 今回の件が落ち着いたら見てみようかね。

 昔から聞いてた御伽噺のようなもので、あまり信じては無かったが、ちょっとばかり興味が沸いた。暇な時に足を向けてみてもいいかもしれないな。

 

「そういえば、君。今は“クロ”と名乗ってるのだっけ?」

「ブーーー!!」

 

 突然言われた偽名の名に思わず吹いた。いつも思うが、情報が早い。まぁ、“クロ”の存在に関しては、戦い方からしてバレバレだっただろう。

 

 

 

 

 

―閑話休題―

 

 

 

 

 

「話は変わるが、近々私の娘が来る」

「スカさんの娘?」

「あぁ、チンクとセインというのだがね。その時にはよろしく頼むよ」

「何をよろしく頼まれるのか知らないけど、分かった」

 

 どうやら霧谷やなのはの存在があるため、戦闘に特化した者を呼んだそうだ。ウーノさんもスカさんも戦闘に関してはあまり得意ではないらしいので。

 それにジュエルシードの件もあるし、プレシアも関わっているのなら近いうちに管理局が関わってくるはず。それに対しての戦力も増やしておきたいとか。

 

「今度は逃げるんじゃなくて、迎え撃つのか?」

「まぁこちらにも事情があるのだよ。ぶっちゃけて言えば、私も管理局に属していることになるしね」

「ぶっちゃけ過ぎ。深くは聞かないけど、ここでぶっちゃけることではなかったと思うぞ」

「ハッハッハッハ!」

 

 まぁ原作知識がある手前、驚きはしたけど納得はしている。だがやはり、ここで言うべきことではないと思う。

 このスカさんもややブレイク気味だよなー。

 

「2人が来たらまた連絡をするよ」

「あいあい」

 

 結局、武器に関しては目ぼしい物はなかった。時間をかければ手に入るかもしれないが、確実ではない。何か武器を探さないとなー。

 

 

 


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