あの後、駆逐艦の子達に質問攻めに合い、かなり疲れて帰ってきた。で、今は玄関。
「ただいまー…」
「おかえりー!遅かったね!」
「このくらいになるって言っといただろ。ちゃんと大人しくしてたか?」
「うん!ねぇ、お腹すいた!」
「はいはい……簡単なものでいいか?」
「なんでもいいから早く!」
この野郎……小学生以下が……!言われるがまま、僕は料理を作る。とりあえずペペロンチーノを作った。
「簡単なものでイタリア料理作っちゃうんだ……」
軽く引いてるよこの子。
「いやなら食わなくていいぞ」
「そ、そんなこと一言も言ってない!いただきまーす!」
ゾボボっと幸せそうにペペロンチーノを啜るシーを眺めながら僕は思った。確か、轟沈したとか言ってたよな……つまり、一回死んでるんだ。こいつだけは、僕が守らないと。例え記憶になくても、そんな思いは二度としたくないだろうし。
じーっと見過ぎていたせいか、こっちを怪訝な顔で見るシー。
「? なに?」
「なんでもねーよ」
明日からはキチンと雑用やらないと。料理スキルは問題ないし、掃除スキルもケロロ軍曹の3か4巻にあったから大丈夫。あとはヤル気だけか。うし、頑張ろう。
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次の日、学校が終わってさっそく鎮守府へ。とりあえず、提督に挨拶だけして、掃除を始めた。まずは窓拭き。と、言っても今日だけで全部やるのは無理なので食堂に絞ることにした。
窓は新聞で拭くのがいいらしい。インクがワックスの効果を発揮するらしい。
「よっ…と……」
脚立を用意して窓を拭く。
「あ、柊さん」
声がして振り返ると、なんか見たことのない巫女服みたいなのを着た女性が立っていた。
「え、えと……」
「榛名です」
「は、はぁ。よろしく俺は……」
「昨日聞いたので大丈夫ですよ。さっそくお掃除ですか?」
「はい。仕事……っつーかバイトなんで」
なんか榛名さん、だっけ?榛名さんがやけに目を輝かせてるな。
「………どうかしました?えーっと、榛名、さん?」
「いえ、手際よくお掃除されてるようでしたので……」
「いやまだ窓しか拭いてないんですが……」
「でも拭いた所がピカピカになってるじゃないですか。実は、お恥ずかしながら私達、金剛型のお部屋はあまり綺麗じゃなくて……」
「? そうなんですか?みんなしっかりしてるように見えますけど……」
「はい……金剛姉様のティーセットと比叡姉様のなんか良く分からないものと霧島のダンベルで……榛名もお片付けしようとは思うのですが……」
「なるほど……」
「もしよろしければ、お片付けを手伝って欲しいのですが……」
「えっ?」
「え?」
今なんつったこの子。
「えっと……それは僕に榛名さんの部屋に来いって言ってます?」
「ダメ、でしょうか……」
「ダメって事ないけど……」
女性の部屋に入るんだしなぁ……それは。提督にも何言われるか……いやあの人には何も言われないか。
「まぁ、そういうことでしたらいいですよ」
すると、まるで周りにひまわりが咲くかの如く笑顔になる榛名さん。
「ありがとうございます!」
「い、いえ……」
「ではさっそく……」
「へ?今?」
「駄目、でしょうか?」
「今は食堂の掃除してるから……後か明日にしてもらえると助かります」
「では、榛名もお手伝いしますね!」
「へ?は、はぁ……」
言いながら榛名さんはその辺の椅子を踏み台にする。
「それはそうと……なんで新聞ですか?」
「洗剤に雑巾なんて使ったら窓に傷が付くそうなんですよ。その点、新聞紙ならインクがワックスの効果を発揮するので傷付かない上にピカピカに出来るんですよ」
「物知りなんですねぇ〜」
「は、はははっ……そんなことないですよ」
言えない、漫画で得た知識なんて言えない。