ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~   作:乱A

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第二十七話「新たな旅立ち。そして故郷へ・・・」

 

「この馬車はな、遥かなる昔に世界を救った天空の勇者が、導かれし者達が旅に使った馬車なんじゃよ」

「て、天空の勇者?」

「導かれし者達だって?その馬車が何でこんな所に?」

「こんな所とはご挨拶じゃな。まあ良い、それはワシの御先祖様がその導かれし者達の一人、トルネコ様じゃからじゃよ」

「「はあぁっ!?」」

 

その言葉に二人は驚愕する。

まあ、当然であろう。

長い時の中で、大陸などの形も変わり、嘗て存在していた国々なども全て滅びて久しい。

そして、天空の勇者と導かれし者達、それはただの物語などでは無く伝説の彼方に実在した世界の救世主達の事なのだから。

 

「あ、あなたが導かれし者の一人トルネコの子孫だっていうんですか?」

「まあ、伝説の商人トルネコ様の子孫がこんな質素な店を構えとるなど信じられぬのも無理は無いかのう。トルネコ様の孫、つまりポポロ様の息子が双子でのう、長男が店を受け継ぎ次男は冒険の旅に出たとされておる。その旅に出た次男の子孫がワシじゃと言う訳じゃ。ちなみに長男の子孫は何処かの町の大富豪らしく伝説にある天空の装備の一つを受け継いでおるらしい」

「付き合いは無いのか?」

「何しろ同じ血族とはいえ、何百年も前の事じゃからのう。噂話程度の事しか知らぬよ。ともあれじゃ」

 

オルタムは再び振り向き、馬車に向き直ると張り付いていた蔓や埃を振り払う。

すると其処には何やら竜の形をした紋章らしきものがあった。

 

「一見して朽ち果てた馬車に見えるじゃろうが、実はこの馬車はマスタードラゴン様の加護を受けておってな、相応しい持ち主が現われた時には往年の姿を取り戻すと言われておる。見事に認められればこの馬車はお前さん達の物じゃ」

 

場所を開け、リュカに紋章に触れるようにと促すオルタム。

ヘンリーと見つめ合い、頷くとゆっくりと近づきそして右手を差し出して紋章に触れる。

すると馬車は淡い光に包まれ、朽ち果てていたその車体は時が逆戻りする様に徐々に修復して行き、数分後には嘗て在りし日の姿を取り戻していた。

 

「うんうん、これで約束通りこの馬車はお前さん達の物じゃ。遠慮なく持って行くとええ」

「それは有難いが肝心の馬はどうする、リュカ?」

「どうすると言われても…、どうしようか?」

「安心せえ。パトリシア」

『ヒヒ~~ン』

 

オルタムが此処に来るまで彼の馬車を引いていた馬の名を呼ぶと、外へと繋がる通路から白馬、パトリシアが嘶きながら現われ、リュカに頬を摺り寄せ甘え出す。

 

「そやつはお前さんの事がかなり気に入った様なんでな、連れて行ってやってくれ。なあに、金を払えとは言わぬよ」

「いいんですか?」

「どうせ無理に繋ぎ止めていても今まで通りには働いてはくれぬじゃろう。ならば、お前さん達に預けた方が良い。幸い、馬は他にも居るからな」

「解りました、有難く預からせてもらいます」

 

そうして元の姿を取り戻した馬車にパトリシアを繋ぎ、買い揃えた装備や道具などを馬車に乗せる。

 

「さてと、流石に今から旅立つ訳にはいかないから今日は宿屋にでも泊まって出発は明日の朝にしよう」

「ならばモンスター爺さんの所で待っておれ。見送りついでにワシが馬車を其処に運んでやるわい」

「何から何まですみません」

「構わぬ構わぬ、ははははは」

 

 

 

―◇◆◇―

 

翌日、宿屋で一夜を明かした二人はモンスター爺さんの所へシーザーを迎えに来た。

眠らぬ町とはいえ、流石に夜が明けたばかりのこの時間には人々の行き来は無く、まだ町の人々は眠りの中にいる為に家の外に出て来たシーザーが騒ぎになる事は無かった。

 

「クオオ~~ン♪」

「これこれ、あまり騒ぐと周りの奴らが目を覚ますぞ」

 

ドラゴンキッズのシーザーがやっと迎えに来たリュカに飛びついて甘えているとモンスター爺さんが一匹のブラウニーを連れて来た。

 

「そのブラウニーはたしかあの時の」

「ああ、お前さん達が連れて来たブラウニーじゃよ。何やらお前さん達に頼みがあるらしくての」

 

するとそのブラウニーは二人の前にまで歩いて来ると木づちを地面に置いて頭を下げる。

 

「オレモ、ツレテイッテ」

「付いて来たいのかい?」

「オレノ、ナカマタチ、ミンナヘンニナッタ。タタカイタクナカッタ、デモタオサナイト、オレ、コロサレテイタ。トモダチ、コロシタクナカッタ」

 

