遅くなってすいません…
二日に一つは上げる予定だったのに…
と、取り合えずどうぞ…
そこは、夕陽と海が見える高台だった。近場に大きな橋が見える。だが、橋は折れ曲がっており、橋としての機能は果していない。
俺達はなぜこんな所にいるのか。携帯は充電が切れている。これでは銀が実体化出来ないし九尾も呼べない。だが、高台には…海が見える方とは逆の方には人の気配がするのだ。
だが、その気配は…なぜかか弱く、消えそうな、それでも偉大な、そんな感じがした。
「行ってみようよ輝積。」
半透明の銀が言う。確かに行ってみなければわからない。
俺はそっちの方へと足を進める。
そこにいたのは…ベットに横たわる女の子だった。左目と口元以外包帯で巻かれていてとても痛々しい。さらには、薄い布団がかけられてはいるが、そこから見えるのは、足が無く見えるのだ。
俺は彼女を見たことがあった。いや、あんな痛々しい格好にはなっていなかった。
「会いたかったよ。輝積君」
少女が俺の名前を言った。
「君は…」
「私は、乃木園子。」
「やっぱり…」
「それと、久しぶり、ミノさん。」
「?」
銀は自分が言われていることに気が付かない。
「今、銀は記憶が無いんだ。」
「そう、なの…」
園子は落ち込んでいた。
銀はその事に気が付いたのかもしれない。だが、気が付いた所でもう遅いのだ。自分に記憶が無くて、そのせいで友達を悲しませてしまう。だが、死ぬよりは遥かにいいことなのだろう。それでも…彼女…園子にとっては生き地獄だ。
「俺達をここに呼んだんだろ。」
確信は無い。でも、彼女なら出来る。
そう判断した。
「うん。私が輝積君を呼んだんだよ。」
「どうして俺を?」
「君はね…本当はこの世界の人間じゃないの。」
この世界の人間じゃない?
「君はね、神樹様に選ばれた傍観者なの。傍観者は神樹様が選んだ別の世界の住人にこの世界の惨状を見てもらいその世界でこの世界の惨状を話してもらい、そして、いつかこの世界を救ってくれる人を探す。その話す役割になったのが、輝積君。あなたなの。」
「俺が…」
別の世界の住人で、この世界の惨状を話す?
俺はそれだけのために、ここにいるのか?
「でも、君は特別なんだよ。」
「特別?」
「そう。傍観者は普通、結界の中、神樹様の近く、一番安全な所で勇者とバーデックスの戦いを見るの。それに、傍観者は結界の外には出れない。樹海から出れないの。でも君は出ている。」
「…」
「それに、力もある。神樹様を超えるかもしれない大きな力、それが君にはある。」
「俺は…どうすればいい…」
「神樹様はまだ傍観者を必要としているの。だから、まだ元の世界には戻れない。」
「いや、戻る戻らないの話しじゃない。俺はバーデックスと戦っていいのか、勇者を助けていいのか、俺は!」
「神樹様だってそれは知らないよ。」
「!」
「それは、君が決めることだよ。神樹様が決めることでも、私が決めることでも無いんだよ。」
「…そうだよな。」
俺は園子に近寄る。包帯で巻かれていてとても痛々しい。銀の入っているウォークマンも近付ける。銀も園子を見る。
「その体は散華だよな。」
「うん。そうだよ。」
「俺は君達が…乃木園子、三ノ輪銀、鷲尾須美が戦っている所を安全な所で見ていた。」
俺の記憶…それは、少女達の戦いを遠くから見ているだけ。ただそれだけだ。
だが、ある日、一人の少女が死に直面していた。俺はその子を守りたかった。神樹により、安全な所には中から出れないように結界が張られる。俺はその子を守りたくて…その結界を破り駆け付けた。だが、そこに残っていたのは…その子であったであろう物だけだった。
俺は自分の無力を知った。その子を守りたかった。だが、結果は残酷だった。
自分の無力の証明を残して起きたかった。例え記憶が無くなっても、自分の無力を悔いることが出来ないようにするため。俺は銀の髪の毛を何本かお守りとして持っていようと決心こた。自分への戒めも含めて。
現に目の前の二人…園子の体、銀の記憶を取り戻していない。
少女達が満開した後も後悔をした。散華を見てしまったからだ。
記憶がだいたい戻った今、元の世界のことなど、どうでもいい。どうせまだ元の世界の記憶は戻っていない。なら、勇者部の皆を守りながら、彼女達を元に戻す方法を探す。
「俺が…園子と銀を救うよ。」
「ありがとう。でもいいよ。それに、君は色々なものを背負い過ぎてる。」
「こんなの…園子や銀の気持ちに比べれば、小さなものだよ。」
「輝積…」
「散華を彼女達から奪ったんだね。」
「奪った…のか…」
奪ったと言うよりも俺が引き受けたという感じかもしれない。
「満開をさせてはいけない。俺が見つけた紙に書いてあったんだ。そして、記憶が戻ってきた。あれは、君達を、見た俺からの忠告だったんだな。」
「そういえば、記憶が戻ってきてるらしいね。」
「君の言う元の世界以外のことはだいたい思い出してきている。」
「よかったな。輝積。」
だが、正直嬉しくない。こんな記憶…忘れていた方がいい。
「なあ…園子…」
「何?」
「もし、もしだよ、君の体が、戻って、銀の記憶と体も戻って、鷲尾須美も戻って来たら…うどんでも食べにいなかいか?」
「輝積君…」
「輝積…」
「いや、もしじゃない!絶体に俺が何とかする!園子も銀も樹ちゃんも友奈も東郷さんも風先輩も夏凜も須美も!」
「欲張りだね。」
「俺はただ…貪欲なんだよ。人間だから、貪欲なんだ。」
俺は何者か…俺は傍観者だった。でも今は…讃州中学勇者部上賀輝積、勇者ではない!でも、皆を守り、全てを解決する!
