トロニウムバスターキャノンによる、基地直接攻撃は失敗に終わりPT隊による突入作戦を実行し見事防衛ラインの突破に成功。
要塞中枢部に侵入した彼らを待ち受けていたのは、DC総帥ビアン・ゾルダークとその乗機ヴァルシオンである。
その傍らに、魔神と翼は控えていた。
まるで好敵手を待ち構える王を見届ける騎士のようだった。
王がその重い腰を上げる、それは決戦の火蓋を切る合図だった。
決戦の前哨戦として舌戦が繰り広げられているが、南極のことを言われるとちょっと弱い。
DC側に付く為とはいえ、攻撃を加えたのだから。
『どうなんだよ! あんた、八つ当たりって、そんなことのために撃ったって言うのかよ!』
「八つ当たりなのは事実ですが、あの時からDCにつくことを決めていましたのでそのためのデモンストレーションでもあります。なによりも――」
一旦言葉を区切り、
「守りたいものがありました。あなたがたのもとに置けない、それほど大切なものです。彼らに任せていたら私の姫君すら供物扱いでしょうから」
『何の話だ?』
「物事の裏側は、知った時に地獄を見ますよ」
そう言って通信を切ると、ビアン博士から通信が入ります。
『この戦いに勝ったら、君を彼らに預けるということか』
「確かに近いですが、それは私ではあっても、私たちではありません。それに今の私達は、ノーマ・レギオです」
『君の部屋か』
「ええ、もうそこに眠り姫は」
『負けることなど考えていないのだな』
「そうですね、申し訳ありません。DCが一枚岩のように見えるのは、あなたのおかげですから」
『そうか、そのあとはどうするのかね』
まるで父親のように優しい声で語りかけてきた。
「どうするかは考えてはいませんが、ハガネ隊には関わるつもりです。DCの行く末を見守るために」
『そうか、シラカワ博士』
『ほかならぬ貴方の頼みです。受け入れましょう』
頭の上でなにかとんでもないことが決まった気がする。
まるで激流に飲まれる無力な子供のように大切なことを決められてしまった気がする。
それだけの会話で自分は気がついた、しかし私はわからない。
自分から、この会話の意味が伝わってきたとき、なんで? が埋め尽くした。
しかしそれだけでは済まないだろう、つまり――
『君が作っていた、OGsというゲームだったかな。あれの主人公が彼らだということはそういうことだろう』
「結構自信のプロテクトだったと思ったのですが」
『しかしシラカワ博士の後ろで構築していたのはミスだったな』
「……かもしれません」
『あれを見つけて、あそこに気がついている者たちはそう多くはない。しかし、いることはいるのだ』
「そうですね、気にかけてはおきます」
『さて、待たせてしまってすまない。決着をつけることにしよう』
ヴァルシオンがまるで王の号令の如く剣を彼らに向ける。
その火蓋は切られた。
彼は、戦っていた。すでに周りの配下は沈黙し、残るはたったの三機。
負けているつもりはなかった、ただ彼らが強くなっただけだ。
そして彼らをすべて相手にして、勝目が見えるほど彼はパイロットとして強くなかった。
やがてその刃は彼の機体を、確実に切り刻み無視できないダメージを与える。
致命傷だ。しかし彼は満足だった、自分を打ち倒し地球圏の剣となれる者達が現れたのだから。
唯一の心残りが、
娘を悲しませることだということだった。
「――あの子にも、悲しみを背負わせるのか。それをなしたのは――ふ、皮肉だな。トリエ、お前の心に癒えない傷をつける、ダメな親を――」
コクピット内部に紫電が走ってゆきやがて大きくなる。
光が彼を飲み込んだ。
私はグランゾンに腕を引かれその基地を後にしていた。
伝えることは伝えたし、きっと彼らは保護してくれるだろう。
ああ、だけれども覚悟していたこととはいえ直面して心が締め付けられることはどうしようもなく。
自分の納得が、私の納得に直結するわけではなく。
結論から言おう、私は、私達は父親のようなその人を失ってしまった。
覚悟していてもそれは、それは悲しいことだ。
この心の噛み合わなさは、やがてとんでもないことに発展する。
それに直面するのは、とても後のことだ。
今の悲しみよりも大きな悲しみがやってくることを、理解しても納得できない私は。
私は。
ということでこちらにも伏線張っております。
止めをさしたのは、リュウセイ・ダテだったとだけ言っておきます。
この時点で主人公のDNA上の両親は判明しております。
それを踏まえての言葉です。