不器用な彼の物語   作:ふぁっと

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第11話 「運命」の名を冠する者 中

 

 

 

 

闇よりいでし

 

暗躍する陰

 

 

我は黒

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした? 抵抗はもう終わりか? 諦めて俺に身を委ねな!」

「………下衆が」

 

 霧谷が投影した弓から武器が飛来し、フェイトの横へと飛ぶ。当たりはしないが、避けなければあの武器の爆発に巻き込まれ、避ければ周囲の武器の爆発に巻き込まれる。

 

「―――くっ!」

 

 

 

―――ジャラララララッ!

 

 

 

――ドゴンッ!

――ドゴンッ!

 

 

「なんだ!?」

 

 しかし、霧谷の予想した場所とは違う場所で爆発が起きた。何かに接触したら爆発するように作ってあったため、後方から飛来したナニカにぶつかり連鎖で爆発したようである。

 

 

―――捕具『絡み合う鉄の輪』

 

 

 後方から伸びた鉄の輪がチェーン状に連なりフェイトへと伸びる。本来は相手へと投げつける輪で攻撃するためのものだが、これをパチュリーさんと諏訪子で共に改良を加えたまったく別の鉄の輪―――捕縛用の輪だ。

 

「―――っ!?」

 

 欠点をあげるならば、先頭の輪に相手を収めなければならないことか。手錠みたいに開いたりはしないので、上からすっぽりとはめなければならない。ある程度の収縮は可能なので、輪の中に収めてしまえば、

 

『ゲット!』

『後は引っ張るだけ』

「きゃっ!?」

 

 フェイトを後方へと引っ張りあげる。鉄の輪をフェイトに向けて放った際に、フェイトの後方に配置していた武器を弾き飛ばしていたので道は作ってある。弾き飛ばされた武器は爆発し、周囲の武器たちが誘発されて更に道を空けるという結果に繋がった。

 

 と、同時に影が一つ。

 

 遥か上空からものすごい勢いで落ちてきた。

 

 

 

「こんの、」

「ぅん?」

 

 空気を切り裂きながら、稲妻よりも白く輝く剣でもって、

 

「下衆野郎がぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!」

「どぉわぁぁぁぁ!?」

 

 霧谷へと強襲した。

 

「なんだ?」

 

 落ちてきたのは少女だった。金色の髪を一まとめにした少女。白金に輝く大剣を持ち、黒いバリアジャケットを纏う姿は―――どこかで見たことあるような、

 

『そっくりだねぇ、この2人』

 

 そうだ。空から落ちてきた少女と俺の腕の中にいるフェイト。2人はそっくりというレベルを超えて似ていた。

 

「貴様は、」

 

 もう1人のフェイトは直進し、霧谷を真正面から一閃―――しかし、バリアーで防ぎつつ距離を取って霧谷は無事―――を許すほど、彼女は甘くなかった。

 即座に追撃し、今度は背後から一撃をきちんと与えていた。

 

「ぐがっ!?」

「死にさらせぇぇぇぇええええええええ!!」

 

 フェイトの攻撃は通じなかったのに、突然現れた“もう1人のフェイト”の攻撃は通っていた。ただ、2度につき1度、となるが。

 

「………………」

「……………?」

 

 自分の腕の中に収まったフェイトと目が合う。と言っても、こちらは仮面をしているので分かりにくいだろうが。 霧谷に攻撃を加えた“もう1人のフェイト”を見る。腕の中のフェイトを見る。違いを見つけようと思ったが、精々髪のまとめ方くらいだろうか。

 フェイトは左右にツインで、もう1人は後ろにまとめている。

 

「――ぁ、姉さん!」

「ねえさん!?」

 

 フェイトの姉ってことは―――アリシア、だよな? なんで生きて………ってか、え? 姉で、あれ? ジュエルシードが? おや? どうした? 何が起こってるの?

 アリシア生存しててフェイトがどうしてここに? んー、今は落ち着け。KOOLになれ。あれ? でもKOOLって暴走してる状態じゃなかったっけ?

 

「誰d「フェイトを放せぇぇぇぇぇぇえええええ!?」」

「今度は俺か! 分かったから落ち着け!!」

「姉さん落ち着いて!? 私もいるの!!」

「誰だっt「死にさらせぇぇぇぇぇえええ!!」聞けy「止まってぇぇぇぇえええええ!!」」

 

 フェイトを抱えていた所為か、アリシア(?)が大剣を構えて襲い掛かってきた。

 てか、フェイトごと斬る気か!? 構わずに全力で振りかぶってきたが、俺が避けなかったら俺たち二人は仲良く真っ二つだったぞ。

 

「だ、大丈夫だから! えっと、この人(?)は助けて……くれたの、かな?」

「ま、まぁ………一応、そのつもりだったんだが」

「そうなの?」

 

