上賀 輝積は勇者でない 【完結】   作:風墳K

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はい、第12話です。

主人公が最強というタグを付けていましたが、今回それが明らかとなります。

ですが…たぶん賛否両論かも…

ではでは…どうぞ…


第12話 現実の厳しさ

…知らない天井だ

 

なんてネタをしてみる。体はそこまで痛くない。それに、ここは…病院…だろう。てか病院にしては薄暗い。

俺は回りを見渡そうとしてみた。その時、ある異変に気が付いた。左側があまり見えないのだ。試しに右目に手を当ててみると、真っ暗になる。左目は、ちゃんと開いている。ということは、左目が見えないということ。

 

「気が付いたかい?」

 

声が聞こえた。だが、少し遠くに聞こえる。

 

俺は声のした方を見てみる。左側にいるため見えずらいが、仮面を被った人だ。それにこの声、前に俺の家に押し掛けてきた大赦の人だ。

 

「…」

 

あれ…返事をしたいが声が出ない。まるで、声自体を無くしたように。

 

「輝積君、君は今、左目の視力、左耳の聴力、味覚、そして、声を失ったんだよ。」

 

…満開の代償…か。

 

「なぜ、君が失ったのかはわからない。だが、現勇者の満開を使った四人は君よりは軽かった。しかも、時間が立てば治ってしまう。」

 

…完璧には救えなかった。でも、彼女達を少しは救えたのかもしれない。

 

俺は上半身だけ起き上がる。そして回りを見る。やはり、病院ではある。だが薄暗く、まるで俺を祀っているかのようだ。

 

「コミュニケーションが取れないのは厳しいだろう。これを使ってくれ。」

 

ペンと紙を貰う。

 

『友奈達は?』

「さっきも言ったけど、満開を使った四人は各器官に損傷を少し残しているけど、時間が立てば治る。それに、もう一人は素手に退院しているよ。」

 

良かった。改めたそう思う。

 

「さて…本題だ。君はどうやって散華を奪ったんだい?」

『わからない。どうやったのか、自分でもわからないんだ。』

「まだ、記憶が戻らないのかい?」

『少しずつは戻ってる』

「何か思い出せたかい?」

『満開のこと、散華のこと。』

「そうか…。出来ればこの事はあの子達…現勇者達には言わないでほしい。」

『はい。』

 

二つ返事で返す。散華のことを知れば、彼女達は勇者をやめるかもしれない。いや、もしかしたら神樹に対して反旗を…

 

考えたくない。

 

俺は暗い部屋を見渡した。何も無い。いや、あるのはあるが、神社などにあるような物ばかりだ。

 

「何か望むことはあるかい?」

 

望むこと…

 

『友奈達に俺の無事の報告と、退院するまで面会禁止にしてほしい。』

「わかった。」

『それと、俺の携帯を返してほしい。』

「最後のは難しいな。」

『大丈夫、交換条件がある。』

「交換条件?」

 

俺は、九尾の人化、銀のことについて教えた。大赦の人は驚いていた。

 

「それは、本当かい。」

『本当。』

「銀とは、三ノ輪銀のことかい?」

『いや、俺が銀と言っているだけだ。』

「これは、園子様に連絡しなければならないかもしれない。」

 

大赦の人はそう言って病室から出ていく。

 

それから、何日過ぎたのだろう。と言っても朝昼晩とご飯が運ばれているから、何日過ぎたかはわかる。約三日だ。

その日は医師がきて、明日から普通に生活してもいいと言われた。

 

次の日に病室を出る。

四日間、薄暗い病室にいたため外が眩しい。

因みにだが、携帯は戻ってきた。大赦の人が俺にだけ特別に戻してくれたそうだ。

九尾が人化して、俺の近くに来る。

 

「大丈夫か、輝積。」

『大丈夫。』

 

俺はプラカードにそう書く。なぜプラカードかって?魅力があるだろ。

 

「声が出ないのか。それと、なぜプラカードなんだ。」

『俺のプラカードは希望の絶望が詰まってる夢のプラカードだ。』

「意味がわからないし、矛盾してる…」

 

俺は九尾と一緒に家に帰る。

 

体が重く感じる…。始めて樹海に行った後の放課後のようだ。

 

「大丈夫か?輝積?」

『大丈夫。』

 

