艦娘カウンセラー   作:kakikaki

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二十二話 反逆

夕張に連れて帰ってきてもらったが、全員がひどい損傷になっている。

 

「悪い!手伝える奴は手伝ってくれ!!」

 

鎮守府中にいる艦娘に会った順から声をかけ、北上を中心に入渠の手伝いをさせるように言った。本来なら亮本人がやらなければならないことなのだが・・・

 

「いや、女の子の風呂を覗くのはやめたほうがいいんじゃない?」

 

と北上に言われてしまい任せてしまった。夕立来るまで俺やってたんだけど…だが、任せられるのなら正直嬉しい。とりあえず高速修復剤を手配して、連れてきた駆逐艦も返さないと・・・

 

「とりあえず、あの二人には・・・迷った結果うちの鎮守府に付いたってことにしておこう・・・」

 

カウンセラーのくせになぜ遠征中の艦娘を見つけられたかなんて聞かれてしまってもこうやって本人たちからごまかしてもらうしかないだろう。それより、あの魚雷だろう。大して沖の深海棲艦のでる海域には行ってないし、現場を見ていないのでよくわからないので入渠の二人があがったら聞いてみよう。

 

コンコン

 

「朧です。入っていい?」

 

「おう」

 

ガチャッとは入ってきたのは朧。そして潮だった。二人とも仲の良い姉妹そのものになっていたので大丈夫だろう。

 

「持って帰ってきた子たちはもう少し時間かかるかも・・・結構重傷だから」

 

とりあえず無事のようだ。傷の具合を聞いた限りだと後遺症は残らないだろう。とりあえず四人が入渠を終えるのを待つことにする。

 

「少し休憩…」

 

しようとしたが電話が入る。番号は知らない。

 

「はい、艦娘カウンセラー狩島…」

 

「あい、こちら浜元治大将」

 

「・・・大将がカウンセラーなどに何の御用でしょうか?」

 

 

同じ大将の清は同期という理由で交流を持っているが浜元治大将はあったことも話したこともないから電話をかけてくるということは先ほどの件がばれてしまっているのかとひやひやさせる・・・浜元治といえば潜水艦隊の士気を取れば右に出るものがいない。ほとんどのミッションを潜水艦隊で成し遂げたという偉業を達した提督だ。提督ならそのすごさがわかるであろう。

 

 

「いや、なに・・・そこの鎮守府に俺の艦娘送ったから詳しい話はそいつから・・・まぁ、あいつもあんたに会いたがってたし」

 

「いやちょっと・・・」

 

プツン

 

用件を言われ勝手に切れられてしまった。そして、それと同時に窓をのぞき込むとそれらしき人物がいた。

 

「ふぅー、ここで合ってるけ?」

 

水飛沫をあげてのそのそと陸に上がる潜水艦の艦娘。

 

「浜元治大将より先ほど御電話意をいただきました。応接室へご案内いたします」

 

「・・・なんでかしこまってるの?」

 

「浜大将から派遣された艦娘だからな・・・久しぶりだな、しおい」

 

「うん、亮も元気そうだね!」

 

日焼け跡が美しい潜水母艦伊401通称しおい。昔、カウンセリング対象者としてかかわりがある艦娘の一人である。

 

「まさか、大将クラスの艦隊にいるとはな。ずいぶんでかくなった」

 

「まぁね!!・・・っとそれよりも報告があるんだ。亮」

 

そういうと耳を貸してといわんばかりのジェスチャーをしてきたので近づける。

 

「秘密にしたいから誰もこれないところに案内して」

 

そういわれたのでとりあえず提督室に案内すし、扉に面会中の看板をぶら下げておく。こうしておけば問答無用に入ってくる入ってくることはないだろう。

 

「改めて久しぶり!!亮!!潜水母艦の伊401!!」

 

「久しぶり、しおい」

 

改めてお互いに挨拶をしたところで席にお互いに座る。

 

「うん。まぁ、とりあえず現状は救助してくれた他鎮守府の二人は私が送り届けるから安心して、私の提督には亮のほうに何も被害はないようにってお願いしてけど・・・」

 

「・・・やっぱりばれたか」

 

「昔から亮は無茶をする傾向があるからね~まさかと思って聞いてみたらカウンセリング対象中の鎮守府が出撃してるし戦闘だってしちゃってる。いつ首飛ぶかわからないよ?」

 

