勇者部の恋物語   作:りりなの

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高嶋友奈 2

 彼が私を苦手としているみたいに私は彼が嫌いだ。

 

 嫌いなのになぜ私が笑顔で接しているのかってそんなのは簡単だ。

 

 そうすることで彼の露骨に嫌な顔をするのが見れるからだ。

 

 人の嫌な顔を見るのは本当は好きではない好きではないけど彼のその顔を見るのはとても好きだ。

 

 なぜかと言われると答えることはできない、これは自分でも不思議だ。

 

 彼の昔のことを探ろうとひなたちゃんに話を聞いてみた。

 

「ひなたちゃん、暁人君って昔からあんな感じなの?」

 

 私はいつも通り笑顔で聞いた。

 

「そんな事はないですよ」

 

 この言葉には驚いた。

 

「昔は誰にでも優しく今の高嶋さんの様な方でしたよ」

 

 そこで私は思った自分を昔の自分と重ねて彼は私を苦手としているのだと。

 

「そーなんだ、何となくだけど優しいいって感じは今もあるよね」

 

「分かりますか!あんな風に見えて最後には本当に嫌そうな顔をしますがちゃんと行動してくれるんですよ」

 

 これは地雷を踏んじゃったかな。

 

 ひなたちゃんは若葉ちゃんを語る時よりも前のめりになりながら語りかけてくる。

 

「昔からお兄ちゃんは期待されてなんでも出来て妹の私が見てもとても輝いていたんですよ」

 

 意外だな、今では何も出来なそうに見えるんだけどね。

 

「でもある日、お兄ちゃんは変わりました」

 

 明るい話からいきなり暗い話にされた。

 

 これは後でお腹いっぱいにうどんを食べないと駄目だね。

 

「今みたいな感じになったの」

 

「今よりもっと酷かったですよ、1年は部屋から出てきませんでしたから」

 

 それは意外も意外だった。

 

 あんな性格をしているんだすぐにネットの世界に引き籠るんだと思った。

 

「お兄ちゃんはとても信頼してた友人に裏切られたんですよ」

 

 そう言ってひなたちゃんは私を見る。

 

「容姿は高嶋さんにとても似ていますよ」

 

 その瞳は私を見ているのではなく、彼を裏切った女を見ているみたいだ。

 

「そんなことがあったんだね」

 

「ええ、容姿も似ていますが性格も似ていましたね」

 

 そう言ってひなたちゃんは私の頬に手を伸ばし始めた。

 

「そう、あの時も私はお兄ちゃんを傷つけたあの女の目を指で押したんですよ」

 

 そう言って頬に伸ばした手をゆっくりと目に持ってくる。

 

 そう言うことなんだ昔の自分を重ねていたのではなく。

 

 私をその女と重ねて見ていたんだ。

 

 ふ~ん、それは嫌だなぁー

 

 今のひなたちゃんは怖いけどそんなこと言うことすら忘れてどうやって彼にもっと嫌なことをしようかと考える。

 

 そんな考えをしていると誰かがひなたちゃんの手を掴んだ。

 

「な、なにしてるんだ、ひなた」

 

 それは自分の妹に怯え切った彼の姿だった。

 

 そうだったのか彼が私を苦手としているのではなくて私がどこかの誰かに姿が似ているからひなたちゃんに手を出されると思って苦手な振りをしていたんだ。

 

「兄さん」

 

 そう言ってひなたちゃんは自分の手がどこにあるのかを自覚した。

 

「その手は何なんだ」

 

「すいません、また兄さんが壊れると思って私」

 

「僕は大丈夫だから、部屋に戻ってくれ」

 

 その言葉でひなたちゃんは部屋に戻っていった。

 

 彼は最初から私を心配していたんだ。

 

 でもその感情に腹が立ちそうだった。

 

 嫌いな人に心配されることがどれだけ屈辱的なものだと初めて知った。

 

 それと同時にこの嫌いな感情の反対の感情も持ち合わせている自分に腹が立つ。

 

 それと確信したのは彼は私を傷つけたくないのだと。


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