ログ・ホライズン~マイハマの英雄(ぼっち)~   作:万年床

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祝1万UA&お気に入り件数300突破な第十三話。これについてはあとがきにて。

そして前回のあとがきで嘘つきましたw今回は本来イサミ回の予定で、イサミ視点で料理うんぬんの話をやるつもりだったんですが、全く筆が進まないという事態に陥りました。なので急遽変更しひさこ視点に切り替えることにいたしました。が、そのせいでひさこ過去編の執筆が大幅に前倒し。さらに今回は料理の話にも辿り着かず前後編化。しかも7500文字超えの謎の大ボリュームになっております。

今回の過去編の主眼はパーティー戦闘。初めて複数人数を戦闘で動かしているので、読みにくい文章となっているかもしれませんがご容赦くださいませ。


第十三話 だから、ひさこは“黒さ”に目覚めた。 前編(やはり俺が〈西風の旅団〉の副長なのは間違っている。 その5)

 引っ込み思案の気があるひさこにとって、〈西風の旅団〉というギルドに入るというのはいわば一大決心であった。

 なにせ、あの女性プレイヤーに大人気のソウジロウ・セタの作ったギルドだ。(かしま)しい女の子が多数集まるのは必然であり、引っ込み思案にとってはなかなかにハードな事態が予想された。

 それでもひさこが〈西風の旅団〉に入団しようと思ったのは、ソウジロウ・セタの存在に加えてもう一つ、あの〈放蕩者の茶会〉(デボーチェリ・ティーパーティー)に所属していた〈召喚術師〉(サモナー)が一人、〈西風の旅団〉に所属していると聞いたからだ。

 噂によると(よみ)と言うそのプレイヤーは、ひさこと同じく引っ込み思案でありながら、茶会の〈大規模戦闘〉(レイド)パーティーでも重要な役割を占めていたらしい。

 もしかするとプレイやリアルの参考になるかもしれない。そう思ったひさこは〈西風の旅団〉の門を叩いたのだ。

 そうして入った〈西風の旅団〉で、彼女はとあるぼっちの少年と邂逅することとなるのだった。

 

 

 

 

 

 〈西風の旅団〉最初の〈大規模戦闘〉(レイド)が終わって数日が経過していた。

 何だかんだですんなりクリア出来たこともあって、ギルド内では今後に対する楽観論も出始めていた。ひさこもソウジロウや詠の隊に配属されなかったのが不満ではあったものの、概ね満足の行くレイドだったと思っていた。

 しかしソウジロウたち幹部陣の考えはそうではなかったらしく、ここ数日は前回の反省を踏まえた上での訓練が行われていた。なにせソウジロウやナズナ、詠たちの基準はあの(・・)〈放蕩者の茶会〉だ。先日のレイドの出来にも相当の不満点があったのだろう。

 

「面倒だから嫌だ!働きたくないでござる!」

 

 というサブギルドマスターの魂の叫びは数の暴力の前に黙殺され、ひさこの所属する三番隊もパーティー内での連携を高めるための訓練に赴いていた。

 今回の訓練場所に選ばれたのは〈フジ樹海〉。〈霊峰フジ〉の北側、現実世界でいうところの青木ヶ原樹海の位置にある、凶悪な高レベルモンスターが闊歩する巨大フィールドだ。モンスターはそのほとんどがレベル85を超え、高レベル〈冒険者〉のレベリング・訓練に用いられることも多い。

 とはいっても本来、(レベルに余裕さえあれば)ソロでも活動可能な場所だ。全員レベル90で構成された三番隊にとってはなんてことのない訓練となるはずだった。

 

「ッ!?総員、後方からの敵集団に備えろ!!」

 

 しかし現在、ひさこたち三番隊は激戦の中に身を置いていた。

 まず最初の(つまず)きは、ひさこの召喚していたサラマンダーがモンスターを八体ほど引っ掛けてしまったことだ。

 〈召喚術師〉に召喚された従者は、その名の通りに主に付き従う。しかし、その動きは召喚主の通った道をなぞるのではなく、最短距離を直線的に動こうとする傾向にあるため、〈召喚術師〉はその動きに細心の注意を払う必要がある。

 ただ、この〈フジ樹海〉というフィールドは視界がかなり悪いのだ。一面が樹木に覆われているせいで陽の光が差し込まない上に、足元にも樹の根が張り巡らされているため、暗い中を足元を注視しながら進まねばならないのだ。