「その辺は自負してる」

 

「元治提督が黙っとくって言ってたからいいけど、私のおかげだよ!私は選ばれたしおいちゃん??らしいから」

 

清もだが大将クラスになると同じでもやはり能力差みたいなのがわかるのか。彼も神通に対して同じことも言ってた。

 

「俺一度もお会いしたことない気がするけど・・・」

 

「亮が私を艦娘として海に出してくれたから・・・それだけだよ。そのおかげで私も元治提督も活躍をする場がある・・・潜水艦隊だけなんて意味わからない艦隊だけどね!」

 

「そういわれるんだったら仕事のやりがいがあるってもんだ」

 

「まぁね。亮はこの仕事天職だと思うよ?」

 

「ならもう少し休みが欲しいもんだよ」

 

「ふふ、そうだね」

 

世間話を終えたところでしおいの表情は真剣になる。

 

「それで、今回の謎の襲撃・・・あれは艦娘の仕業だよ」

 

「・・・はぁ?」

 

亮はその現場を見ていないので彼女の言ったセリフは信じられないが、艦隊はその状況を見たのでありもままを伝えている。

 

「その場にいたのは球磨型の軽巡洋艦木曾。最上型航空巡洋艦三隈。そして、戦艦大和。確認できたのはこの三隻・・・」

 

「・・・本当か?」

 

「うん。私の仲間たちの報告にはそう書いてあったし・・・それにこれは亮にも関係することだから言うけど・・・今艦娘の反逆が始まっているんだ」

 

このセリフを聞いた瞬間に初日に言っていた北上のセリフを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしさ、艦娘たちが人間に対して反乱を起こしたりしたらどうする?

 

「・・・それは戦うだろうな。人間が艦娘に敵うはずはないけど、抵抗をするさ」

 

「それもそうだね。ごめん、今の忘れて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮に北上の話としおいの話を合わせるとその木曾はこの鎮守府から抜け出した脱走艦ととらえてもいいだろう。三隈も可能性があるので後で聞いてみる。大和を確認してみるがこの鎮守府には所属していないようなので他鎮守府の脱走艦だろう。

 

「・・・そして、ここの提督の話だけど・・・処罰を決する前に・・・艦娘に殺された」

 

「・・・・・・」

 

しおいがいうにはこれはトップシークレットらしい。確かにそうだ。海を守る戦士艦娘がわれわれ人間を仮に囚人でも殺してしまったというのは外に流すわけにはいかないだろう。

 

「それで、犯人はその艦隊・・・」

 

「今その艦隊の勢力はどのくらいなんだ?」

 

亮がそう聞くとしおいはある資料を取り出した。そして、目を通してみると壊滅状態になっている鎮守府の写真も掲載されていた。

 

「カウンセリング対象の鎮守府が狙われている。それに、そこから人間を憎んでいる艦娘を引き連れて勢力を大きくしている」

 

確かに狙うとしたらカウンセリング対象の鎮守府だろう。仮に普通の鎮守府を責めるとなってしまえば、まず提督による的確な指示や臨機応変な対応で撤退を余儀なくされるだろうし、そもそも、人間を恨んでいない時点で反逆者の仲間にはなることはないだろう。それに対して、カウンセリング対象の鎮守府はまず、提督はおらずカウンセラーしかいない状況で人間に恨みを持っている。仲間を集めるにはうってつけな場所だろう。

 

「それにしてもそんな重要なことをこんな簡単に報告されるもんかね?」

 

「亮にしては察しが悪いね・・・それほど重要だからだよ。極端な話だけど人類滅亡だってあり得るからね。だからこうやって隠密にしているんだ。私の鎮守府でもこのことを知られているのは一部だし」

 

滅亡は言い過ぎな気もするが完全に否定はできない。仮に電話などを使ったとして電線の妨害など今となれば簡単にできる時代だ。それをされるリスクを考えてのことなのだろう。

 

「だけど大丈夫なのか?その・・・お前らにも被害が・・・」

 

「それは大丈夫・・・私は強いし・・・それに、私は・・・亮に出会ってよかったから・・・一緒に過ごして人間もまだ捨てたものじゃないって思えるから・・・その・・・」

 

「・・・・・・」

 

「す、す、すき!あ!!いや・・・信頼!!そう!!信頼関係をもっと!!ね!!」

 

「悪いな・・・あのころから気持ちは変わってない」

 

