不器用な彼の物語   作:ふぁっと

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幕間01 日常の「裏側」

 

 

 

 

闇から影

 

犬と狼

 

 

飼われているのはどちらか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺がこの世界で目覚めた時―――それは、なのはと出会った時だ。

 

 

―――高町なのは

 

 

 あいつの名を聞いた時、あいつに出会った時、俺はこの世界に“転生”してきたということを思い出した。

 それまではただただ現実に絶望し、“普通”である他を憎んでいた。だが、それも終わった。

 

「俺には、力がある!」

 

 そう、俺は“転生”してきた。ならば、定番とも言っていい力が俺には備わっているはずだ。

 なので、まずはそれらを確かめることにした。

 

「そうと分かればさっそくだ!」

 

 俺はさっさと詰まらない“ここ”から抜け出すと、自宅へと戻った。家ならば何をしても問題ないだろうしな。

 

 

 

 

 

 

 まずは相手を魅了するニコポ。定番の能力だな。色々試してみたが、相手の目と目を合わせなければきちんと効果は発揮しないようだ。だが、効果は思った以上に大きい。

 

「巧様。お食事の用意を致します」

 

 あれだけ俺のことを罵っていた母親が、今では従順な人形に成り果てている。飯はもちろん、何から何まで俺の言うことを聞かなければ動かない。裸で外に立ってろと命じれば異議を唱えることなく実行するし、飯を食えと言わなければいくら腹が減っていようが食べようとしない。

 自然と口が釣り上がる。

 

「麗奈」

「はい、巧様」

 

 俺のすぐ傍に跪く女―――麗奈。こいつは隣の家に住んでいた奴だ。娘共々今は俺の家に住んで、身の回りを任せている。父親? あーなんか遺体で見つかったみたいだってな。犯人はまったく関係ない女だったてよ。恐いねぇ。

 

「昨日はすまなかったな。今日は共に寝ようぜ」

「はい!」

 

 こいつでナデポの効果は実証済み。どうやら、これら2つは重複ができないみたいだな。この魅了状態で俺の母親に行ってみたが、さしたる効果はみられなかった。

 まぁ2つとも相手を魅了するという点では同じだからな。唯一の問題点をあげるとしたら、それは同姓―――男には効かないということだろうか。

 

「さて、次は攻撃か………」

 

 ま、試すのにちょうど良い奴がいるしな。問題はどこでやるか。

 

「ふん。適当な場所でいいか。見つかったら―――他の奴に罪を被ってもらおう」

 

 今の俺には力がある。無力なあの頃とは違う。他者を自由に出来る力が―――ある!

 

「というわけだ、くそ親父。楽しいドライブに行こうぜ!」

 

 隔離させた部屋の一室。そこに転がってるのは縛られた俺の父親。しばらく飯を与えてなかったからか、ずいぶんと細くなったな。

 俺が声をかけたというのに、反応しないのは気に食わないが………意識がないのかね?

 

「嬉しいだろ? 久しぶりの外だぜ!」

 

 近づいた気配で起きたのか、父親の目が開いた。まだ生きてたようだ。数人の女たちを使い、父親をデカいバッグに詰めて車に乗せる。周囲の家の女どもは既に魅了済みだが、どこに目があるかは分からないからな。

 

「巧様。どこに向かわれますか?」

 

 今は夕方。ちょっと遠めの場所に向かえばちょうど良い時間になりそうだな。

 

「適当に人気の無い場所………そうだな。山がいい」

「畏まりました」

 

 

 

 

 

―――その後

 

 とある山中で火元不明の山火事があったとニュースで流れた。大規模な山火事と共に、隕石でも降ってきたかのような抉られた跡が見つかった。

 警察も火元を捜したが、空から降ってきた隕石が原因では、と片付けたようだ。

 

「残念だったなぁ、くそ親父。あんたのことは載ってないみたいだぜ?」

 

 ニュースで語られるのは山火事のことばかり。あの場所で死んだ男のことについては語られることはなかった。

 

「まぁ粉微塵になっちゃ、分からんよなぁ!」

 

