「夜戦!!」
「あのな・・・」
提督室で資料や誓約書を整理しているとき、またもや川内が堂々と夜戦宣言しに来た。
「仕事の邪魔」
「やせーーん!!」
「まだ夕方だ。あのな・・・さっさと信用しすぎだろ。」
確かにそうなのだ、今回の川内型には大したカウンセリングはしていないはずなのだ、だが、大体のめぼしはついている。
「うぅ・・・うるさいうるさい!!バーカバーカ!!私はいつでも狙ってるんだからな!!覚悟しろ!!」
その理由だが、この鎮守府にいる艦娘たちのおかげだろう。北上や亮のパートナーの夕立。このあたりがやたらと動いてくれている。
「んで、何の用だ?」
「ああ、実は・・・」
川内が言うにはこういうことだ。ここの主力の金剛型のカウンセリングをすればここの鎮守府も明るくなるのではないかということだ。川内はいい線いっている。当たり前だが、リーダー格が皆を引っ張ることで士気は格段に上がるものだ。
「だけど、それって名簿リストかなんかだろ?・・・見ればわかると思うけど・・・」
「ああ、成程な・・・」
本部からの資料に再び目を通す。ここの鎮守府の金剛型は二番艦比叡、三番艦榛名、四番艦霧島の三隻だった。だが、ここの鎮守府は四つの艦隊を編成できる。そして、四つ目の編成を許可してもらえる条件は金剛型をそろえることだ。つまり
「一番型の金剛は轟沈か・・・」
「いや、それがわからないんだ。なぜか知らないけどいつの間にかいなくなってたんだ。だから、比叡さんたちに聞いてみてくれない?」
「まぁ、そうだな。よし、次は金剛型だな」
「あ、あの~いきなり人間が行っちゃダメでしょ?だから、その・・・えっと・・・」
川内は少し早口になったり顔を伏せたり頬が赤かったりと少し様子がおかしかった。
「大丈夫か?ちょっとおでこ貸せ」
「ひゃ!」
亮にとってはただの心配でおでこを川内のおでこにくっつける。だが、川内の体温は上がっていく。
「ぁうぅ・・・」
「熱か?だったら部屋戻って休んでろ。夕立と行くか」
そういうと亮は部屋を出て行ってしまった。
「はぁ、・・・ばかぁ」
川内はその場でうずくまり、にやにやしていた。
とりあえず食堂にいる夕立を呼ぶことにした。
「夕立。仕事だ。」
「亮。ちょっと待つっぽい・・・こことここっぽい!!」
「ブブー外れクマ。ジャックはその隣クマ」
「ああ!!また間違えたっぽい」
「おお。球磨ねぇやるねぇ」
夕立と球磨型で神経衰弱をしているようだ。そして、もう終盤だが夕立の手元にはカードがない。一枚も取れなかったのか
「このまま独占クマー・・・あっ、間違えたクマ」
「じゃあ、あたしね。えっとここがキングで・・・あれどこだっけ?」
「(北上さん!!その手を添えてる部分の三つ左のところ!!違う、そこじゃないわ北上さん!!)」
「えっとこっちがキング。お、当たった」
大井はなぜかわからないがテレパシー的なものを使った。
「にゃ~なんかズルを感じたにゃ」
「いや確かになんかここって感じさせられるようなことになったけどさ~ズルじゃなくない?」
そんな和やかなことをしているが夕立を引っ張り出す。
「ほれ、さっさといくぞ」
「ぽい・・・」
神経衰弱で一枚も取れなかったのがよっぽど悔しかったらしく半泣きだった。
「ところで、どうするっぽい?」
「今度は金剛型だ」
「なんか自発的に仕事とするのは今回初めてっぽい」
確かに、ここの鎮守府ではイベントが起きまくっていた。来てそうそう叫び声だったり、島風だったり、暗殺もどきだったりと予定もくそもない。
「そうだな。本来ならここのもと秘書艦から始めるべきなんだけどな、それが金剛型の榛名ってわけだ」
資料によるとそうらしい、だが、
「まぁ、ショックのでかいことがあったからな」
