学校の帰り道。僕はジャンプを小脇に抱えて海岸を歩いていた。そんな時だ。砂浜に煙が舞い上がった。
「うおっ」
急な出来事だったんでついフリーズしてしまう。見ると、今、テレビで、なんか……言ってる深海棲艦、だっけ?それが倒れていた。肩から血が出ている。
「…………」
どうしようか迷ったものの、僕はそいつをおんぶして家に持ち帰った。で、肩に包帯巻いて、寝かせておいた。
さてどうしたもんか。1人暮らしだし、友達は2人しかいないからバレる問題はない。問題は、こいつどうするか。一応敵なんだよなぁ、こいつ。いや僕はただの学生だから敵じゃないけど、一応殲滅しなきゃいけない奴だしなぁ……。ま、いっか。普通の女の子に見えたってことで。なんて考えてると、深海棲艦が目を覚ました。
「ン………」
とりあえず買っておいたポテチを開けた。
「あの……食える?」
と、言いかけた時だ。ビュッと何かが僕の肩に食い込んだ。
「うおっ……‼︎」
「オ前、誰ダ……」
「僕の名前は、柊優一郎だ。お前を助けるためにここに連れて来た」
「タス、ケル……?」
動きが止まる深海棲艦。
「とりあえず、腹減っただろ。刺身でいいか?」
言うと、僕は念の為警戒しながら冷蔵庫からサーモンの刺身を取り出す。向こうも最初は警戒していたものの、そのうちガツガツ食うようになった。
「………リ」
「え?」
「オカワリ……」
「…………あぁ」
こうして、僕と深海棲艦の生活は始まった………、
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…………のが、丁度一ヶ月前。今では、
「優一郎、ご飯まだー?」
「もう少し待て」
完全にニート化していた。しかも、馬鹿みたいに大食いでうちの家計をかなり圧迫している。
「これは、バイトしないと厳しいなぁ……」
「ごーはーんー!」
「お前少しは手伝えよ!」
「めんどくさーい」
「ムカつくな本当に……!」
だが、見捨てるわけにもいかないしなぁ……。なんて考えながら料理を机の上に並べた。
「ほら、食え」
「はーい!いただきまーす!」
と、まぁこんな感じで金銭面以外はいつも通り。いや、一つだけいつも通りではない。一ヶ月前、こいつに食らった攻撃が肩に食い込んでから、僕の身体は少し異変が起きた。それは、再生能力だ。早い話が、不死身に近い体になってしまった。
おそらく、深海棲艦の体質が多少ながら僕の身体に乗り移ってしまったんだろう。まぁ、それだけの話で僕に困る事なんて今の所は金銭面以外ない。
「はぁ………」
「なーにため息なんてついちゃってんのー?幸せが逃げちゃうよー?」
「うるせーよ。ていうか、お前は海に戻らなくていいのかよ」
「うーん……別に問題はないかなぁ。私はほら、どっちかっていうと轟沈した艦娘が深海棲艦になっちゃったタイプの子だから。いや以前の記憶とかないけどね?……で、だからまったく深海棲艦に知り合いいないし」
「…………そっか。じゃ、僕は少し出掛けて来る」
「分かったー」
そんなわけで、僕は外に出た。バイト雑誌を取りに行った。だが、その時だ。コンビニの張り紙を見つけた。そこには、時給2000円と書かれていた。速攻で電話した。
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次の日。学校が終わり、僕は家に戻ってきた。
「あっ優一郎お帰りー」
「おう。あ、シー」
シーとは深海棲艦の名前な。
「なにー?」
「僕は今日からバイトだから。少し帰るの遅くなるけどいいか?」
「はーい。晩御飯までには帰ってきてねー」
「お前は僕の母ちゃんかよ。じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃーい。あ、ジャンプ読んでてもいい?」
「好きにしろよ」
で、僕はそのバイト先へ。なんでも、鎮守府という所の雑用をやるらしい。さて、食費のために頑張らないとな。