ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?   作:たくヲ

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暗殺は速度が命っす?

 今、俺の視界の中ではセイバーとランサーが激しく打ち合っているっす。まあ、視界と言っても霊体化してるから霊視っていうやつっすけど。

 

 今回の作戦はタイミングと速度が大事っすからね……テキパキと終わらせないといけないっす。

 

 ん、いきなり力がわいてきたっす。

 

 セイバーとランサーが打ち合うたびに漏れる黄金の光。これはランサーの『破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)』の効果がセイバーの『風王結界(インビジブル・エア)』に対し発動してその効果を打ち消しているからっすね。『風王結界(インビジブル・エア)』はセイバーの持つ有名すぎる剣を隠すための宝具であり風の魔術のようなものっすから、魔力を断つ効果を持つランサーの『破魔の紅薔薇《ゲイ・ジャルグ》』で打ち消せるんすよね。

 

 あ、セイバーが腹を切られたっす。『破魔の紅薔薇《ゲイ・ジャルグ》』って魔力の鎧を貫くのには最適な宝具っすよね。アーチャーを倒すことができた原因も、この効果は少しは関係あるはずっす。

 

 セイバーが下がって甲冑を解除したっすね。その後方には聖杯の器、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが立っているっすから……ここが好機っす。

 

 この直後に来るのはセイバーの高速移動攻撃。後方に向けて『風王結界(インビジブル・エア)』による風の魔力を放出することによる高速接近。甲冑を脱いだことによるスピードを生かした攻撃っす。

 

 これをセイバーが放とうとするっす。

 

「始めるっすよ」

 

 俺は霊体化+気配遮断状態で聖杯の器の後ろに回り込むっす。

 

 セイバーが『風王結界(インビジブル・エア)』の魔力を解放した瞬間実体化。

 

 聖杯の器の無防備な背後から短剣(ダーク)で刺すっす。

 

 その時にどこからかいくつかの銃声が聞こえたんんすけどそれは無視するっす。

 

 セイバーはランサーが隠していた『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』で左手首の剣を斬られながらもこちらに気が付いたみたいっすね。

 

 俺は構わず聖杯の器を抱えて逃走。

 

 その瞬間、周りに出現した4人のアサシンがセイバーとランサーに向け短剣(ダーク)を投擲。

 

 聖杯の器、アイリスフィール・フォン・アインツベルンをマスターとして扱っているセイバーはもちろん追ってくるとして、騎士の戦いを邪魔されたランサーも同じく襲ってくるはずっすから。足止めのためっす。

 

 しかし、人を抱えながら逃走するのは難しいっすね。不意打ちの短剣(ダーク)投擲による足止めっすから、止められるのはほんの数秒だけっす。

 

 しかし、一瞬あればアサシンの身体とはいえ結構な距離まで逃げられるっす。

 

 とはいえ、セイバーもランサー、アサシンより敏捷ステータスは上。ほんの数メートル離しただけじゃすぐ追いつかれるっす。

 

 しかし、あの二人がうまくやってくれれば……。

 

「A--urrrrrrrrrrrrrrr!!!!」

 

 来たっす!!

 

 コンテナの間を縫うように移動して、俺は全力で操車場から離れるっす。後から続いてやってくるアサシン4人と走りながら頷き合い別行動を始めるっす。

 

 さらに、俺のステータスをあげるために取り込ませてもらっていた人格たちと『妄想幻像(ザバーニーヤ)』で再分裂し、さらに別行動を始めるっす。

 

 これはアサシンの気配を分散させ追っ手を振り切る溜めの策っすね。追っ手の気配が消えたら実体化したまま気配遮断を使うっすけど。

 

 あとは……目的地を目指すだけっす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果、聖杯の器回収に成功したっす。

 

 聖杯の器、アイリスフィール・フォン・アインツベルンは一夜目にケイネス・エルメロイ・アーチボルトによって荒らされた遠坂邸の一室に転がしているっす。ちなみにもうすでに息絶えているっす。

 

 今回の作戦の流れはこういうものっす。

 

 まずはセイバーが甲冑を解除したとき、俺はアイリスフィールの後ろまで霊体化+気配遮断で接近し始めるっす。気配遮断は攻撃を行うときに効果をほぼ発揮しないので、攻撃はまだしないっす。

 

 それと同時に近くに隠れて戦況を把握していた衛宮切嗣、久宇舞弥、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト、間桐雁夜にそれぞれ二人ずつアサシンを送りこみ攻撃させるっす。

