4月13日誤字修正
―白銀side―
-横浜基地仮設執務室-
なぜかロリコン扱いされちまったけど霞とも仲良くなれたし別に問題ないな。
こういうのは気にしたら負けだ、もう手遅れな感じが漂っているが…
それにしてもリーディングで知ったのかいきなり「またね」って言ったことが嬉しいぜ。
それよりも気が付いたことを先生に伝えないと
「それで白銀、社と話して気が付いた事あったかしら?」
「気が付いた事といいますか、記憶とは違う点ならありました」
「いいなさい」
「まず先程も言った通り初めて会った時は毎回避けられていた事が一つ。それと部屋から出て行くときに「またね」と言ったことですね。毎回俺が訂正させるまで俺の前から下がるときはバイバイでしたから」
先生に先を取られてしまったので気づいた点を挙げた。
「なるほど、それなら確実に記憶流入は起きているわね。頭痛が起きなかったのはESPの能力でも関係してるのかしら?」
どちらも脳関係だしねと先生は呟きながらPCに向かって打ち込み始めた。
「えっこれだけで断定しちゃっていいんですか?リーディングで読んだから言い換えたのかも知れないし…」
会話の内容が少し違うだけぞ?
「不思議かしら?社はそう簡単に言葉使い変えたりしないのよ。AL3から引っこ抜いた時から変わってないのが証拠。なのに、出会って直ぐの白銀相手に変わるなんて流入したと考えるべきだわ」
「記憶を読んで懐いたのかも知れないですよ?」
「アンタさっき2週目でも最初避けられたって言ってたじゃない。2週目でも記憶読めるんだからその線はないわ」
なるほど、それで最初から返事してくれたのか
「それじゃまりも呼ぶわよ?」
「待ってください!」
「なによ、そんなにスパルタがいやなの?情けないわね~」
…先生すっげー目が笑っているよこれはスパルタからは逃げられないな…
「いやそうじゃなくて、未来のことで気になった事があるので相談したいんですよ」
「そういうことなら聞こうじゃないの」
先生も真剣な表情になったので話し始める
「俺が因果導体として2001年の10月22日からループしていた事に関することなんですけど、この世界でもその日になったら自分が来るんじゃないですか?」
「そうね、その可能性はあるわね。そして来た場合はアンタの存在を上書きするかアンタが記憶のように存在を取り込むか、ね。気づいて良かったわ。今のうちに記憶にある事全部書き出しておきなさい」
「その事なんですが同時に存在するってありえませんかね?」
「同時に同じ存在がいることは出来ないわよ。いえアンタの話じゃ」
「ええ2週目の世界での実験で、以前の世界に行った際に同時に俺が存在したことがあるんですよ」
この事は今の段階で話しておかないといけないだろう。
「なるほど、このことは優先的に調べましょう。でももう一人の白銀がこの世界に現れるとしたらその白銀が“カガミスミカ”が望んだ白銀ってことになるわね」
「でしょうね。ここでもお隣で幼馴染でしたけど俺が武家だったので元の世界のようにいつも一緒ではなかったんですよ。まあ、一番仲が良かったのは他の世界と変わってないですけど…」
「なるほどね~確かに他の世界から好きな人を連れてこれるなら少しでも自分に好意的な世界から連れてくるわね」
「でもそうなると、00ユニットの起動は10月22日過ぎてからになりますね」
「そうね、鑑を00ユニットにしたとしても調整役に違和感を感じてしまったら00ユニットとして完全にはなり得ないし、最悪機能しなくてもおかしくない。まったく厄介だわ」
00ユニットが使えないとなるとハイヴ攻略も向こうの自分が来てからになりそうだな。
つか夕呼先生が俺の前で頭抱えるなんてそんなに悩む事だろうか?
