朝食の時間昨日とは比べ物にならないくらい艦娘が集まってくれている。いい傾向だ。
「ぽいー!!みんな運んで!!」
夕立が作ってくれた朝食はやはり絶品であったが・・・
「一人前が多くないか?」
「なんか動かないと落ち着かないッぽいからね~なんだろう?」
改二の影響なのかわからないが・・・まぁ、仕事に支障が出てるわけでもないのであまり気にしないことにした。
「天龍、テストのほうは大丈夫そうか?」
「ああ、それなりに才能はありそうだぜ、歩行できてるし砲撃も何とかなりそうだが・・・実戦はまだほど遠いな演習や遠征で鍛えていくしかない」
どっしりと座った態度で話を聞いているがその周りでは睦月型が集合してる。
「う~ちゃんと遊ぶぴょん!!」
「およよ?!天ちゃん足りないんじゃないのかな?睦月のをあげるね!」
それに続いて、睦月型の朝食は天龍の目の前にてんこ盛りだ。
「・・・・・・」
「・・・手伝おうか?」
「いや、俺がもらったものだから全部食うよ・・・はぁ・・・」
「・・・いいやつだな」
なぜか天龍が駆逐艦に人気なのかが少しわかった気がする。
そのようなにぎやかな朝食の場を後にし瑞鶴のところへ向かうことにした。
「・・・このバカ」
部屋に向かう途中にまた起き上ったのか、部屋の前で瑞鶴は倒れていた。あきれた様子で亮はそのまま担ぎ、部屋のベットに寝かせる。
「はぁ・・・軽く流し込むか・・・」
そういって取り出したのは補給用の燃料。それを自分の口に含めてそのまま瑞鶴の口に口移しをする。これはああまりやりたくないのだがここまで無理するバカは無理矢理飲ませるしかない。・・・やはり、燃料はくそまずい。
「これで少しは元気になってほしいのだが・・・」
「・・・ふーん。そんなことするんだー」
「ん?北上か?」
「うん。見ちゃったよこれは報告するしかないね~」
若干にやにやしているがなぜか余裕のない感じ・・・動揺しているようだ。
「ハイハイ、ンで何の用だ?」
「いや、部屋出て行ったからどこ行くのかなーって」
「あのな・・・飯を食っとけまだ終わってないだろ?」
「うん。だから持ってきた」
そういうと背中からお粥がのったトレーが出てきた。
「はぁ、ほら、俺も食堂に戻るからみんなで食おう」
「ちぇー・・・二人が良かった・・・」
「・・・・・・」
はっきりと聞こえたが聞かないことにした。
食堂に戻ると・・・なぜか人だかりができていた。亮と北上は後ろのほうからのぞいてみる。
「天ちゃん!!僕のも食べる?」
「次は文月のぉ~」
「・・・すごい量だな・・・」
隣で長月が圧倒されているぐらいなぜか大量の朝食が並んでいた。天龍はそれを一人で食べている。
「・・・手伝うか?」
「いや、もらったもんだから全部食うけど・・・苦しい・・・」
やっぱり天龍が好かれる理由がわかる気がした。そしてその隣にいた皐月に現在の状況を聞いてみる。
「皐月。テストはうまくいきそうか?」
「うん!!天ちゃんの教え方が良くて歩行ができるようになったんだよ!!」
「そうか」
この調子で行けば大丈夫だろう。幸い簡単なテストだ。この時点でクリアはしている。本番でしっかりできればいい。
とりあえず、今のところは落ち着いている。最初のように急ぎ急ぎの仕事ではなく何とかなっている。瑞鶴が気になるが彼女はまだ寝ているだろう。その間に仕事を終わらせてしまいたい。
「そういえば二日目か・・・下手すれば最短記録になるな・・・」
昨日のカウンセリングで元気になっていると判断できるのは22人。補給困難は北上。皐月、文月、長月、菊月、三日月。この辺りはもう何度か検診をしてみて結果が良かったら普通の補給方法を試そう。こんな感じで報告書をかいておく。
「よし・・・様子でも見に行くか」
食堂には後片付けを始めたようだ。その中からおかゆをもって。瑞鶴の元へ向かう。しかし、緊急事態が起こった。
「・・・くっそ!!」
その部屋に瑞鶴の姿はなかった。先ほど少し口移しで燃料を与えただけだが自力で動けるようになってしまいそれがあだとなった。たぶん、朝言っていたことだろう。目的は元提督を殺すことだ。たぶん海にはもう出ていると考えていい。だがあの少量の燃料でそう遠くへはいけない。しかし、途中で深海棲鑑に襲われたら。大変なことになる。
