艦娘カウンセラー   作:kakikaki

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九話 復讐

朝・・・とはいっても午前五時。セットしておいたアラーム音が鳴り響く。亮は重い体を持ち上げ起床した。

 

「ふぁ・・・」

 

あくびをし軽く屈伸をする。そして、目を覚まさせるためにシャワーを浴びる。とても気持ちがいいものだ。なぜ、こんなにも早い時間に起きたかというと、支給品の受け取りだ。到着するのは、六時くらいだ。

シャワー浴び終え、着替え、身だしなみを整える。そして、鎮守府の外へ出た。

 

「おはようございます。本部の補給配送の者です」

 

「ご苦労様です。カウンセラーの狩島亮です」

 

目の前にあるのは一台のトラック。その中に様々な支給品が入っている。まずはこれを運び出さなければならない。

 

「はぁ・・・ねむ・・・」

 

そんなことを呟き、だらけているといきなり何かが体の上に乗って、膝が地面に着く。

 

「ぽーーーーい!!」

 

目の前にいたのは一人の少女・・・いや、女性。赤い瞳に長い白い髪。後ろ髪のほうはほんのり赤く染まっている。そして、何度も聞いたことある口癖。

 

「これが夕立改二か・・・だいぶ変わったな・・・」

 

「ぽいーーー!!亮!!」

 

そういって思いっきり抱き着いてくる・・・前よりも重い・・・中身はあまり変わっていないようだ。

 

「オイオイ、朝から変なのろけを見せるなよ」

 

トラックからもう一人の艦娘が下りてきた。だが、見知らぬ艦娘だ。

 

「テストの監視役兼指導役、天龍」

 

天龍型一番艦天龍。この艦娘が皐月の指導役であいつが送ってきた艦娘だろう。

 

「どうだ?怖いか?」

 

「悪いなこんな朝早くから」

 

「あ、あぁ・・・よろしく・・・」

 

先ほどのセリフがシカトされたのかがっかりしている。

 

「とりあえず、まだ時間が早いから・・・」

 

すると演習場から何か衝撃音が聞こえた。

 

「・・・なんだ?」

 

とりあえず、演習場に向かうことにしたいが・・・

 

「荷物は後だな・・・」

 

めんどくさい仕事を後に回してしまうのは気が引けないが演習場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!!」

 

演習場で盛大にすっころんで、水しぶきが上がる。そしてそのすっころんだ人物は皐月だ。

 

「あいつが言っていたやつか?」」

 

「ああ、どうだ天龍?できるものなのか?」

 

「一回見てみないとな。水上歩行もできてないみたいだが・・・」

 

「正直、昨日の深夜に知ったんだが、出撃、演習、遠征の経験はないらしい」

 

「マジかよ・・・」

 

天龍は驚いた表情でこちらをみてくる。やはり無理なのか、そう思っているが

 

「まぁ、やることはやってやるし、片目がダメなんだろ?」

 

「・・・なるほどな、お前も片目が見えていないのか」

 

確かに天龍は眼帯をしている。それでこの艦娘を送ってきたのか。

 

「ああ、俺は元からこうだったしそういう感じで教えれば平気か?」

 

「どうなんだ夕立?」

 

「そうね、確かに夕立が教えるよりはいいかもしれないわね」

 

「・・・そうか(ぽいって言わなくなったな)」

 

「うっしゃ、やるか、皐月ー!」

 

転んでいる皐月を天龍が呼び止める。

 

「今から俺が教えてやるからな・・・っふっ・・・怖いか?」

 

「天龍ちゃん!!かわいいね!!」

 

「おう・・・(お前のほうがかわいいよ)」

 

ちょっと失礼だがうまくやれそうだ。

 

「カウンセラーさんよ。こっちは俺がやっとくから・・・あっちを頼むな」

 

「・・・気づいていたのか?」

 

「ああ、世界水準軽く超えてるからな。それにさっきからチラチラ見すぎなんだよ」

 

