先ほどの部屋に戻り、瑞鶴は先ほどの続きを話し始めようとした。
「じゃあ、続きいいか?」
「うん・・・よし・・・」
そういって瑞鶴は気合を入れる。多少の不安はあるように見えるが彼女の話を聞かないと先に進めない。
「大丈夫か?」
「うん。正直さっきより気が楽だけど・・・ね」
「よし、話してみろ」
清はさっきからなぜか急がせようとしている。
「ええ、わかったわ」
結婚式・・・そして誓いのキスをするときに・・・
ドゴォオオォォォン!!!!!!
何か、砲撃が聞こえたそして・・・
ガシャァァァアア!!!
天井が崩れてしまった。何が起きたのか・・・急いで外に出てみた。そこには・・・
「なん・・・で・・・」
外に出ると深海棲鑑が攻めてきていた。普通鎮守府に直接攻めてくるなんてありえない。なぜこうなったのか?
「至急!!艦隊の編成!!空母機動部隊を編成する!!第一艦隊ただちに敵勢力を殲滅せよ!!第二艦隊は支援を!!」
一馬の声にみんな我に返る。今やっているのは結婚式ではない・・・戦争だ・・・
各々が出撃する。そして外に出るはいいが・・・数が多すぎる。二十隻はいるだろう。
「元戦艦!!あんたは下がって!!」
「いいえ、戦います」
「でも!!」
「うるさいわよ五抗戦・・・確かに動きにくいけど、やるしかないわ」
そう、加賀の格好は先ほどのウェディングドレス。かなり動きにくそうだ。しかし、この状況で着替えるなんて余裕はない。
「悪いな加賀・・・」
「いえ、提督指示を!!」
戦場はひどいありさまだ。最初の一撃で鎮守府は少し壊れている。しかし、そこからの巻き返しにより何とか敵艦の数を五隻まで減らした。空母である瑞鶴と加賀は無傷。轟沈はゼロ。負傷者も少量だ。準備不足の状況からよくここまでできた。笹岡一馬の指示のおかげだ。だが・・・
「矢が・・・」
瑞鶴の矢は残り一本となっていた。そして・・・最悪の事態が起きた・・・
「新しく敵艦発見!!・・・嘘!?」
そこに現れたのは北方棲姫だ。実力の計り知れない存在。この艦隊で姫クラスの艦隊は戦ったこともない。万全な状態ならまだしも、弾薬や燃料も半分ぐらいという状況で勝てるのか?不安になった。
「・・・・・・」
北方空姫は無言で艦載機を放ち始めた・・・数えきれない数が一気に展開される。
「くそ!!・・・第一艦隊!!第二艦隊!!撤退だ!!この鎮守府を捨てる!!」
それは決死の選択だ。提督が鎮守府を捨てるというのは何もかもを捨てる。今までの戦果、努力。もしかしたら首を斬られることもあるだろう。だが、彼は自分の地位よりも艦娘の命を取った。だが、ある艦娘はそれを許さなかった。
「いいえ。ここは譲れません」
「ちょっと!!元戦艦!!」
「逃げたければ逃げてください・・・私は戦います」
そういって加賀は艦載機を放ち始める。
「バカ!!この状況で・・・」
「いいえ、バカはあなたです」
一馬のいうことを遮って加賀は話し始める。
「こんなことをしてしまってはあなたは軍法会議で確実に処刑されます。艦娘なんか守るより私たちを囮にして鎮守府の資材などを運び出してしまえばあなたの罪は・・・」
そう、深海棲鑑に資材や艦載機、電探などをを取られてしまえば敵勢力の向上となってしまう。それだけは確実に避けたいので加賀はそのような案を出したのだ。
「加賀!!・・・囮なんて言うな・・・」
「ならあなたも私の犠牲になるようなことはやめてください」
