またしても急ぎ足です。
もしかしたら修正を入れるかもしれません。
対峙する二機の機体、モビルスーツとパーソナルトルーパー。
先に動いたのはPTの方だった。
二つの銃口がそれぞれ違う方向から、その機体に襲い掛かる。
けれどもそれを見切ったかのようにその手でそらしながら、向かってくるMS。
驚愕から立ち直り、ブルーバードと連携して、市街地に出現した敵を始末してゆくのちの鋼竜戦隊の面々。
一進一退の攻防を気にしながらも、そのことだけに集中しているわけではない。
未来につながるそれは、確かに芽吹いている。
それを感じ取りながら、一歩一歩着実に距離を詰める
追い詰められているとは微塵も感じさせない、しっかりとした動きを見せるイングラム。
近づかれれば負けだと感じているからこその中距離戦。
本来ならば、近づかれないことを前提とした遠距離戦が妥当なのだが。
離れすぎれば、空中を漂っている遠隔兵器(ドラグーン)の餌食となるため、うかつな距離にはいられないのだ。
実弾を弾く手には、I・フィールドハンドの技術を応用した。GNフィールドハンドというものが使われている。
これを器用に使うことで、弾丸の軌道をそらしているのだ。
かつ、変形の隙を与えないことで、重金属粒子砲形態であるメタルジェノサイダーモードを使わせないという意図もある。極力市街地への影響を少なくするつもりなのだ。
また、時間をかければかけるほどに、こちらの有利へと傾くという図式にもなっている。
つまり、一定の範囲から逃げられないように、弾を弾いているだけで、こちらの勝ちは揺るがないのだ。
そう、そのはず、だった。
イングラムが、笑う。
『この勝負の勝ちは私のものだ』
「? 何の話です?」
この言葉とともにハガネの背後に出現する、フーレ。
猛然とハガネへと向かうその船を止めるものは、今この場において彼女しかいない。
ほかは手一杯であり、ほかに手の空いているものなどいない。
そうそのはずだ、なのになぜ――
『(こちらに向かってくるのだ?)』
淡々と、作業のように近づいてくる。その機体に恐ろしさを感じた。
「なぜ、私/俺が焦らないのか、考えているのでしょう/だろう。そんなの簡単ですよ/だ」
突如吹く風、唸りを上げるかのように響く金属音。
アイアン3――クロガネが、二人の頭上を過ぎ去って、フーレへ突撃する。
「黒馬の王子様が、来てくれるからですよ/だよ」
これによって生じた隙は、決して小さくない。
狙ったのかはわからない。
しかしその隙を狙わない、トリエではない。
これまで使っていなかったスラスターを起動させ、一気に足を刈り取る。
横に浮いた機体を立て直そうとするが、それを彼女はさせない。
左手で左腕をつかみ、引いたことで体が天を向いた瞬間に右足が彼の機体を地面へと縫い付ける。
右手にいつの間にか持っていた、ビームライフルを突きつけると。
「機体を捨てて、逃走してください」
『投降しろ。では、ないのだな』
「ええ、これからも力を見せつけないといけませんから、クラスギボルの力を」
『まて、なぜそれを?!』
「答えるつもりはありません。……それにほら、お迎えがきましたよ」
開け放たれるコックピット、そしてやってくる彼女。
それに合わせて飛び退く。
何がしかの会話があったあと、彼らは去っていった。
この時、二式の反応をロストしたのは確かだ。
しかし私は、それを止められなかった。
鮮やかとしか言いようがなかった。
シグナルのロスト自体は、今この瞬間だが、それ以前から本体はロストしていたのだろう。
叩きつけられたままのR―GUNに目を向けながら――
「終わりましたよ、トリエ――」
いないはずの半身に声をかけたのだ。
自分としても私としても、そんなつもりはなかった。
なのに気がついた。
考えないようにしていたのだと。
その悲しみを振り払えるものではない。
かと言って、受け止められるほど時が経っているのではない。
去来する悲しみを受け流すので精一杯だった。
私はいつの間にか、泣いていた。
けれどもそれは、産声でもある。
自分と私が、ディー・トリエルとして、この世界に刻みつけた第一歩。
悲しみに満ちたそれは、けれども、確かに彼女とは違う道を歩むことを意味していた。
その悲しくも美しい産声は、戦火の消えた夜空に、いつまでも響いていた。
次回も未定です。