「・・・白銀アンタ暢気な顔してるわね。自分が消えるかもしれないのに平気なわけ?」
「平気では無いですけど、死ぬ覚悟は京都防衛戦の時に、いや斯衛の衛士になった際に出来てます。それに多分存在を消されることも無いと思ってますから」
「消されることは無いってどうして思うのよ。因果受信体の直感とでもいうわけ?」
「違いますよ。呼び出してる人物を考えてみてください。純夏ですよ、純夏。あいつが俺が二人いることが出来る状態に出来るのにそれを望まないワケないでしょう」
「そんなに自身満々で言われてもねこっちは00ユニットとして話した記憶が少しあるだけなのよ?それだけで人となりまで分かるわけないでしょ。それが出来たらとっくにAL5なんて潰しているわ」
先生なら分かっても良さそうなんだけどな・・・なんて言ったらなんかされちまうんだろうな・・・
「とりあえず白銀は消えてもいいように記憶の書き出しを最優先で行うこと。これからも記憶が入ってくることがあるかもしれないし、考えたくないでしょうけどアンタが消える可能性が一番高いんだからね」
「了解しました。ですが書き出すのは横浜基地にいる間だけですよね?」
「当然ね。いくら所属が斯衛軍だとしても内通者が全くいないわけではないのだから」
「信じたくないですけどね。記憶を見る限りいないと言い切ることはできませんし」
「そう、斯衛でも内通者は出たのね」
「はい、記憶上AL5に移行した時にそれなりの人数が…」
話してたら雰囲気が暗くなってしまったな。
それにしても消えることに対して気遣ってくれるあたり、やっぱり夕呼先生なんだな。
「それでは夕呼先生、俺部屋に戻りますねおつk「まりもにまだ面会してないわよ」・・・ソウイエバソウデシタネ・・・」
逃げられなかったか…
「何よそんなにスパルタが嫌なワケ?」
「夕呼先生だって知っているでしょう!まりもちゃん鬼軍曹って呼ばれているんですよ!」
おや、先生が驚いた顔してるけど変なこと俺言ったか?
「へぇ~アンタまりものことそんな風に呼んでいたんだ。これは私が頼まなくてもスパルタになったかもしれないわね」
・・・シマッタ
「まりもちゃんや鬼軍曹って呼んでたのは他の世界の俺なんで俺は関係無いです!」
「あたし相手にそんな言い訳通じると思っているの?」
・
・・
・・・
―ザッ―
orz
「どうか本人には内密にお願いします」
この時した土下座は記憶の中で1番きれいだったと思う。
「どうしようかしら?私にとって秘密にしたところで旨みが無いのよね~♪」
この人はやっぱり夕呼先生だ。紛れもなく夕呼先生だ。背中から悪魔の羽と尻尾が見えてるぜハハハッ。
「仕方ないわね~貸しにあげるからしっかりしなさい。背中が煤けているわよ」
「アリガトウゴザイマス」
どうやら危機は去ったらしい。土下座の力は偉大だ。
……先生がいい笑顔だけど
絶対厄介なことになるんだろうな・・・頑張れ俺。
―まりもside―
-横浜基地ブリーフィングルーム-
この基地の副司令である夕呼から『扱いてほしい衛士がいる』と任務を受けたのが3日前、
あの唯我独尊の友人のことだから『直ぐにでも訓練を始めなさい』と言ってくるかと思ってたら
顔合わせは少し待ってくれ。と言われた際は珍しい事もあるものだと驚いた。
なので『扱いてほしい兵士』が普通ではないだろうと予想してたが、
斯衛軍ってどういうことよ!?
しかも一般出身者の黒ではなく山吹ですって!?
扱く事に関しては富士教導隊に所属してた頃も含めてそれなりの経験があるが、
さすがに斯衛のしかも武家の人なんて経験ないわよ!
しかも、扱く相手は現役の衛士。一つだけとはいえ階級も上だ。
階級社会である軍に所属している身としてはそれだけで厄介極まりない。
それにここは国連軍なのよ!?もし問題にでもなったらどうするのよ!?
G弾が横浜に投下されて以来米軍に対する国民感情は憎しみに染まり、
またアメリカの犬と陰口を日頃叩かれている国連軍に対してもいい印象はないだろう。
いくら軍人とはいえ、いや自国のために戦う軍人だからこそそういった感情は強い。
こんな状況で斯衛軍の少尉の訓練をスパルタで行え、など神経がどれだけ太くても気が休まらない。
これならBETAの群れを相手にしているほうが気が楽だ。
などとそんな事を考えていたら顔合わせの日になっていた。
心の準備は3日間の間にしたが、それでも不安が尽きない。
―ガチャッ―
「まりもーこの間言った衛士連れてきたわよー」
「副司令。お願いですから神宮寺と呼んでください」
「やーよ、そんな堅苦しいの趣味じゃないの」
「ここは軍なのですよ!?」
「上のアタシが嫌だって言ってんだからまりもはそれに従えばいいの。それにこの基地はアタシのモノみたいなものだし」
「・・・分かったわ」
夕呼はいつも通りだった。尤も私がお願いしたところで直すことは無いとわかっているが、
訓練兵が傍にいてもこの調子なのだから、少しは教官である私の立場も考えてほしい。
軍規を教える側である教官が副司令などを呼び捨てなんてできるわけないでしょ!
