勇者部の恋物語   作:りりなの

3 / 59
今回の話を書くにあたってと言いたいところですが、風先輩の話を書くにあたって作業中に流す曲をすべて内山夕実さんのキャラソンを流しながら書いていたからでしょうか内山夕実さんの声を聴くことが生活の一部になりかけています。

今回の話で折り返し地点なのかな?




犬吠埼風 3

 週末の部活が終わり月曜に戻った。

 

「集中できない」

 

 僕はこの前の柏木さんの言葉が頭から離れない。

 

 彼が風先輩に告白をすると考えると他の事が考えられない。

 

 この気持ちが恋なのは知っている。

 

 柏木さんが風先輩に告白する前に行動に移さなければならない。

 

 その前に目の前の授業に集中しなくてはいけない。

 

 side 風

 

 私は今、人生で一番驚いている。

 

「犬吠埼、放課後屋上に来てくれ」

 

 剣道部の部長、柏木君に教室でそう言われた。

 

「へぇ?」

 

 私は突然のことで思考が追い付かない。

 

「じゃ、放課後待ってる」

 

 そう言って柏木君は友人の輪に戻っていった。

 

 なんで私が彼の事で考えているときになんでこんなことになるのよ!

 

 あーもう、こんなことで考えるのは私らしくない覚悟は決まっている。

 

 放課後にすべてを終わらせる。

 

 そんな覚悟を決めて休み時間に彼に会い言われた言葉に唖然としてしまった。

 

「先輩、大切な話があるので放課後屋上に来ていただけませんか」

 

 彼は顔を赤くして言うものだから彼が言いたいことが分かってしまったがそれと同時に柏木君と同じ場所とか最近の告白は屋上が定番なのか!

 

 私がそのことを言う前に彼は走り去ってしまった。

 

 てか、これって告白よね! つまり私と彼はり、両想いなのよね。

 

 どうしよー考えただけ顔が赤くなるのが分かる。

 

 だから私のこの思いを彼に伝える全部、それからうどんを食べに行くんだから。

 

 side out

 

 side 吉野川

 

 休み時間に風先輩に会い要件を述べて逃げてきたけど僕がやろうとしていることはたぶんバレテいるはずだからなにも恐れることはない。

 

 そして放課後、僕はホームルームが終了して屋上に向かう途中で柏木先輩にであった。

 

「先輩、部活はどうしたんですか?」

 

 嫌味に聞こえるように言うと柏木さんはニヤッと笑い。

 

「それはお前もだろ」

 

「では、先輩は屋上になにか用事でもあるんですか?」

 

「あぁ、犬吠埼にな」

 

「へぇ~奇遇ですね僕も風先輩に用事があるんですよ」

 

 この瞬間、二人の思考がシンクロした。

 

「「振られろ」」

 

 二人はお互いを睨み合いながら屋上に向かっていく。

 

 屋上にはまだ、風先輩は来ていないし相手はやる気まんまんだ。

 

「まだ、来てないな」

 

「そのようですね」

 

 二人は学ランを投げ男の戦いがここに始まった。

 

 二人が殴り合いを始めてしまい出るにでれなくなった少女がこの場にいた。

 

 side out

 

 side 風

 

 タイミングを逃してしまった。

 

「どのタイミングで出ようかな」

 

 それにしても2人とも殴り合うということは告白なのよね。

 

 そう思うと顔が熱くなってくる。

 

 遥君は私のことが好きなのよね。

 

 それにしても男子の殴り合いなんて初めて見たけどなんでだろう。

 

 遥君は殴られても痛そうな表情をしないんだろう。

 

 痛みを感じないのだろうか、そう思うとなんだか私の心が痛くなってきた。

 

 彼が殴られるたびに私の心が痛い。

 

 彼の声が聞こえてくる。

 

「僕は風先輩のおかげでかわれた」

 

「風先輩がいたから僕はかわれた」

 

 その言葉は嬉しかった。

 

 初めて会った彼はどこか感情が読みにくい人だと思ったが関わっていくごとに感情が表に出てきた。

 

「だから僕は風先輩に惹かれていった」

 

 私もあなたの色々な顔を見る度に惹かれていった。

 

「だから僕は」

 

 私は

 

「犬吠埼風が」

 

 吉野川遥が

 

「好きなんだ!」

 

 好きになってしまった。

 

 気持ちが同じだと思った矢先の事だった。

 

「そろそろ、出てきてくれませんか風先輩」

 

 私はそんな遥君の声で驚いてしまった。

 

「髪、はみ出してますよ」

 

 そんなことを言われて私は慌てて出る。

 

「い、いつから気付いたのよ」

 

 私は嬉しさと恥ずかしさの両方で顔を赤くして登場した。

 

「殴り合いをしていたらちらちらとこちらを見ている風先輩がいたので」

 

「結構初めの方から気付いてませんか!」

 

 すごく恥ずかしい。

 

「それで風先輩、僕は用事を済ませたんで答えを下さい」

 

「もぉ、私も好きよ! これでいいんでしょ」

 

 そして、遥はにっこり笑った。

 

「はい」

 

 この日をもって私たちは彼氏彼女の関係になったが翌年、私たちにあんなことが起こるとは今はまだわからなかった。

 

 もし、私たちが勇者として選ばれなかったら彼はまだ。

 

 そして、彼の過去に繋がる物語が始まろうとしている。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。