 1撃目は躱せても2撃目は無理だった。ご丁寧に首筋に大剣が置かれている。フェイトと同じく雷の資質があるみたいで、バチバチと微妙に痛い。

 その間にフェイトがアリシア(?)に説明し、ようやく剣を下ろしてくれた。

 

「俺を無視するなぁ! お前誰だ!? てか、お前はアリシアなのか?」

「―――名乗った覚えはないけど、何で私の名前を知っているのかしら?」

 

 やはり、彼女はアリシアだったか。

 もしかして、ここは“リリカルなのはの世界によく似た世界”なのか? アリシアが生きてることとか、完全にifの話ではないか。

 

「なんで、生きてるんだ?」

「はぁ? 勝手に人を殺さないでくれる? 下衆が。ゴミが。クズが。この早○が。×××が×××の××野郎が」

 

 妹が攻撃されていたからかアリシアはすごい毒舌である。一部、女の子が口にしていいものではない放送禁止用語が混ざってたが、俺は聞かないフリをした。

 魔力光ではない黒いオーラのようなものが視える。が、錯覚だと思いたい。なのはといい、アリシアといい、魔力光とは違うオーラを纏わないでもらいたい。

 しかし、良く似た姉妹である。生まれは原作通りなのかは知らないが。二人が同じ格好でぐるぐる回って「「さぁフェイトはどっち?」」とか言われたら絶対に分からない。

 

『で、いつまで抱いてるの? その子』

「おっと、大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です」

「すまない。回復魔法は使えないので、自力で回復してもらうしか………」

「あ、いえ。さすがにそこまでしてもらうには………傷も大丈夫です」

 

 大丈夫、というが痛々しい傷である。どこかで落ち着いて回復魔法をかけられる場所に行った方がいいだろうに。

 回復魔法が使えるのってユーノとかアルフくらいしか思い浮かばないんだが、彼らはいるのだろうか。ユーノはいるだろうが。

 

『良い案求む』

『ん~、私も自己回復能力の向上くらいしか使えないからねー。他人には効かないし。これ』

 

 壊れ物を扱うかのように丁寧に腕などの傷を見てみる。せっかくの綺麗な肌なのにもったいない」

 

「…………」

 

 見れば、フェイトは顔が真っ赤で俯いてしまった。

 

『恥ずかしい台詞をよく口に出せるね』

『え? なにが?』

 

 よく分からない。あ、勝手に肌に触れたのが原因か?

 

「アリシア、と言ったか?」

「えぇ、そうよ。妹を助けてもらってありがと」

「その妹だが、傷が少々ひどい。早々に退いた方がいいと思うが?」

「そうしたのは山々だけど………フェイト?」

「大丈夫。姉さん、私はまだ戦える」

 

 フェイトはフェイトで戦うつもりのようだし、アリシアもそれが分かっているのか特に何も言わない。どうやら、退くつもりはないようだ。

 

「やれやれ。退くつもりはないようだな」

「ごめんなさいね。あの男をちょっと、プチッとしないと………私、今日は寝れないみたい」

 

 そのプチッが命を潰す音じゃないことを願う。いかに霧谷とはいえね、目の前で死なれては目覚めが悪い。いや、目の前じゃなければいいのかといわれると、うーん。

 

「なら、付き合おうか」

「え? でも―――」

「2人でやるより3人でやれば、多少は早く終わるだろう? 早々に終わらせて傷の手当をしてやれ」

「あら、優しいのね」

「せっかくの綺麗な肌を持っているんだ。疎かにするな、と言いたいだけだ」

 

 時の流れは残酷だからね。若いうちにしっかりと丁寧に手入れをしておくことを勧める。歳取ってからでは遅いのだよ。

 かくゆう俺も気を使っていたりする。

 

「ぁ………ぅ……」

「…………」

 

『これが! 天然か!』

『なんだよ、いったい。とりあえず、そろそろ暴れたいだろ?』

『もち!』

 

「コホン―――えぇ、お願いするわ。フェイトはジュエルシードを。あなたは―――「クロだ」クロさんは、私とあの男をこr―――抑えるのを手伝ってくれるかしら?」

 

 今何て言おうとしたか。深く考えないことにする。

 

「分かった」

「任せろ」

 

 宝具を投影できる霧谷を相手にどれほど戦えるか。1対1ではないが、まぁ負けることはないだろう。勝てるかどうかは分からないが。

 確実性を求めるならここでフェイトにも手伝って欲しいところだが………。

 

(そうもいかない訳だ)

 

 遠くで手の空いているなのはがジュエルシードを封印しようとしている。このまま霧谷の相手をし続ける訳にはいかなかったのだ。

 ジュエルシードを封印することは大事だし、俺的には誰が封印したって構わない。ただ、ここでなのはとフェイトには戦って欲しい。

 2人は将来親友になるほどの仲になる。相性は合うはず。こんな人もいるのだと、知って欲しいのだ。

 フェイトやアリシアからすれば、どこの誰とも分からない魔導師に奪われるかもと思ってるのだろう。なのはの人となりを知れば、その危惧もなくなるだろうが今は仕方が無い。

 