「ぽい?」

 

「夕立。空母の演習場に行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空母演習場。見た目は弓道場の様なものだ。そこにあるのは一人の艦娘だ。

 

「くっ・・・」

 

そこにいたのは五抗戦の瑞鶴。通称翔鶴型二番艦瑞鶴だ。空母の中でもかなりの幸運艦だ。

 

「私だって・・・一抗戦には・・・」

 

そういいながら弓を絞るがその矢は明後日の方向へ飛んで行ってしまった。そこから演習用の艦載機が展開される。そして、そのまま膝から崩れ落ちて気絶したようだ。

 

「全く・・・今は検診道具も持ってないからとりあえず運ぶぞ」

 

「ぽい!!」

 

とりあえず瑞鶴を翔鶴型の部屋に運ぶことにした。そこは意外ときれいにしてあった。そしてそのまま瑞鶴をベットに寝かせる。

 

「夕立。道具持ってくるから見といてくれ」

 

「ぽい!!」

 

亮は提督室に向かい道具を取り出して戻ろうとすると目の前に

 

「おっはよ~!!」

 

「キュィーーン!!!」

 

「・・・おはよう、早いな」

 

「うん、だってあたしだもん」

 

「それもそうか・・・」

 

「んで?何の用だ?」

 

島風が言うのは早朝のランニングの途中で支給品をいい加減におろしてくれと言われたらしい。

 

「はぁ、それどころじゃないけどやらないとな・・・」

 

医療器具を置いて外に出ようとするが・・・

 

「大丈夫、もうやり始めてるから」

 

「え?」

 

 

 

 

窓からのぞくとここの鎮守府の艦娘たちが荷物を運び入れてくれている。

 

「高速修復剤は入渠室ねー。うわ、資材か・・・工房だね」

 

「これはどうする北上ちゃん」

 

「妖精か・・・夕張っちは亮のところいってきて聞いてみてくれるかな?」

 

「オッケー!!」

 

北上を中心に今まで会った艦娘が手伝ってくれている。すごくありがたいものだ。そして、それぞれが協力し合っていた。

 

「重い荷物は私たち戦艦にお任せください」

 

「榛名!!全力でまいります!!」

 

「気合!!入れて!!運びます!!」

 

「はぁ~夜じゃないのに・・・」

 

「那珂ちゃんはアイドルだからこんな力仕事ぉ~・・・」

 

「姉さん、那珂ちゃん、しゃんとしてください。あとで亮さんがほめてくださいますよ」

 

「おっし!!夜じゃないけどやる気出た!!」

 

「クマー、北上が頼もしいクマ」

 

「ホントニャー」

 

「あぁ~北上さん素敵です!!」

 

そして、別の窓からは演習場が見えた。

 

 

 

「うわぁ!!」

 

「そんないっぺんに距離を稼ごうとするな、そして重心を少し右に倒すんだ。どうも、右が見えないせいか、左に体が寄ってるんだよを気にしすぎなんだ。そうすれば・・・」

 

そういうと天龍は水しぶきを大いにあげ前進する。

 

「ほらな!!」

 

「わぁ・・・うん!わかったよ!」

 

そして、その近くからは

 

 

「張り切っていきましょーう!!」

 

「がんばってー!!」

 

「・・・頑張れ」

 

「ぷっぷくぷ~!!」

 

「がんばれ~」

 

「行け!!皐月!!」

 

「共に行くぞ・・・」

 

「いきましょう」

 

「あ~い、がんばって~」

 

睦月型は皐月の応援に行っている。

 

 

「すげーな。ここの鎮守府・・・」

 

「いや?亮のおかげなんじゃないの?」

 

「夕張?」

 

そこにいたのは夕張だった。

 

「あのねー、この状況を一日で作ったのは亮自身じゃない?」

 

「・・・そうか」

 

「そういうこと、それじゃ、私は戻るから、それで妖精さんたちはどこに置けばいい?」

 

