MUV-LUV ALTERNATIVE 救世主になれる男   作:フリスタ

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今日はここまで


01

Side マサキ

 

俺は女神様が用意していたらしい説明書を読みながらサイバスターで飛んでいた。

 

「えぇと、機体性能が書いてあるな……」

 

―――は!? いや、確かに 改造MAXにしろとは言ったけどさ……カロリックミサイル99発。ハイファミリア99発。コスモノヴァ5発って何だよ!? どこに隠し持ってるんだよ!? 弾数の改造はここまで大幅に出来ないはずでしょうが。

 

「あ、なるほど、カロリックミサイルは光弾仕様なのか……それならかさばらないか」

 

サイバスターは歴代のスパロボ系に何度か出ているが、実弾のミサイルと、光弾のミサイルがある。見た目が違うだけで、光弾でもジャマーの影響を受けたりするが、弾数としてはこれなら助かる。

 

ハイファミリアに関しては異次元からも呼び出せる仕様らしく、弾数が多くても基本的に問題ないらしい。

 

「コスモノヴァだけ5発なんだな……。まぁ十分すぎる気もするけど」

 

コスモノヴァは最強の必殺技だ。あの威力だから遠くに避難させても味方を巻き込んでしまいかねない。使う機会はあるのか?

 

 

 

「しかし、これは何だ?」

(敵を倒せば女神ポイントが溜まって、そのポイントは勝手に修復や補給に回されますので、じゃんじゃんBETAを倒して夢のグランドスラムを目指してくださいね☆)

 

「女神ポイントって何だ。あの女……キャラ変えてんじゃねーよ」

 

まぁつまり、このサイバスターで戦う限りは、修復や補給に悩む事はないというわけだ。何だグランドスラムって?

 

 

(ペラ)

 

このサイバスターは俺以外の人が触れたり、弄ろうとすると、アラームやら自爆装置が起動するらしい。自爆装置に関してはダミーなため、実際には爆発しない。それと、不可視にすることが出来るということらしい。

 

「これは基地内とかに入ればいらない機能だな……(ペラ)……ん? 【☆オ・マ・ケ☆】説明してなかったけど、このページにはさっき話したこと以外の特典内容が―――」

(―――書かれている。これもチート機能が付いているけど、あくまでもオマケで考えてね。内容の説明は不要だと思うから下に表を作っておいたわ。ま、マサキなら見れば分かるでしょう)

 

それは今までの正式なフォント等を使ってない手書きで書かれていた。案外カワイイ字を書くものだ。俺は下にある表に目をやる。

 

「なるほど、精神コマンドか……」

 

スパロボをやった事がある人なら分かるはずだが。機体性能以外にパイロットには精神コマンドと言って、一時的に攻撃力や回避能力を上げるシステムが存在する。どうしても勝てない敵、面倒だから一掃したい時、避けれないなどに使用するコマンドだ。

 

付いて来たコマンドは、【奇跡】【直感】【集中】【気迫】【加速】【魂】

 

「……あの女、バカじゃねーの?」

 

俺が言ったのはコマンド内容に対してもそうなのだが、使用した際のポイントの減り具合だ。例えば、幸運なら40減るだとか、直感なら20減るだとか、その効果のモノによって消費されるポイント数が違う。しかし、あのフレイヤという女神さんの作成した表を見ると……。

 

「消費が全部10って何だよ? しかも、俺の精神ポイントは自動回復するわ400あるわ……減らねーじゃ……ん?」

(いやーわけわかんないからさ、とりあえず全部10にしておいたわ。良い事した後って気持ちいいわね。あ、一応暇なときに【すぱろぼ】? やって勉強してみるから)

 

とか、フレイヤのキャラなのかイラストで手を振っている2頭身の女の子の絵が描かれている。

 

「うん、あの女はバカだ。どの口が良い事した後がどーのこーの言ってんだ? 俺死んでるじゃねーか……まぁあの女が殺したとは言えねーけど」

 

まぁ使う事自体がないだろうから頭の片隅においておこう。

 

 

 

 

 

下には廃墟が立ち並ぶ街並みが見える。

 

この惨状はBETAによるモノだ。

 

BETA(ベータ)とは Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race の略で、人類に敵対的な地球外起源種のこと。まぁ見た目からしてグロテスクな化け物集団だ。言葉は通じないし、いきなり現れては破壊殺戮の限りを尽くす。まぁ奴等からしたら破壊している気も殺戮してる気もないらしいんだけど……つまりそういう行動が自然と出る化け物たちだ。

 

「マサキ、この星には人間はいないのかニャ?」

 

「さっきから廃墟ばっかりニャ ゆっくりとは言え結構飛んでるのニ」

 

俺の脇や肩から、ファミリアの黒い猫と白い猫が声を上げる。名前はそのままで【クロ】と【シロ】だ。ファミリアっていうのは、使い魔みたいなものだ。サイバスターの兵器、【ハイファミリア】という鳥のような形状の物で標的の近くまで飛んで行き、不規則に動きつつ光弾を発射し攻撃したり、行動範囲が広いため偵察任務にも用いられる。

 

クロは女性(アニマ)的、シロは男性(アニムス)的な性格をしている。『~な』の発音や語尾がすべて『~ニャ』になる言葉遣いをする。

 

「いるはずなんだけど、この世界は初めてだからどこに何があるのか分からないんだよな」

 

ビーッビーッビーッ!!