 

 衛宮切嗣に攻撃させたのは注意を戦場からそらさせることで、令呪によってセイバーを動かすことによる聖杯の器を取り戻されるのを防ぐためっす。

 

 衛宮切嗣の助手である久宇舞弥に攻撃したのはセイバー陣営の危険度を落とすためっす。衛宮切嗣は殺さずに利用するつもりっすから殺さないように頼んでおいたっすけど、久宇舞弥は生かしておいても邪魔になるだけっすから殺すつもりで攻撃してもいいって言っておいたんすよ。

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはためしに攻撃してもらっただけっす。アサシンの実力も宝具も知らないケイネス・エルメロイ・アーチボルトがいきなりアサシン2体に攻撃されれば令呪を使ってランサーを呼んでもおかしくないっすから。まあ令呪を使うかどうかは完全に運任せっすから短剣(ダーク)を投げてすぐに逃走してもらったんすけど。

 

 そして、間桐雁夜に攻撃したのはバーサーカーに横やりを入れてもらうためっす。間桐雁夜を攻撃しようと動けばバーサーカーが迎撃のは目に見えてるっす。そして間桐雁夜程度の魔術師ではバーサーカーを制御するのは不可能。つまり、攻撃のために短剣(ダーク)を投げてバーサーカーの実体化とともに一目散に逃げればそのまま、あの操車場にいる他のサーヴァントを攻撃するはずっす。それに、バーサーカーの正体はアーサー王伝説に登場した裏切りの騎士ランスロットであり、あの場にはアーサー王であったセイバーがいたっすから暴走する可能性はもっと高かったっす。

 

 そして、その後は知っての通り4人のアサシンに護衛してもらいながら逃走。

 

 思惑通りバーサーカーがセイバーに攻撃をしてくれたうえ、ランサーはケイネスエルメロイアーチボルトの助勢に行ったはずっす、足止めもほぼ完璧。

 

 ちなみ唯一の不確定要素であるライダーは原作通り少し離れた場所の鉄橋の上にいるのは作戦前の調査でわかってたっす。もしも聖杯の器を奪って逃げる時に、ライダーの宝具である戦車『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』を使って追ってきてもも、あれだけの距離をいくら宝具で飛んでくるとはいえ、たどり着くまで数秒の時間を要するっすから、作戦は決行しても大丈夫だと思っていたんす。

 

 結局ライダーがあの場に出てきたか同課はわからないんすけど、逃げ切ることには成功したっす。

 

 じつのところ最後にアサシンと別れて気配を分散したのは、追ってくるかわからないライダーから逃げるためってのが大きかったんすけどね。

 

「よくやった、アサシン。これで聖杯の器を手に入れたことで我々の優位は確定した」

 

 やってきた、遠坂時臣(・・・・)に声をかけられるっす。

 

「俺は聖杯の器を抱えて逃走しただけっすから。他の人格こそ褒められるべきっすよ」

「いや、それでも我々にとって益となる行動をしたことにかわりはない」

 

 なんだかんだで、この作戦の立役者はこの人かもしれないっすね。

 

「ザイードよ。報告に来たぞ」

 

 いきなり部屋に巨漢アサシンさんが現れ声をかけられたっす。

 

「どうっすか?」

「攻撃した女の殺害は完了。しかし、バーサーカーによって一体やられたようだ」

「ふむ、残念っすね。ありがとうっす、この先はもう少しじっくり話す必要がありそうっすから外で待っててほしいっす」

「わかった」

 

 巨漢アサシンさんが霊体化して去っていくっす。

 

 さて……。

 

「もう、いいっすよ」

「ふむ、そうか」

 

 いきなり遠坂時臣(・・・・)の口調が変わるっす。

 

 実はこの、遠坂時臣(・・・・)は小男アサシンさんが『変装』した姿っす。

 

 小男アサシンさんの専業スキルは『変装』だったっすから。遠坂時臣のふりをしてもらていたんすよ。勿論専業スキルっすから、バーサーカーの宝具『己が栄光のためでなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』のように変身できるわけじゃなく、変装のための道具を作り、それを用いて変装して声真似をするだけっすけど。

 

 今回の作戦においての役割は、言峰綺礼と通信して『機に乗じて聖杯の器をさらう』という命令を令呪でさせることと、遠坂時臣が死んでいることを誰にもばれないようにすることっす。

 

