別の作品を書いていたもので…
では、どうぞ…
クリスマス。それは旧世代のイベントの一つ。って言っても、俺は色々な世界を飛んでるから、普通にいつものイベントなのだが。
だが、恋する乙女達にとってはかなりの高感度を稼げるイベントである。
しかし!勇者部にそんなもの無い!
今、保育園で子供達相手に遊んでいる。まあ、今回は、子供達に玩具やお菓子を上げるサンタ役として来たのだが、子供達は、それをわかっていてなのか、俺達と遊びたいと言ってきて、遊んでいる。まあ、子供は嫌いではない。だからと言って好きかどうか言われるのは別だ。だって、好きと言えば女の子の場合ロリコン、男の子の場合ショタコン、或いはホモと呼ばれる。まあ、俺は好きでも嫌いではないだけだがな。
勇者部は全員サンタやトナカイの格好をしている。うん。全員それなりに合っていて可愛い。友奈、東郷さん、樹ちゃん、園子がサンタ、風先輩、夏凜、銀、そして俺がトナカイ。
俺は四つん這いになって背中に子供を乗せて歩き回る。これだけでも子供達は興奮する。本当、子供は元気だ。
てかさ、女性陣は可愛らしい格好なのになんで俺だけ着ぐるみなんだよ。いや、いくら女性陣が全員俺に惚れているからと言ってもいつもどおりに俺と対応しているのだ。デートに誘われることが多くなったけど、あのお弁当以来お弁当を俺に作って来てくれた人はいない。どうやら、相当ショックだったのだろう。まあ、仕方がない。
兎に角…暑い。冬なのに…
そして、子供達から解放される。
用は勇者部としての活動は終わりということだ。あ、因みに、久尾もいたよ。まあ、精霊の状態で逃げようとしてたから子供達のところに放り込んだけどな。そのあと久尾が凄くもみくちゃにされた。まあ、あのもふもふだからな。仕方がない。そう、仕方がないのだ。
久尾は人の姿に戻って一足先に帰った。今は久尾は独り暮らし。俺と別々に暮らしている。
友奈にこの後クリスマスパーティーがあることを聞かされた久尾だったが、子供達にもみくちゃにされたのが相当効いたのか、早く帰りたいと言って帰ってしまった。
そして、俺の家。時間は午後六時。辺りはすっかり暗く…って…
「なんで皆俺の家にいるの!」
そう、クリスマスパーティーをするとは言っていた。だがどことは言っていない。そう、最初からクリスマスパーティーは俺の家でやることとなっていたのだ。そのことを知らないのは俺だけだ。なぜ俺だけ知らなかったかというと、ある意味のサプライズのようだ。
「まあまあ、座って。今回は私達が全部用意したから」
そう風先輩に言われて一旦落ち着こうとする。
てか、自然な流れで俺の家に入って来たよな。銀に予備の鍵を渡していたのが失敗だったか…
それぞれ担当が決まっているらしく、ケーキ担当の東郷さんと風先輩。普通のショートケーキを東郷さんが鞄から取り出す。因みに手作りだ。てか、東郷さんの鞄ってあの青い猫型ロボットのポケットと同じなのではないだろうか…
そして、お菓子担当・食べ物担当の友奈と銀、樹ちゃん。まあ、普通のお菓子ばかりだな。異様にポッ〇ーやトッ〇が多いが…。料理はピザにチキン、ポテト。クリスマスには定番なものから、うどんまである。因みにうどんは俺の家で茹でて置いてある。後はつゆをかけて、それぞれ好きなものを乗せるだけ。天ぷらなども大量に買ってきた。
ジュース担当の夏凜、園子。園子がお勧めするジュースを持ってきたとのこと。まあ、ジュースなんてどれも同じようなものだから、大丈夫か。
そして、クリスマスパーティーが始まる。
ケーキを分けてうどんを分けて…
皆ワイワイとさわぐ。
この時、俺はある異変に気が付かなかった。
俺は夏凜が買ってきたスポーツドリンクを飲む。炭酸などもあるのだが、何となくスポーツドリンクが飲みたかったので飲んでいる。風先輩と東郷さんの合作のケーキはとても美味しかった。そう、ケーキを食べ終えて、ジュースのお代わりをした時に異変は起きた。
最初に異変が現れたのは友奈だった。異様に顔が赤い。
「友奈ちゃん?大丈夫?」
心配した東郷さん。友奈に話しかける。
「へへへ…東郷さん!」
今、恐るべき光景を見ている。友奈が東郷さんの…その…唇を…奪ったのだ。
突然の友奈の行動に驚いて動けない東郷さん。
それに気が付いたのは俺と、唇を奪われた東郷さんのみ。
他の女性陣はワイワイと騒いでいる。
「へへへ…東郷さん~輝積君~」
唇を奪われるというあまりにもの衝撃で東郷さんの脳内はパニックを起こし、顔を真っ赤にして現実から意識を飛ばす。要は気絶した。
そして、俺に寄ってくる友奈。ま、まさか…
友奈の飲んでいたジュースに目を向ける。コップに入っているのは透明な液体。普通、それは水と見れる。だが、違う。あれは、酒だ。しかも日本酒。
東郷さん以外のコップを見てみる。東郷さんは俺と同じ、スポーツドリンク。だが、他の皆は透明な液体。
これは…酔ってる!そして、友奈は酔うとキス魔になる!