 ひさこがモンスターを引っ掛けてしまったのは、油断がないとは言えないが不運であったとは言えなくもない。そんな出来事であった。

 それだけのことであれば十分に対処できる事態でしかなかったし、事実八幡を始めとする三番隊メンバーはすぐに武器を構えていた。しかしそれ以上に不運だったのが、臨戦態勢の三番隊の後背に、突如大量のモンスターが出現したことだ。

 どうやらどこかの〈冒険者〉パーティーが、うっかり自分たちの手に余る数のモンスターを引っ掛けてしまったらしく、不幸にも三番隊は逃げる〈冒険者〉パーティーとモンスターの群れの間に入り込んでしまっていたのだ。

 意図しない"モンスターを使ったプレイヤーキル(MPK)"。咄嗟に八幡が警告を発したものの、後ろから最後衛のオリーブに襲いかかった大量のモンスター群は、イサミが割って入るまでの一瞬でオリーブを戦闘不能寸前まで追いやっていた。

 

「くそっ!くりのんはオリーブさんの回復(ヒール)を。前方の八体は俺が抑えるから、他のメンバーは後方の敵に集中しろ!」

 

 咄嗟に飛んで来た八幡の指示に、ひさこたちは後方の敵へと向き直る。確かにこの数をどうにかしなければ、いくら戦士職のイサミでもそうそうにHPが尽きてしまうだろう。だが、前方の敵も紙装甲である〈暗殺者〉(アサシン)が長時間抑えるには数が多すぎる。可能な限り早く殲滅して、八幡の援護をする必要があった。

 

(出し惜しみ……してる暇はない……)

 

 自分たちが現在置かれている状況を確認したひさこは、自身が召喚できる最強の従者を召喚することを決めた。

 

「従者召喚:〈不死鳥〉(フェニックス)……!」

 

 〈不死鳥〉(フェニックス)。炎の属性をもつ、レベル86以上の高レベル〈召喚術師〉のみが使役できる上位精霊。輝くオレンジと深紅の炎をまき散らすその巨鳥は、敵を範囲殲滅するのにはうってつけの存在だ。

 ひさこに召喚された〈不死鳥〉の撒き散らした炎は、モンスターに襲いかかるとその幾体かをポリゴンの粒子に変え、その数倍のモンスターに深手を負わせることに成功していた。

 ただし、強力な従者である〈不死鳥〉にも大きな欠点が存在する。

 

「範囲攻撃が再使用可能になるまで残り300秒です……」

 

 ……特技の再使用規制時間(リキャストタイム)の長さ、連発が効かないことである。つまりその間は、他の従者や特技で乗り切らなければならないのだ。

 こうなってくると、〈妖術師〉(ソーサーラ)のオリーブが一時的な戦線離脱を強いられているのが痛い。範囲火力という点では、〈妖術師〉はこのゲームでは頭一つ抜けている。だが、だからこそ逆にモンスターの敵視(ヘイト)を奪いかねないこの状況では攻撃させられない。紙装甲の〈妖術師〉がHPが一割を切っている状態で敵に一撃をもらえば、その時点で戦闘不能である。

 さらに、三番隊で最強の攻撃力の持ち主(ダメージディーラー)である八幡は、一人で前方の敵と相対している。

 他のメンバーは戦士職である〈武士〉(サムライ)のイサミ、武器攻撃職の〈吟遊詩人〉(バード)だがどちらかというと援護歌特化ビルドであるドルチェ。そして回復職(ヒーラー)のくりのんである。攻撃力という点ではあまり期待はできない。

 つまりこのパーティーで現状もっとも自由に動けて、なおかつ攻撃力を持っているのはひさこだということ。

 

(なんとかしないと……。効率良く、殲滅速度重視で!だったら……)

 

「戦技召喚:〈ソードプリンセス〉……!」

 

 続けてひさこが召喚したのは〈ソードプリンセス〉。こちらは従者召喚と違い一瞬だけの召喚でしかないが、その分一回の威力は高めに設定されている。先ほど〈不死鳥〉が削った敵のHPをその流麗な剣さばきで斬り飛ばした剣の乙女は、役目を終えて溶けるように消滅した。

 

(これでどうにか5分の1くらい倒した……?)