そのために俺は!!
「輝積は本当に強情だよな。」
「それが俺ですから。」
「ふふふ、面白い人…」
園子は俺を見てそう言った。面白い人か。そんなこと始めて言われたかもな。
「そういえば、どうしてその事を俺に話すんだ?」
俺は単純に思った。いや、最初から疑問に思った。
「もし、満開のこと、勇者のこと、傍観者としての記憶のこと、知らないと辛いから。私も、知っていれば、もっと時間を…大切にしたのに…」
「いや…知らない方がいいこともある。」
「それは、大人の考えだよ。私はまだ子供だから…そんなことは思えないよ。」
「…満開のことを誰かに話すのか?」
「わっしーに話そうと思うの。」
鷲尾須美…俺は彼女と瓜二つの人物を知っている。その子は…記憶が…二年間の記憶が無い。その記憶は、たぶん、園子と銀との大切な…
「お前が辛くなるぞ。」
「大丈夫。もう、辛いから。」
銀の記憶のことか…
そのことだろう。普通の女の子なら耐えきれない。それも、彼女、園子だから耐えたのだろう。動けない彼女にとってどれ程の苦痛か…
「俺は、話すなら、話した方がいいと思う。それを受け止めるのも、勇者としての…素質なのかもしれないしな。」
俺はそう言った。これは、傍観者として、そして、彼女達を信じているからこそ言ったのだ。
「ごめんね…もうそろそろ時間みたい。」
仮面を着けた大人達が続々と近付く。
銀が少し怯えている。だが、この人達は、敵じゃない。
「家まで送ってあげて。」
園子はそう、仮面の人物に命令した。
その後、仮面を着けた大人の一人、よく俺と話す人が俺と銀を家まで送ってくれることになった。
助手席に座る。運転席に仮面を着けていただろう男性が運転席に座る。
そして、運転を始める。
銀は、俺の膝の上にいる。
「本当に…銀だな。」
その男性はそう言った。
「…」
俺も銀も何も言わなかった。いや、その言葉への返答を知らないのかもしれない。
「銀は、記憶が無いんだよな。」
「うん。」
銀は返事をする。男性はまるで、銀を幼いころから知っているような言い方だ。
「そうか…」
残念そうに言う男性。
「自己紹介がまだだったな。私は、三ノ輪。」
「銀と同じ名字!」
「そう。銀は俺の兄の子だ。だから、幼い頃の銀をよく知ってるよ。」
「私の…叔父さん?」
「そうなるな。」
男性は…三ノ輪さんは泣いていた。
それに俺は気が付いた。
「兄は…毎日悔やんでいたよ。銀を勇者にしたことを。」
「お父さん…」
「今すぐとは言わない。その体を元に戻して、記憶も取り戻した後、兄の所に行って欲しい。」
「わかった。」
銀は約束した。俺はその約束を全力で支援する。
「その間、銀を頼むぞ。輝積君。」
「わかりました。絶対に銀の体と記憶を元に戻します!」
俺はそう答えた。
いや、そう答えるのが一番だと思ったからだ。絶対なんてありえない。でも、俺は…
守るべき者とやるべきことが多くなった。
別の世界の住人だろうが、何だろうが、俺は俺だ。やりたいことを全てやる!
とうとう主人公の正体がわかってきました。
さらに銀の親戚まで…
とうとうクライマックス…主人公はこの後どうなるのか…
てか、次回予告やろう…
次回予告
「違うわ。妖精の話しを…」
「いや~これで…」
「いや、充分起きてるよ。お姉ちゃん」
「東郷さん、君は…」
「友奈ちゃん!大丈夫!」
「勇者キック!」
次回 偽りの最後