「輝積君~」
甘い声で近付く友奈。止めろ!友奈!お前は今酔ってるんだ!目を醒ませ!!
俺は絡んできた友奈を引き離す。危ないぞ…
「ちょっと!輝積さん!私を差し置いて友奈さんとラブラブしないでください!」
強気に言っているのは、樹ちゃんだ!樹ちゃん!君のキャラ変わってる!!
「輝積さんは私のものなんですから!」
樹ちゃんが引っ付いてくる。や、止めろー!
「駄目だよ~きっきーは私のものなんだから~」
そう言って園子がどこからか槍を取り出して来た。何しようとしてるの!
「樹は、私が守るわ!そして、輝積も守るわ!そう!私は神賀風よ!」
風先輩!?なんか俺の苗字になってますよ!?勝手に結婚させないでください!
「にゃにをいってんだ!輝積はねぇ!私のおっとなよにょ!」
もう、何を言っているのかわからないよ!夏凜!てか、デレても良いけど言葉までデレなくていいから!
「はっはっはっは!あー面白い!輝積って本当面白い!!」
顔が真っ赤になりながら透明な液体を口に運ぶ銀。面白くない!この状況面白くないから!
「輝積君~」
くそ!キス魔がもう起きた!そして、俺に引っ付いてくる!
「もう!何してるのよ!友奈!そこは私の場所よ!」
風先輩が友奈を引き離そうとしてくれる。
普通ならその行動は嬉しいのだが、今回は違う。
「うふふ…輝積~」
だ、抱き付かないでください!
てか、なんでお酒が紛れ込んでるんだよ!
「ふふふ、気が付いた?」
俺は園子の方を見る。わかった。犯人は園子だ!
「園子!お前、本当は酔ってないだろ!」
「せいかーい。流石きっきー」
「てか、お前だろ!お酒持ってきたの!!」
普通、中学生でお酒なんて手に入らない。だが、大赦絡みなら別の話しだ。
神様に近付くためにお酒を飲む。そう風習があるらしい。生憎、俺は半神だ。だから、神様に近付く必要も無い。だが、同じ半神として崇められていた園子はどうだ?
絶対にお酒を飲んだことがある。そして、それ相応の耐性がある。だって、唯一顔が赤くない。それに、ジュースを担当していたのは園子のはずだ。
まさか…園子の言っていたお勧めのジュースって…
「きっきーは飲まないの?」
「飲むか!!てか、これ、どうやって収集つけんだよ!」
「大丈夫だよ~、皆親御さんから宿泊の許可は貰ってるから~」
「泊まる気かよ!」
「輝積~わたしゅね…きせきのことぎゃ…」
「待て待て!」
まさか、園子の狙いは!!
「私、知ってるよ~あのとき、きっきーが私達の会話を聞いてたの~」
「は?」
「皆、気になるんだよ~、きっきーが誰を選ぶか。でもね、それだと不平等なの。だから、もう皆と付き合えばいいって思ったの!」
「訳がわからないよ!」
「なら、きっきーは誰が好きなの?」
「う…」
「ほら…なら、全員恋人にすれば済む話しだよ」
「駄目!」
いきなり抱き付く樹ちゃん。このタイミングで抱き付くか?
「輝積さんは、私の彼氏になるのよ!」
ちゃかり告白してますよ!
てか、ちゃかり告白を連呼されてるのに今頃気が付いた!!
