ドラゴンクエストⅤ~紡がれし三つの刻~   作:乱A

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第十七話「救え!攫われたヘンリー」

ラインハットの王であるレナスに呼ばれ、城までやって来たパパスがレナスと話をしている間に城の中を見学していたリュカ。

そんな時、壷を割ってしまって困っている侍女を助けた王子のヘンリー。

一部始終を見ていたリュカはヘンリーに決闘をけしかけられてしまったと言う訳だ。

 

 

 

「と言う訳だと言われても」

「何グダグダ言ってやがる。かかって来ないならこっちから行くぞ」

 

そう言うとヘンリーはリュカに切り掛かり、リュカも剣で受け止める。

二人が使っているのは演習用の刃を潰した剣である。

 

我流のリュカとは違いヘンリーは父親に教わっていた為、ヘンリーの方が少し押し気味であった。

しかし、リュカの方も数々の実戦を潜り抜けてきており、逆にヘンリーの方はレナスに引き取られてからは実戦からは遠のいていた為リュカ程の急成長は無かったので、徐々にその差は縮まっていった。

 

「くそぉーーっ!何でお前なんかに!」

「どうしたんだよ?何でそんなに怒ってるんだよ?」

「うるさいっ!」

 

人にあまり見られたくない場面を見られ、笑われたのがきっかけとなり決闘をしろと叫んでいた。

 

父より教わった剣術、そして旅の中での魔物相手に繰り返して来た戦闘経験などから魔物をペットにしている様な相手に負ける筈が無いと決めつけていた。

だが実際に勝負をしてみるとかなりの強さであり、それが数多くの実戦経験に裏付けされたものだと言う事はすぐに分かった。

 

 

《お前を勇猛で名の知られているパパスに預ける事にする》

 

ヘンリーは事前に叔父であるレナスに告げられていた。

言ってみれば事実上の追放に等しいのだがヘンリーは笑みを浮かべてその言葉を受け入れた。

 

レナスがどの様な気持ちでこの判断を下したのかを知っていたし、何よりもこの狭い城から自由な大地へと解き放たれるのが嬉しかった。

 

パパスの名は父親からも何度か聞いた事があったし、その武勇から彼なりに父親の次に尊敬もしていた。

そんなパパスの元に行けるのだからヘンリーに否は無かった。

 

しかしそのパパスには子供が居た。

自分と同じ様に父親のパパスと旅をするリュカという子供が。

つまりヘンリーはリュカに嫉妬していた、自分とは違い今も父親と共に居られるリュカの事を。

城に来たばかりのリュカを睨み付けていたのもそれが理由だった。

 

「はあ、はあ、はあ…、くそっ!」

「はあ、はあ、やっぱり強いや」

 

十数分後、結局勝負は決着が付かないまま双方の体力切れで終わり、息を切らせながら横たわっていた。

そんな二人の対決をパパスとレナスの二人は城のテラスから眺めていた。

 

「さすがはパパスの息子だな」

「あの子は私の知らない所で勝手に強くなっていく。私の事など関係ないさ」

「ふっ、そうか」

 

リュカとヘンリーは起き上がると今度は何やら言い合いを始め、パパスとレナスは二人を見つめ微笑むと城の中へと戻って行く。

少し離れた場所で二人の子供を、特にヘンリーを憎々そうに見つめながらその口元に笑みを浮かべる王妃に気づく事無く。

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

 

決着のつかなかったリュカとヘンリーの二人は互いに背をもたれさせながら座っていた。

 

「おい……」

「…何?」

「名前、何て言うんだ?」

「僕?僕の名前はリュカ」

「リュカか。俺はヘンリーだ」

 

そう言いながらヘンリーは振り返ることなく手を差し伸べる。

リュカも同じ様に振り返らずにその手を握り返した。

 

「俺の父さんは強かったんだ」

「ヘンリーの父さん?」

「この城を守る為に戦って、そして…死んだ」

「そっか。立派な父さんだったんだね」

「当然だ、父さんは世界一の剣士だったんだ!」

「何い、世界一は僕の父さんだよ!」

「俺のだ!」

「僕のだ!」

「「ううう~~~~~」」

 

