艦娘カウンセラー   作:kakikaki

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二話 姉妹艦

 あの後、北上を入渠室に連れていき後は夕立に任せた。正直、夕立には頼りっぱなしで申し訳ない。しかし、艦娘同士のほうが気が楽だろう。

 

「はぁ・・・」

 

亮は提督室に戻り資料の確認をする。この鎮守府の艦娘、場所、在庫・・・在庫は後で確認しておこう。また奥の手使いたくないし。

 

「それにしても部屋が汚いな・・・」

 

この部屋に限ったことではないが全体的に汚いし暗い。カーテンと窓を全開にしているがそれでも埃は多いしジメジメしている。だが、そんなこと気にしてられない。とりあえず、本部から取り寄せるものを決めておこう。高速修復剤、ボーキサイト、燃料、弾薬、日常生活の消耗品、艦娘用薬、妖精も何人か・・・

 

おぅ!おぅ!

 

「んっ?なんだ?」

 

この辺の海域ではオットセイが出てくるのか、珍しい・・・

 

おぅ!おおおおう!

 

だいぶ近いみたいだな。ま、それより仕事だ。

 

これで・・・ね、連装砲ちゃん!!

 

キュィーーーン!!

 

オットセイがしゃべってるよ・・・はぁ!?

 

亮は急いで窓の外を見た。そこには

 

「これで目標達成だよ!!ついにかぁあ・・・」

 

そこにいたのはしゃべるオットセイ・・・ではなく、島風型一番艦の島風だ。ウサ耳のような装飾品と露出度の高い武装。あのかわいらしい見た目だが、日本の軍艦では最速を誇る駆逐艦だ。

 

「あいつもここの鎮守府・・・みたいだな」

 

机に置いてあった資料にしっかりと書かれていた。だが、球磨型と比べたら部屋の外に出てるし、本人も元気そうだ。外傷も見つからない。だが、今は海域に出ることを禁止している。

 

「違反だから注意しておくか」

 

亮は提督室から島風のいる場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

「やったあ!!」

 

「キュィーーーン!!」

 

島風と連装砲は喜びのあまりその場で踊っていた。それにしても何を喜んでいるんだ。

 

「おい、島風、今この鎮守府から出るのは違反だぞ」

 

「ぉおう!!提督・・・じゃない?お兄さん誰?」

 

きょとんとした表情でこちらの顔を窺っている。

 

「艦娘カウンセラーの狩島亮だ。それより何をそんなに喜んでいる?」

 

「えへへ・・・実はねぇ・・・」

 

なぜかもったいぶっている。そしてにやにやしながらポケットから取り出した。

 

「はい!!燃料と弾薬と鋼材とボーキサイトだよ!!」

 

「・・・おぅ」

 

もったいぶった割には普通の資材だった。亮もあっけを取られ、島風のようなリアクションをしてしまった。

 

「なんとこれで一万個目!!これがあれば私の姉妹艦が作れるんだって!!」

 

「おぉ、良かったじゃ・・・あれ?」

 

この時に疑問を抱いた。島風型に姉妹艦はいないはずだ。確かに開発途中では十六隻作る予定ではあったが、その速さや性能により一隻しか作れなかったはず・・・

 

「島風型の二番艦があるなんて知らなかったよ!!提督が教えてくれたんだ!!」

 

「・・・・・・」

 

この時、亮はなんていえばいいかわからなかった。思ったのはこんな小さい子をだましてまで資材を集めていた元提督への怒り。そして、真実を今告げるべきかどうか・・・だがこんなのはいずればれる。

 

「えへへ・・・名前は島嵐ちゃんって言うんだ!!私が少し名前負けしてるけどお姉ちゃんになるんだよ!!」

 

この笑顔・・・

 

「それにね、島嵐ちゃんと何をするかはもう決めてるんだ!!まずは一緒にお買いものして、お風呂入って、ご飯を食べたり作ったり・・・」

 

今言ってぶち壊すのか・・・

 

彼女の無垢な笑顔この鎮守府でこんな笑顔が早く見れるとは思わなかったが、これは偽りだ。そのあとに絶望をする笑顔はいらない。

 

「島風・・・それは提督の嘘だ」

 

「・・・えっ?」

 

一瞬にして顔色が変わる。やはりこうなってしまうか、だが、先ほども言ったとおりいずれはばれる。ならば、さっさと言ってしまう・・・それが、やりたくないが最善策だ。

 

「島風型に二番艦は存在しない。そういったんだ」

 

「・・・うっそだー!!提督が言ってたもん!!島嵐ちゃんはいるもん!!島風型の二番艦で、私の妹で・・・ひとりぼっちじゃ無くなるもん・・・ペアルックとかする・・・それで、みんなに自慢して・・・そうだ連装砲ちゃんは?いると思うよね島嵐ちゃん・・・」

 

「島風・・・お前は騙されてたんだ。資材集めの口車に乗せられたに過ぎない」

 

「資材が足りないの?じゃあまたとってくればいいんでしょ?・・・いってくる!!」

 

