次回はエピローグで園子にバトンを繋ぎます。
僕が読んできた書物には楽しい後、幸せになった後には絶望が待っている。
遠足が終わり帰りのバスでは僕以外の人はぐっすり眠っていた。
僕の後ろの座席にいる三人は心地よく眠っていた。
「この日々は続かないよな」
そう言って端末を取り出して密かに撮影した。
それからこの平穏な時間を過ごす。
神樹館に到着し僕らは会話をする。
「明日は訓練で終わりそうだ」
そんな事を言った僕に2人は疑問を言った。
「暁人、明日は午前で訓練は終わりだぜ」
「そうですよ、出雲も聞いているはずですよ」
話がかみ合わない。
「大赦からはそんな連絡はもらっていない」
「明日は訓練としか聞いていない」
銀が何かを言おうとした瞬間、奴がやってきた。
「何でこんな時にくるんだ」
「銀、それには肯定だ」
素早く片付けて帰りたい。
そんな気持ちで挑んだからだろうか、それとも二体来てもこの四人ならなんとかできると慢心していたからだろう。
勝てると思っていた時、それは天から降ってきた。
「上から」
幾千もの光の矢が降ってきた。
それを拳で急所に当たる場所のみを破壊していた。
だけど攻撃は上からだけではなかった。
横からの突然に攻撃に構えることはできなく吹き飛ばされる、その時に左目に光の矢が刺さってしまった。
「左目が」
体は痛いが左目の方がさらに熱く焼けるように痛い。
体を無理やり起こし銀たちの元に行こうとした時に見てしまった。
銀が鷲尾と乃木を橋から投げた。
戦えない二人を銀は投げた。
それはなぜか、自分を犠牲にして誰かを助ける銀だから取った行動だ。
だから僕は銀に悟られないように静かに忍び寄った。
「暁人には謝らないとな」
大丈夫、君は死なせないから。
「これが終わったらアタシの気持ちを暁人に伝えよ」
知ってるよ。
だって、僕は銀が好きだから。
だから、君は生きて欲しい。
「ありがとう、銀」
僕はそう言って銀の服を掴んだ。
「なっ、暁人!」
「銀の武器借りるから」
そう言って僕は銀を橋から投げた。
「ダ、ダメ! 暁人!」
そう言った銀の顔には涙が流れていた。
好きな女の子を泣かせてしまった。
後で謝らなとな。
「さぁ、始めようか」
僕は銀の武器を手に取り構えて言う。
「どちらかが生き残る殺し合いね」
そう言って僕は不気味に不適な笑みを浮かべた。
さきほど光の矢を放ったバーテックスに飛び掛かる。
数分の観察で分かった。
こいつらは個々の能力では僕ら4人には弱すぎる。
だが集団で来ればその弱点を埋められる。
なら近接ができず遠距離から狙ってくる相手を先に潰すのは戦争の要だ。
斧で斬りかかりながら後ろから迫ってくる巨大の針を避ける。
一体ずつ潰していけばいい。
どれだけ相手の回復力が高かろうが時間がかかれば意味はない。
「蹂躙してやるよ」
目の前の3体を潰すそれだけに意識を集中させる。
こいつを潰せば残りの2体は同時に潰せる。
潰す為の策略はある。
片目があれば十分だ。
それが油断なのだろう。
相手に斬りかかるために振りかぶった左肩に力が入らない。
代わりに激痛が走った。
「アイツかァ!」
巨大の針を持ったバーテックスが視界から左腕を抉り取った。
左腕がないのなら右で斬りかかればいい。
一体目のバーテックスを両断して戦えないと判断して残りの2体に向かう。
「人間を舐めるなぁ!」
「銀、銀」
アタシはその声で目を覚ました。
「す、須美」
それでアタシの頭は冴えた。
「暁人が! いっ」
無理やり体を動かしたのか体が痛い。
「いずさんが一人で」
園子の一言で私たちは急いで橋の上に行く。
「暁人が居ない」
橋の上にはバーテックも暁人の姿もない。
「銀、あの斧は銀のじゃないの」
そうだ、暁人はアタシの斧を貸した。
アタシは痛みが走る体を無理やり走りそこまで行くが見なかったら良かった。
「うっ」
そこには暁人の左腕が斧を握っていた。
吐いたら駄目だ。
これは暁人の腕だ。
「銀……っ、これは出雲君の腕よね」
「暁人はこの先に居る」
後ろに居る園子は何かを悟ってなにもしゃべらない。
アタシは絶対にそんな可能性を捨てる。
それはアタシが望んでいないことだから。
それから橋の奥まで壁の近くまで行くとそこには砕けた斧がある。
斧には誰かが背を預けている。
「出雲君!」
須美が叫んで近づいていくアタシも遅れて走り出す。
「暁人!」
アタシが暁人の名を呼んでも声が返ってこない。
片目を失くして左腕を奪われ斧を背もたれにしながらも壁を睨み付ける暁人がいる。
「バーテックスはもう居ないんだ」
「だから、返事をしてくれよ暁人!」
その日、アタシの最愛の人は亡くした。
暁人の死はお役目の中で亡くなったと学園で話された。
クラスメイトの大半は涙を流していただけどアタシはその涙を許せなかった。
その涙を流していたのは暁人を苦しめていたなんでそんな奴らが涙を流すんだよ。
アタシたち三人はそれぞれの感情を抱きながら暁人の葬儀に参加した。
葬儀には暁人の親族は誰一人も参加していない。
知っている。
あの親が来るわけがない。
暁人を居ない者として扱っていた奴らが来るわけがない。
須美はその光景を見て茫然としていた。
「何なのコレ」
「須美、これが暁人が生きてた世界だよ」
アタシは須美に静かに言った。
「銀は、銀は知ってて涙を流さないの!」
須美は涙を流しながら叫んだ。
「出雲君の事を知っていて」
「知ってたさ! でも、暁人は心配するな銀には関係ないって言うんだよ!」
「もう、暁人は居ないんだよ」
その時、いつもの感覚がやってくる。
「なんで今日なんだよ!」
私は吠えるように端末を睨む。
そして壁の向こうを睨む。
お前たちが居るから居るから暁人は苦しい思いをするんだ。
アタシと須美はそれぞれの怒りのままにその力を振るった。
須美は暁人が好きだったのだろう。
だからこそお役目をやっていく。
何を犠牲にしてでもやっていくと決めた。
決めていたけど新しい機能が体を犠牲にしていくとは思わなかった。
「こんな姿、暁人に見せれないな」
満開を使い両腕、足が使えなくなってしまった。
アタシたち三人の中で動けるのは須美だけだった。
でもその須美は記憶を失くして元の名前に戻ったと聞いた。
なら須美は誰のために戦うのだろう。
新たな勇者にアタシは期待する。
暁人が命を賭けて託してくれたバトンを勇気のバトンを受け継いで欲しい。
銀を救済するということは誰かを犠牲にするしかないのですよ。