「・・・・・・・」
この時、瑞鶴はただ逃げることだけを考えていた。この状況だったら普通さっき言っていた撤退で私は生きていけると思っていた。だけど、加賀は違った。自分ことより一馬のことを考えていた・・・
「(私・・・この二人には勝てないんだ・・・)」
勝手に納得してしまった。せざる負えなかった・・・だったら・・・
「加賀さん!!あなたは他の艦娘を連れて提督と逃げなさい!!ここは私が食い止める!!」
「何言ってるの!?」
「ううん・・・いいの、私が逃がしてあげる。それまでにほかの子を連れて資材の運搬を開始して!!」
「おい瑞鶴!!そんなこと許さな・・・」
「提督!!・・・今こんなこと言うべきじゃないけど・・・」
「大好きでした・・・」
真上に最後の艦載機を打ち上げ、展開する。
「・・・っ撤退!!鎮守府の資材を運んで!!」
「加賀!!お前まで!!」
「いいから急いで!!!!彼女の覚悟を無駄にしないで!!!!」
加賀に圧倒されたのか艦娘は急いで撤退する。そして言われた通りに資材を運び出しているようだ。
「・・・貴方に残りの矢を渡しておくわ・・・」
そういって加賀は瑞鶴に自分の艦載機を渡す。
「ありがとう」
「瑞鶴・・・ありがとう。私の・・・親友」
そういって加賀は背を向けて鎮守府に戻っていった。
「バカ・・・」
そういて彼女は加賀に託された艦載機を放つ。
「よかった・・・私の勘違いじゃなくて・・・」
加賀に親友と認められた。その言葉、そっくり返してやるんだから・・・
そして瑞鶴は鎮守府に当たらないように下からの攻撃は致命的な一撃だけをよけるようにして艦載機は敵の艦載機を落とすようにした。空母一隻では何分持つかはわからないがせめてあの人たちが逃げられるくらいの時間は絶対に稼ぐ。先ほどからへ級の攻撃をかすめているがその程度では怯まない。敵艦載機を落とすことだけを考える。中破にならなければいい。瑞鶴は空母での幸運艦・・・だから大丈夫!!
敵の攻撃に注意して艦載機を打ち落とす・・・この作業を何回繰り返したか・・・あたりは艦載機に囲まれて自分の矢の数は残り一本・・・
「・・・・・・」
無言で集中する。いつどこで何が飛んでくるかを全神経を研ぎ澄ませる。砲撃は全て避ける。艦載機は撃ち落とす。
「・・・あ」
一瞬立ちくらみが起こって膝をついてしまった。・・・そこを狙われてしまった。
「・・・・・!!」
いつの間にか敵艦載機は瑞鶴の後ろを過ぎていた・・・振り返って急いで最後の一本を構える。だが、そのパニック中に後ろから砲撃を浴びせられる。
「あぁ!!」
一瞬のけぞるが大丈夫まだ射てないわけじゃない。その艦載機は展開されその敵艦載機を追撃するが・・・遅かった。
無数の敵艦載機は鎮守府を一斉放火する。矢もない。どうすればいいかわからなくなった。すると深海棲艦は瑞鶴を無視して鎮守府のほうへ向かう。何もできないと察したのか鎮守府に一斉放火する。
「やめて!!やめて!!!!!・・・お願い・・・」
そんなもの届くはずもない。だが叫ぶしかできなかった・・・崩れて行く鎮守府をただただ眺めていることしかできない。私の思い出が私の居場所が・・・瑞鶴はその場で倒れてしまった。
「んぅ・・・」
目が覚めるとここは病室だった。するとそこには一人の男性が立っていた。顔がよく見えない。
「起きたか・・・」
「あれ・・・!!」
頭を起こすと一気に思い出したそしてかの状況はどうなったのか?
