窓拭きも終わり、金剛型のお部屋に突入。
「どうぞ」
「失礼します」
中は榛名さんの言ったとおり、汚ない…というより散らかっている。
「すみません…足の踏み場もなくて……」
「大丈夫です。では、さっさとやっちゃいましょうか」
「はいっ!」
で、早速片付け。ダンベルとかは落とすと大変そうなので、ゆっくり慎重に運ぶ……とか考えながらダンベルを握った。運ぶ……は、運ぶ……は、はこ……っ!
「? どうかされました柊さん?」
「や、なんでもない……」
お、重てぇ……こんなの女の子に持ち上がるのか……微動だにしなかったぞ……。でも、片付けないといけないし、何より男が女に負けるのはちょっとあれだ。
「ふんぐごごごごっ‼︎」
うおっおおおっ……おおおおおッッ‼︎‼︎‼︎部活に入らなかった高校生を舐めるなよぉぉぉッッ‼︎‼︎と、無理に持ち上げようとした時だ。腰がグギッと音を立てた。
「ッッ‼︎‼︎」
い、痛い……この歳で、ギックリ腰……無様に僕は倒れ、猫が伸びをするような姿勢から動けなくなってしまった。
「あら?どうかしたんですか柊さん?」
榛名さんが心配そうに声を掛けてくれる。
「や、あの……」
ふいっと俺の手元を見る榛名さん。ダンベルが握られていた。
「あー霧島のを持ち上げようとしたのですね……うちの提督も無理して持ち上げようとして一ヶ月、ギックリ腰になってましたから……。明石さんの所に行きましょう」
「明石さん?」
「はい。榛名達、艦娘のメンテナンスをしてくれる方です」
「あの、僕艦娘じゃないんですけど……」
「提督の腰も明石さんのマッサージで治ったんですよ?」
「や、でも僕は大丈夫ですから。このくらいならすぐ治りますから」
「へ?いやでもギックリ腰ってキチンとお医者さんに見せないと……」
そのお医者さんが僕には必要ない。すると、腰のあたりでコキッと何かがハマる音がした。もう治ったのか。僕は立ち上がって、軽く腰を回す。
「………うん。治りました」
「………は、はぁ……ならいいんですが……」
「では、続けましょう」
で、数時間後、ようやく片付いた。途中、平気な顔で榛名さんがダンベルを棚にしまっていて軽く引きました。
「ふぅ……こんなもんかな……」
「ありがとうございます。柊さん。綺麗になりました」
「僕はどちらかというと綺麗好きですからね。綺麗じゃないと落ち着かないというか……」
「でも、助かりました」
「ただいまネ〜!」
元気な声がして、振り返ると榛名さんと全く同じ服を着た女性が三人帰ってきた。
「って、柊さん?」
「どうも……」
「どうしてあなたがここにいるんですか……?まさか、うちの榛名に……」
ま、マズイ!誰だか分からんけどショートカットの子の目が攻撃の色に………!
「ち、違いますよ比叡姉様。お部屋のお片付けを手伝ってもらっただけですから」
「そ、それならいいけど……いやよくないよ!ま、まさか下着とか……」
「あー…ピンク色のリボン付き……」
その瞬間、僕の顔に拳がめり込んだ。
「こ、こ、この変態!」
「まぁ落ち着いてください比叡姉様。榛名もそういうことなら相談してくれれば良かったのに……」
「すいません。でもほら、綺麗になりましたよ」
榛名さんが言った。すると、三人はおぉーっと声を上げる。
「確かに綺麗になってるネ。ありがとうネ優一郎!」
「仕事ですから」
僕はスクッと立ち上がり、首をコキコキと鳴らしながら立った。
「そうだ。もし良ければ紅茶飲んで行きなヨ」
「へ?い、いやでも……」
「いいよネみんな?」
すると、三人とも頷く。で、五人で放課後ティータイム。
「じゃあまずは自己紹介ネ。金剛デース」
と、元気いっぱいの金剛さん。
「……比叡です」
なぜか警戒してる比叡さん。
「さっきしましたけど……榛名です」
にっこり笑顔の榛名さん。
「霧島です」
冷静そうなメガネの霧島さん。よし、覚えた。こうして、なんとか金剛型とは仲良くなれた。比叡さんには嫌われてるっぽいけど。