とりあえず昼食を食べに来たのだが・・・なぜこうなっている?亮はなぜか審査員という席に座らされその隣にも清と瑞鶴が座らされた。
「あのな、なんだこれ?」
そういうと、なぜか準備されていた垂れ幕が下りてきてこう書いてあった。
「第一回!!鎮守府卵焼き選手権!!」
「へぇ・・・」
そんなことを言うが清はあまりよく思わないらしい。周りに聞こえないように亮に話し始める。
「おい、こんなんやるんだったらさっさと瑞鶴を・・・」
「あのな、カウンセリングの相手は瑞鶴だけじゃない。ここの艦娘全員だ。急ぐ理由もわかるが・・・お前は知らないだろうがみんなこんな顔じゃなかった・・・みんな笑顔だろ?」
「そうね・・・」
瑞鶴も軽く反応した。そう、ここにきてこのようなことを自発的にやることはいいことだいままで自分の意見を言えなかったものをこのような形でやっている。いい傾向だ。
「・・・まぁ、卵焼きだったら俺の瑞鳳が一番だけどな」
「はーい!!清。残念だけど私は司会者でーす!!」
「えー、食いたい」
「はいはい、あとで作ってあげるから今は審査してね。それじゃ!!エントリーナンバー一番!!」
そういって出てきたのは川内だ。
「ふっふ~!!亮!!今日はあんたにぎゃふんと言わせてやるからな!!」
そういわれるとなんか毒でも入ってる気がしてならない。めっちゃ怖い・・・
「ほら!!この夜戦卵焼きだよ!!」」
そういわれて出されたものは・・・夜戦の感じはゼロの卵焼きだ。まぁ、それぞれのアイデンティティがなんか出てるのか?瑞鶴は何も疑わず食べている。
「・・・毒とか入ってないよな?」
「はぁ!?私は亮に美味しい思わせてそれで運が良ければ頭撫でてもらうんだからそんなことするわけないだろ!!」
「姉さん・・・本音が出てます・・・」
「川内ちゃん大胆!」
「・・・あ!!・・・いや、その・・・えっと・・・」
そんな川内型の会話を聞いていると毒なんて入っていないことを察し、とりあえず一口運んでみる・・・うん、夜戦卵焼きの意味は分からないがうまい。だが、それよりも川内の反応のほうがおもしろい。
「うぅう・・・なんでこうなっちゃうんだろう?」
さっきから地面転がりまわったり髪の毛むしったり挙句の果てには食堂から出て行ってしまった。
「お前のところの川内おもろすぎ!!デレデレじゃんか」
清はそういって背中をバンバン遠慮なしに叩いてくる。地味に痛い。
「・・・ユニークだろ?」
「頭撫でてやれよ」
「・・・あとでな」
「おっと!!川内選手!!いきなり退場だー!!なんという波乱万丈な展開!!この後どうなっていくのか!?」
「清の瑞鳳ノリノリだな」
「ああ、かわいいもんだろ?」
「ちょっと審査員は茶化さないの!!あと、かわいいとかは恥ずかしいから・・・その・・・二人の時、とか・・・」
なんか瑞鳳は川内とは違う意味でどこか抜けている気がする。
「デレデレじゃん」
「ああ、あざといだろ?」
確かにたいていの男は勘違いするだろう。
「清はも黙ってて!!さて、エントリーナンバー二番!!比叡さん!!」
「はい!!気合!!入れて!!いきます!!」
「あぁ・・・」
比叡といえば料理はなんか色が違うだとか殺人級のまずさだとかなんでそんなに自信満々で原型が残らないものを提供できるのかとか挙げればきりがない。
そんなことを考えていると目の前に卵焼きが・・・卵焼き?
「・・・なぁ亮。卵焼きは群青色だったかな?」
「・・・・・・」
何も言えない。だって清の言ってることが本当だからだ。
「・・・まぁ、食えよ清」
「いや、俺夜戦卵焼きでおなかいっぱい」
「俺も川内の発言でおなかいっぱい」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
瑞鶴もなんか無言だ。なんだろうこの卵焼きの押し付け合いは・・・滑稽だ。そして、周りの視線が痛い。
「あの!!比叡の卵焼きは食べないのですか?」
「味見した?」
「ええ、榛名が味見してくれました!!」
「はい、榛名!!美味しかったです!!」
「そうか、なら一口食ってみるか・・・」
とりあえず箸で割る・・・なんか中からヘドロみたいなの出てきた・・・大丈夫だよな?実は一年前に作ったとかじゃないよな?恐る恐る口に運ぶ・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれだな。本当に食べ物じゃないようなものを食べると無言になるんだな。生きてきた中で一番まずいな。榛名は何を思ったのか?何がうまかったのか?
