上賀 輝積は勇者でない 【完結】   作:風墳K

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第15話です。

まあ、銀主役の回(?)です。

と言っても多分というか殆ど銀じゃない…

まあ、記憶を無くしているので…

兎に角どうぞ…


第15話 旧勇者

夏休みも終わりに近付き、俺と九尾と銀は家で自分の時間を過ごしていた。その時だった。携帯が鳴ったのだ。

 

俺は慌てて携帯を見る。樹海だ。

 

「いくぞ!九尾!!」

「わかった。」

 

時が止まり、樹海になっていく。

 

樹海になり回りを見渡す。九尾が妖精の状態で俺の近くにいた。

 

「ねえ、ここどこ?」

 

!?銀!?

 

目の前に銀がいた。いや、ウォークマンが置いてあり、半透明で銀がいたのだ。

 

俺はウォークマンと携帯を繋いで実体化させる。理由は何となくだ。

 

その時、携帯に異変が起きる。それは、携帯の変身画面の×が消えているのだ。だが、俺が押してもならない。もしかしたら…

 

「銀、このボタンを押してみてくれ。」

「これ?」

 

銀がボタンを押す。

 

その瞬間に銀が変身する。色は白を基調としているが、ところところ赤が入っている。

 

思い出した。銀…君は…

 

「うわ!凄い!まるで漫画みたい!」

「おおお、おい!この場合俺はどうすれば!?」

 

焦る九尾。そうだよな。携帯の所有者の俺ではなく、一緒に住んでいる銀が変身してしまったんだからな。

 

「銀を守ってやってくれ。」

「お、お前がそう言うなら…」

 

俺も変身する。

 

「輝積の方が格好いい!!」

「そうかな…」

 

この時、俺はある違和感があった。

 

バーデックスはほとんど星屑。星座型は来ていない。いや、そこじゃないな。静かなんだ。

 

まるで、俺達と星屑しかいないかのように…

 

「なあ、銀、勇者のアプリ開いてくれるか?」

「こう?」

 

銀は慣れた手つきでアプリを操作する。やっぱり彼女は…

 

俺は銀が持っている携帯(俺の)を見る。

やっぱりだ。友奈達がいない。ということは、まだ友奈達に携帯が戻って来ていないということだ。

 

「この数を一人か…」

 

銀を変身させたのは自分を守るためであって戦わせるためではない。

 

「九尾、銀を安全な所に連れていってくれ。」

「え?どうしてだ?」

「私も戦うよ!」

 

銀は無意識に戦うことがわかっているようだ。本人はわかっていないようだが、感覚でわかっているのかもしれない。

だが、戦わせる訳にはいかない。彼女を二度と死なせない。そう、俺は誓ったんだ。

 

「ダメだ。」

 

俺は力強く言う。その声はまるで怒っているかの様に聞こえた。怒っていた訳ではない。ただ…心配なのだ。

 

「なんで…」

「なんでも。兎に角、隠れていてくれ。」

「それでも、戦う!」

 

銀は一度決めたことは貫き通す子だ。一緒に生活していたのだから良くわかる。だからこそ、戦わせてはいけない。もう、この子を死なせたくない。この子を死なせるくらいなら、俺が死んでやる。

 

「戦うなら、俺を殺してから行け。」

 

俺は銀の前に立つ。

 

「輝積!?」

「輝積、どういうことだ!!」

「俺はお前に戦って欲しくない。ただそれだけだ。」

「なら、心配いらない。俺が銀を守る。だから…」

「なら、身を守ることだけしててくれ。必要に戦うな。」

 

俺はそう言う。戦えば身を守ることより敵を殲滅させる方を優先させてしまう。

 

「輝積にこの数は無理だよ!だから私も…」

「なら、交換条件だ。身を守ること以外で戦った場合、俺は過去の君のことを話さない。」

「!?」

 

俺は銀の過去…いや、過去の一部を思い出した。記憶を取り戻したい銀にとっては最大の交換条件だろう。

 

「銀…」

 

悩む銀。心配そうに見る九尾。九尾は俺の味方でもあり、銀の味方だ。だから、銀の答えに従うし、俺の条件にも従う。

 

「…わかった。身を守ることだけね。」

「うん。それでいい。」

 

俺はその言葉を確認して空へとジャンプする。そして、星屑の数を確認。20~30体ほどか。

 

星屑達がいる辺りの中央に俺は降りる。星屑達は俺の様子を見ている。隙を伺っているのだろう。

俺は、武器を辺りに突き刺すように置く。と言っても全部マスケット銃だ。

 

「さて…」

 

マスケット銃を二丁片手ずつに持つ。そして、痺れを切らした一匹の星屑が此方に襲いかかってくる。それに吊られるように次々に襲ってくる。

そんな光景を目にする。まあ、この時点で恐怖なんてものは感じない。

 

「もう、何も怖くない。」

 

どこかの魔法少女みたいな死亡フラグを無意識に建築してしまったが、そんなの、折ればいい話。

 

