艦娘に励まされ、再び比叡の部屋の前に戻ってきた。
「ふぅ・・・」
亮は一息ついて、扉をノックする。
「はい」
「艦娘カウンセラーの狩島亮。入ってもいいか?」
「いえ・・・もう何も言うことはないので、ほっといてください」
比叡は先ほどと同じように扉越しに冷たく接する。
「とりあえず体調も見たい、検診するから入るぞ」
比叡のいうことは無視しそのままとびらを開ける。
「いいですよ。体調は良好ですから」
だが、無情にも扉は勢い良く閉められる。
「あのな・・・」
そういうと後ろから声がした。
「私たちのお部屋に御用ですか?」
聞きなれない声が聞こえたので振り向くとそこには・・・
「あんたは・・・霧島か」
「ええ、金剛型四番艦の霧島です。貴方は?」
「艦娘カウンセラーの狩島亮だ。こちらの鎮守府にカウンセラー派遣された」
「カウンセラー・・・ということはもう提督はいないのですね!?」
「ああ、今頃は事情聴取腕もされてるんじゃないのか?」
「本当!?お姉さま方!!」
その話を聞いて霧島の顔に笑顔が宿った。提督にはじゃなりひどい仕打ちを受けていたんのか、そしてそのまま部屋に飛び込む。亮もそのあとに続く。
「霧島!!・・・わかってはいるんです・・・でも・・・榛名は私のこと絶対に許してくれません」
扉越しに聞いていたのか話の内容は理解しているようだ。だが、比叡は霧島に胸を借り泣き出していいる。
「比叡、何があったか教えてくれないか?」
「わたし・・・わた・・・」
「すみません、狩島さん。落ち着くまで待っててもらえないでしょうか・・・」
「霧島はさっさと信用してくれるんだな」
「まぁそうですね。先ほどから見ていましたし。いいものを見せてもらいましたし!!夕立さんとの・・・」
「・・・見てたのか」
こうしてると落ち着くんだーーー
夕立には見せていいんだよ・・・弱いところーーー
思い出してはたから見られたと考える。手で顔を隠す。頬が若干赤い。
「ええ・・・とても良い光景でしたので、邪魔はしないでおきました」
眼鏡を治しながらすごくにやにやしている。そして若干笑いをこらえてる。
「とりあえず落ち着いたら呼んでくれ。俺は入渠室にいる榛名を見てくる」
亮はその場にいるのが恥ずかしくなって急ぎ足でその場を出て行った。
「いえ、妹の前で恥はかかせません・・・お話しします」
「榛名さん・・・いたいっぽい?」
「・・・・・・」
鎮静剤から目が覚めた榛名を夕立はドックに入れているところだ。先ほどの叫び声などはあげていない。
「さぁ、体拭くから背中向けて!」
そういうと黙ったままだが背中を向けてくれた。
「じゃあ、洗うっぽい」
夕立は榛名の背中をごしごし洗う。泡立ってきたので力いっぱい磨く。それにしてもこの体は見るに堪えない。よく見れば見るほどひどいものだ。
「・・・あなたも・・・汚なくなっちゃいます」
「ううん、寧ろ夕立にやらせて、もっと、亮の役に立ちたいし」
「先ほどの人間ですか・・・」
「うん!!とてもいい人で、艦娘カウンセラーなのよ。夕立にとっては提督っぽい。そして、夕立はそのパートナー」
「・・・良いですね。いい人に恵まれて」
榛名はどこかうらやましい表情で小さく笑った。
「ぽい!・・・榛名さんは・・・その傷は提督に?」
「いえ・・・違うんです。これは・・・」
体全体を改めて見回しながらこう言った。
「榛名の弱さの証なんです・・・」
「この傷は・・・比叡お姉さまにつけられてしまった傷です・・・」
「私は榛名に・・・深い傷を負わせてしまいました・・・心も・・・体も・・・」
「違うと思うが自発的じゃ・・・」
「そんなことありません!!