「話は終わったか?」

「あぁ、待たせたな」

 

 先ほどとは打って変わっての変貌ぶり。これが、素の霧谷だろうか。

 

「アリシアもそうだが、そっちの男。俺が知らない奴。それにその仮面は“黒(ヘイ)”のものだな?」

 

(当たり)

 

「貴様も“転生者”か?」

「ヘイ? テンセイシャ?」

「………何を言っている?」

「違う? まぁ、どちらでもいい。アリシアは生かしてやるが、てめぇはダメだ。俺のハーレムを邪魔する者は全員殺す」

「……………」

「へぇ―――私を、生かして“やる”?―――面白いことを言うわね、三下が」

 

 黒化とも名づけようか。再び、アリシアから黒いオーラが出ているような気がする。

 おかしい。真冬に戻ったのか寒気がする。あ、風邪でもひいたのかな? ふふふ、震えまで出てきたぜ………これはちょっとやばいな。

 何がやばいって? 隣に立つアリシアの空気かな? うん。ごめん。直視できない。

 

『裕也。現実を見ようね』

『現実は恐い』

 

 しかし、隣から聞こえてくる呪詛は聞きたくない。

 てか、お前はいつも通りだな。

 

『仮にも神だよ。それも祟り神。嫉妬とか憎悪とか飽きるほど見てきたよ』

 

 なるほど。さすがは神だ。元が付くけど。

 

(さて、と)

 

 気持ちを入れ替えよう。

 確かに霧谷は魔力は高く、攻撃も殺傷力の高いモノが多い。だが、かつて諏訪子が言ったように奴には戦闘経験はほぼ無く、これまでの戦いも圧倒的な物量で押し潰してきたようなものだ。

 

(力は奴が上だが、技術はこちらが上なはず)

 

 ここに来るまでにパチュリーさんやスカさんから色々と学んできたのだ。何より、あの幽香との初戦闘から心を入れ替えて鍛錬してきた。

 そして何よりも、俺の隣にはアリシアがいるのだ。大邪神と化したアリシアが。負ける気がしない。否、負けることは許されない。

 

(負けたら死ぬ! 俺が!)

 

『裕也』

『ん?』

『覚悟は出来た?』

『何のだ?』

『あいつの死体を見る覚悟、かな?』

『それは出来てない―――が、戦う覚悟は出来た。神遊び、始めようか?』

『ふふ、裕也も分かってきたねぇ』

 

 

 さぁ、始めよう忘れられた神遊びを―――

 

 

 

――開宴「二拝二拍一拝」

 

 

 

 普段ならば地面から巨大な岩の手が出現するスペカ。だが、今の場所は空中。例え、地面から出現したとしても届かない。

 

 ならば、何をしたか。

 

 空気の圧を利用し、見えない手を作ったのだ。

 

 

―――ボゴォッ!!

 

 

「ぐっ!?」

 

 これもパチュリーさんと共に改良した付け焼刃の一枚。大した威力は出なかったが、空気なだけあって相手を吹き飛ばすことは出来た。おまけに見えない。体勢を崩された霧谷はその場で一回転し、己の敵―――俺へと目を向けた。

 また、周囲に展開されつつあった武器たちも今の一撃で散り散りに飛んでいくなり、爆散するなりした。あれらの武器は空間に固定されている訳ではなく、浮いているだけなので当然の結果だった。

 

「へぇ、面白いわね」

「くそっ! なんだ、今のは!?」

 

 

――ポワッ

 

 

「………なに?」

「コンデンスドバブル」

 

 霧谷が体勢を整えている間に、すでに次の手がめくられていた。いつの間にか、霧谷の周囲には大小様々な泡が設置されていた。その数は今もなお、少しずつと増えていく。

 

「こんなこけおどしが―――っ!?」

 

 剣を投影し、目の前の泡から切り裂く。その瞬間、

 

 

――ドォンッ!!

 

 

 予想に反して激しい爆発音が霧谷を襲う。原因となった泡は周囲に散乱し、連鎖的に爆発が響く。小さいものから大きいものまで、10を軽く超える数があった泡たちはすべて爆発した。

 

「これで終わり………ではないよな」

「でしょうね」

 

 それに付け焼刃の一枚は、見た目に反して威力はやはり小さい。

 

『だねぇ』

『まぁ今日作った即行スペカにしてはいい方ではないか?』

『っと、魔力反応かな? 気配はまだあるよ』

「よし、一気に叩き込もう。反撃されると厄介だ。アリシアもそれでいいか?」

「えぇ」

『りょ~か~い』

 

 さて、チート能力を持つ霧谷を相手に、どこまで戦えるか。今後のためにも、計らせてもらうぞ。

 

 

 

 


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