「工房専門は工房室へ、他はひとまず各艦娘の部屋、そして鎮守府の掃除だ」

 

「了解!!」

 

「おねーちゃんいこー!!」

 

そういいながら二人は提督室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

亮は瑞鶴のところへ向かった。部屋に戻っていてもまだ瑞鶴は気絶したままだった。

 

「まだ起きないか・・・」

 

「ぽい。とりあえず検診するッぽい」

 

夕立に言われるがままに検診を始めるがそんなに大したものではなかった。

 

「補給だけか・・・とりあえず入渠室へ行くか」

 

だが、その瞬間寝言の様なものが聞こえた。

 

「・・・翔鶴姉・・・ごめんなさい・・・」

 

「・・・翔鶴?」

 

翔鶴とは翔鶴型一番艦のことだ。それに今瑞鶴は寝言で言っている。だが

 

「この鎮守府にはいないはずだ・・・空母は瑞鶴だけだった・・・」

 

本部の資料によると翔鶴の名前はなかった。金剛型と同じパタ-ンかと思う。轟沈のショックなどかもしれない。

 

「・・・しょうがないか、入渠室連れて行くか」

 

眠ったままだがおぶって入渠室に向かい毎回申し訳ないが夕立に入渠の管理は任せることにした。その間に皐月の様子を見に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁっぷ!!」

 

大きく転がるように水しぶきを上げながら盛大にこける。

 

「こら!そうじゃなくて、重心を右に、視界は前から目をそらすな!歩行ができなきゃ何も始まらないぞ!!」

 

「うん!!」

 

天龍の厳しい指導の元、何とか頑張っているようだが、まだ歩ける段階ではないようだ。

 

「よし!!もう一回お願いします!!」

 

「そうだ!!根性を見せろよ!!」

 

皐月も小さい体ながらも根性を見せているようだ。

 

「調子はどうだ?」

 

亮は練習を見ている睦月型に声をかける。

 

「そうね。頑張ってはいるのだけれども数歩歩いたらすぐにこけちゃうの・・・」

 

「・・・でも、がんばってる」

 

「うーちゃんたちも頑張って応援ぴょん!!頑張るびしっ!!」

 

睦月型も頑張って応援はしてくれているようだ。すると

 

「・・・いいぞ!!その調子だ!!そのまま右からポールをターンしろ!!」

 

「よし・・・えい!!」

 

水上にそびえたつポールを少々危なっかしくあったが見事にターンができるようになった。

 

「やったー!!」

 

「いいぞ!!もう一回だ。このまま体にしみこませろ!!やることは同じことの繰り返しだから。次は歩行しながら砲撃の練習だ!!」

 

「うん!!天ちゃんありがとう!!」

 

「天ちゃんっていうな!!」

 

・・・指導役が若干なめられている感じもするがうまくやっている。このままいけばテストには間に合ってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、亮。一応外の荷物はやっといたからね。メモしといたから間違えがあったらいってね」

 

部屋に戻るや否や北上がいきなり渡されたメモを渡され何をどこに運んだかがわかりやすく書いてあった。

 

「ありがとう北上。おまえがみんなを仕切っていたみたいだな」

 

「まぁ、あそこにおいてあるのも邪魔だったしー・・・ちょっとは役に立ちたいし・・・」

 

そういって俯いているが

 

「お前はもう十分に役に立ってるし・・・結構頼らせてもらってる」

 

その俯いた北上の頭を撫でてやる。

 

「そう?・・・うん、ありがと・・・」

 

すごくうれしそうに撫でられている・・・なんか猫みたいだな・・・

 

「そろそろ、瑞鶴を見ないとな、夕立には朝食の補給をしてもらって・・・」

 

そうぶつぶつ言いながら入渠室へ向かった。

 

「えへ・・・撫でられた・・・」

 

そう一人でにやにやしながら時間が過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕立どうだ?」

 