マスケット銃で次々と星屑を撃ち抜く。狙いは外さない。一丁のマスケット銃に弾は一発。一匹撃ち抜いたら地面に刺さってるマスケット銃を抜き撃ち抜く。それを坦々と繰り返す。

 

少しずつ数を減らしていくバーデックス。

 

だが、重大なことに気が付く。地面に突き刺したマスケット銃が無くなっているのだ。まあ、一丁に一発な訳で大体近場に突き刺せるとしても十丁ほどが限界(俺の避ける空間も予想して)。そのためマスケット銃がもう無いのだ。

 

一匹の星屑が俺の頭部を噛み砕こうと近く。事故などではスローモーションに見えると話しなんかで聞くが、まるでそうだ。凄いスピードで近付いているのだろうが、まるでゆっくりと俺の頭部を噛み砕こうとしている様に見える。この時、俺は何も…恐怖も後悔も何も感じなかった。そう、目の前に死があることも。妖精のいない俺が星屑の、バーデックスの直撃を受ければどうなる?答えは簡単。この後、俺は首の無い肉片へとなる。

 

だが、それは起こらなかった。

その星屑は俺の真横まで来て消えたのだ。いや、正式には、連れて行かれたのだ。

 

俺は星屑が連れて行かれた方を見る。そこには星屑が根に刺さっていた。いや、星屑は根にくっついていたと言った方がいいのだろうか。まるで、星屑は昆虫標本のように打ち付かれていたのだ。ただ、昆虫標本はピンなのに対して此方は斧だが。

 

俺はその星屑が絶命するのを見届けた後、その斧を投げたと思われる方向を見る。そこにいたのは、狐の妖精を連れた白を基調としている勇者の姿。銀の姿だった。

 

「な…なんで…」

 

俺は言った。身を守ること以外戦ってはいけないと…

 

「輝積…言ったよね。身を守ること以外戦っちゃダメって。でも、誰のとは言ってない。私は今、輝積の身を守ることのために今の怪物を攻撃したの。」

 

盲点だった。ただの言葉遊びのようなものだ。でも、そのお陰で俺は生きている。怒ればいいのか、感謝すればいいのか…良くわからない感情だ。でも…何だろう…俺の言ったことは間違っている気がしてきた。もしかしたら、銀が戦うって言ったのは、勇者としての感覚とかじゃなくて、俺を心配したから?

それなら、俺は酷い奴だ。銀の心遣いを無駄にした。更にはこの子の記憶まで利用して戦わせないようにまでしまった。

 

「ごめん…」

 

俺は、謝罪の言葉を言った。

それしか今言えることはなかったのだ。

 

「別にいいよ。輝積は私のことを思って言ってくれたんでしょ。それに、きっと私の記憶のことも関係してると思うし。」

 

全部わかってたのか…銀は努力家で色々やっている。家にいる時は勉強などをやっているし家事なども率先してやっている。(全て九尾がやってしまうため意味をなさないが)

俺は、この子に背中を託すことに決めた。その代わりにこの子の背中は俺が…この子の命は俺が守る。

 

「なら、俺の身を守ってくれよ。銀。」

「わかった。」

 

俺と銀は同時に攻撃を開始する。銀の動きは精練されており、俺はそれに合わせる。

 

銀の使う武器は斧だ。武器の生成は俺の携帯(九尾だけの能力)で、俺の変身とは関係がない。だが、俺は携帯が無くても武器を生成出来ている。不思議なことだが、気にしている暇などない。

 

俺はその点短刀だ。しかも二刀流。まるで夏凜だな。いや、俺は夏凜に勝ってる訳だから俺の方が強いか…。

 

銀は大きめの斧を投げる。それはブーメランのように軌道を描き星屑を真っ二つにしていく。俺も刀で星屑を捌いて行く。銀の後ろに来た星屑を俺が刀を投げて星屑を突き刺して倒す。その間に銀が俺の後ろにいた星屑に斧を投げる。

そして、また両手に武器を生成する。

 

もし、俺の立場に夏凜がいれば俺より上手く連携が取れていたかもしれない。

 

俺は、銀と夏凜が重なって見えた。いや、夏凜の変身の格好が昔の銀の格好に似ていた。

夏凜と銀には何か繋がりがあるかもしれない。けど、今は星屑を倒すことが先決だ。

 

だが、そんな考えは意味がなかった。銀と連携をとってからは次々と星屑が倒されている。そのため、残る星屑は一匹。星屑は逃げようとする。俺と銀は斧と刀で斬りつけ星屑を三つにする。

 

そして、戦いは終った。

 

「銀…話すよ。俺が思い出したこと全部。と言っても全て思い出した訳じゃないけどね。」

「いいよ。私が何者なのかわかれば。」

 

君は…勇者だ。いや、前の…勇者だ。

 

樹海が解除され元の世界に戻る。

 

だが、俺にとっても、銀にとっても予想外なことがこれから起きようとしていた。





とうとう後半に入って来た…

さて…主人公は何者なのか…

ではでは次回予告


次回予告

「行ってみようよ輝積」
「どうして俺を?」
「今すぐとは言わない…」

「私は、乃木園子。」

次回 傍観者

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