島風はそのまま海へ出ていこうとした。だが、服をつかもうとしたが・・・遅かった。いや、島風が速すぎたのだ。さすが最速の駆逐艦といったところだ。しかし、今海に出て深海棲鑑なんかに遭遇したらやばい。補給もしていないし、精神的に混乱したのか、会話すらできていなかった。もう、島風の妄想の妹のことで頭がいっぱいなのだろう。

 

「くそ!!夕立を・・・」

 

夕立を呼んで島風を引き留めてもらう。そう考えたが、入渠中の艦娘四人の相手をしている。それを中断させるわけにもいかない。

 

「くそ・・・どうすりゃ・・・」

 

すると、目の前のあるものを見て気がつく。軽く単純計算する、夕立が入渠室そこから着替え、武装・・・

 

「夕立たちを呼ぶよりこっちのほうが早い!!」

 

亮は早速準備に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あった、ボーキサイト・・・」

 

近辺であるが海域をくまなく探す。しかし、疲れ切っているのか、その場で座り込んだ。

 

「あとどれくらい見つければ・・・」

 

でももう、わかっていた。島風型の二番艦なんていないことくらい。でも・・・絵空事を信じてみたかった。もしかしたら、もしかしたらだけど、実はいたのかもしれない。そう考えてしまった。

 

ヴオォォォォォォォ!!!!

 

「え?」

 

島風の後ろには・・・深海棲鑑が・・・

 

「おぅ!連装砲ちゃん!!」

 

相手は軽巡のへ級一体。これなら余裕だった。しかし、いつもならここでキュィーーーン!!と大きく返事をしてくれるのだが

 

「え・・・もしかして、弾薬切れ・・・」

 

ぐったりと持っていた浮き輪に浮かんでいた。動かないようだ。

 

「だったら魚雷・・・」

 

ドゴォン!!

 

目を離したすきにへ級の弾が島風に直撃した。

 

「くぅ・・・逃げないと・・・あれ?」

 

体が動かない・・・まさか、燃料も切れた・・・

 

動かない艦娘などただの的だった。へ級は島風に向けて砲口を構える。

 

もう・・・だめ・・・

 

 

 

ドゴォン!!!!

 

 

先ほどと同じ音がした。ああ、私轟沈しちゃうんだ・・・

 

ヴォオオオオオオ!!!!

 

あれ・・・なんで・・・

 

「何ぼさっとしてんの!!ほら、怯んでるスキに戻るよ!!」

 

誰かにそっと抱かれてる・・・いい匂い・・・

 

島風はそのまま気を失っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぅ・・・」

 

目が覚めた時は入渠室だった。そして彼女の目の前には艦娘がいる。

 

「はぁ!?なんで夕立がお風呂役っぽい!!というか、これは浮気っぽい!!」

 

「今回はしょうがなかったんだ!!」

 

外のほうで何か聞こえる。お兄さんの声だ。

 

「そっか、島嵐ちゃん・・・いないんだった・・・」

 

そうつぶやくと後ろから声がした。

 

「目が覚めた?全く、駆逐艦一隻であんなところいかないの!!約束できる?」

 

「・・・うん・・・あなた誰?」

 

目の前にはこの鎮守府には見覚えのない艦娘がいた。

 

「私?私は夕張型一番艦の夕張よ!!ほら、とりあえずお姉さんが体洗ってあげるから」

 

夕張型一番艦夕張。古鷹型や妙高型のモデルとなった軽巡洋艦だ。

 

「あ・・・いい匂い・・・」

 

「ふふ、なんか島風ちゃん妹みたい」

 

「夕張さんはお姉ちゃんみたいだね・・・私も姉妹艦いたらこんな感じだったのかな・・・」

 

「あぁ、そっか、私もそう思うな、姉妹艦がいたらこんな感じって・・・」

 

「えっ?夕張さんも姉妹艦いないの?だったら、私のお姉ちゃんになってよ夕張さん!!」

 

「よしわかった!!お姉ちゃんについてこれるかな?」

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

その頃入渠室の外では・・・

 

 

「でもありえないッぽい。時間ないからって島風ちゃんが持ってきた資材を使って夕張さんを高速建造するなんて」

 

「いや~確かにそれしか策がないって思ってもさあたしらが役立たずみたいじゃん。なんかショック」

 

亮は夕立と北上の二人からいろいろ注意を受けている。勝手に鎮守府で艦娘を建造してしまったからだ。

 

「あぁ、島風は助かったものの、上になんて報告したものか・・・」

 

夕立の所持は特例だ。艦娘カウンセラーとはいえ二隻目なんてありえない。だが、緊急だったとはいえ夕張を建造してしまった。責任はある。・・・報告書を書いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亮は提督室に行き夕張を建造したため本部への報告書を書いていた。

 

コンコンっ

 

ノックの音だ。

 

「はい、どうぞ」

 

「島風はいります!!」

 

大きな声で島風は入ってい来るや否や目の前までダッシュしてきた。

 

「お兄さん!!聞いて!!私ね!!お姉ちゃんができたんだよ!!」


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