 そのために遠坂時臣をやっちゃったことをばらしたんすけど、凄い働きだったっす。聖杯の器回収時にいきなり力がわいてきたのも令呪で命令させる任務を成功したからっすし、聖杯の器をおとがめなしで回収できるのも小男アサシンさんが言峰綺礼を騙しきったからっす。

 

 流石に勝手に回収したら怒られるっすからね。最悪、自害せよ展開もあり得るっす。

 

 ちなみに、原作通りの通信用礼装は遠坂邸においてあった宝石から、蓄えられた遠坂時臣の魔力を奪って使用しているっす。

 

「じゃあ、ここの見張りは任せたっすよ」

「うむ、任された」

「あ、サーヴァントが現れた場合俺らでは太刀打ちできないっすから、できれば聖杯の器を連れて迷わず逃げてほしいっす」

 

 さて、とっとと行くっすよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やってきたのはマッケンジー夫妻のご自宅周辺。

 

 俺は実体化+気配遮断状態になってから、先程頼んでいた仕事をしてくれたアサシン二人と会話するっす。

 

「ライダーは帰ってきたっすか?」

「いやまだだ」

「中にいたご老人二人はどうしたっす?」

「気絶させ近くの公園の遊具の中に隠しておいた」

 

 ふむ、それではライダー+ウェイバーが帰ってくるまで暇を持て余すことになりそうっすから、ザイードさんの聖杯戦争暗殺帳のコーナーで時間を潰すっすよ。

 

 ここに戻ってくるまでに聞いた話によると、久宇舞弥の殺害には成功したみたいっすね。これで、衛宮切嗣の動きはだいぶ狭まったはずっす。

 

 衛宮切嗣はアサシン二人がかり気絶させて放置。

 

 久宇舞弥にせよ衛宮切嗣にせよ、宝具の効果で一個体の能力は弱体化しているとはいえ、経験が段違いな上、仮にもサーヴァントを二体同時に相手どれば流石にそうなるっすよね。

 

 しかし、間桐雁夜を襲ったアサシン二人のうち一人がバーサーカーから逃げ切ることができず、餌食となったっす。

 

 これで、アサシンの犠牲者は二人。これは由々しき事態っすね。まだ70体以上の人格があるとはいえ、このままアサシンの数が減っていくことは俺にとっても、アサシンズ全体にとっても不利に働くっすから。

 

 いざというときの切り札の効果も薄まるっすからいいことがないっす。

 

 あの場にいたマスターたちはアサシンズが二人組で尾行しているっす。これで、動きを把握できないマスターは雨生龍之介だけっすね。

 

 と言っても、暗殺の作戦は思いついているっすから、問題は無いんすけど。

 

 それと、あの直後にライダーが現れて、真名を明かしてセイバーとランサーを勧誘したみたいっすね。俺の起こした騒動のせいで話を聞いてもらえなかったらしいっすけど。

 

 ん?この音は……『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』の雷鳴っすね?ってことは近くにライダーたちが戻ってきているってことっすね?

 

「この音は?」

「ライダーの宝具の発した音っすね。とりあえずこの家を囲むっすよ」

「何故だ?」

「この計画を確実にするためっすよ」

 

 俺を含む三人はそれぞれ少し離れた他の家の屋根の上から、マッケンジー宅を監視するっす。無論、三人とも気配遮断+霊体化状態っす

 

 ……ライダーとそのマスターであるウェイバー・ベルベットが帰ってきたっすね。ライダーがウェイバー・ベルベットをからかい、ウェイバー・ベルベットがライダーに食ってかかり、ライダーがそれをもっともらしい感じで論破、およびそれがどうしたといった感じで受け流しているっす。

 

 完全にマスターとサーヴァントの力関係が逆転しているっすね。

 

「それじゃあ、僕は玄関から入る。お前はいつも通り上から部屋に入っておけよ」

「うむ、わかっておる」

「絶対だからな!」

 

 そういった直後にライダーは実体化。気配の動きを見ると霊体化して部屋に向かっているようっすね。

 

 そしてウェイバーは玄関を開けてマッケンジー宅に入っていくっす。それから約十秒後……

 

 マッケンジー宅が爆発したっす。




 たくヲです。

 原作より完全乖離。

 前回、『この場に魔術師殺しがいることを知らない』などと書いていながら全然活躍していないという回。

 まだ五話目なのに被害者の数が……。

 これからも『ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?』をよろしくお願いします。

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