上賀 輝積は勇者でない 【完結】   作:風墳K

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はい…第11話です。

では…どうぞ…


第11話 守りたい者

ある日、また、俺はカラオケに来ていた。

だが、メンバーはこの前と違う。九尾と銀と俺の三人だ。

まあ、それぞれ好きな歌を歌う。

そんな中、俺は、トイレに行っていた。

トイレから帰る途中、綺麗な歌声がどこからともなく聞こえてきた。俺は、ハンカチで手を拭きながら、その声の主を探した。

本当に綺麗な歌声だ。

そして、ある一室を覗く。(こういうことはやってはいけません)そこにいたのは、あの樹ちゃんだった。

やっぱり、樹ちゃんは歌が上手い。

パソコンを使いながら自分の歌を録音している。多分だが何かに応募でもするのだろう。

 

俺はそこで見るのを止めた。これ以上は本人から聞こう。

 

そう、この日々を楽しもう…。

 

 

現実は時に残酷だ。

 

現在、樹海が発生している。

そう、バーデックスだ。数は大型が七体。星座型だ。

 

「残り七体…全部来てるんじゃないの…これ…総攻撃…最悪の襲撃パターンね。やりがいあり過ぎてサプリも増し増しだわ。」

 

そう言うと夏凜はサプリメントを飲む。

 

「樹も決めとく?」

「その表現はちょっと…」

 

確かに。

 

だが、奴らは結界の外にいる。

勇者はなんでも神樹様の加護が届かない外どは戦えないらしい。

 

「決戦ね…皆もそろそろ準備を。」

 

緊張をほぐしたりする友奈。

 

「よし!勇者部一同変身!!」

 

一同は変身をする。俺もその一人な訳だ。

 

「敵ながら圧巻ですね。」

「逆に言うとさ、こいつら殲滅すればもう戦いは終ったようなもんでしょ。」

「殲滅ね…」

「皆、ここは、あれいっときましょ。」

「あれ?どれ?」

「?」

 

友奈、東郷さん、樹ちゃん、風先輩が円陣を組む。

 

「え、円陣?それ必要?」

「決戦には気合いが必要なんでしょ?」

「は…」

「夏凜ちゃん!」

「たく、しょうがないわね。」

「輝積君!」

「いや…女の子と円陣組むのは…」

 

ある意味ご褒美…いやいや、ある意味犯罪では…胸が…特に東郷さん。

 

「いいから、やる!」

「は、はい…」

 

俺は樹ちゃんと夏凜の間に入る。

 

本当、改めて見ると勇者部全員可愛いな…

 

「あんた達、勝ったら好きなもの奢って上げるから、絶対死ぬんじゃないわよ!」

「よーし、美味しいものいっぱい食べようと!肉ぶっかけうどんとか!」

「言われなくても殲滅してやるわ!」

「わ、私も叶えたい夢があるから。」

「俺も、精一杯、皆と戦うよ。」

「頑張って皆を、国を守りましょ。」

「よーし!勇者部ファイト!!」

「「「「「「おーーー!」」」」」」

 

そう、意気込む俺達。

だが、何だろう…この胸騒ぎは。

 

俺は基本中距離だ。接近戦は夏凜と友奈、風先輩。遠距離は東郷さんの担当。

ポジション的には樹ちゃんと被る。

 

俺と樹ちゃんはポジション的にも近い所にいる。だが、戦いではあまり意味を成さなくなる。バーデックスと友奈達の戦いが過酷を極める。俺は別のバーデックスと戦う。

 

そして、友奈達がバーデックスを一体倒す。早い!これなら余裕!

俺はこの時そう思ったが、それは大間違いだった。

 

一体のバーデックスが友奈達の動きを止める。あれは鐘!?鐘の音で友奈達を止めている!?

 

俺も援護に入ろうとするが俺の前に二体のバーデックスが道を阻む。

 

東郷さんも遠距離から撃ってはいるが、別の敵に阻まれて援護出来ていない。

 

鐘の音が止まる。どうやら、樹ちゃんが止めたらしい。

 

だが安心したのもつかの間だった。四体のバーデックスが一ヵ所に集まっているのだ。

こ、これは…合体!?あの少年が一度は夢見る合体をバーデックスがしたのだ。いや、ダメだろう。合体は正義の味方の特権みたいなもんだぞ。

 

合体したバーデックスは赤い玉を次々に作る。あれは…火の玉?