言い終わる前にきっちりと否定する。当たり前か。
「そうか、じゃあ、提督命令か?」
「・・・はい・・・ヒック・・・うぅ・・・」
「大丈夫か?無理そうなら明日でも・・・」
「いえ、気合、いれて、話します・・・」
一度どっしり構えるがやはり徐々に視線がしたに行ってしまう。
「こうなってしまったのは・・・誰が悪いってわけでもなく・・・みんな悪者なんです・・・っ私だって」
私たち金剛型は金剛お姉さま、比叡、榛名、霧島の四隻です。金剛お姉さこの艦隊には欠かせない存在です。寧ろここが欠けたらおしまいというぐらい頼り切ってしまっていた。しかし、これは沖ノ島海域攻略中の話です・・・
「ここが沖ノ島海域ネー!みなさん!!ついてきてくださいネー!!」
私たち第一艦隊は難関と言われている沖ノ島攻略作戦に出ていました。金剛型四姉妹が起用されました。ですが、金剛お姉さまはみんなの暗い雰囲気を明るくしてくれました。
「はい!!気合!!入れて!!行きます!!」
「榛名!!全力でまいります!!」
「ええ!!マイクもオッケーです!!」
金剛お姉さまがいる。この安心感はどこでも味わえないものです。そして、今日があんな日にになるなんて・・・思いもしませんでした。
「敵艦見ゆ!!各自砲撃用意!!」
敵艦はル級三隻、リ級一隻、二級が二隻。確かに苦戦するかもしれないが金剛お姉さまがいるなら、大丈夫。そう思っていた。
「比叡!!ル級狙うネー!!二人は足止めお願いしまーす!!」
「「「はい!!お姉さま!!」」」
ル級三隻はお姉さまと私。他の艦は榛名と霧島に任せました。しかし、作戦が悪くはなかった。予想以上に戦えなかった。
「霧島大破!!」
「比叡大破!!」
「金剛中破!」
「榛名大破!!」
砲雷撃戦はこちらが圧倒的に不利な状況になってしまった。しかしまだ中盤。夜戦まで半分しかたってない。
「お姉さま!!」
榛名はそういうが・・・
「今は避けるのに集中してくだサイ!!撤退しマス!!」
策はもうなかった・・・この状況では敗北は確定だ。ならば、轟沈を出さない。それが一番に考えることだった。
砲撃の音が鳴り響く。早くやめ早くやめ、そう思っていた。だが、一向に収まる気配はない。
「榛名!!!!!!!」
榛名に向けられた魚雷。それに榛名気付いていないようで、上からの砲撃に意識がいってしまっている。
「榛名ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その時中破状態の金剛お姉さまが榛名を身を挺して守ってくれました・・・ですが・・・
「・・・けがはない・・・デスカ?」
「お姉さま!!」
「・・・がんばる・・・デス・・・ヴァルハラから・・・観ているネ・・・」
そういうと武装と一緒に金剛は海の底へ沈んだ。それと同時に、砲雷撃戦は終了した。
「・・・第一艦隊・・・帰投します・・・」
私たちは重い体を無理やり引っ張って鎮守府に帰投した。だが、待っているのは地獄だった。
「金剛が轟沈だと・・・貴様ら!!!!何をしてくれた!!!!」
提督室に戻って報告をするが、罵声を浴びせられる。確かにそうだ、ここの鎮守府の金剛お姉さまが轟沈してしまった。受け入れたくない現実だ。
「申し訳ありません!!」
私たちは必死に謝った。頭を床につけるなどもした。しかし、その程度で怒りが収まるとは最初から思ってもなかった。
「罰を与えてやる・・・榛名を庇って死んだんだよな・・・榛名ぁ!!・・・服を脱げ・・・」
「・・・はい」
いやいやながらも従う・・・
「霧島・・・お前はこれで姉の体を痛めつけろ!!」
投げ渡されたのはムチだ。
「ぇえ・・・無理・・・です・・・」
「はぁ?なら、お前が金剛の代わりに沈んで来い。それかああ・・・榛名の代わりにでもなるかぁ?」
「・・・・・・」
霧島は黙ったままでいた。どっちに行ってももう逃げ道はない・・・
「提督、その役割比叡が受けてもよろしいですか?」
その場で口を開いたのは比叡だった。
「はぁ?なんでお前が?」
「私も・・・ムカついているんです。金剛お姉さま沈めたこの憎き妹が!!」
「ほぉ・・・ならやって見せろ」
「はい、気合入れて行きます!!」
霧島から鞭を奪い取る。この時は霧島にこんな役を任せたくないから・・・こう見えても霧島は一番下の妹だ。ここはお姉ちゃんが守ってあげたい。。
「比叡お姉さま・・・」
榛名は怯えた表情で私を見てきます。察してほしいけど・・・無理なのかな・・・
「あなたが・・・悪いんですよ!!」
そういって鞭を振りかざす・・・
「ああ!!!」
「いいじゃないか比叡・・・ぞくぞくしてきた・・・」
「もっと!!魚雷注意していれば!!」
バァン!!
