勇者部の恋物語   作:りりなの

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最初にこの話を構想では作っていたのですがどうにもしっくりこないので没にしていた話なのですが勇者の章を見てから自分が描いた構想に持って行けると思い書かせてもらいました。

今回の話は全部で4話構成で書いていくつもりですが短くなったり長くなるかもしれませんが少しの間お付き合いください。

三ノ輪銀編4での暁人ではなく銀が原作通りになってしまった世界線です。


if 三ノ輪銀編 6

 あの日、僕は目を負傷してそのまま気を失っていた。

 

 目が覚めた時には全て終わっていた。

 

 そう、三ノ輪銀は犠牲になった。

 

 その言葉を聞いて僕は涙が出なかった。

 

 好きな女の子が死んでいるのに涙が出ない。

 

 あぁ、僕は壊れているそう確信した。

 

「君を本当に危険な目に遭わせてしまってすまない」

 

 そう言って謝ったのは本当の両親だった。

 

 そこまで行くと自分の扱いが雑だったのが余計に分かってしまった。

 

 僕は最初から誰にも望まれて生まれてきたんじゃないんだ。

 

「もう、その言葉はいいです」

 

 僕は窓の外に視線を向けながら言う。

 

「謝っても僕の目と三ノ輪銀は返ってこないんですから」

 

 僕はそう言って視力を失った左目の眼帯に触れた。

 

「何もかもが遅すぎたんですよ」

 

 僕には生きる気力なんてない。

 

 銀が居ない世界で僕はどうしたらいいんだろう。

 

 銀、君の声が聴きたいよ。

 

 僕はそう言って誰にも耳を傾けることなく静かに眠りにつく。

 

 できればこのまま永遠に眠りたい。

 

 どれだけ日が過ぎようが僕の病室には大赦の人間しか来ない。

 

 今日も病室のドアが開いて誰かがやって来たので追い返そうと口を開いた。

 

「何度来ても僕は勇者にはなりませんよ」

 

 そう言ってきた人の方を向いたら先生がたっていた。

 

「安芸先生、あなたが僕に何を言いに来たんですか」

 

 僕は端末を見ながら言う。

 

「こんなものまで用意して僕を死なせないつもりですか」

 

「試したのね上里(・・)君」

 

 先生は無表情でそう言った。

 

「ここでできることは全てやりましたよ」

 

 銀がいない世界で僕に生きる意思はない。

 

「こんなもの只の呪いだ! どうせ、満開と言う機能もなんらかのデメリットがあるはずだ……なんで、なんで銀が居なくなってからこんなものを」

 

「それでもあなたはその力を使わないと」

 

 僕は先生を見ながら、いや先生の方に顔を向けているが視線はそこにはない。

 

「銀が居ない世界なんて僕にはどうでもいいですよ」

 

 それが僕の本音だ。

 

「なら、あなたは三ノ輪さんが命を落としてまで救った命を捨てるのね」

 

「そんな命どうでもいい、僕には銀しかいなかったんだ」

 

 そこでようやく僕は心から泣けるのだろう。

 

「大切で失いたくない人を失ってこれ以上僕に何を望むんだよ!」

 

「また、上里君の返事を聞きに来るわ」

 

 そう言って安芸先生は病室から出て行った。

 

 何度来ようが僕の気持ちは変わらない。

 

 その日、夢を見た。

 

 とても酷いものだった。

 

「暁人はどうしたいの」

 

 後ろを向いた銀が僕にそう聞いてくる。

 

「僕は銀を守れたらそれでいい」

 

 そう言った僕に銀は振り向いたが姿は先ほどと違い右腕を失っていた。

 

「守れてないのにな」

 

 やめて、君はそんな事を言うはずがない。

 

 銀がこちらに近づいてくると体のいたるところから血を流していた。

 

「暁人が守ってくれないからこうなったんだよ」

 

 銀はそう言いながら左手で僕の頬に触れる。

 

「だから、暁人も—――」

 

 それ以降の言葉は聞こえなかった。

 

 いや、聞きたくなく夢から逃げた。

 

「僕はどうしたらいいんだよ」

 

 誰も居ない病室にそんな言葉だけが余韻を残した。


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