「お前が唯一の生き残りだ」
えっ?どういうこと・・・
「あの後、支援艦隊が敵勢力を半減。撤退させた。だが・・・そこの提督と艦娘は死亡した」
「・・・・・・」
何言ってるんだろう・・・私は何もできなかったっていうの?私の作戦のせいで・・・私だけが生き残ったっていうの・・・そんな・・・
「そういうことだ。そしてこの後のことなのだが・・・」
彼の言葉なんて入ってこなかった。この後何をすればいいかなんて聞いてなかった。
そしていつの間にか私は今の鎮守府に配属されていた。何があって何がどうなったのかなんて覚えてない。とりあえず私は仲間を殺した。あんな作戦を立ててしまったからだ、それに最後の艦載機を当てていれば何とかなったかもしれない。
「お前が瑞鶴か・・・」
ここの鎮守府の人らしい。彼が何かいろいろ言っているが聞く気などない。だがその態度が怒らせた。
「貴様!!上官に向かってその態度は何だ!!」
そういわれていきなり胸ぐらをつかまれる。沸点の低い人だ。一馬みたいな提督もいればこんなのもいるんだな・・・反抗もする気もないが手で軽くはじいてやると提督はイラッとした。
「くそたっれ!!この小娘が・・・」
そういって彼女はさっさと提督室を出て行った。そして自分の部屋へ向かう。スタスタと歩いているとそこに到着した。ここらしい。
そして、そこの扉を開けると誰かがいた。どうやら相部屋らしい。
「あら?どちら様ですか?」
「今日からここに配属された艦娘よ・・・」
そういって自分の荷物をその辺にぼんっ置く。そして少し横になるがその上から顔を覗きこまれる。
「・・・瑞鶴?」
「・・・翔鶴ねぇ」
そこにいたのは翔鶴型一番艦の翔鶴だ。瑞鶴の顔を見るといきなり笑い出した。
「いらっしゃい瑞鶴!!今お茶を入れるわね!!」
「あ・・・はい」
なぜかいきなりテンションが高くなった。せっせとお茶を入れているようだが私はそんなことを気にせず寝ることにした・・・のだが・・・
「ほらおきて!!」
無理矢理起こされた・・・
「わかったわよ・・・もう・・・」
正直そんな気分じゃない。それよりもあの時に何ができるかをずっと考えていた。今更でもあるが・・・
「・・・紅茶?」
「ええ、ごめんなさいねこのくらいしかもてなせなくて」
そこにはすごく薄い紅茶があった。飲んでみるとなんかほとんどお湯に近かった。
「・・・ふぅ」
翔鶴はそう一息つくが・・・
「なにこれ?」
「・・・まだ二回目のだから」
そういわれ、先ほど紅茶を注いだポットを見るとそこには明らか薄いものがあった。
「なんなのコレ?嫌がらせ?」
「違うの瑞鶴!!・・・これが精いっぱいなの・・・・」
確かに、ここに来る途中もそうだがどこもかしこもボロボロだった。
「艦娘なんて所詮兵器なのよ・・・」
「・・・・・わかったわよ」
そういってポットの中身のお茶をすべて捨てる。
「何するの!?勿体ない・・・でも当然よね・・・」
そんなことを言っているが瑞鶴は自分が持ってきた荷物から紅茶のはっぱを取り出した。
「ほら、これで入れなおすから」
そういってポットを綺麗に洗い、またお湯を注ぐ。今度は紅茶らしい色に紅茶らしい香りが部屋に充満していく。
「ありがとう瑞鶴」
「いいのよ。気にしないで・・・」
この状況、この鎮守府はブラック鎮守府と断定してもいいだろう・・・この場でやっていけるのか?明らか前とは違う・・・でもしょうがないか・・・仲間を殺した私は・・・
「でもどうしたの?そんな辛い顔をして?」
「何でもないわ・・・私は少し外に出てくる」
「それはだめよ」
「なんで?」
「ここの決まりよ・・・指示がある限り部屋からでてはいけないのがここの鎮守府のルールよ」
そういえば提督室でそんなこと言ってたっけ・・・聞く気もなかったけど・・・
「何そのルール・・・そんなの守る気にもなれないわ」
瑞鶴はそういって翔鶴のいうことを無視し部屋を出て行った。
とりあえずあたりを見渡してみる。なんかいるだけで風邪ひきそうな廊下だ。ここにいてもすることもないので外に出ることにした。
「っち!!また駆逐艦・・・捨てておけ!!」
工房を覗いてみると提督ができたての艦娘を解体の機械に放り込んでいた。
「(ひどいものね)」
こういう場所なのか・・・とりあえず今のうちのここの戦果を見ておくか・・・
瑞鶴は提督室に行きその状況の資料を目に通すが大したことないことがわかる。あの偉そうな態度のくせに結果を全く出せてない。轟沈数も多すぎる。
「こんな鎮守府・・・」
そんなことを言っているとどうやら戻ってきたらしい。反射的にカーテンの裏に隠れる。
「全く・・・今日も大外れか・・・まぁ、こいつでいいか」
そこについてきたのは先ほど建造したばかりの艦娘だ。よく見えないが軽巡だろう。すると・・・
「全く使えねぇなぁ!!!」
そうってその艦娘を殴りつける。二発目・・・瑞鶴は我慢できなかった。
「・・・やめなさい」
降りかかる腕を静止する。寸前で止めた。
「あなたも行きなさい・・・」
「おい!!小娘・・・手を放せ」
「いやよ。貴方が提督なんて信用ならないから・・・その子解放しないと、このまま折るわ」
瑞鶴の目は殺気そのものだったといっていいだろう・・・しかし・・・
「・・・っち!!」
嫌味をはきながらも開放する。その子にお礼を言われたが私は何も言わずその子とそのまま出て行った。そして、やることもないので演習場へ向かうことに
空母用の演習場だけでなく、演習場に誰もいなかった。まぁ静かのほうが練習にもなるが・・・
そうやって弓を構える。そして放とうとするが・・・
バッ!!!!