「もっと!!周りを見ていれば!!」
バァン!!
「もっと!!強ければ!!」
この時私は思いました。自分で言っていることは榛名ではなく、自分にも向いていることを・・・そしてこのような時間が数時間続きました。
明日も・・・
明後日も・・・
明々後日も・・・
何度も何度も鞭を打ち付ける。もう、無心に罵倒し、榛名の金切り声を聞いたか・・・妹のためだと思っていいたがこんなのは救いでも何でもない・・・もし金剛お姉さまがこの場にいたら・・・もっと何かなかったのかな・・・
「これが・・・私たちのやってきたことです・・・榛名には許されないことをしました・・・」
「そうか・・・お前は偉いな」
「ちっともえらくなんかありません!!私は傷つけた!!あなたも見たはずです!!あの傷を・・・私はあの傷を見て・・・動けなかった」
そう、初めてこの部屋に来た時のことだ。表情のこともあったが、真実はそれだった。
「妹守るためにこんなつらい立ち回りを選んだんだ・・・今までよく頑張った・・・もうあんなことはしないでいいからな」
そういって、比叡の頭を撫でる。かわいそうだった。妹を虐げることになってしまい、いやいやながらも嫌われ役を買った。
「比叡お姉さま・・・私も・・・その、何もできなくて・・・」
「いいんですよ、霧島にあんなことできませんから」
比叡はそう笑顔で答える。
「お姉さま・・・」
「さて、お前ら入渠してこい。榛名もいるから言うこと言ってこい」
「「はい!!」」
そういって、二人勢い良く部屋を出て行った。
「はぁ、強いなあいつら・・・」
と思ったが霧島は残っていたようだ。
「本当ですね」
「霧島はいかないのか?」
「ええ、私は・・・何もできませんから・・・」
何か俯いてる。正直何をしたいかはわかる。
「今は俺しかいないから、泣きたきゃ泣け、スッキリしたら姉に顔見せてこい」
「わたし・・・無力でした・・・」
「そうだな」
「いやな役割を・・・おね、えさ、ま・・・に」
「そうだな・・・」
「だから、ひっく・・・わたし・・・」
「そうだな、姉に心配かけないくらい強くなって、もっと頼ってもらえるようにな」
やさしく頭を撫でる。霧島も辛かった。この立ち位置はやってみないとわからなものだ。無力。それをものすごく実感させられる立場。
「・・・はい!!」
だが、その状況をはね避けようとお力いっぱい返事を返してくれた。
「じゃあ、夕立はこれでお暇するっぽい」
入渠室から夕立が出て行くと入れ替わりに比叡、霧島が入ってくる。
「榛名・・・その・・・」
「お姉さま・・・ごめんなさい!!榛名が・・・弱いせいで・・・」
「いいえ!!私が悪いんです。こんな体に・・・ごめんなさい・・・」
「でも・・・」
「榛名・・・謝らくちゃいけないです。でも、もうこんなことはしません。金剛お姉さまには程遠いですが・・・比叡が全力で!!お姉さんに!!なります!!」
「・・・いいのですか・・・私は金剛お姉さまを・・・」
「だから、そうしていると金剛お姉さまにも怒られちゃいますよ!!さて、入渠が終わったら紅茶でも飲みましょう!!」
「・・・はい!!榛名!!!全力でいただきます!!」
このあと金剛型には三人で笑うティータイムがあった。