「大丈夫だよ。皆きっきーの彼女になれば…」
園子の中では、俺はハーレムルート確定らしい。
あー、そうか、園子は俺の本心を聞くために自白剤も予てお酒を持ってきたのか。でも、それは誤算だ。
「園子。俺はな…」
俺は、透明な液体の入ったコップを取る。因みに、誰のだかはわからない。
「お酒…駄目なんだ」
「もう…きっきーは嘘が下手くそ~」
コップを持って、一気に口に運び飲む。その液体が喉を通った瞬間、意識が途切れる。
俺は半神だ。でも苦手なものが世の中には幾つかある。動物が火を怖がるように、吸血鬼が日光が嫌いなように…
俺はお酒だ。お酒を俺が飲むと…
いきなり倒れる俺。
「あれ~、きっきー?」
「輝積、どうしたのよ?」
「にゃにしてるにょよ~」
「ははは!輝積がぶっ倒れた!ははは!」
「輝積さーん!どうしたの!」
「輝積~」
目を開いたまま倒れている俺。
「きっきー?」
園子はその異変に気が付いた。そう、ピクリとも動かない俺の体。それに最悪の予想を立てる。
「…あれ?輝積…」
風先輩もそれに気がつき始める。いや、少しずつ、赤かった勇者部一同(東郷さん以外)の顔色が真っ青になる。
「あ、あれ?輝積…君…」
友奈は俺の胸に耳を当てる。同時に銀が息をしているか確認する。風先輩は俺の右手を掴んで脈拍を取る。
「心臓が…動いてない…」
「息も…してない…」
「脈拍も無いわ…」
そう、俺はお酒を飲むと一時的に心肺停止、いや、死にます。まあ、10分ほどで蘇るけどな。
その後、どうなったのか、わからない。気が付けば俺は床の上にいた。どうやら移動させられたようだ。だが、周りの風景的に俺の家だとわかる。異様に胸が痛いが、気のせいだろう。
時間を見る。約10分死んでたのか。何故か悶絶している勇者部一同。何してんの?
てか、皆意識が無い。何があったし…
「…」
どうやら、意識がある人が一人だけいたようだ。
「東郷さん…これは一体…」
「それ…聞く?」
「なんか、聞かない方が良さそうだ…」
まあ、知ることも無いと思うが。
因みに何故皆意識が無いかというと…俺に人工呼吸をしたらしい。代わり番こで。まあ、そんなこと俺が知るわけも無い。そして、その行動に恥ずかしくなった勇者部一同は自ら意識を飛ばした。
ということだ。
「おーい、皆大丈夫か?」
「そっとして置いたら?」
まあ、このまま寝かせるのも何だし、俺は毛布を持ってきて皆にかける。
「ねえ…輝積君」
東郷さんと二人きりになった。俺は注意して東郷さんのコップを見る。良かった。スポーツドリンクのようだ。
「何?」
「もし…この勇者部の中で彼女にするなら、誰がいい?」
ストレートに来た。いや、少し変化球が加わっているが…
「なあ、東郷さん。俺は何者か知ってるよね?」
「え?半神でしょ?」
「そう。でもね…俺は…」
話すしかない。何故、俺が誰も選ばない訳を。いや、本当は園子の思惑通りハーレムルートだと思う。だが、俺はそれを避けている。それは、俺が半神ということが意味する。
「この世界の人間じゃ無い…」
「聞いたわ」
「でもな…俺にはまだ、別の世界でやらなきゃいけないことがあるんだ」
そう。俺は半神というイレギュラーな存在。そんなイレギュラーな存在が長い間その世界にいればどうなる?
それに、神樹がそうしたように、別世界でも救いの手を求めているところがある。俺はそれを知っている。
「なら、それが終わった後にまた戻ってくれば…」
「いや…それが、今回は出来そうにない」
天の神との戦いの準備をしている今、この世界は不安定だ。そして、合戦になれば、更に不安定になる。そうなると、合戦に勝っても負けても、この世界が自動的に安定するまで長い時間が掛かる。
その間、俺はこの世界にいれない。
イレギュラーだから。
その事を東郷さんだけに説明した。それを知った東郷さんは困惑しながらも、己の答えを導き出す。
「…なら、余計に聞くわ。誰と付き合いたいの?」
…俺は…誰が好きなのか…
「…決めないと駄目か?」
「当たり前よ」
「なら…」
この時の言葉に俺は責任を持てただろうか…
だが、責任を持たなければならない。そう、俺は半神なのだから。
次回…とうとう、最終回
なので…
次回予告やります。
次回予告
「輝積さん…」
「全く、後輩の癖に…」
「…国に誓って…」
「…絶対に行くから!!」
「きっきー、楽しみにしてるから~」
「逃げたら容赦しないからな~」
「うどん、絶対に奢ってね!」
「蚊帳の外の俺は…」
「そんな事だろうと思ったぜ!!」
「遅くなった」
「ヒデブシ!?」
次回
勇者部最終合戦