艦娘カウンセラー   作:kakikaki

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三話 感謝と黒い影

 艦娘たちは入渠をを終え、補給をさせることにした。

 

「夕立、飯作ってくれ」

 

「ぽーい!!」

 

夕立だが、見かけによらず料理はかなりうまく手際がいい。前の鎮守府料理が得意の鳳翔に教わったらしい。

確かにあの人の料理は最高にうまかった。

 

「と言ってもあまり材料がないから具なしのカレーでいい?」

 

「そうか、一応そこにあるでかい寸胴使ってくれもしかしたらいっぱい食うもしれないし。あと別ででおかゆも」

 

「わかったわ!!」

 

夕立は厨房のほうへ行った。

 

亮は全ての艦娘に部屋を回ったが球磨型と島風以外はノックしても返事すらなかった。そして、来るであろう艦娘のところに・・・工房室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にっししし・・・ここをこうで・・・ここをこうで・・・」

 

工具の音で非常にうるさい工房室だ。そしてガラクタの山の前で不気味に笑う艦娘がいた。

 

「夕張」

 

「うわぁ・・・こここうで・・・これ最高傑作なんじゃない?・・・」

 

「夕張!!」

 

「うわぁ!!提督うるさいな」

 

驚いた表情で作業をやめ顔を覗く。

 

「俺は提督じゃない。話があるんだ」

 

「いいけど・・・もうちょい待って・・・」

 

そういうとまた作業に戻ってしまった。

 

「まぁいいや。そのままでいいから聞いてくれ。提督ではない俺が勝手にお前を生み出してしまった申し訳ない」

 

亮はその場で頭を下げる。この違反行為。上からどのような処理が来るかわからない。俺だけの被害ならいいのだが夕張にも被害が行ってしまったら、本当に申し訳ない。すると作業の手は止めないが答えてくれた。

 

「べつにぃ、私はそんなこと気にしてないよ、というか今の発言の意味が分からない」

 

「提督として夕張を建造したのならお前は晴れ晴れしく艦娘として海に出れた。それがカウンセラーの俺が建造をし違反行為をしてしまった。夕張には被害がいかないよう・・・」

 

「はぁ・・・ねぇ、提督・・・じゃあないんだっけ?なんていうの?」

 

「狩島亮。艦娘カウンセラーだ」

 

「じゃあ、亮。私たち艦娘は所詮兵器だよ。気にしなくていいんじゃない?それに私がいなかったら島風ちゃんは助からなかっただろうし、何より・・・」

 

「島風ちゃんが心配だった時の必死になってた顔。素敵だったよ。この人が私を生んでくれたんだなって・・・だから、謝る必要もないよ」

 

「夕張・・・」

 

「私カウンセラーのこととかとかわからないけどこれからもよろしくね。あ、それとこれ」

 

「これなんだ?」

 

作業が終わったと思うとこちらに何か投げてきた。

 

「空気清浄機。ここ空気悪いからさ、とりあえず試作品。だからあなたが使って」

 

なぜか自信に満ちた顔でピースをしてくる。

 

「ありがとう。ありがたく使わせてもらう」

 

「でも試作品だから後で感想聞かせてね!!」

 

「そうだ、これから飯なんだ。食堂来てくれ」

 

「うん!工具片づけたらいくね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、ご飯はひさしぶりクマ」

 

「にゃ~おいしそう」

 

食堂のテーブルには夕立が作ったおいしそうなカレーが並んでいた。とりあえず球磨と多摩と島風と夕張は食べ始めていた。だが、亮は飯よりも聞きたいことがあった。木曾の存在だ。資料には書いてあるが、その姿は見えない。先ほど色々な部屋を回ったがその姿は見せなかった。

 

「北上、提督室に来てくれ。お前は流動食から始める。一気に補給はしないで少しづつやっていくぞ」

 

「ほーい、ってことはあたしはおかゆとかからなの?え~なんかずるい」

 

「そうよ!!私の北上さんのだけそのような仕打ちをするなんて・・・六十一センチ四連装酸素魚雷をぶち込むわよ・・・それに、北上さんと二人でなんて・・・」

 

なぜか大井が反論する。

 

「大丈夫だよ大井っち。亮はそんなことする行動力はないし~私たちはこの人に賭けてみるって決めたでしょ?」

 

「それはそうですけど・・・わかったわ!!じゃあ私もついていく。あなたはそれでいい!?」

 

「別にかまわないが、聞きたいこともある。詳しくは提督室で話すからついでに来い」

 

その三人はカレーとおかゆをもって提督室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、北上さん!!おかゆの薬味は何にします?食べさせてあげるますから!!」

 

「そっか、じゃあ梅干にしよーかな」

 

