勇者部の恋物語   作:りりなの

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 時間が開きすぎましたが書き上げるもとができました。


東郷美森 3

 あれから季節は少しだけ過ぎてバーテックスとの戦いが始まり夏凛が讃州中学にやってきた。

 

「なんで、出雲様がここにいるのよ!」

 

 部室に夏凜の大声が響いた。

 

「何騒いでるのよ夏凜」

 

 部長の風はすぐさま夏凜に声をかける。

 

「あんた達なんで普通に出雲様に話しかけてるのよ」

 

「僕のこと言ってないからね」

 

 そう言って出雲君は悪戯が成功した子供の様に笑顔で居た。

 

「こうして挨拶するのは初めてだね、大赦を纏めている出雲家当主の出雲暁人です」

 

 彼はそう言って挨拶をした。

 

 夏凜ちゃん以外の私たちは言葉が出なかった。

 

「もう少しだけ自分のことを隠そうとしてたのにな」

 

 悔しそうに言って彼は夏凜ちゃんの方を向いた。

 

「もぅ、この空気どうしてくれるの」

 

「えっと、すいません」

 

 私たちには辛口な彼女も彼には頭が上がらないのか素の彼女を見た。

 

「人の楽しみを奪うのは兄妹揃ってだよ、そこだけ兄妹アピールやめてよ」

 

 でも彼はそれを楽しんでいる。

 

「トップである出雲様が呼び捨てにされているのがアレだったので」

 

「でもでも、僕は夏凜には暁人で呼んでっていつも言ってるじゃん?」

 

 長年にわたる友人をからかっているようにも見える。

 

「いや、でも、出雲様は」

 

 彼女はとても焦っている遊ばれていることに気づいていない。

 

 私はそんな彼を知っているような思いがある。

 

「でも、学校で出雲様って呼ばれるのは嫌だよ」

 

 彼はとっても素直にそう言って遊んでいる。

 

「あ、あ、暁人でいいんですよね」

 

 名前を呼んでも彼はまだ物足りないみたいだ。

 

「敬語も抜きにしてよ、同級生だよ、同級生同士で敬語は気持ち悪いよ」

 

 学校のほとんどの生徒は彼に敬語で話している。

 

 彼女は顔を赤くして限界を向かえたようだ。

 

「分かったわよ! これでいいんでしょ……あ、暁人」

 

 名前で呼ぶのには少し間があったが吹っ切れたようだ。

 

 彼女の態度を見た彼は近づいて頭を撫でた。

 

「よーく出来ました」

 

 完全に遊ばれて終わった。

 

「うん、これで皆に馴染めるね!」

 

 そう言って彼はこちらを向いた時に扇子を広げて大成功と書かれていた。

 

 それを見た私達は笑ってしまった。

 

「暁人ナイスよ」

 

 風先輩は笑いながらも彼を褒めた。

 

 遊ばれていた本人は身体を震わせて自分が遊ばれていたことに今更気がついたようだった。

 

「馴染めるか!」

 

 大声で彼女は吠えた。

 

 それでもこのやりとりのおかげで私達は彼女に対する警戒心を解いてしまった。

 

 だけど、彼女の口にした言葉は忘れもしないものだ。

 

「出雲君、貴方は本当に大赦の人間なの?」

 

 だから私は口にした、誰も聞かないでいるから。

 

「夏凜が来たらみんなに説明しようとしていたんだけどね」

 

 彼は申し訳なさそうに言う。

 

「まぁ、僕には余り決定権がないから……飾りみたいなものだから」

 

 その意味は分からなかったでもこの言葉を理解した時は遅かった。

 

「僕からしてもこのグループが選ばてることはほんの1握りの可能性だったんだよ、だから僕が君たちを監視……言葉が悪いな見守る必要があった」

 

 その言葉を聞いて私は風先輩を見た。

 

「風先輩はこの事を知っていたんですか?」

 

 風先輩は頷いた。

 

「暁人が大赦の人間なのは知っていた、けどそこまで上の人だとは聞いていない」

 

 これは真実のようだ。

 

「君たちがお役目を授かることで僕の情報を開示する事は危ないからね、だから知っていても知らないふり支える事をしてきたんだよ」

 

「出雲君はあれを知っていて知らないふりをしていたの」

 

「それが僕の仕事であれを倒すのがお役目を授かった君たちの仕事だよ」

 

 静かに恐ろしいく低い声で彼は話す。

 

「僕はこのとおり目が見えないから君たちがナニと戦っているのかまでは知らない見ることが出来ない」

 

 彼の手は力強く握り拳をつくっていた。

 

「この目が見えるのなら君たちが戦っているものを見て危険だと知っていたら止めたよ」

 

「それでも僕には何も出来ない他の大赦の人の言葉に頷くことしか出来ない」

 

 彼は苦痛な顔をしている。

 

「だから僕は君たちに何を言われても構わないと思っている」

 

 彼は彼で苦しんでいた。

 

「すまない」

 

 それは彼の心の叫びだった。

 

 その日は活動はなくなりこれからの活動を話し合い終わった。

 

 

 部活が終わり僕は病室に戻った。

 

「作戦を始めようか」

 

 僕は園子に笑顔で言う。

 

「彼女達には選択の余地がある本当に戦うかどうかの」

 

「いずさんもそれでいいなら私は構わないよ」

 

「それが私にできるわっしーへの返せる時間だから」

 

 そう言って園子は札が大量に貼られている扉を見つめる。

 

「駄目だ! 扉の奥を見ようとしてはいけない」

 

 幼ながらも覇気のある声で暁人は園子を制止する。

 

「それを見たら君まで後戻りが出来ない」

 

 だってその奥には彼の本体があるのだから。

 

 その奥の部屋には体の9割を供物として捧げた暁人が祀られているのだから。

 

「さて、彼女達の選択が楽しみだ」

 

 暁人は笑みを浮かべながら姿を消した。


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