 

それが次々と放たれる。火の玉は追尾で友奈達に襲いかかる。風先輩は剣でガードするが、吹き飛ばされ、夏凜や東郷さんの攻撃も融合バーデックス(合体だと少しかっこよく思えるから)には効かない。樹ちゃんも被弾してしまい、夏凜、東郷さん、更には友奈までやられる。

 

「う、嘘だろ…」

 

俺はそう言うことしか出来なかった。片手に拳銃、片手に小刀を持っているが、夏凜の刀や東郷さんの銃が効かなかったんだ。俺の武器の威力は星屑を倒せる程度。差ははっきりしている。だからといって引き下がるか?答えは否だ!

 

俺はあの強度を越える威力の武器を考えた…

ロケラン…爆風で威力が…

手裏剣…ワイヤーが火の玉でやられる…

なら…

 

対戦車機関銃だ!

 

少し大きな銃を持つ。能力なのか意外に軽い。俺はバーデックスに近付く。火の玉が向かってくる。なら、盾だ!

盾を生成しガードする。威力が高く爆風で飛ばされる。だが、受け身を取りバーデックスを睨む。この距離なら…いける!

 

俺は対戦車機関銃を撃つ。反動が馬鹿にならないが、変身による身体強化により反動を押さえられている。対戦車機関銃…名前の通り対戦車用の機関銃だ。戦車に大ダメージを与えるほどの威力。しかも、俺の武器にはなぜかバーデックスを倒せる効果がある。因みになのだが、対戦車機関銃を人間に撃つと破裂するらしい。良い子も、悪い子も、いい大人も悪い大人も人に対して撃つなよ。てかそんな機会ないだろうけど…

 

俺の攻撃は効いていた。だが、俺の頭上に火の玉が集まっていることに気が付かなかった。

 

「!?」

 

俺は頭上にある火の玉に気が付く。そして、その火の玉は俺に落ちてくる。対戦車機関銃という反動の大きな武器を使っている以上、簡単に動けない。こうなれば、限界まで撃ち続ける!

 

だが、それもあっという間、すぐ俺の視界は奪われる。火の玉が眩しすぎるのだ。そして、全身に激痛が走る。

 

「ぐああああー!」

 

焼けるように痛い。いや、焼けているのだ。

 

その痛みは数十分、数時間に感じた。

 

意識が飛びそうになる。いや、何度か飛んだのかもしれない。だが、痛みでまた意識が戻る。変身しているせいか、死なない。目の前では九尾が頑張ってバリアのようなものを張っているが、九尾以外意味を成さない。

 

突如、俺は火の玉から解放される。

 

外の気温が冷たく感じ逆に痛い。

 

俺は飛びそうな意識を保ちバーデックスを見るそこには…

 

「風…先輩…」

 

風先輩だ。だが、あの格好…

 

風先輩の格好はどこか神々しさを出していた。

 

「あれは…満開…」

 

満開…そうだ、あれは満開だ。

 

その時、俺の記憶の一部が甦る。

満開をした二人の少女。その後、散華した。

満開の代償…散華。

二人の少女、一人は片目、一人は両足の機能を失った。そう、体の一部が生け贄となる。一瞬の力のために。

満開をすれば散華する。彼女達はそれを…知らない。都合のいい神様なんていない。それは神樹も同じだ。彼女達は、利用されている…神樹に…。だが、俺がそれを思い出して何になる?力はあるか?