「・・・誤魔化したんだから拾わないでよ」

 

そういった瞬間に彼女は立ち上がり外を覗く。

 

「まぁ、スッキリしたからいいよモヤモヤとれたし・・・じゃあ、仕事中にごめんね!!失礼しました!!」

 

そういって彼女は速足で鎮守府を出て行ってしまった。

 

「・・・はぁ」

 

昔に彼女にはカウンセリング中に真剣に交際を申し込まれたことがある。これはたまにあることだ。絶望の状況から救い出してくれた人に見えるらしい。これを相手は恋愛感情に芽生えてしまうケースもある。だが、法律によって人間同様禁止されている。交際は認められてないし、なんにしろ国宝の艦娘だ。

 

コンコン

 

「今大丈夫?」

 

「少し待ってくれ」

 

声の正体は北上だろう。とりあえず見られたら困る渡された資料を隠す。

 

「いいぞ」

 

「ほいほーい。とりあえず駆逐艦の子二人はどうすればいい?」

 

「・・・あ」

 

そういえばしおい・・・お前が送り迎えするっていってたんじゃ・・・

 

そう思っていると電話が鳴った。番号は先ほどの浜元治大将だ。

 

「はい。こちら・・・」

 

「ちょっと!!しおいちゃん泣かした狩島亮っあなた!!?」

 

電話越しに大声で叫び出すのは誰だ。

 

「龍鳳さん!!大丈夫だから!」

 

龍鳳らしい。とりあえず先程のことだろう。電話越しにしおいがとめてくれているみたいだ。というか近いんだな鎮守府。もう戻ったのか?

 

「私も今からいくから!!」

 

 

ガチャっと乱暴に受話器を置いたのか、ぶつ!と耳障りな音がしたが…また来るのか?そう思って外を見ていると

 

「…なんだあれ?」

 

島?がでかくなっている…いや、近づいてきてる!!!?

 

「うわ、すごいね」

 

北上も驚いている。

 

そしてその島を鎮守府の岸に繋げると鬼の形相で全速力で来る艦娘いた。

 

「こぉぉっぉらああああ!!!」

 

甲高い声が鳴り響く。龍鳳さんですね。こっち来ないでください。そんなことを考えているうちに提督室に無言の圧力をかけながら入ってくる。

 

「うちのしおいちゃんを泣かせるなんて!!」

 

いきなり胸ぐらをつかまれてはぶんぶんと振り回される。

 

「あ、ちょっと!!龍鳳さん私は大丈夫だから!」

 

少し遅れて、先ほど帰ったしおいがまたはいって止めようとしてくれてる。が止まる気配はない。だが、そのあとの一斉で場は静まり返る。

 

「龍鳳。落ち着け」

 

威圧感のある言葉を放ち、場を静まらせたのは海軍四大将の一人浜元治。わざわざ鎮守府に出向いてくれたようだ。少し遅れて、その場の全員が彼に向けて敬礼をする。

 

「ん、休め・・・というか俺の場合はわざわざそんなことしないでいいからな。面倒だし。ただ、他の上官の場合はしろよ」

 

そういって解かせてもらうと彼の目線は龍鳳へ向く。

 

「とりあえずそいつをはなしてやれ」

 

「は、はい!!」

 

彼のいうことを聞きすぐさま手を放した。

 

「とりあえず、初めましてだな・・・浜元治だ。よろしく」

 

「はい!私、海軍艦娘カウンセラーの・・・」

 

「ああ、狩島さんの弟だろ・・・んでしおいの恩人。あんたは海軍でもそれなりに有名人だからな」

 

まぁ、前も話したとは思うが、姉は海軍四大将の一人で史上初の女大将だ。

 

「まぁ、姉のコネの部分もあるとは思いますが・・・」

 

「別に、そこはそう思ってねーよ。あんたの実力がそれなりに有能なのも知ってるし、狩島さんもそれなりに使える奴とは言ってたし・・・ッとそんなのはどうでもいい。とりあえずお前らが持って帰ってきた駆逐艦を送り届けるから俺の鎮守府に乗せておけ」

 

「そのさ・・・あれは何なの?」

 

北上が外の島を見て尋ねてくる。確かにあれは何なのだろうか。

 

「あ~、あれな、移動型鎮守府。無人島改造して作った」

 

「へぇ・・・すごい・・・」

 

「なんかうちの機械大好きの艦娘が一年で作ったっていってた」

 