そう答えたが、体は重くなるばかりだ。体の重みは入院してる時からあったが、外に出たとたん、さらに重くなった。

 

家を目の前にして、俺は意識が無くなった。

 

そして…

 

目を開ける。知ってる天井だ。

なんてネタをやって、回りを見る。

 

「おお!起きたか!」

 

凄く心配したんだぞ!というのがわかるほどの顔をしている九尾。さらに、銀もほっとした顔をしている。駄目だな、俺、皆に心配かけて。

 

「ごめん」

 

声が…出た。

 

「驚くなよ、お前に起きたことを話すからな…」

 

九尾はこちらを見ながら話した。

 

 

信じがたいことだったが、本当の事なのだろう。

俺は九尾の話しを聞いてそう結論ついた。

俺は何者なのか…記憶を思い出せばいい話しなのだが、思い出せないのだからしょうがない。思い出せるのは勇者や神樹、力の使い方ばかり。

 

「俺って改めて何者なのだろう…」

 

俺は皆の代わりに散華した。なのに、失った声が戻っているし、視界は広い、耳も良く聞こえる。さっき銀が水を持ってきて飲んだら水の味がした。

散華が治っている。

 

俺は何者なんだ。

 

「大丈夫?輝積?」

 

銀が話しかけてくれる。…あれ?銀!?

 

「銀、どうしたの!」

 

俺は銀を二度見する。身長と髪が伸びていて、顔も少し幼さが残ってはいるが、成長していた。

 

「お前が目を覚ます寸前であの姿になったんだ。」

「き、記憶は?」

「思い出せない。ごめん。」

「謝る必要はないよ。」

「それと、もうひとつ、重大なお知らせだ。」

 

俺は、そう言った九尾を見る。

 

「まず、バーデックスの殲滅おめでとう。」

「あ、ああ。」

「そして、次のバーデックスの襲撃に備えておいてくれ。」

「…そうか…」

 

わかっていた。バーデックスは十二体じゃない。無限にいることに。いや、倒す方法はある。天の神を倒すことだけだ。

 

俺にはそんな力は無い。だって、勇者じゃないから。いつも魔王を倒すのは勇者だ。

俺は…魔法使いや戦士みたいなものだ。

 

「あまり驚かないな。」

「わかってた…てのは嘘になるが、記憶でそういう情報があったんだ。」

「尚更君が何者なのかわからないね。」

「少なくとも人間では無い…自分で言うのもなんだけど。」

「でも、輝積は輝積だよ。」

 

銀がそう言ってくれる。その言葉は俺の暗く沈んだ心に光を射し込ませた。

そう感じた。

 

その時、お腹の音がする。

 

「はぁ、シリアスが台無しだね。銀、なんか食べておけって言ったろ?」

「え?私じゃないよ。」

「ごめん、俺だわ。」

「…そうだよな。倒れてから12時間立ってるからな。」

「12時間…え!?」

 

昨日退院したのが、午後3時で、家に着いたのが…

 

外ではチュンチュンと雀が鳴いている。

 

ただ今午前4時…

 

朝食を食べよう。深く考えたら負けだな。朝食は九尾に任せよう。

 

「よし、腕を降るって良いもの作るからな!」

「あ!私、うどんがいい!」

「朝うどんか…俺も頼む!!」

「朝からうどんって…結構ヘビーだぞ。」

 

その後、朝うどんを食べて、大赦に連絡。

大赦も勇者のことを思っているのだと、わかったから、仲良くしないとな。

 

それに、自分の正体もわかるきっかけがあるかもしれない。

 

大赦からの連絡は何回か身体検査のために病院に来てほしいということと、銀と九尾に会わせてほしいとのことだった。

 

まあ、全部都合が良かったらという条件付きだけどな。

 

さて、俺は学校に行く用意をする。

 

自転車をこいで学校へ…

 

その時の俺はカレンダーを見ていなかった。

そう、今日が日曜日ということに。




はい…散華を解決してしまいました。


てか、主人公がここからチート化…

謎が増える主人公…


取り合えず、次回はアニメで言うと第7話…
あの回です。

では、次回予告


次回予告

「残念そうに言え…」
「東郷、その情報は…」
「まあ、その時は私が…」
「そうだよ、輝積君…」
「でも、お姉ちゃん…」
「うーん…私も風先輩と…」

「無いに決まってるじゃないですか。」

次回 合宿

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