…いや、ある。

彼女達が真実を知る必要はない。神樹は別に悪いことをしている訳でもない。ただ、望まれたから、与え、その対価を貰うだけ。

そう、なら、その対価…

 

俺が払う。

 

いつの間にやら、バーデックスを二体倒していた。だが、代わりに東郷さん、樹ちゃんも満開を使っていた。残るは融合バーデックス。

 

だが、融合バーデックスも封印を始めていた。

 

俺は焼けるような体を鞭を打って起き上がらせる。こんな所で人焼肉のままではいられない。

 

風先輩の満開が解かれている。

 

俺は、自分の出来ること…いや、出来る可能性に賭けた。

 

背中から翼が生え、俺を包む。なぜ翼が生えたのか、なぜ俺を包むのかわからない。でも、体の痛みは消えていく。

そして、力が湧いてくる。

 

翼を広げる。姿が変わっていた。装甲は薄くなり、所々の色が変わっている。そして、右目に違和感がある。異様に右目が見える。遠くのことがよくわかる。

 

俺は、風先輩の元に駆け寄る。恐ろしく速いスピードで。俺はそのスピードを完全に制御して、風先輩に寄る。

 

「風先輩!」

「…あ…輝積…そうか、輝積も満開を…」

「少し待っててください。」

 

俺は右側の翼を風先輩に被せる。

 

「輝積?」

「今、怪我を直しています。」

 

そして、翼を戻す。

 

「ありがとう…少し楽になったかも…」

「風先輩…俺、皆の援護に行って来ます。」

「そう、私は少しここで休んでいるわ。」

 

俺はそう言ってバーデックスが封印されている所に行った。そこには、樹ちゃんと夏凜しかいなかった。

 

「すまん、遅くなった。」

「輝積、遅い…て何よその格好!!」

「輝積さんから翼が生えてる!?」

「そんなことより、友奈と東郷さんは!?」

「あそこよ。」

 

夏凜は上を指差す。

 

上には、大きなミタマが…て大きいってサイズじゃねー!

てか、俺はこんな大きなミタマに気が付かなかったのか!?灯台下暗しだな。

 

「早くしないと、拘束時間が…」

 

バーデックスの下では時間がドンドン過ぎている。

 

「俺も加勢しに行ってくる。」

「あんたには無理よ!」

「何なのための翼だと思ってるんだ?」

 

俺はそう言って飛び出す。翼を広げて空を飛ぶ。スピードを上げていく。途中で爆発の光が見える。

上から…何かくる!?

 

俺は、両手に拳銃を持つ。石のような物が次々と降ってくる。スピードを落とし、その石のような物を拳銃で破壊する。もし、この石が下の皆に当たったら…けどそんなことさせない。

 

石を破壊している間にミタマが破壊される。友奈と東郷さんがやったのだ。

 

そして、落ちてくる友奈と東郷さん

 

それを俺が受け止めるが、何せ自由落下だ。素手に隕石レベル。

 

俺は翼を広げて抵抗を大きくする。途中で翼を二人に被る。

 

「ぐぐぐ!!」

 

受け止めるのが精一杯だ。

 

「輝積さん!!」

 

下から樹ちゃんの声が聞こえる。

 

樹が満開で増えたワイヤーを使って受け止めようとしているのだ。

友奈と東郷さんはつぼみのような物の中にいるが、俺は生身だ。もしこの速度でワイヤーに当たれば、みごと人間の刺身の完成だ。そんなのは嫌な訳だから、俺は、受け止めるのやめて空に飛び出す。翼を広げるがボロボロだ。

 

ボロボロの翼を使って何とか着地する。

 

樹ちゃんも何とか友奈と東郷さんを止めることに成功した。

 

「やった!樹!貴女が止めたのよ!!」

「早く、友奈さん達の所に行ってください。」

 

夏凜は樹を置いて友奈と東郷さんの元に駆け寄る。そして樹ちゃんも倒れる。俺も何とか歩いて樹ちゃんの元にいき、翼を被せる。

 

「…輝積さん?」

「少し待ってろ。傷を治すから…」

 

少し立ち、翼を元に戻す。

そして、俺も倒れる。

 

その後、夏凜の呼び掛けには何とか答えたが、意識は朦朧としていた。

元の世界に戻り、そして、意識を手放した




主人公が変な力に目覚めました…てか、完全に回復キャラですね。(と言ってもほとんど回復させてる描写が…)

勇者といったらDQ。DQといえば、回復キャラ。
(因みにDQは8を少しとジョーカを少し、スラもりのDS、あとダイの大冒険を13刊まで読んだだけ)
あれ…俺DQ知らなすぎじゃ…

そんな事より次回予告。

次回予告

「え?私じゃないよ。」
「意味がわからないし…」
「俺って改めて…」
「気が付いたかい?」

次回 現実の厳しさ

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