「「決闘だ!」」

 

そして始まる第二ラウンド。

それを見ながら溜息を吐くリンクス。

 

「ガウ~~ン…」

 

 

 

結局、第二ラウンドでも決着はつかずに終った。

 

「もう、父さん達の話は終ったかな?」

「そうだな、俺も部屋に戻るとしよう。リュカも来るか?」

「うん、リンクスも行こう」

「ガウ!」

 

リンクスを抱き上げて、ヘンリーの部屋に行く為に城の中に入ると、突如裏庭へと続く扉から数人の男達が飛び出して来た。

 

「よし、この小僧だ。さっさとふん縛れ」

「へいっ!」

「了解でさあ、親方!」

「な、何だお前達は!? 何をする、離せ!」

「五月蝿えっ、大人しくしやがれこのクソガキ!」

「ヘンリーに何するんだ、離してよ!」

「お前には関係無いんだよ、眠ってろ!」

「ぐあぁっ!」

「リュカ!」

 

ヘンリーは襲い掛かってくる男達に抵抗しようとするがリュカとの決闘で力を使い果たしていていとも簡単に取り押さえられてしまった。

リュカもそんなヘンリーを助けようとするが彼もまた力を使い果たしており、男に壁まで蹴り飛ばされてしまった。

 

「へへへへ、一国の王子を攫う割には案外楽な仕事だったな。お頭、そこに転がってるガキと変な猫みたいのはどうしやす?」

「そんなのほっとけ。急がねえと城の兵士に気付かれるぞ」

 

男達はヘンリーに猿轡をして、縛り付けると入って来た扉から早々に逃げ出して行った。

 

「ま、待てよ…。ヘンリーを返せ!」

 

リュカは蹴られた腹を押さえながらも男達を負いかける。

しかし、扉から出た所で見たのは、外堀の川から船で連れ去られるヘンリーの姿だった。

 

「く、くそぉっ!」

「グルゥ…」

「リュカ、どうした!何があった!?」

 

パパスは騒ぎを聞きつけ掛け付けて来た。

 

「と、父さん。ヘ、ヘンリーが変な奴らにさらわれたんだ」

「何だとっ!そ奴等は何処に行った!?」

「あの川から船で逃げて行ったんだよ」

「おのれっ!逃がしはせぬぞ!」

「待ってよ父さん、僕も行くよ!」

 

パパスがヘンリーを攫った賊を追い駆けようとすると、リュカもまたパパスに付いて行くと言う。

 

「しかし危険だぞ」

「ヘンリーはもう僕の友達なんだ!友達を助けらなくて何が男だ!」

「……良く言った!それでこそ私の息子だ。行くぞリュカ」

「うんっ!」

「ガウッ!」

 

リンクスの鼻を頼りに追い駆け、辿り着いたその場所には雑草や蔦に覆い隠された古代遺跡があった。

 

「待っててねヘンリー、必ず助けてあげるからね」

 

そしてリュカはリンクスとパパスと共に、ヘンリーを助ける為に賊達の後を追う。

其処で起こりうる事を知る術をもたないままに……

 

 

 

=冒険の書に記録します=

 

 

《次回予告》

 

 

息子よ、お前は強い子だ。

 

息子よ、お前には仲間が居る、強い仲間が。

 

息子よ、願わくば私の使命を継いで欲しい。

 

息子よ、私は何時までもお前を愛しているぞ。

 

そう、何時までも。

 

例えお前の傍に居る事が出来なくても。

 

 

次回・第十八話「運命という名の悲劇と別離(わかれ)

 

 

リュカ、マーサを。母さんを……

 




(`・ω・)ゲーム本編から大幅な設定変更。ヘンリーは王の実の息子では無く、甥という事にしました。
これによってヘンリーはリュカと最後まで行動を共にする事になります。

次回は遂に少年期編の最後です。

では。(・ω・)ノシ

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