「くそ・・・頼むしかない!!!」
亮は急いで提督室へ向かい電話を掛ける。
「こちら海軍艦娘カウンセラー狩島亮。艦娘が脱走した。」
「おっと、ごめんね、今司令官は会議に出ているんだ・・・申し訳ないけど、またかけてもらえるかな」
「・・・響か?」
「うん。亮だよね。久しぶり。あの時は世話になったね」
電話の相手は暁第六駆逐隊二番艦の響だ。この艦娘は昔カウンセリングした艦娘の一人だ。
「ああ、それであいつはいつ帰ってくる?」
「うーん。お昼までには終わると思うけど・・・正確な時間はわからないかな」
「そうか・・・」
時間に余裕がない。早く海に出ないと瑞鶴が危ない。この鎮守府は今艦娘の出撃は禁止になっている。よって本部に捜索してもらうしかない。
「どうしたんだい?・・・そうだ。君が紹介してくれた司令官、すごくいい人だ。ありがとう」
当たり前だがカウンセリングが終了したらまた新たに海に駆り出す。艦娘は提督の指名、艦娘の承認、海軍からの承認によって艦娘の転勤の意向が認められる。
「まぁ、保証はできる人物ではあるからな・・・」
「そうだ、天ちゃんは元気かい?」
「ああ、いい指導役だ」
正直どうでもいい会話をしているとダルそうな声がした。
「だぁぁあ!!もう!!仕事増やすなよ!!くそ・・・っと、響電話か?」
「うん、カウンセラーの亮からだよ」
「マジか・・・あぁ・・・よりによって」
響から受話器を奪い取るように耳に当てる。
「ほら、変わったぞ、なんの用だ?」
「ああ、実は瑞鶴が脱走してしまって・・・」
「はぁ・・・二件目」
「はぁ?」
・・・何かあったのか?
「今回は運が悪い・・・そこの元提督も先ほど脱走した・・・」
「おい!!それこそまずいんじゃ・・・」
「ああ、世間に出る前に捕まえてやるから。ついでに瑞鶴も」
そういうと電話を切り。
「響。瑞鳳を連れて海に出ろ、先ほど脱走したバカをとらえに行くぞ。この俺、海軍四大将が一人。成瀬清の艦隊が直々に相手してやっからよ」
「うぅ・・・目がかすむ・・・」
私瑞鶴は海に出た。そう、すべては提督を殺すために。あの人のせいで翔鶴姉は・・・いや、今は探すのが先だあったら確実に苦しませながら・・・
そんな残酷なことを考えているがもう瑞鶴は復讐のことしか頭になかった。すると向こうのほうからモーターボートの音が聞こえた。
「こんなところに・・・!!・・・あれは」
そういうととっさに弓を構える。そう、そこにいたのは・・・提督だ。艦載機で攻撃をしようとするが・・・
「あれ?・・・うそ・・・」
こんな時にもう疲労のせいで弓を絞れない。距離が全く伸びない。狙いが定まらない。
すると、モーターボートはこちらに向かってきた。
「お前・・・は!!運がいい!!俺を運べ!!瑞鶴!!」
自分の瑞鶴と確信したのか上からさげすむような態度。
「誰があんたなんか・・・あんたみたいな最低野郎に!!」
「へーそうか・・・自分で姉を殺した瑞鶴ちゃんにサイテーって言われちゃったー」
「違う!!あれはあんたの・・・」
「そうだったっけ?俺の記憶が正しければ・・・解体のスイッチ押したのは瑞鶴ちゃんだったような・・・」
「あなたが無理やりやったんでしょう!!」
「でも押したのはお前だ!!翔鶴を殺したのはお前なんだよ瑞鶴!!」
「ッ・・・」
そう。この提督の言っていることは本当だ。しかし当たり前だが自発的に意やったことではない。プレス機に縛られた翔鶴。そのスイッチの目の前で腕をつかまれスイッチに手を添えようとしている。その場面は夢でも何回も見た私のトラウマ。叫び声、必死に抗議、絶望・・・殺したのは誰か・・・わからない。そう、実は私なのかもしれない。もっと力があれば救えたかもしれない。でもダメだった。
「・・・・・・」
「さぁ瑞鶴!!俺を運んでもらおう・・・なに!!」
もう動く気力もない・・・今何が起きているかわからないけど・・・もう沈んじゃっていいや・・・
広々とした海。ここのどこかにあいつがいるらしい。
「瑞鳳さん。索敵を飛ばしてもらえるかい?」
「了解!!」