 

 しかし戦況はいまだ好転していない。敵の集中攻撃を受けているイサミのHPは現在進行形で削られ続け、そのイサミをHPをカバーしながら合間にオリーブの回復も行っているくりのんのMPの減り方も激しい。

 ドルチェも二人を助けようと、HP回復効果のある歌である〈慈母のアンセム〉、MP回復効果のある〈瞑想のノクターン〉の二つの援護歌をセットしているようだが、焼け石に水よりは多少マシだと言えるくらいの状態であった。

 

「ひさこさん。〈ユニコーン〉を召喚してくりのんの回復(ヒール)を援護!逆にくりのんは少し抑えろ。このままだとMPが切れるぞ!」

 

 ジリジリと減り続ける二人のHPとMP。そこに八幡からの指示が飛ぶ。

 

(一人で何体も敵を抑えているのに……サブマスはパーティメンバーのステータス画面まで把握しているの……?)

 

 八幡の指示に従い〈ユニコーン〉を召喚しながら、ひさこは驚いていた。後衛で魔法を撃っているだけの自分は目の前のことに必死だというのに、流石というべきか隊長である八幡は戦況の確認を怠っていなかったのだ。

 

(これが茶会の元メンバーの実力なの……?)

 

 召喚された〈ユニコーン〉は、イサミに対して〈ファンタズマルヒール〉を投射し、くりのんの回復行動(ヒールワーク)を援護し始めた。それにより回復の厚みが増し、イサミのHPとくりのんのMPの減少に一定の歯止めがかかる。

 

「やっと攻撃できるわ。〈ラミネーションシンタックス〉!〈ライトニングチャンバー〉!!」

 

 そこへ、ようやく戦線に復帰したオリーブの攻撃魔法が加わる。

 補助魔法である〈ラミネーションシンタックス〉により範囲攻撃へと拡大された電光の五芒星は、本来単体しか捉えられないはずの敵を多数閉じ込め、さらに捉えた敵へと幾重にも分散した電撃を浴びせた。〈妖術師)の中でもトップクラスのダメージ誇るその電撃魔法は、敵集団の残り半分を一気に葬り去ることに成功する。

 そこから先の戦況は、一気にひさこたちへと傾いた。そもそもが高レベルとはいえただの〈ノーマル〉ランクモンスターだ。数さえ減らすことが出来れば、後はどうにでも出来る。

 

「やーーーっ!!」

 

 ひさこたちはそのまま敵を倒し続け、ついにイサミが最後の一体を斬り倒す。

 

「みんな!早くハチくんの援護よ!!」

 

 ドルチェの一言に、ようやく八幡の援護が出来る、と振り返った5人だったが

 

「ん?そっちも終わったん?」

 

 その視線の先にいたのは、刀を鞘に納める八幡のみであった。

 

 

 

 

 

 長くて疲れる訓練も終わり、〈西風の旅団〉の一行は〈アキバの街〉への帰路に着いていた。

 

「今日は疲れたね~」

 

 疲労感が混じりながらも明るい声を上げたのはイサミ。ちょっと引っ込み思案のひさこ相手でも普通に接してくれる、三番隊のムードメーカーだ。

 

「そうね。流石に今日はちょっと疲れたわね」

 

 イサミに同意を示したのは副隊長のドルチェだった。隊長を始め比較的若いメンバーで構成されたこの隊において、万事に落ち着いた(かのじょ)の存在は大変に貴重だ。

 

「今日はすみませんでした……最初に私がモンスターを引っ掛けちゃったせいで……」

 

 その二人に対して、ひさこは先ほどは口に出来なかった謝罪の言葉を伝える。

 現在、サブギルドマスター兼三番隊隊長の八幡は、ソウジロウたちと今回の訓練についての話し合いを行っている。オリーブは、少しでもソウ様の側にいたいから!と八幡に付いていき、くりのんは他の女性メンバーにちょっかいを出しに行っていた。

 そのため、現在この場にいるのはひさこ、イサミ、ドルチェの三人だけなのだ。

 

「いや~、あんなのは不幸な事故でしょ。問題はどこの誰だか分からないMPK集団よ!!」

 

「そうよね~。別にひさこちゃんが連れて来ちゃった数くらいだったら、簡単に片付いてたんだし」

 

 ひさこの謝罪に対して返ってきた二人の言葉には、ひさこを責めるような調子が一切混じっていなかった。そもそも、ああいったハプニングを事前に体験するのも訓練の目的の一つだ。そんなことをわざわざ責めるようなプレイヤーは、この場には存在していなかった。

 

「でも……」

 

 だけどひさこはそうは思えなかった。自分があそこで敵を引っ掛けなければ、八幡が最初からあの大集団との戦闘に加われていたのだ。そうすれば、あんなに苦戦することもなかっただろう。

 

「ん~、まあひさこが気にしちゃうのも仕方がないかもしれないけど、一応誰も戦闘不能にもならずに勝てたじゃない」

 

「そうよ~、ひさこちゃん。あのおかげでアタシたちの連携のレベルもだいぶ高くなったわ。結果的にはあれで良かったのよ」

 

 イサミとドルチェの言葉に納得がいかずひさこはまた二人に謝ろうとするが、その挙句にひさこをなだめようとするイサミとドルチェの二人と口論になりかける。

 

「ん~、どうしたんですか。ドルチェさん?」

 

 大きな口論に発展しそうになっていた三人の話し合いは、戻ってきた八幡により中断を余儀なくされる。

 

「ん、なんでもないわよ、ハチくん。それよりソウちゃんたちとの話し合いはどうだったの?

