夜明けのだいぶ前。
アサシンの十数体と合流して他のマスターの情報を渡して捜索を頼んだっす。ちなみに言い訳として遠坂時臣から聞いたと言っておいたんすけど……よかったんすかね?
衛宮切嗣に関しては、
衛宮切嗣がこの冬木市にやってくるのは今日のはずっすから、この町への侵入経路を全て見張って黒髪のくたびれたコートを着た男を探せばいいはずっす。
ここで、ザイードさんの聖杯戦争暗殺帳のコーナーっす。このコーナーは聖杯戦争における暗殺に重要な情報だと思われる物をまとめるコーナーっす。
衛宮切嗣。『魔術師殺し』と恐れられている、対魔術師に特化した魔術師っす。原作通りならセイバーのマスターとして、この第四次聖杯戦争に参加するはずっすね。原作通り、聖杯戦争前にアインツベルンが衛宮切嗣を雇ったという話は、言峰綺礼と遠坂時臣の会話からもうわかっているっす。
とはいえ、衛宮切嗣が原作通りの人間なら、俺たちアサシンズの敵ではないっす。なにせ、召喚したセイバーとの仲は険悪。そのためサーヴァントとはほぼ別行動。大群殲滅用の武器がない。っていうのは、俺らに殺されに参加したとしか思えないっす。まあ、令呪でセイバーを呼ばれたらまずいっすけど、不意打ちなら勝てるっすよね?
でも、衛宮切嗣が見つかったとしても、暗殺はしないっす。
その理由は、他のマスターの排除のためっすね。雨生龍之介以外のマスターは全員俺たちアサシンズにとって暗殺がしづらい相手っすから。
中でも、ランサーのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトは最大の敵っす。奴の
俺たちアサシンに、ビルから垂直落下した時以上のダメージを与えられる一撃を出せというのはいくらなんでも無茶っすから。
ケイネス・エルメロイ・アーチボルトに匹敵する実力を持った魔術師は第四次聖杯戦争参加者中、遠坂時臣のみ。そいつは俺が暗殺したっすから……魔術師としては劣っていても、魔術以外の方法や対魔術師特化礼装『起源弾』で魔術師を追いつめる、衛宮切嗣に対処してもらうしかないっす。
そして、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトさえ倒してもらえれば衛宮切嗣は用済み……いや、最悪の場合は言峰綺礼の相手をしてもらうことになるっすね。
さて、そうと決まれば、俺も探すっすよ。
太陽がまだ真上にある時。俺は見つけてしまったっす。……アイリスフィール・フォン・アインツベルンとセイバーを。
ふむ、やはりアイリスフィール・フォン・アインツベルンは調子悪そうっすね。問題はアーチャー、ギルガメッシュによる影響が他の英霊3騎分なのか1騎分なのかっす。意外と歩けてるっすから問題なさそうに見えないこともないっすけど、時折ふらっと倒れそうになってるっすね。セイバーがアイリスフィールを見ているときは気丈にふるまってはいるっすけど。
どうするっすかね?とりあえず、ほかのアサシンに見張ってもらうのがいい気がするっすけど。
「ってことで、誰かいないっすか?」
「どうした、ザイード」
おお、どことなく学者っぽい雰囲気のアサシンがいたっす。
「あの白髪の女なんすけど、どうやらアインツベルンのホムンクルスのようっす」
「なるほど。そしてお前はあの女の見張りを僕に頼みたいと」
「そういうことっす」
話が早くて助かるっす。
「いいだろう」
「ありがとうっす。ああ、あとあの横にいる黒服の女。あれはサーヴァントっすから気を付けるっすよ」
これから、どうするっすかね?とりあえず、この町のビジネスホテルというビジネスホテルを調べて拠点を探しておくっすかね?魔術師殺しの助手である久宇舞弥はどこかのビジネスホテルの部屋を借りているはずっすから。
僕は学者アサシンだ。学者アサシンというのは通称であり、専業スキルが学術であるところからつけられた物なのだがそれはどうでもいい。