「え!?そうだったんですか!?」

 

しおいも知らなかったみたいだ。というか、艦娘があれを作ったのか・・・

 

「ま、そういうことだそろそろ仕事に戻る。龍鳳、しおいもどるぞ」

 

そういって彼と艦娘二人は駆逐艦を連れて鎮守府に戻ってその移動型鎮守府はどんどん遠くなった。

 

「・・・じゃあ、あたしは部屋に戻るねー」

 

そういって北上も部屋に戻るみたいだ。そしてそれと入れ替わる形で夕立が戻ってくる。

 

「大丈夫か夕立?」

 

「うん・・・でもそれよりも心配なのが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・静かになった」

 

さっきまではてんやわんやしていた入渠室も今は鈴谷一人という状況に立っていた高速修復剤使っているから正直言ってもう出ても問題ないんだけどね。

 

「はぁ・・・体洗お・・・」

 

まだ体が少しピリピリと痛むが気にしないようにした。

 

「・・・・・・」

 

無言。とりあえず洗っていくが次第に悲しくなってきた。

 

「・・・まぁ・・・いいんだけどさ・・・」

 

夕立に対してはみんな本気で心配してくれていた。さっきまでここにいたすべての艦娘は私以外に対しては懇切丁寧に診ていてくれていたが・・・私に対しては見向きもされなかった。死にそうになってもここまでも扱いでしかない私は本気で嫌われているのだと今更ながら実感がわいてきた。姉妹艦も別の子の相手をしていたし・・・亮みたいに察しのいい人が現れてほしい・・・でも、それはしょうがない・・・しょうがないんだ・・・私が決めたことだから・・・

 

「おい!いつまで入っている?」

 

ガララッと扉が開くとそこには意外な艦娘が立っていた。

 

「全く・・・少し心配になってきてみたら・・・」

 

そうって彼女はタオルを泡立てて背中をごしごしと洗い始める。

 

「・・・・・・」

 

「どうだ?うまいものだろう?よく姉妹艦でこういうことをしたりするからな」

 

「・・・・・・」

 

「次は・・・髪の毛だな」

 

そういって彼女はシャンプーを手で泡立たせてごしごしと洗う。

 

「・・・・・・」

 

「かゆいところはないか?」

 

「・・・・・・」

 

「・・・流すぞ。目をつぶれ」

 

そういって彼女はシャワーの温度を確認して頭から泡を流していく。

 

「よし、あがろう」

 

そういって二人で入渠を終えて着替えをしようとする。

 

「なんなの・・・」

 

「別に、したいからしただけだ」

 

「でもさ!!・・・なんでなの?」

 

「クッキー」

 

「え?」

 

「今度は食べてくれるか?」

 

「・・・うん。ありがとう・・・長月」

 

先ほどでは作ったクッキーを踏みつけられ罵倒もされた長月だが、彼女から近づいた。

 

「・・・おいしい」

 

「よかった」

 

「わた・・・私・・・さっきはさき・・ごめ・・・ごめぇん・・・」

 

「・・・ああ、その言葉が聞けただけでもういいよ」

 

そういって彼女を慰めてやる。

 

「でも、私にかかわったら・・・だって・・・」

 

途切れ途切れでよくわからないが、鈴谷とはかかわらないほうがいいと思っているのだろう。確かに悪者に味方をするようなものだ。

 

「別に、こんな状況だし。争っていても仕方がないと思っただけさ・・・鈴谷のしたことは許されるかはみんな次第だけど・・・今は協力すべきなんじゃないかって思うんだ・・・」

 

「・・・でもお願い」

 

「なんだ?」

 

「私に構うようなことは・・・極力避けて・・・本気でやばかったら頼む・・・」

 

「そうか。君がそういうなら止めないよ・・・」

 

そういって長月はその場を去った。

 

「・・・あれ?」

 

また涙が出てきた。かなり久しぶりだった。やさしくされた。これだけだ。うれしかった。このような些細なことでも心から喜んでしまうくらい久しぶりな感覚だった。

 

「・・・やるっきゃないよね」

 

彼女は決心した。どんな対応をされても構わない、私は悪者だ。だが、謝罪だけはしよう・・・それで、私はどうなっても構わないから・・・この鎮守府の艦娘は必ず守って見せる。それが相手がたとえ・・・私たちを襲撃した三隈ねぇであっても・・・


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