矢が飛んでいく方向は的外れのところに飛んで行った。
「あれ?」
もう一度構えてみる・・・一馬と加賀に教えてもらった構え方・・・あれ?
「なん・・・で・・・」
あれだけ体にしみこませた放ち方はできなくなっていた。そして放とうとすると・・・
「また・・・」
バッ・・・と映像が頭に流れる。あの時、当てられなかったことを思い出している?その影響か・・・全然うまくできなかった。その後何発射ても的には結局当たらなかった。
かなりショックだった。とりあえず燃料の補給をしようと思ったのだが・・・
「・・・どこにも補給物がない?」
色々探し回っているがどこにもなかった。諦めて部屋に帰ろうとするとアナウンスが流れた。
「食事の時間だ。食堂に集まれ」
声は提督だ。とりあえず部屋からゾンビのように生気を感じられない艦娘が出て行く。そして、場所はよくわからないのでそのあとについていく。そして、着いたはいいが出された食事は質素なものだった。少量の食事にドリンク。こんなのじゃ駆逐艦も足りないくらいだ。
「・・・・・・」
だが周りは文句も言わないで黙々と食べ続ける。なぜみんなこうなのか・・・
「瑞鶴・・・」
「あ、どうも」
隣に座ってきたのは翔鶴だ。
「いいのよ。もっとフレンドリーにして、私のも食べる?」
「いいわよ。空母なんだからあなたも食べなさい」
瑞鶴はそういってさっさと目の前の食事を食べ終えさっさと部屋に戻る。
「もう、なんなのコレ・・・」
この生活に耐えなければならない。どうすればいいのか・・・
「瑞鶴?いるの?」
コンコンとノックがなる。翔鶴がそのまま入ってくる。
「なに?」
そう振り向いた瞬間いきなり抱き着いてきた。
「慣れないうちはしょうがないけど大丈夫・・・しっかり生きて行きましょう」
・・・なんか安心するな・・・この感触・・・
「わかったわよ・・・翔鶴ねぇ・・・」
「!!ねぇ!もう一回呼んで!!」
「何よ翔鶴ねぇ」
自然と笑みがこぼれてしまった。この最悪の状況から一つだけいいことがあった。それは姉の存在だ。少しだけだが頑張れないこともない。この人を守ろうと思った。
だが・・・そんな気持ちはすぐに折れてしまった。
この日に私がに反抗したことにより彼の低いプライドをつぶしてしまったようだ。それにより翌日には多少反抗する艦娘も増えてきた。だが、その考えは浅はかだった。ある日には補給の量を減らされるなど、されていたがそんなものは盗んでしまえばどうってことなかった。艦娘が提督室に連れていかれたが何かが起こる前に一致団結でその艦娘を守った。その後、補給などはゼロになったが、それも盗んでいて入居なども会議中にこっそりやっていた。だが・・・そのような生活をしていたせいか、とうとう、どうしようもない出来事が起こってしまった。
その日は演習を終えた後に工房に言われるように言われた。そう、私が変なことをしたせいで・・・
「何やってるの!?」
「いいや、お前らが最近調子に乗ってるからな・・・俺もこういうやり方にさせてもらおう」
そこには解体機械に縛られている翔鶴の姿があった。そして、眠っている。
「俺に反抗した艦娘はその姉妹艦を解体することにした!!」
「今すぐ馬鹿げたことをやめなさい!!あなたも貴重な戦力を失うわけにはいかないでしょう!?」
「うるせぇぇえんだよ!!!!!このゴミがよ!!!!提督の俺に対してなめた口をききやがって・・・お蔭で戦果もダメダメで上には怒られちまう!!!!貴様が来てからなんだよ!!!!!」
そういってその解体用のスイッチを押そうとするが
「待って!!だったら私を解体して!!」
この状況で翔鶴を守るにはそれしかなかった。一番憎まれているのは私だ。だったら・・・
「い・や・だ!!」
憎たらしい顔でスイッチを押そうとするがダッシュして、それを制止することに成功したのだが・・・