「榛名・・・食べるか?」
「はい!よろしいのですか?」
「ああ、全部食え」
そういうと榛名は嫌な顔をせずに一気に掻き込む。
「はい!!美味しいです!!」
そこには満面の笑みの榛名がいた・・・天国に行ってるとかじゃないよな?
「亮さん?」
いつの間にか霧島が俺の横に来ていた。
「榛名はなぜか知らないですが比叡お姉さまの料理を食べられるのです」
「味音痴なんじゃね?」
「・・・あまり否定できませんね」
「ちなみに霧島は食ったのか?」
「ええ・・・毒味しました。死にはしなかったのでいいかな~と・・・」
毎回こんなことをしていると思うと金剛型は大変だろう。こんな・・・なんというか混沌というか覚悟の食べ物というか魔女の研究結果のような・・・言い出したらきりがない。
「さてさて!!気を取り直していきましょー!!三番目の方はこちら!!」
「・・・どうも」
「弥生か・・・」
あまり料理をしているイメージがない。というか割烹着が似合っているな。
「どうぞ」
目の前に出されたのは・・・なにこれ?
「間宮さんのところから、お取り寄せであんこを入れてみました。お砂糖もたっぷりです」
とりあえず一口・・・うん、甘い。なんか練乳そのまま飲んでるみたい・・・そして砂糖のじゃりじゃり感があって・・・これ虫歯になるな。そんな表情を読み取ったのか弥生が不安そうに
「美味しく・・・ないですか?」
「いや、そういうわけじゃないんですよ」
「なんで敬語になってんだよ?」
「その・・・美味しくなかったら・・・食べ・・・なくて・・・別に・・・怒らないs・・・」
やばい。弥生が泣きそうだ。それもなんかかわいいな・・・とか考えてる場合じゃないな。
「いや、美味しいわ。ただ味付けが甘めが多いってだけだから弥生ちゃんはこの甘さが好きなの?」
そういっていたのは瑞鶴だ。なぜかこの甘さをばくばくと食べている。
「はい。大好きです」
「うん、私もこの味は好きだから頑張ってね」
「・・・うん、頑張る」
瑞鶴のフォローによりいつも通りの弥生になった。やっぱりなんやかんや子供だな。
「なんというか個性的だな」
確かにさっきから個性的なものばかりだ。
「ああ、普通が食いたい」
「さて!!お次はラスト!!エントリナンバー四番!!北上さん」
「ほいほーい」
そういって北上はのそのそと出てきた。
「ふぅ・・・」
大丈夫・・・亮は美味しいって言ってくれるよね・・・大井っちにもオッケーもらったし、でも料理なんて人に出したことないし・・・って何考えてるんだ、メンヘラかあたしは・・・最近らしくなくなってきてるなぁ・・・
「どうした北上?」
「いやいや、何でもないよ」
とりあえず審査員の前に出す。まぁ何とも普通だった。だがこういうのを待ち望んでいた。
「あ、大丈夫だよ。補給できないから味見は大井っちにしてもらったし」
なんというか一番安心して食べられるな・・・今まで不安しかなかった。
「その・・・どう?」
「ああ、美味しいよ北上」
「ふふ、そう?」
「・・・なんか不思議ね」
突然瑞鶴は口を開いた。
「私がここに来た時はこんなことはやるなんて思わなかった。今までただの戦闘兵器として扱われていた私たちがこんなことをするなんて思っても見なかった・・・だってここのみんなの笑顔なんて見たことなかったもの。それをこんなにいい鎮守府にするなんて・・・やるじゃん!!」
そういって親指をぐっと突き出した。
「あなたは、あの人を思い出させてくれる・・・ここであった出来事は許せないけど・・・やり直したい」
そう彼女が言うにはまだ加賀のこと、そして翔鶴のことをまだわからない。しかし、彼女が順調に回復していることはわかる。
「話すわ、さっきの続きとここでの出来事」
「うん。ここは私たちが片づけておくから」
その案に乗って亮と清と瑞鶴は部屋へ向かった。
一方その頃
「おらぁ!!」
「ぽいっ!!」
演習場で天龍と夕立は砲撃の演習をしていた。
「おらおら夕立!?どうした!?」
「あまいッぽい!!」
天龍が砲撃の準備をするが、その前にもう夕立は展開していた。そして放った砲撃は直撃し天龍は大破となった。
「くそ!!・・・やっぱつえーな」
「ぽい!!改二になってから火力がやばいッぽい」
「夕立、そんな実力があるんだったら、艦娘として戻ったほうがいいんじゃないか?」
「ううん、夕立は艦娘として絶対にやらない。今はただのカウンセラー補助の夕立よ」
「なんだよ。俺ぶっ倒したってことは相当強いのに」
「でもやらない。強いだけじゃ意味はない・・・私なんかがやってももう意味はないッぽい」
彼女はどこか寂しそうにしていた。