提督室に来たものの、二人の世界が出来上がっている。聞きたいこともあるし、さっさと補給をさせて、次の仕事をしたい。

 

「あーん、うん、美味しい、やっぱごはんっておいしいな。大井っちもカレーを食べさせてあげるよ」

 

「えっ!?(うぅ、歯はちゃんと磨いたけど・・・口臭がくさいなんて言われたらどうしよう・・・)」

 

「あれ?大井っちスプーンないじゃん。じゃあ、あたしがとってきて・・・」

 

「いいぃいえ!!北上さん!!私がスプーンもってくるから!!(その隙にもう一回歯を磨いて・・・それから・・・)」

 

大井は素早く部屋を出て行った。何かぼそぼそ言っていたがどうでもいい。

 

「ふふっ・・・」

 

「何にやにやしてるんだ北上?」

 

「いやー、また大井っちとこんな楽しい会話できるなんてさ、お互いに大変だったし、亮のおかげだね~」

 

「そうか・・・」

 

正直恥ずかしかった。まだ、会ってから五,六時間しかたっていないはずだが、こんな早くに感謝を伝えられたのは初めてだ。

 

「あれ~?照れてる?珍しいね~」

 

「近い近い!!こっち見るな!それより聞きたいことがあるんだよ。酷な話かもしれないが・・・」

 

「なに?」

 

亮は手元にあったカレーを食べるのをやめて、北上に問いかけてみた。

 

「お前のところの五番艦の木曾はどうなっているか知ってるか?」

 

「あー、出て行ったよ、此処から。あたしたちも誘われたけどね」

 

「そうか・・・どうして断ったんだ?」

 

「そーだねー、正直動く気にもなれなかったからかな。でも、今は出て行かなくて良かったって思ってるよ・・・ねぇ、亮」

 

少し寂しそう、そして真剣な表情でこちらを見る。

 

「もしさ、艦娘たちが人間に対して反乱を起こしたりしたらどうする?

 

「・・・それは戦うだろうな。人間が艦娘に敵うはずはないけど、抵抗をするさ」

 

「それもそうだね。ごめん、今の忘れて」

 

「あぁ・・・」

 

亮は少し考えた。いきなりあのタイミングでいうということは木曾は反乱を起こそうとしているのかもしれない。

ただの気の迷いのようなものであればいいが、頭の片隅に入れておいたほうがいい。

 

「北上さん!!持ってきましたよ!!さぁ早く私に・・・ねぇ、亮さん・・・なんでそんなに北上さんと距離が近いのかしら・・・」

 

大井はまたこちらを睨むように来る。なぜか殺気立って・・・

 

「いや、これはな・・・」

 

「北上さんに近づく害虫は私の六一センチ四連装酸素魚雷が・・・」

 

「まぁまぁ、さ、スプーン貸して」

 

困っていた亮をフォローするかのように入ってきた。

 

「はい北上さん!!」

 

先ほどの殺気が嘘のように消えた。むしろ笑顔がまぶしいくらいになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、やっぱ夕立のメシうまかった・・・」

 

夕立の料理はさすがだと思う。余談だが初めて食ったときは死ぬかと思った。

 

「ほんとだね~あの駆逐艦、おかゆがなんでこんなにおいしいんだろう」

 

北上も満足してくれたようだが

 

「北上さん!!今度は私が作って差し上げます!!」

 

大井は対抗心を燃やしている。

 

「とりあえず食器返しに行くぞ、皿洗いはやっとくから食堂まで運べ」

 

「ほーい」

 

三人はそれぞれ使用した食器を持ち部屋の外に出る。だが・・・

 

「北上、大井、扉から離れろ・・・」

 

亮は何か異臭と音がしたのに気付いた。懐からピストルを構える。

 

「亮、何?」

 

「扉に何かついている・・・二人は机の下に隠れてろ」

 

「うん・・・」

 

不安そうに二人は隠れる。

 

「ふぅ・・・」

 

二人が安全なところに行くのを確認し、意を決して扉を開ける。亮はまず、開けた瞬間にすぐ後ろに飛び込む。すると上からあるものが降って地面に着くと同時にそれが爆発した。

 

「爆竹か・・・」

 

これが頭の上に降ってきたら明らかに死んでいただろう。

 

「亮!!今のは!?」

 

「二人はそこにいろ!!」

 

部屋を出たその瞬間・・・

 

「くそ!!」

 

左からナイフを持った二人の黒いローブを身にまとう者。亮はその攻撃をよけるため黒いローブとは反対の方向へ走り出す。一人は亮を追い、もう片方の黒いローブは提督室に入っていった。

 

 

「やばい!!」

 