「そう、なら挨拶でも始めなさい」
「はっ、斯衛軍所属 白銀武少尉であります」
「国連軍横浜基地所属 神宮寺まりも軍曹であります」
夕呼の後に続いて入ってきたのがどうやら問題の斯衛の衛士らしい。
この衛士に関しても副司令から『知らない方が面白そう』という理由で
『斯衛に所属している武家出身者』以外の情報は知らされていなかった。
なるほど白銀というのか、若いわね。国連軍じゃまだ募集すらしてない年齢なんじゃないかしら?
「白銀少尉一つ質問よろし『まりも~堅苦しいのは無しって言ったでしょ~白銀アンタもよ。』・・・分かりました。では白銀君一つ質問良いかしら?」
「機密などに関係しない内容でしたらいいですよ。まりもちゃん」
「まりもちゃん!?」
――ズキン――
痛っなんで頭痛が?
「白銀アンタ堅苦しいのは無しって言ったけどいきなしまりもちゃん呼びとは恐れ入ったわ」
「少し慣れ慣れしかったですかね」
「・・・えっ?」
「?、まりもどうかしたかしら?」
「ええ少し頭痛が起きてね。でも直ぐ収まったし大丈夫よ」
「そう、大丈夫なのね。ならいいわ」
「それと白銀君、下の名前で呼ぶならさん付けでお願いね?」
「分かりました。まりもさん。それで質問は?」
「白銀君の年齢のことなんだけど、聞いても大丈夫かしら?」
「それくらいなら大丈夫っすよ。歳はこの間16になりました」
若いとは思ったけど16歳ね。斯衛は京都防衛の時に武家の人が臨時任官されたと聞いたけど彼もその一人なのね。
「なによもしかして、アンタ白銀に惚れたりしたわけ~?」
「違うわよ!訓練するにあたって体力とかの目安に聞いておきたかったの!」
「筋力維持とかは入院中も行われていたので体力はそれほど心配いりませんよ。ただ感覚が鈍ってしまったので取り戻したいんです」
「そういう事ね、夕呼がスパルタでなんで言うから体力がないのだとばっかり思ってたわ」
「感覚を取り戻すだけなんで訓練内容は流し程度で十分ですよ」
「まりも、スパルタは変更しないでね。副司令命令よ」
「畜生ーーーー」
白銀君そんなにスパルタが嫌なのね。斯衛のスパルタって一体どれくらい扱くのかしら?
叫ぶくらい嫌なのだから帝国軍や国連軍以上に扱くのでしょうね。これなら少し位ハードにしても問題無いみたい。
「それじゃ訓練は明日から始めましょ」
「それで何時まで訓練はするの?」
「一応来週末には斯衛の方に戻る手筈になってるからそれまでお願いするわ」
「クソ~やっぱり夕呼先生のイタズラからは逃げられないのか」
――ズキン――
っ、また頭痛が来るなんて風邪でも引いたのかしら?
これから訓練するのだから体調には気を付けないといけないわね。
「まりも?もしかしてまた頭痛?体調には気をつけなさい」
「心配してくれてありがと。別に体調が悪いわけでもないし大丈夫よ」
「まりもさん、無理せず軽くでいいですよ、軽くで」
「白銀君も心配いらないわよ。訓練は確り行いますから」
「じゃあ顔合わせも済んだしアンタ達は帰りなさい」
「「失礼しました」」
―バタン―
「それではまりもさん明日からよろしくお願いします」
「こちらからもよろしく。明日は8時にグラウンドに集合ね」
「了解しました教官。それじゃおやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
なんだか想像していた斯衛の人とは違うけれどこちらを嫌ってる感じもないし良かったわ。
それにしても白銀君ってなんだか馴染みやすい子ね。前にも似たような事があった気がしてくるわ。
そんなことを考えながら自室に戻ると明日からの訓練内容を考える私だった。
………あっ!?
何か引っかかると思ったら、白銀君ってば鳴海君に雰囲気が似てるんだ!だから妙にデジャブを感じたのね。
任せて白銀君。貴方は鳴海君のように死なせやしない、私が鍛えてあげるから!