リュウセイ・ダテは輸送機の中で一人考え込んでいた。
南極で出会ったロボットのパイロットに言われた言葉を。
時間は戻し、彼女が何をしたのかを語ろう。
それは一発のミサイルを切ったことだった。
ただ切ったのではない、発射されたミサイルと併走し、弾頭を切り離したのだ。
その後基地に向かって砲撃、被害は原作とは比べ物にならないほど小規模だったことは語るまでもないだろう。
その後、輸送機に向かって通信が入る。
たったひとりに向けて――
「あなたの考えは、非軍人的な考えから見れば美徳ですが、それに何をかけるのですか? 賭けどきくらい見極めなさい。あなたはこんなバクチに成功する可能性を持っていないでしょう。機体も腕もそんな芸当ができるものではないでしょう。考えなさい、あなたの腕で今何ができるのかを」
その言葉は彼の心の中に残り続ける。
力を手にして、なお。
ミサイル切断から数日後。私は、今エルザムさんと共に、ハガネを奪取するために向かっています。
ミサイル切断の一件は、ビアン博士の指示ということで一応お咎め無しとなりました。
無論のことながら私の独断ですが、その意味合いは彼らに言ったこととその実では大きく違います。
言ったことはこちらには迎撃できる機体もそれを操れるパイロットもいる、つまりは脅しです。さらには直接攻撃も可能だと、ハガネ以外の介入を最小限にするつもりです。
その実、民間人まで巻き込むほどのことではないだろう。というDCそのものへの抗議です。
伝えてはないので、おそらく気にはとどめる程度のものでしょうが。
戦争に民間人が巻き込まれるのは、仕方ないのかもしれません。しかしその犠牲は仕方のないことと簡単に片付けることはあってはならないのです。
だれかのために戦っているのは確かですし、この戦いにおいて巻き込まれていい人間などひとりもいないと声高に叫びたいです。
でも、叫んだところで結局それは意味のないものです。
言葉が力を持っても、所詮は武力の世界なのです。
管理された闘争の世界が、たった一つのほころびで決壊してしまったように圧倒的な力というのは、世界のあり方を変えます。
それが今はDCというだけのこと、はっきり言えばそれだけです。
そこからコロコロその存在が変わるのが、この世界の異常とも言えるあり方なのです。
『レギオ少尉、もうまもなく会敵するが、大丈夫かね』
通信が入る、エルザムさんからだ。レギオンでは呼びづらいとのことで、書類上はノーマ・レギオとなっている。少尉なのはこちらの能力を考慮してくれたビアン博士の計らいだ。
「大丈夫です、問題ありませんエルザム少佐」
『君の実力は知っているが、ほかの君を知らないものに不満を持たれないためにも、それなりの働きはしてもらわないといけない。そこで、君に私の突撃の援護を頼みたい』
「わかりました、突撃と後退、どちらを支援すればよろしいので?」
『後退の方を支援してもらおう。突撃の援護よりも、私の後退を援護したほうが君の実力が見やすいだろう』
「わかりました、突撃についてゆきます」
『遅れるな、と言いたいところだが追い抜かないでくれというしかないな。――行くぞ、トロンベ!!』
テスラドライブの出力を上げた黒いガーリオンは、その力を加速へと変え、呼ばれた名のごとき速度を見せる。突撃とは響きがいいが、彼のカスタム機は、ただのリオンでは追いつくことは不可能だろう。
私のセンチュリオverフリーダムなら話は別だが。
だけど、この形態でミサイル追撃はきつかったミノフスキードライブを使っても、機体強度がそれに耐えられるかわからなかったので、PS装甲をフル稼働しながら、機体装甲の素材をフルサイコーフレーム仕様に変更、続けてGN粒子を使ってさらに強化、おまけにツインドライブトランザムまで使ったのだ。追いつくどころか、追い抜けるレベルの魔改造ぶりである。マリオン博士もご満足いただけるかも。ほぼ全身EOTだからダメかもしれないなと自分は考える。
私からすれば、発射される前に潰すべきだったとは思っているが、それでは敵対してしまうし何よりデモンストレーションにならないと悩むところではあった。
かかるGは、この機体についていたGキャンセラーのおかげでなんとかなったが、フルリンクしていたのでかかる風圧は、かなりのものだった……それだけで済んだとも言えるが。改めて私と自分はこの体に感謝した。丈夫さならマシンナリーチルドレンすら、凌駕するだろう。
そんなつまらないことを考えている間に、兄弟の会話は済んだらしい、物理付きで。
ここからが私の仕事だ、私は腰部レールキャノン、もといエネルギーキャノンを構える。
このエネルギーキャノンは、弾状のエネルギーを形成及び射出、障害物にぶつかると運動エネルギーと熱エネルギー、そして光エネルギーへと変化するのだ。
言い方が回りくどいが、自分的には言い換えられる――実弾を模倣したエネルギー弾だと。
この実弾のように炸裂することが重要なのだ。
ビームで、かするよりも衝撃でバランスを崩させたほうが追撃はないと判断したゆえの判断です。
連続で何発か打ち、後退が完了したと見ると即座に帰ります。
こちらへの追撃はないことから、追撃をしても仕方ないと考えたかまたは追撃できる状況ではなかったか。
どちらにしても幸運だろう。
ほどなくミサイルが飛来する時間が来た。
浮上するハガネを見たことで、自分的には満足だが、私的には気になっている。
彼がどんな答えを出すかを。
彼は何度もその言葉を考えてきた、わからなくなってチームメンバーに聞き、自分なりに考えた。
必要なのは、必然。奇跡頼みの偶然じゃない。
「ここで、ここでやらなきゃいけないんだ。動いてくれR-1!!」
その言葉を待っていたかのように動き出した、のちのちまでの彼専用機、確かな力が彼に成功を確信させる。
うちはなった一撃は、ミサイルに直撃した。衝撃波以外に、何ら影響を及ぼすことなく。
かくしてミサイルを撃ち落とした彼は、その水平線の向こう側へと消えた機体に当たらない一撃を撃った。
彼なりの返答として。
自分的には驚いたが、私的には彼の返答に満足している。当たらなくとも届きはしたのだ。
『彼を知っているのか』
「いいえ、その基地であったのが初対面ですしそもそも顔を合わせてすらいません」
『しかし君の顔はとても満足そうだ』
「そうですね、知っていることが実際に見られたからかもしれません」
『君が何を考えているのかは知らないが、今彼らとは敵対しているそれだけは忘れないように』
「はい」
しかし満足げな顔は、今しばらく戻りそうになかった。
ちなみに南極からずっとフリーダムガンダムの姿のままです。
これの理由は、このあと合流するのにテロリスト側の機体でいるのはまずいだろうという思いと、自由ならばいろいろと問題ないだろうというメタ的な考えから来ています。
なんせあの機体、ずっとフリーダムにテロリストもどきしてましたから。
能力的にも、現状ビーム兵器が主流ではないOG世界においてはPS装甲のアドバンテージは計り知れないものがあります。
作者の文才のなさで書ききれませんでしたが、実のところラートゥーニの攻撃を食らっています。機銃だったためダメージはありませんでしたが。
次の話はオリジナル要素が入っております。