 

 ヒートアップしかけていた話し合いの中で、最後まで冷静さを保っていたように見えたドルチェ。

 八幡がそんな(かのじょ)に声をかけたのは偶然であったのか。八幡とドルチェの会話だけで、先ほどまでの雰囲気が一瞬で消え去り、ひさこはそのことに驚いた。

 

「いや、まあ大したことじゃないですよ。各隊の連携の状態の確認だとかそんなもんです。まあ、この隊はとりあえず問題ないでしょ」

 

 そのまま八幡とドルチェは隊の運営についての話し合いを始めるが

 

「あの……サブマス……」

 

 ひさこは思わず八幡に声をかける。

 

「今日の戦闘なんですが……」

 

「今日の戦闘?」

 

 おずおずと話すひさこに、八幡はドルチェの方へと一瞬視線を向ける。その八幡に対してドルチェが小さく頷くが、少し緊張していたひさこはそれに気付かなかった。

 

「私……あの……」

 

 まずは謝ろう。そう思ったひさこは謝ろうとしたが

 

「……あー、今日の戦闘か。いや、すごくいい動きだった。範囲攻撃が必要なことを理解して自主的に動いてたし、周りのフォローも出来てた。敢えて言うなら、ユニコーンはもうちょい早目に召喚してても良かったけど、そもそも攻撃職だからな。ヒーラーの真似事させようっていうこっちがおかしいんだよ。しかもその後のヒールワークは完璧だったし」

 

 その前に告げられた八幡の言葉に、謝罪の言葉が喉の奥へと引っ込んでしまう。

 どうやら自分は褒められているらしい。そう感じたひさこは完全に言葉を失った。

 

「っと、そういやまだセタに話すことがあるの忘れてたわ。……ドルチェさん、あとお願いします」

 

 そう告げると八幡はすぐにまた去っていった。ひさこに謝罪もお礼も言わせることなく。

 

「……あのね、副長が言ってたのは嘘じゃないよ。多分だけど、副長はそういうことでは嘘は言わないと思う」

 

 足早にその場を離れる八幡の背中を視線で追いながら、イサミが告げる。

 

「…………」

 

「この間の〈大規模戦闘〉(レイド)の時、副長がウチに言ってくれたんだ。状況を的確に見て、必要な動きをしていた。それは十分に大したことだって」

 

 ひさこの目から見て、今日もイサミは素晴らしい動きをしていたと思う。咄嗟に後方の敵へと突撃した判断力は、今の自分にはないものだ。

 

「だったら今日のひさこちゃんは合格よ。アタシたちの中でもかなり冷静な方だったわ」

 

 おそらくドルチェは本当にそう思っているのだろう。そう感じたひさこは

 

「……分かりました。とりあえず今日はそれで納得します……」

 

 だから反論をやめ、とりあえずはその言葉を受け入れることにする。いつか本当にすればいいのだ。自分が納得できるように。

 

 

 

 

 

 

「でも、今日の戦闘で一番問題だったのはアレだよね……」

 

 その後も今日のことについて話し合っていた三人だったが、イサミが思い出したようにしゃべりだす。

 

「ええ、アレね」

 

 それはドルチェにはピンと来たようで、すぐにイサミへの同意の言葉が発せられる。

 

「アレ……?」

 

 ただ一人理解できなかったひさこは、思わず二人に聞き返していた。

 

「副長だよ、副長。なんでウチたちが五人がかりでモンスターを倒してたのと同じ時間で、一人で八体も倒せるの?そっちの方がよっぽど問題だと思うんだけど」

 

 そういえば疲労で忘却していたが、ひさこにはあの光景がなんだったのかはいまだに分からないままだった。

 

「しかもアタシたちに指示を出しながら、ね」

 

 隊の指揮を取りながら、あの速さで八体ものモンスターを一人で倒す。加えておそらく回復(ヒール)もろくに飛んでいないはずだ。本当にどうやったんだろう……。

 