「なに・・・これ・・・」
彼の手にはあるものが握られていた。先端から電気が走っている。
「艦娘用のスタンガンだ。どうだ?動けないだろ?」
もう手足が動かない・・・すると残酷なことを言ってきた。
「そうだ!このスイッチを瑞鶴に押してもらおう」
そういわれて無理やり起こされるが必死に抵抗する・・・が、しびれてうまく体が動かない。もう指はスイッチの前だ。
「やめて!!やめてやめて!!!!私が代わりに解体されるから!!!!翔鶴ねぇだけはやめて!!!!」
「・・・いいなぁ~姉妹艦になるとここまで必死になるんだな」
瑞鶴の必死の抵抗などあってないようなものだ。どうあがいてもピクリとも動かない。
「はい、スイッチオーン!!」
そんなお気楽の声が終わると私はスイッチを押していた。押されていた。目の前の解体用のプレスが翔鶴の目の前に落ちてくる。
ガーンガーンガーンガーン・・・・・・
そして、そこから資材が出てきた。
「・・・・・・・」
もう、何もできなくなった。また私のせいで・・・こんなことしなければ翔鶴ねぇは死なずに済んだのに・・・
「次同じようなことをしたら、他もつぶす!!」
そう言い残されて、提督は出ていった。
そこからは来た時よりもひどい生活が待っていた。反抗した艦娘の姉妹は解体したということを聞いたらしいのか反抗はぴたりとなくなった。食事も前よりひどくなり、憲兵もつくようになった。私の間違えた行動により大切なものをまた失ってしまった。
「これが全部よ・・・」
壮絶だった。彼女はこの責任を背負いながら生きていたのか・・・
「わかった・・・話してくれてありがとう」
「なるほどな・・・やっぱりそうだったんか」
そういって清は一枚の手紙を取り出した。
「これ。笹岡一馬から預かったものだ。提督室でこれを握りながら死んでいた」
「なんでこんなものお前が持ってるんだ?」
「一目見たときから気になっていてな・・・その時の支援艦隊は俺の艦隊だったんだ」
「えっ?」
そう、あの襲撃の時に助けてくれたのは清の艦隊だったのだ、そして、そこの鎮守府の調査中に見つけたものだ。
それを受け取り彼女は手紙を開けてみる。
瑞鶴・・・君にだいすきって言われた時はうれしかった。俺は提督としてやっていけてるかなんて正直不安だった。だけど、こんなことになってしまって本当にすまない。でも、加賀さんと誓った。君の分までしっかり生きて・・・
そこで終わっていた。
「バカ、死んでるのあなたのほうじゃん・・・」
そういって手紙を折りたたむ。
「私が生きてやるわ・・・この海に平和が訪れるように・・・」
そういってその手紙をポケットにしまい、部屋を出ていった。その刹那涙を流した瑞鶴がいた。そうだ、今は泣け。そしてさっき誓った通りに生きろ。
「全く・・・お前は毎回こんなこと聞いてるのか?」
「ああ、そうだ・・・今回は強烈なほうだが・・・」
部屋に二人になった亮と清。とりあえず話し始める。
「助けたの・・・お前だったの」
「ああ、ンでそこにいたのが瑞鶴、唯一の生き残りだ」
「なるほどな・・・」
なんかこいつが急かす理由が分かった気がする。あの手紙を渡せなくて今の話で確証を得られたのだろう。
「まぁ、そういうことだ。さて、今日は飲むぞ!!」
「まだ昼過ぎだしいろいろあるんだよ」
そう、瑞鶴のことばかり気にかけていたが今日の夕方は皐月のテストでもある。天龍が言うにはもう余裕なのだが・・・
「わかってるよ。はぁ、せっかくの休暇だってのに・・・」
「悪いな・・・」
「悪いと思ってるなら、今日は飲みの席に付き合えよ」
「わかったよ」
そんな会話をしていると瑞鶴が戻ってきた。
「ねぇ!!演習するから見て!!」
そういって放たれた艦載機は綺麗に的に刺さった。あの二人の構え方を思い出して。