だが、目の前に黒いローブが立ちはだかる。そしてピストルを構えそいつに問いかける。

 

「何者だ!?」

 

「・・・・・・」

 

だが黒いローブは口を開かない。すると、ナイフを突き付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

提督室で黒いローブは黙って部屋を出ようとするが、いきなり扉が閉まった。そこには北上の姿があった。

 

「亮を狙うんだったら・・・許さないよ」

 

そして机の下から大井が出てきた。

 

「そうね、やっちゃいましょう北上さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事を終えた艦娘たちは各々部屋に戻ったりなどした後、夕立は一人で皿洗いをしている。そして、ここにも先ほどのローブが現れた。

 

「ぽい!?だれ!?」

 

「・・・・・・」

 

口を開かないがナイフをこちらに向けている。

 

「・・・しょうがないっぽい」

 

殺気の様なものを感じた夕立も厨房にあった包丁を構える。

 

「さぁ、最っ高に素敵なパーティーしましょう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亮は相手のナイフを必死によける。ピストルを撃つ暇もないそして・・・

 

「(こいつ、躊躇なく首や目を狙ってくる・・・)」

 

その素早い動きは亮より上をいっている。先ほどからナイフが顔や体を数か所だがかすめている。

 

「・・・人間、次で殺しますよ」

 

殺気だった黒いローブがこちらに迫ってきた。そのナイフは首元へ襲い掛かる。

 

「・・・お前は・・・艦娘か?だったら・・・」

 

その首元につかかるナイフを肩で首を隠すように防ぐがそのまま肩ににナイフが突き刺さる。その隙にピストルを相手の足に打ち込む。

 

「ぐぅう!!」

 

その黒いローブはその場でひざが地面につき立ち上がらくなった。

 

「悪いがローブは脱がさせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・あなた艦娘っぽい?」

 

「・・・・・・そうだ。お前はなぜ人間に従っている?」

 

「そうね。夕立も前には人間を信じられなかった・・・けど、亮のおかげで今の夕立がいるっぽい。亮っていう人間を信じてみる気は?」

 

「もうあの人間は死んでいるんじゃないか?あちらには二人行かせたからな」

 

そのセリフを聞いた途端夕立がいきなり素早い動きで襲い掛かる。相手が反応できないくらいのスピードだ。

 

「がぁあ!!」

 

夕立は相手が動えなくするように足を包丁で切った。亮の教えでまずは足を狙うこと。そう教わったからだ。

 

「殺しはしないよ、でも亮に何かあったら許さないから・・・」

 

相手の包丁を取り上げ、そのまま遠くへ投げた。

 

「じっとしてて、ローブを切るときに体に当たっちゃうかもっぽい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まってよ~、あなたたちに用はないわ、な・・・私ははあの人間に用があるのに~」

 

「うるさいよ」

 

北上は部屋にあったある機械を投げつける。先ほど夕張が作った空気清浄機だ。相手はそれに怯みはしない。

 

「それ、裏切りってことでいいのかな~?」

 

すると、懐からナイフを取り出す・・・だが・・・

 

「裏切り?・・・あなたもしかして艦娘?」

 

「私もいるのを忘れないで」

 

後ろから大井が蹴り飛ばす。そして先ほど投げてきた空気清浄機をその上にたたきつける。

 

その黒いローブは気絶した。

 

「さーて、お顔を拝見させてもらいましょうか・・・」

 

その黒いローブを剥いでみる。

 

「あれ・・・この娘って・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローブを剥ぎ取り、その顔を確認する。

 

「こいつは、川内型の二番艦神通か・・・」

 

「おーい亮!!」

 

部屋から北上が顔を覗かせる。

 

「あたしたちもやっつけた・・・ローブとったら川内型三番艦の那珂だったよ」

 

「亮!!艦娘捕まえたっぽい!!」

 

提督室に入ってきたのは夕立。そして、縄でつながれているのは川内型一番艦の川内だ。

 

「離せ!!この・・・くそ!!神通!!那珂!!」

 

「悪いが、その二人も捕まえた」

 

「亮!!ケガしてる・・・」

 

先ほど神通と戦闘した時の傷だ。夕立が着ていたシャツの袖を破いて包帯代わりに巻いてくれた。

 

「ありがとう・・・さて・・・川内型三姉妹」

 

「なんだよ!!ふざけんなよ人間!!今度は何しようってんだ・・・北上も大井もどうしちゃったんだよ!!」

 

縄に縛られたままその場で叫ぶ。もう最後のあがきの様なものだ。

 

「ケガさせて悪かった。入渠してこい」

 

「「「・・・はぁ?」」」

 

三人は呆気を取られていた。


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