今はザイードに頼まれた通りアインツベルンのホムンクルスとそのサーヴァントを監視しているところである。
僕らアサシン達は現在、人格の一つであるザイードに言われたことなどを第一にして動いている。
その理由はザイードが他の分体と違うことに気が付いたからというのが大きい。無論、僕らアサシンには何かしらの専業スキルを持っているうえ、『百の貌のハサン』の宝具である『
だが、それを踏まえてもザイードは他の分体とは違う。これは我らが召喚されて数日たった今において、ザイードを除いた全てのアサシン分体の総意だ。
この聖杯戦争でのザイードは初めから生前の彼とは大きく異なっていた。
とはいえ、身のこなしなどは変わっていない。変わったのはその発言。彼の発言の内容は生前の僕らの一人格としてのザイードとは大きく異なっており、戦術面において並の人格をしのぐ発言を行っている。
しかし、それだけでは僕らがザイードの言うことを聞く理由にはならない。事実、軍略・戦術面においての専業スキルを持つ分体もいるのだ。普通はそちらの意見を聞いて行動するだろう。
それはザイードの雰囲気の違いだ。
生前のザイードは特に特徴のない平凡な暗殺者だった。仮にも同じ体を共有していたものとしてどうかと思う言い方だが、いてもいなくても変わらない人格に過ぎない存在だったのだ。
しかし、今のザイードは人を引き付ける何かがあった。
それが死して英霊と成ったことによって得られた何らかのスキルの力なのか、奴の言う『いめちぇん』のもたらした効果なのかは知らないが、ともかく僕らの願望を託そうと思えたことは確かだ。
ということで、監視を続けるとしよう。
日が沈み始めたっすね。
やっと見つけたマッケンジー夫妻のお宅の前。俺は一人のアサシンを待っていたっす。
原作でウェイバー・ベルベットが拠点として使っていた、気のいい日本好きの夫妻の家っすね。
気配遮断+霊体化で侵入して中を調べたところ、ウェイバー・ベルベットの荷物を発見し、ライダー召喚に使用した聖遺物も発見したっす。
荷物の中に魔術に使用する道具が入っていたので間違いはないっす。
このことから俺はこの家をウェイバー・ベルベットの拠点と断定。
探している途中にあったアサシンにとある専業スキルを持つ二人のアサシンを連れてきてもらっているっす。
その二人には、ある場所に行ってあるものを回収してもらっていたんすけど。
ん、来たみたいっすね。
「どうした、ザイード」
「この家がどうかしたのか」
「二人に頼みたいことがあるっす」
日が落ち、町は街灯や建造物の明かりに染まる。
それは同時に聖杯戦争の時間が訪れたことを意味していた。
人のいない操車場にて行われているのは二騎のサーヴァントの戦い。
セイバーが振るうのは不可視の剣。ランサーが振るうのは紅の長槍と黄の短槍。
強力な力を持った英霊であるが、セイバーもランサーも生前見たことのないような武器の扱いを行っており、攻めあぐねていた。
セイバーの後方に立つ白髪の女アイリスフィールはその戦いを見守ることしかできずにいる。
高速の打ち合いの後の離脱。両者が仕切り直しとばかりに距離をとる。
「名乗りもしないままの戦いに名誉も糞もあるまいが、ともかく称賛を受け取れ。ここまでの戦いぶりを示し、汗一つもかかないとは」
「貴殿の名を知らないとはいえ、その槍捌きをもってしての賛辞。私にとっては誉れだ」
セイバーとランサーは、お互いに相手をたたえられるだけの度量と騎士の誇りを持つ者であることを、この打ち合いによって悟っていた。
しかし、この二人は知らない。
この場には騎士を嫌う『魔術師殺し』がいることを。
そして、騎士の誇りとは無縁の暗殺者たちが裏で行動を起こそうとしていたことを。
たくヲです。
次の戦闘シーンまでの流れが難しいです……。
次回から原作から完全乖離予定?
これからも『ザイードに憑依して暗殺王を目指す!?』をよろしくお願いします。