 あの場所で試したのは残りの能力。

 まずは投影。俺が知っている宝具はあらかた創ることはできたが、若干能力がおかしい。

 こんなものか、というような低いものばかりだった。俺の記憶も曖昧だからな、それが原因かもしれないな。

 次に固有結界。無限の剣製をそのまま作り出すことが出来たが、魔力の消費が激しい。おまけに囲える範囲はかなり小さい。

 これは俺がまだ未熟だからだろう、と判断。まだこの身はガキだしな。

 最後に直死の魔眼。これはもう切り札だな。どうやら遠野志貴の魔眼を持ってきたようで、使うと頭痛がする。だが、効果はばっちりだ。人間にしか試してないが、問題ない。

 ただ、これは本当に最後の切り札だ。頭痛はもちろん、使用した後の疲労感がヤバい。戦闘で使えるかも怪しい。

 

「魔眼と固有結界は少し残念だが、投影が使えるだけでも問題はないな!」

 

 さぁ早くこい! 管理局。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――時は過ぎ

 

 時期は小学三年。ついに原作が始まる。

 既になのはとは接触し、俺の傍に置いている。一時は変な男にうろちょろされてたみたいだが、それももうない。

 できれば、なのはも俺の家に住まわせたかったが、さすがにそれは止めておけと協力者に忠告を受けた。

 

「霧谷」

「お前か」

 

 クラスメイトであり、かつ俺の協力者。それでいて俺のデバイスでもある。

 自ら転生者であると名乗り、俺に接触してきた男。俺的には、自分以外の転生者は邪魔な存在だ。奴らは奴らで動くから、原作の動きが乱されて困る。

 さっさと殺してしまおうかと思ったが、自分は静かに過ごしたいだけだと言ってきた。なので、少しだけ話を聞くことにしたのがきっかけだ。

 

「で、何か情報でも手に入れたのか?」

「あぁ、隣のクラスにいる―――」

 

 こいつには能力が2つある。まずは“人の姿を取れる”能力。そして“相手が転生者か否か分かる”能力だ。

 転生してきたはいいが、この能力を持ってると他の転生者にバレてしまい、度々狙われたそうだ。

 確かに他の転生者を見つけられる能力は使いようによっては便利で、脅威でもある。だから、こいつは俺に協力を申し出てきた。

 こいつは静かに暮らすために、俺はハーレムのために。他の転生者を全て排除しないとならないからな。

 利害は一致してるので、こうやって協力してやっている。

 

 こいつが転生者を見つけ、俺が捕まえる。

 

 ただ殺すのではなく、転生者であるこいつらには有用な使い方があるという。それが何かは知らないが、こいつのことだ。最終的に命を奪うことなのだろう。

 目は口ほどに物を言うとは言ったものだ。

 

「あぁ、分かった。いつも通りにやっておこう」

「頼む」

 

 今はこれでもいい。

 だが、最後に死ぬのはお前だ。お前も転生者である以上―――俺の敵なのだからな。

 

(精々、今は俺のために動いておけ)

 

 

「たくみく~ん」

 

 

 教室の外から俺を呼ぶ声が聞こえた。誰かなんて言わなくても分かる。

 

「おぉ、なのは」

 

 隣のクラスのなのはだ。

 

「ではな」

 

 奴は一言呟いて早々に立ち去った。

 ふむ、物分りの良い奴だから生かしておいてやってもいいか? ま、本体はデバイスという変わった奴だし。

 ただ、少しでも俺のなのはに近づくものなら………どうなるかは分かってるよな?

 

「で、どうした?」

「あのね、今日のことなんだけど」

 

 なのはを利用してアリサとすずかも落としてやろうかと思ったんだが、中々機会が得られない。

 お嬢様だからか幼稚園は違かったし、小学校も送迎の車だ。クラスもここ3年違うし、会いに行こうと思えど会えることはなかった。何度かチャンスはあったんだが上手くいかず、こうして三年まで来てしまった。

 まぁ、まだ小学三年だ。他の転生者が消えれば、チャンスはいくらでもある。

 

(そろそろはやてを探すかね………)

 

 今のうちにはやてを探して落としておけば、勝手に守護騎士という戦力が増えるおまけ付きだ。問題は闇の書だが………まぁ、リィンフォースも分かってくれるだろう。

 まだ見ぬリィンフォースよ。俺のはやてのために死んでくれ。

 

 

 


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