アプリゆゆゆいが配信されました。
感想で文学少女ですねと書かれて昔の作品だけど知っている人が居て嬉しいです。
作者の人生で初めて買って青春を過ごした作品なので思い出があったので題材にしたかったので園子の中の人が遠子先輩で書きました。
書く人、食べる側を交換してやりました。
では、続きをお楽しみください。
「これも美味しくない」
いずさんはそう言って勇者部の感想文を読み終えた。
「君たちは文章をバカにしているのか?」
冷めた目で私たちを見るいずさんにフーミンは困った風に言う。
「いや、急に来てお役目の事を簡単に思ったことを書けって言われて書いただけなんですけど」
「これは先代の勇者が書いていた日記を見つけたのから今の勇者にも書かせようと思っただけだけど」
いずさんは持ってきてた小説のページを破って口に含む。
「文章というのはこの味だよ」
最高のおやつを食べている様に微笑むいずさんは可愛いけど人前でするのはなんだか嫌だ。
「本を食べる方がどうかしてるわよ」
にぼっしーの的確なツッコミにいずさんは可哀そうな子を見るような目で見ながら言う。
「この美味しさが分からないなんて……ふっ」
その言葉にゆーゆが目を輝かせながら反応した。
「本って美味しいの」
「これは君たちの主食みたいなものだから、君には美味しくないと思う」
いずさんは急にゆーゆに顔を近づけられて照れて本音を言う。
「そうなんだ、残念だよ」
「君は寿命に悪い」
いずさんはそう呟くが顔は赤い。
その姿を見るのは嫌だな。
「いずさん、おやつだよ」
そう言っていずさんに原稿を渡すがいずさんは不思議そうに顔を見てくる。
「なんで怒ってるんだ」
その言葉は意外だった。
今の自分が怒っている事、たぶんそれは自分以外が書いたものを彼が食したのが原因なのは分かっているがそれが顔に出ている事だ。
「怒ってないよ」
私はそう言っていつもの笑顔をする。
「そうか」
彼はそう言って今日のおやつを読み食べていくがその顔が青くなっていく。
「ま、不味い」
そう言ってもう一度、原稿を食べて感想を述べた。
「お豆腐のお味噌汁に、あんこを浮かべた味がする」
彼の目には薄っすらと涙が出ていた。
「変な味がする」
彼は鞄から本を探すが先ほど食べた本しか持ってきてなかった。
「口直しの本がない」
その顔を見ると安心してしまう。
みんなの文章はいと口だけで自分の原稿は全部食べてくれるのだ。
美味しくなくても全部食べてくれる、それだけで安心してしまう。
「園子、君は僕がゲテモノが大好きな妖怪だと思っているのか?」
いずさんは涙を浮かべながらこちらを睨む。
勇者部の一部は本を食べるのだから十分妖怪だろと言いたげな視線をしていた。
「いずさんのお題が駄目なんだよ~」
「それを美味しく仕上げるのが作家だ」
「なら、いずさんが書く?」
「僕はあくまでも食べる側だからな」
「お題がなかったらう~んっと甘いのかけるのにな~」
「百合百合な小説は拒否だ!」
あっ、いずさんの変なスイッチが入った。
「あれは甘いだけじゃない口の中が砂糖だらけになって暫くは何を食べても甘くなり感覚が痺れるんだよ!」
それから怒り出したいずさんのお説教が暫く続いた。
でも、この時間が続いてくれればいいと思った。