まだ拙い言葉遣いだが、ブラウニーは拳を握り締め、涙を流しながらそう言って来た。

魔物ではあるが彼らなりに平穏な生活をしていたのであろう。

だが、魔王の邪悪な波動が彼の仲間達を殺戮や争いなどしか行えないモンスターへと変貌させた。

そして彼だけが邪悪な波動から逃れる事が出来たが、それは同時に今までの仲間が敵へと変わった事でもあり、生き残る為にはその嘗ての仲間達を倒さなくてはならなかった。

あの時も、仲間を変貌させた魔王を倒す為の旅の最中の出来事だったらしい。

 

余程悔しかったのだろう、握り締めた拳からは血が滲み出し地面に血溜りを作っていた。

 

「オレ、ヒトリジャ、ナカマノカタキ、トレナイ。オマエタチ、ツヨイ、オマエタチ、イッショナラ、キット、マオウ、タオセル。オネガイ、ナカマニ、シテ」

 

そんなブラウニーを見つめていると抱きかかえていたシーザーがペロリと頬を舐め、「クオン」と軽く鳴いた。

どうやらシーザーも彼を仲間にして欲しいと言っている様だ。

 

「答えは聞くまでも無いだろうが……、どうするリュカ」

 

軽く笑いながらそう言うヘンリーと軽く拳を合わせるとリュカはブラウニーの所まで歩いて行き、血が流れたままの手にホイミをかけてやると、ブラウニーは傷が癒えた拳を握ったり開いたりした後リュカの顔を見上げる。

 

「これからよろしくな、ブラウン」

「ブラウン?」

「君の名前だよ。仲間になった証に俺達はこれからそう呼ぶよ」

「ブラウニーだからブラウン。…お前の方こそ安直じゃないか」

「こまかい事はいいじゃないか」

 

ブラウニー、いやブラウンはそんな風に言い合う二人を呆然と見つめる。

頼んでは見たものの、本当に魔物の自分をこうもあっさりと仲間にしてくれるとは思っては無かったらしい。

 

「兎も角、俺の名はリュカ。そしてこっちはヘンリー」

「お前が悪意の無い魔物だと言う事はよく解った。俺もお前が仲間になる事に異存は無いよ」

「…アリガトウ、オレ、ウレシイ。マタ、ナカマ、デキタ」

 

ブラウンは感極まったのかポロポロと零れる涙を腕で拭いながら泣き、シーザーはそんな彼の肩にとまって慰める様に「クオンクオン」と鳴く。

その光景をモンスター爺さんとオルタムは微笑ましそうに見ている。

 

 

 

―◇◆◇―

 

「さてと、そろそろ行こうか」

「ああ、世話になったな爺さん達」

 

シーザーとブラウンを馬車に乗せ、リュカとヘンリーの二人は馬車を引きながら歩き出す。

 

「おお、忘れる所じゃった。これも持って行くとええ」

 

オルタムはそう言いながら一振りの杖をリュカに差し出す。

 

「これは?」

「見た目の姿を変える事が出来る《変化の杖》じゃ。仲間にした魔物達を町や村の中に連れて行く時に役に立つじゃろう」

 

導かれし者達が旅の中で手に入れた数多くのアイテムなどは商人であったトルネコに譲られ、幾つかのアイテムは長い歴史の中で再び世界中に散り散りになったが、手元に残ったままのアイテムもあった。

この変化の杖もその中の一つである。

 

「有難う、これは助かるよ」

「なあに、気にする事はない。所謂先行投資という奴じゃよ、お前さん達ならきな臭くなってきている世界を何とかしてくれるじゃろうからな」

 

そう言ってニヤリと笑うオルタムに二人はキョトンとするが、すぐに笑いながらサムズアップする。

 

「まかせてください!」

「まかせておけ!」

 

そろそろ動き出すのであろう、徐々に賑やかさを増すオラクルベリーの町を後にして二人と二匹は決意を新たに旅立った。

 

まず最初の目的地はサンタローズ。

故郷で彼らを待つモノ、それは……

 

 

 

=冒険の書に記録します=

 




(`・ω・)オラクルベリー編終了です。
馬車ですが、ただ単に命を救ってもらったお礼に安く売ってもらう…ではちょっとありきたりだなと言う事でこういう感じにしました。
仲間モンスターも町に入る際は馬車で留守番してれば良いんじゃないかなと思いましたがそれだと何だかおかしいし、オリジナルのアイテムを作ろうにも既に他の作品で別の方が書いている。
其処でふと思い出すとⅤでは変化の杖って出て来ないな、だったら使っちゃえと言う訳で仲間モンスターは町の中では人の姿に変化します。

そして次回、遂にリュカはサンタローズに帰ります。

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