そうそれは先ほども言ってた金剛の不在だ。シスコンで有名な金剛型だがこれがいると居ないでどう変わるかはわからない。
「そっか・・・」
夕立は何やら悲しい顔をしていた、だが、亮はわかる。そうなってしまった理由を・・・
「まぁ、昔のことだ。頑張って忘れろ・・・」
そういうと先を歩いてしまった。
「(・・・亮も忘れられてないでしょ?だから、夕立がいるんでしょ?)」
コンコン
「金剛型。私は艦娘カウンセラーの狩島亮だ。扉を開けていただきたい。」
「・・・はい」
ドアを開けてきたのは金剛型二番艦の比叡だった。
「比叡か。すまないが榛名はいるか?聞きたいことがあって・・・」
「いえ・・・榛名は今出られない状態なので」
「そうか、じゃあ入るぞ。夕立・・・」
「ぽい!!」
比叡のいうことを無視し無理矢理部屋に入る。
「はぁ・・・まぁ何もない部屋ですよ。お姉さまのいない金剛型なんてリモコンの電源ボタンがないようなものですから」
わかりにくい例えだが金剛がいないのは確からしい。だが、部屋に入るとそこのは誰もいなかった。
「この部屋はお前だけか?」
「いいえ、一応三人部屋ですが・・・」
「榛名がどこにいるかわからないのか?」
「いえ、その・・・」
先ほどから比叡の視線は押入れのほうを向いている。隠すのがかなりへたくそのようだ。
「そこか。夕立見てこい」
「わかったっぽい」
「さて、比叡。霧島はどこだ?」
「えっと・・・出かけています」
と言いながら目線は俺を向いたままだどうやら嘘をついたようではないようだ。
「そうか、とりあえず、検診するからこっち向いて・・・」
「亮!!緊急事態っぽい!!」
「どうした!?」
「榛名さんが・・・」
押入れにいた榛名は。、まず服は着ていなかった。そして、かなり弱っている生傷が絶えない。体のあちこちにカビやが生えてしまっている。そしてその周りには嘔吐や吐血の跡だ。
「これはやばい。くそ!!検診・・・」
この光景。怒りを覚えた何をしたらこうなってしまうのか、何をしてこうされたのか。正直、気味が悪い。だがそれよりも元提督も同じような目にあわせたいという殺意すら目覚めた。
「いやあああぁあああ!!!!来ないでええぇぇえっぇ!!!!榛名は嫌あああああ!!」
「くそ!!夕立押さえてろ!!鎮静剤を打つ!!」
「ああああぁあぁああ!!!やめててぇぇぇぇっぇえええええ!!!」
夕立は必死に抑えようとしているが相手は戦艦だ。当たり前だが駆逐艦一隻で抑えられるはずがない。
「比叡!手伝ってくれ!」
「ひぇえ・・・ご、ごめんなさい・・・」
「お前の妹だろ!?」
「む、無理です・・・」
比叡はなぜかこちらを見ないようにしている。榛名を見ていられないのかわからないが、これが一番艦のいない艦隊だ。誰が何をどうすればいいかわかっていない。臨機応変に対応できないのだ。すると、いきなり扉が勢い良く開いた。
「亮さん!?何事ですか!?」
「神通!!すまないが、榛名を抑えていてくれ!!」
「はい!!」
神通の動きだが全くと言っていいほど無駄な動きがない。戦った時もそうだが、スキや無駄が全くなかった。その動きで榛名を抑え込む。そのまま左腕に注射を打ち込む。そうすると榛名は静かにねむった。
「ふぅ、ありがとう。神通がいなかったら大変なことになってたよ」
「ぽい~」
「いえ・・・その、失礼します・・・」
神通は何か怯えるような状態だった。そのまま部屋を出て行った。とりあえず裸だった榛名には毛布を掛けてやり、担いで入渠室へ向かう。
「夕立、頼めるか?」
「ぽい!・・・亮・・・」
「なんだ!?」
「・・・ちょっと怖いッぽい・・・艦娘を怖がらせないでね」
鏡で自分の顔を覗く。確かに・・・自分でいうのもなんだが怖い。こんな顔で・・・比叡も神通も怯えてしまったのか。自分の責任だ。
「またか・・・」