この小柄の少女が軽空母祥鳳型二番艦瑞鳳。その少女が弓を引き絞り艦載機を放つ。それぞれ散らばっていく。
そしてこの艦隊は響と瑞鳳の二隻だけだが・・・
「もし戦闘になったら・・・」
「そうだね、瑞鳳さんは初めての出撃だったからね・・・まぁ、清のいうことを聞いていれば轟沈はおろか敗北はないよ」
ピーピーピーー
「!!・・・艦載機から伝達・・・対象者を発見・・・えっ!?ル級三隻に囲まれてる!?」
「そうか、早くいかないとね。清。指示をお願い」
無線を使いながら清の指示を待つ。
「えっ?戦うの?・・・」
「了解・・・瑞鳳。先制パンチを決めてやれ、響はまず人命救助が先だ。胸糞悪いが助けてやってくれ。その後瑞鶴はル級をけん制しろ・・・行くぞ。スタートだ!!」
「了解!!」
「もう!!どうなっても知らないからね!!」
相手は戦艦のル級が三隻・・・駆逐艦一隻と軽空母一隻では勝てるはずがない・・・普通ならば。
「さて・・・仕事するか」
瑞鳳は弓を引き絞り艦載機を放つ。六機の艦載機を操るが・・・
「瑞鳳・・・俺の指示通り動かせ・・・三機を左から残りを右から・・・響はもう近づけ」
二人は命令通りに動く。無線で清の命令を聞いているだけである
「よし、響。艦載機がヒットしたら俺の指示に合わせてソッコー中心に入れ。そしてバカを捕獲しろ」
「了解・・・」
艦載機はル級の頭上に立ちそこから砲撃や魚雷での牽制をしている。先制は決まったようだ。
「行け!!」
「ウラーーー!!」
清の合図とともに響は走り出す。
「そのまま前進・・・十秒後に乗れ」
「了解・・・」
乗れ・・・それは並の艦娘ではできないことだ・・・いや、普通はできない。だがこの艦隊は優秀だ。
「3・・・2・・・1・・・」
すると突然大くな波が揺らめいた。先ほどの艦載機からの爆風だろう。その衝撃が波が大きく揺れる。普通であればここでは体勢を崩してしまうため艦娘も深海棲鑑も一度引き下がる。しかし・・・響は違う。その荒れた波にまるでサーフィンのように乗り出した。これによりスピードは上がり敵は体勢を崩しているので狙い放題というわけだ。
「そのまま突っ込め、そして瑞鳳は艦載機を追加しろ・・・ここで落とすぞ」
「「了解!!」」
響と敵艦隊の距離は10メートルこのままル級の中心にいる提督を引っ張り出しにかかるが、ル級は体勢を崩しながらも砲撃を構える。
「まぁ、そう簡単にはいかないよな・・・響、合わせろ」
「ハラショー、朝飯前さ」
「一メートル左・・・」
そういうと構えられた砲塔に目を向ける。敵が撃つと同時に響はその反対方向へと逃げる。よって一発も当らない。
「いい動きだ。さすがだな」
「清の訓練のおかげさ」
まずは敵の砲口を見ることそれの向き、角度、出力、距離、すべてを計算すればできないこともないのだが、清はこの短時間で計算し的確なルートを示し最小限の動きで敵の攻撃をよける。
「よし、次で決めるぞ・・・五十センチ左、そしてその荒波に乗れ」
「うん・・・」
清の指示通りほんの少しだけ左にずれるそして体の重心を前に傾ける。
「よーい・・・ドン!!」
その掛け声とともに小さな体でル級のわずかに狭い隙間を滑っていき、対象者を担ぎその勢いで大きくふくらながら後退していく、だが波が収まるとル級は砲口を構える。しかし・・・
「艦載機のみんな!!行くよ!!」
先ほど準備していた艦載機たちが一斉にル級に攻撃を浴びせる。この攻撃で二隻撃沈したようだ。
「瑞鳳、ラストぶち込んでやれ」
「はい!!」
そういうと弓をゆっくりを構える。先ほどから教理を取りながら戦っているのでル級との距離はおよそ五十メートル。普通ならそこまでは飛ばない。しかし、彼女はやる艦娘だ。放たれた矢は直線でル級に向かっていく。そしてタイミングも最高だった。そう、向かい風だ。そしてそのまま屋は刺さりそこから艦載機が展開されていく・・・この近距離。そしてこの小さい艦載機は近すぎれば近すぎるほど、死角になっていくものだ。そしてその艦載機はヒットし残ったル級も沈めた。
「よし・・・ル級三隻の撃沈および対象者捕獲完了。これより帰投します」
これが海軍四大将の艦隊の実力だ。