「亮!!外傷はないッぽけど・・・少し自己嫌悪になってるっぽい・・・」

 

確かに先ほどから顔色は悪い、入渠で少しはスッキリするかとも思ったがそうでもないみたいだ。

 

「別に・・・そういうわけじゃないわ、私のせいだから・・・」

 

「なんかあったのか?」

 

「何あなたは?」

 

「俺は狩島亮。艦娘カウンセラーだ。もうお前は元提督の命令を受けなくていいってことだ」

 

「そう・・・今そいつはどこにいるの?」

 

「本部で事情聴取でもされてるんじゃないのか?」

 

「そう・・・」

 

瑞鶴はそういうと立ち上がり弓を持ち、出て行こうとするが亮が呼び止める。

 

「どこに行くんだ?」

 

「・・・貴方には関係のないこと」

 

「そうか・・・じゃあ、ここにいろ、補給も何もしてないだろ?」

 

「・・・でも今じゃないとだめ・・・あいつ、ぶっ殺してやる・・・」

 

 

「復讐でもするッぽい!?」

 

「はぁ、あのな、そんなことしても何も生まないなんて俺は言わないがな、いいものじゃないぞ?」

 

「そうだよ!!あいつのせいで翔鶴姉は・・・」

 

「あっそ・・・聞いてもいいのか?」

 

「・・・いえ、どうせ止められるのなら話したって無駄だわ」

 

そういって、入渠室を出て行った。

 

「亮!!止めなくて大丈夫なの!?」

 

「ああ、正直歩くのもやっとだから・・・」

 

そういって入渠室を出ると亮の予想通りなのか倒れこんでいた瑞鶴がいた。

 

「補給もままならないやつが復讐なんてやめるんだ。夕立、悪いが朝食と作ってくれ流動食もいっぱい作ってくれ」

 

「了解っぽい!!」

 

そういって夕立は食堂に向かっていった。

 

「っく・・・」

 

「ほら、部屋に戻るぞ、話があるなら聞いてやるから」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ、かたき討ちしたってお前の気が晴れるだけで根本的には何も解決しないんだ。それを覚えとけよ」

 

そういって瑞鶴をおぶって部屋に運んだ。その時の瑞鶴は上の空だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴はまだ話してくれそうにもなかったので皐月のところへ向かう。

 

「お前ら!!朝食の準備するからいいころになったら食堂来いよ!!」

 

「「「「「「「「はーーーーーーーーーーい!!」」」」」」」

 

大きな返事が聞こえて皐月の様子を見ると

 

「よし・・・いける!!」

 

全体的に歩行はできるようになっているようだ。そこから砲撃に切り替えようとするが・・・

 

「前見ろ!!」

 

天龍の声も遅く目の前のポールにぶつかってしまった。

 

「痛い・・・」

 

「そろそろ艦娘とはいえ疲れも見えてくるころか、一旦休憩にしよう」

 

天龍の声とともに陸に上がり武装を解除する。

 

「天龍、調子はどうだ?」

 

補給のドリンクを飲んでいる天龍に声をかける。

 

「そうだな。試験内容は歩行だけだからもうクリアしてるとしていいと思うが、本番に強くなきゃだめだからな、あとは蛇足かもしれないが砲撃も教えようと思っている。歩くことができただけじゃあ艦娘とは言えないからな」

 

「さすが指導役だな。あいつがよこしたのがわかる」

 

「ま、軽く世界水準超えてるからな」

 

そういっていると

 

「天ちゃん!!すごいです!!」

 

睦月型に囲まれている天龍・・・・も困っているが嬉しそうでもある。

 

「すっかり人気者だな」

 

「はぁ、ここでも駆逐艦のおもりしないといけないのか?」

 

そう思いながらも声が聞こえた。

 

「亮!!ご飯できたっぽいから食堂に集合させるね」

 

「了解だ。行こうかお前ら」

 

そういてみな食堂へと向かい朝の出来事は終わった。


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