「うん、必死になってくれるのはわかるけど・・・」
「ああ、すまない・・・ちょっといいか」
「ぽい!?」
亮は断りもなく夕立を抱きしめる。
「すまん、こうすると落ち着くんだ。ごめんな、夕立」
「いいんだよ。亮はいっぱい頑張ってるっぽいし、夕立の提督はもうあなたのなのよ」
「ごめんな・・・」
「うん・・・大丈夫」
亮の悪いところ、それは抱え込んで抱え込んでそれが顔に出てしまうこと、これはいつまでたっても治らない。こうしなければ・・・
「落ち着いた?」
「ああ、すまない、ごめんな・・・」
「もう謝るのは禁止っぽい!!カウンセラーがそんな調子じゃ、艦娘を元気にできないし、みんなの士気もおちちゃうっぽい。でも、夕立には見せていいんだよ・・・弱いところ」
「ああ、ありがとう。さすが俺のパートナーだな」
「うん。さ、夕立は榛名さん見てるから比叡さんをよろしくね」
「ああ!!」
夕立と離れ、亮は比叡のところへ行く。。その途中に何をすべきかを考えておく。
「比叡・・・いるか?」
「・・・・・・」
いる気配はするが返事はない。よっぽど怖がらせてしまったらしい。
「すまない。入るぞ」
「やめてください!!」
扉越しに比叡が拒絶した。そしてなぜか泣いている。
「俺が君を怖がらせてしまった・・・すまないと思っている。だが聞きたいことがある」
「・・・榛名ですか?」
「ああ、あの状態だが、なぜほったらかしておいたんだ?」
そう、この金剛型の部屋で榛名は押入れに監禁されている状態をなぜ見過ごしていたのか。そして、それを助けようという気にはならなかったのか?
「・・・・・・」
「どうなんだ?俺もその辺は聞かないとわからない」
「・・・私は・・・金剛お姉さまがいないと、ただのゴミです。いらないんです・・・」
「なんかあったのか?いやじゃなければ話してみろ」
「そうですね、私は・・・姉妹に迷惑をかける・・・ゴミなんです。もういいですか?話したくないんで・・・」
そういうと扉越しの声は聞こえなくなった。
「はぁ・・・」
今回は俺の責任だ。最初のあの表情を見せていなければもっと信用されていたかもしれない。艦娘のために怒っていた。だが、端から見れば恐怖だけだった。
「夕立に申し訳ないな・・・」
本当にそう思う。今回に限ったことではないが、頼りすぎている。そして、甘えすぎている。
「あれ?亮じゃん。・・・どうしたの?」
そこにいたのは北上だ。このタイミングで出会いたくなかった。これで士気が落ちたら亮の責任になってしまう。
「う~ん?何か手伝おうか?」
「いや、大丈夫だ・・・」
「ばーか。大丈夫じゃないからこういってんでしょうが、スーパー北上様は賭けてるんだから・・・頼んだよ!」
そういわれて肩を叩かれた。
「まぁ、詰めすぎなんだよー。リラックスと気持ちの整理じゃん?あたし救ってくれた時みたいに冷静沈着でかっこよく、ズバっと助けてあげて・・・」
やはり心配されていた、しかし、北上に頼まれている。そこに答えないと艦娘カウンセラーとして廃れてしまう。
「そうか・・・ありがとう。北上・・・まさか艦娘にカウンセリングされるとは」
「どう?いい感じだった?」
「ああ、はなまるだ」
「そうなの?・・・じゃあさ、これが終わったらあたしも亮と一緒に行きたいな・・・なんて・・・」
北上は照れながらもそういう。だが・・・
「悪いがそれはだめだ」
「ちぇー、しょうがないかな。ま、お仕事がんばってね。ほら、飴ちゃんあげるから」
ポケットから出したいちご味の飴を渡される。
「俺は子供か」
「軍艦から見ればね。がんばってねー」
そういうとその場から去って行った。
「全く、信用されてるな。そして、自分がまだまだ甘いんだな。よしもう一回比叡のところに行くか」
そういい、飴を口にした。