 

レッドアラート。敵とは限らないが、こちらに照準合わせ(ロックオン)している者がいる。

 

「左ニャ!」

 

「アレが戦術機かニャ?」

 

「あぁ、確かに戦術機だ。赤い……武御雷(たけみかづち)。まさか月詠さんか!? いや、まさかな。偶々色が同じだけだろう……」

 

ピピッ!

 

オープン回線で音声通信が入ってくる。十中八九あの機体からのコールだろう。

 

『こちら帝国斯衛軍所属の月詠中尉だ。前方の未確認機。所属を答えよ。答えねば―――』

 

ビーッビーッビーッ!!

 

「―――撃つぞ?」 と、再度ロックオンだけで示される。

 

「……あー、この声は間違いなく月詠さんだ。……あれ? でもおかしくないか? そもそも何でアッチに気付かれるまでコッチが気付けなかったんだ? マップだって機能していれば、少し遠くでも人や 活きている建物に反応するだろうに。この機体ってチート機体だからこの世界のどの機体よりも高性能だろう?」

 

「ニャ!? マサキ! マップ機能をこの世界用に設定してないニャ!」

 

「あぁ通りで。これはお前らが忘れていたせいか? 俺がやるべきことなのか?」

 

「何を冷静にしているニャ! 早く返答しニャいと撃たれるニャ!」

 

「あぁ、そうか……所属? ……あっ」

 

何も無い。この世界に俺はいない事になってる。戸籍などが無いのだ。元々の主人公のタケルちゃんなら死んだことになっていたりして、最低でもこの世界の住人という事になるのだが……俺には何も無い。

 

「あ、あー聞こえますか? 所属は無いです」

 

『……何だと?』

 

この世界、オルタネイティブの月詠さんって凄く怖いんだよな?

いきなり撃たれてBADEND も有り得るのか!?

せっかく来たのに、一瞬で終わりじゃ……ねぇ?

 

「マサキここは……」

「逃げた方がいいんじゃニャいか?」

 

賛成。これは対応できそうに無い。

 

「え えーと斯衛軍の方へ……き、聞こえますか?」

 

『聞こえている。返答はいかに?』

 

「すみません。失礼します」

 

『何?』

 

キィィィィィ……

甲高いエーテルスラスターの音が操縦席に鳴り響く。いや、実際にはそれほど大きくない音だ。これは俺の心臓の音が幻聴となって甲高く大きく聞こえているのだろう。操縦桿に触れる手も汗ばんでいるのが分かる。

 

『む? おいっ待て!』

 

「ごめんなさーいっ!!」

 

ドォッ……ン!!

まさに風のサイバスター。一瞬で音速を突破して相手の視界、レーダーを振り切る。

 

「「「あ~怖かった(ニャ~)」」」

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 月詠(つくよみ) 真那(まな)

 

早朝の演習の帰りに不穏な感じを受けて、部下達を先に戻らせて辺りを警戒してから戻る事にした。

 

「ふっ 勘も捨てたものではないな。しかし、あの機体……」

 

レーダーには機影が映るが、【unknown(所属不明)】との表示が出る。目視で確認しても同様だ。少し青みがかった銀色の戦術機……アレは。ん? いつまで噴射跳躍(ブーストジャンプ)している気だ? 推進剤の無駄だろうに……いや、

 

「まさか!? 飛んでいるのか?」

 

今更ながら気付けば高度も高すぎる。戦術機が居ていい高度ではない。

 

「馬鹿な!」

 

アメリカなどの新型? 聞いた事が無い。そもそも危険を冒してまで、日本に顔見せに来る行動も理解に苦しむ。では、あの機体はなんだ? こちらにも気付いていない? 私は鳥か夢でも見ているのだろうか? 私は確認も兼ねてその機体にライフルを向けて照準を合わせる。

 

ピッ

 

「こちら帝国斯衛軍所属の月詠中尉だ。前方の未確認機。所属を答えよ。答えねば―――」

 

夢とみなす……わけにもいかんか。

返答が帰ってこない。いきなり撃ち落すわけにもいかんし……何らかの反応(アクション)を起こしてほしいものだ。

 

すると、やっと通信が帰ってきた。

 

『あ、あー聞こえますか? 所属は無いです』

 

「……何だと?」

 

子供の声だ。どういうことだこれは。しかも、回線の使い方すらも初めてと言わんばかりの自信のなさ。少し間をおいて、また返答が来た。

 

『え えーと斯衛軍の方へ……き、聞こえますか?』

 

「聞こえている。返答はいかに?」

 

『すみません。失礼します』

 

「何?」

 

機体を注意深く見るが、特に動きは見られない。いや、機体の後部からブーストを溜めているかのような粒子が見える。

 

「む? おいっ待て!」

 

『ごめんなさーいっ!!』

 

ドォッ……ン!!