「というよりもアレね。多分ハチくんは、ソロで戦うのに慣れてるのよ。なにせ西風に入る前は一度もギルドに所属したことがなかったみたいだし」

 

 ドルチェの言葉に、ひさこは自分が八幡の昔のことをほとんど知らないことに気付いた。分かっているのはあの茶会出身であることと、ソウジロウがやたらと懐いているということくらいだ。

 

「あ~、その話だったらウチも副長から前に聞いた」

 

 そういえば、最近八幡とイサミの二人は、ちょこちょこと話をしているようだ。以前ひさこが通りかかった時に、二人で新選組の話で盛り上がっていたのを見かけたことがある。その時にでも本人から聞いたのか、イサミも八幡が〈西風の旅団〉に来る前の話を聞いたことがあるらしい。

 

「そうなの?アタシはこの隊の副隊長を引き受けるときにソウちゃんからちらっと聞いただけで、詳しいことは知らないから、ハチくん本人がなんて言ってたのかは気になるわね」

 

 ただ情報としてしか八幡の過去を知らなかったドルチェは、イサミの話に興味を引かれたようだ。当然ひさこも興味津々で、イサミが続きを話すのを待ち構えていた。

 

「え~とね。ごほん。

 

『あ、ギルド?俺みたいな彷徨える孤高の魂は拠り所を必要としねぇんだよ。そもそも〈専業主婦〉のサブ職業のおかげで家事も一人でこなせるし仲間なんていらなくね?……それは俺に友だちがいないからだと?はいはい、そうですよ。たしかに友だちはいませんがなにか?狩りやクエストなんてソロで余裕だしな。……茶会?ああ、あそこはギルドじゃないしな。なんていうかこう……ワガママお嬢様に(かしず)く暇人と廃人と変態とストーカーとバスガイドと雑用係の集まりみたいな感じだな。……俺?雑用係ですがなにか?……よっし表出ろ!雑用係の強さ、思い知らせてやんよ!……あ、お前。それはズルいだろ。この間のはもう誰にも言わないって約束しましたよね?……はいはい分かりました。土下座しますよ、させていただきます!』

 

って言ってた」

 

「「…………」」

 

 思わず黙りこんでしまった二人だったが、イサミは全く気にした様子を見せずに話を続ける。八幡の土下座姿について面白可笑しそうに語るイサミの話を聞きながら、ひさこは別のことを考えていた。

 確かに自分は引っ込み思案でコミュ障だ。この性格が直れば、もっとこの〈エルダー・テイル〉を楽しめるのではないかと思っていた。

 なのにあの凄腕の〈暗殺者〉(アサシン)は、友だちなど必要ないという。そんな彼を観察していれば、いつか自分のこの性格を好きになることが出来るかもしれない。

 そして今日の戦闘での出来事はやっぱり誰がなんと言おうと失敗だった。でも、仲間がいたからフォローしてもらえた。助けてもらえた。

 いつか自分も、仲間たちを助けられるような存在になりたい。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 この数カ月後、〈西風の旅団〉に所属する一人の〈召喚術師〉(サモナー)にひとつの通り名が付けられた。“ちょい黒〈召喚術師〉(サモナー)”というその通り名の原因となったのが、とあるぼっちの〈暗殺者〉(アサシン)を観察し続けたことであるというのは、本人と八幡以外の三番隊隊員たちの見解の一致するところである。




なぜ料理話をひさこ視点にするためだけに、しかもその前置きの為だけにこんな長文を書いたのか。もう自分でも分からんでござるw今回オチがかなり弱いので、なんか良さげな文章思いついたらこそっと差し替えるかもしれません。なお、作中のフェニックスのリキャストタイムに関する部分はオリジナル設定となります。ただ、アニメでのあの威力から考えると実際に連発は出来ないと思うのですよ。

さて去る4月3日のことですが、この作品が日間ランキングの50位に入っていたようです。普段お読みいただいている方、お気に入り登録頂いている方、評価を付けて頂いている方の全てに感謝を!……ただ、突然お気に入り件数が倍近くになってプレッシャーがハンパないですw今後も生暖かい目で見守って頂けると幸いです。

さて次回以降について。今回がひさこ話の前編だったので、次回は当然後編となります。料理についてのあれやこれになるのは確定している上に、イサミ視点で一度書いている(ボツ原稿)ので、多少は早目に書けるかな~と思わなくもないのですが、残念ながら今日から三日間あまり執筆時間が取れません。更新は4月9日が濃厚です。つうか早く話進めないと、主人公が全然出ないw

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