 

「なっ!?」

 

レーダーからは一瞬で消えてしまったあの機体。あの機体は一体……。

 

「疲れている気はしないのだが……やはり白昼夢か? 全くどう報告すれば……」

 

空を飛ぶ見たことの無い所属不明の戦術機。青みがかった銀色で、パイロットはかなり若い声をしていたが、日本人である事は間違いないと思われる。その機体は(ゼロ)から一瞬で100に到達するかのように、音速を超えて視界からもレーダーからも消えた。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side マサキ

 

「どうだ?」

 

「大丈夫ニャ。これで迷子にならないニャ」

 

俺はマサキ・アンドーとは違う。レーダーがあれば迷わない……はずだ。

しかし、レーダーが無いと、さっきみたいに逆方向を延々と飛んでいることになるわけだ……そうレーダーのせいだ。多分。

 

 

「ジャミング機能に不可視の機能も起動させたよ」

 

「マサキの言う情報だと、この辺りになるはずニャんだけど……」

 

ピピッ

 

「生体反応 1。人がいるみたいニャ」

 

「あ~、ここだここ。家に戦術機の上半身だけが倒れ掛かってて……いや、そんな家もいくつかあったけど」

 

戦術機【撃震】が、その身を家に預けるかのように機能せずに居る。

そう、ここが白銀武の家だ。

 

「少し行って来る」

 

 

 

 

 

鍵は掛かっていなかった。床のきしむ音がわずかに響く。

階段を上がり、タケルの部屋を開ける。きれいな部屋だ。これが因果導体のタケルが部屋を出ればコンクリートむき出しの部屋に変貌するなんて信じられないところではあるが。

ベッドには人が寝ている膨らみが出来ている。

 

「……仕方ないな」

 

俺はベッドの掛け布団に手を掛け、ゆっくりと持ち上げる。

 

「……ぅん」

 

ごそごそ

 

「……うん?」

 

タケルが目を開ける。そして、固まる。そして……

 

「おはよ♪」

 

「キャーッ!!!?」

 

純情な女の子のように絶叫した。

 

「誰!? 幼女!?」

 

そこまで小さくねーだろ。これから出会うであろうタマよりも大きいぞ。多分だけど。

 

「初めまして白銀武。俺の名前は海堂正樹だ。先に言っておくぞ。俺は男だ」

 

「何ィーっ!?」

 

「それと、お前の記憶は間違いない」

 

「俺の……記憶?」

 

「BETA」

 

「っ!?」

 

目の前の青年はその身を震わせた。その表情は一瞬で絶望に近いものに変わった。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 白銀武(シロガネタケル)

 

「BETA」

 

「っ!?」

 

目の前の少女にしか見えない男の子(?)は、その表情を引き締めて、そう言い放った。

BETA。

 

じゃあ、今フラッシュバックしている、俺の知っている人達。地球を放棄した人類。オルタネイティブ5。これは……。

 

「お前……俺の事を?」

 

「知っている。と言っても曖昧になってきているけどな。一つ聞くけど、2回目だよな?」

 

2回目。それはつまりこの世界。BETAのいる世界の事だろう。

 

「あ、あぁ2回目だ」

 

「タケルはまた最初から始めるんだ。助けられなかった奴等がいるだろう?」

 

……いる。沢山いる。

 

「あの歴史を変えたいだろう?」

 

変えたい。

 

「じゃあ行こうぜ、横浜基地に」

 

「あ、あぁ……ところで」

 

「何だよ?」

 

「本当に男?」

 

本当に聞きたいのは性別なんかじゃない。マサキ自身の事だ。

俺のことを知っていて、2回目だと知っていて、でも俺の記憶に海堂マサキという人物はいないし、目の前に居る少女のような姿も覚えが無い。

 

一体誰なんだ?

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 横浜基地

 

「どう?」

 

「駄目です。やはり機影は確認できません」

 

「そう」

 

白衣の女性は、自分から聞いた割には興味がなさそうに呟いた。

聞いた内容は、数分前に確認された所属不明の謎の戦術機のことだ。帝国軍からの情報によると、空を飛びまわり、レーダーからだと斯衛軍衛士と接触したようにも見えたが、一瞬でレーダー圏外へ移動してしまった。その後はジャミングの類なのか発見出来ないとの事だった。

 

その機体がまた現れた。今度はこの横浜基地近くの広大な廃墟からだ。そしてまたすぐに消えた。

 

「レーダーの故障で済むならそれで良いんだけど……んなわけないわよね」

 

悩みの種にならなければ良いと思いながら、白衣の女性は司令室を後にした。

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 




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