HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード54

日本政府が集う国会議事堂の周辺には厳重な警備。警備員だけじゃなく、兵藤家や式森家の人間たちも警備員として私服で警戒していた。皆、何かに対する警戒心で険しい表情を浮かべ徘徊、闊歩している。

 

「はぁ・・・・・どうして俺たちが警備など」

 

「ぼやくな。これも日本を守る為だろう」

 

愚痴を漏らす兵藤に窘める式森。肉体派と頭脳派みたいな言動をすることで兵藤と式森の特徴が窺える。

 

「でもよぉ。全然事件なんて発生しないじゃんか」

 

「我々が表にいるのに犯罪を起こそうなど愚かな輩がいるわけがないだろう」

 

兵藤と式森の人間が二人一組で動いているのは前衛と後衛、王道的なファンタジーゲームのように行う戦闘スタイルをする対処の為である。

 

「ったく、式森ってのは真面目すぎて付き合い辛いぜ」

 

「傍若無人に周りへ迷惑を掛けている兵藤の尻ぬぐいをする我々式森の苦労を分かってもらいたい方だ」

 

「んだとぉっ!?」

 

式森の言葉にキレる兵藤の声が周囲にまで響き、周りの人間たちが奇異な視線を向ける中でも涼しげな顔で式森はハッキリと言う。

 

「事実だろう。そちらの若い世代の兵藤が犯した数々の罪。知らないとは言わせないぞ」

 

「あれはガキ共がしたことだろうが!」

 

「『兵藤』と名乗る以上、兵藤が犯した罪なのは変わりない。聞いたぞ?追放された元兵藤の若い者に粛清されたようじゃないか」

 

「ぐぬぬぬっ・・・・・!」

 

皮肉な事を言われて兵藤は屈辱に塗れた歪んだ顔をする。

 

「あの一件以来、こちらにまで聞く兵藤の傍若無人な働きの情報は極端に減った。私たち式森にとって嬉しい限りだ。尻拭いすることも、溜息も減ったぐらいだぞ」

 

残念ながらテロリストになってしまったがなと漏らす式森。

 

「話はここまでにして仕事に集中しろ」

 

「ちっ!」

 

式森に言葉で勝てず、酒の肴にされる話まで握られてしまった兵藤にとっては

腹立たしいことだった。この怒りを早くテロリストにぶつけたい思いでいた兵藤が―――。

 

ゾッッッッ!!!!!

 

なにか、例え難く、形容し難い不気味なプレッシャーを肌で感じ取った。

 

「どうかしたか?」

 

式森は気付いていない。これは兵藤でしか感じられない探知によるものだ。

仙術的な意味ではなく、例えるならば川神百代が感じる対象の気を探知のほうである。

 

「おい、テロリストがいるみたいだぞ」

 

「・・・・・こう言う時だけ兵藤は頼りになるのだから腹立たしい思いをする」

 

「へっ、そうかよ」

 

式森ではできないことを兵藤がするという現実を突き付けられるがその逆もまたそうなのである。

不気味なプレッシャーを発する者を探知する兵藤は周囲に肉眼で視線を飛ばし探し続けると、

激しい揺れが生じた。

 

「なんだ、この揺れは!?」

 

「―――下だ!下からとんでも無い気配を感じやがる!」

 

「下って・・・・・地面からかっ!?」

 

―――次の瞬間。道路が大きく盛り上がって巨大な黒い影が姿を現した。それは・・・・・。

 

「「・・・・・卵?」」

 

卵の出現から続々と情報が伝わった。なんと他にも国会議事堂を囲むように巨大な複数の卵が地面から出てきたのだった。

政府の人間たちは式森の転移魔方陣で問題なく脱出。住民の避難の急がせ誘導している対テロ組織の集団。

 

「一体何だろうなこれ・・・。おい、これは何なのか調べろよ」

 

「何らかの魔術が施されているようだな。それと今その解析をしているところだ」

 

魔方陣の展開して卵の情報を収集している式森に兵藤はぶっちゃけた。

 

「物理的に壊して良いんじゃないのか?」

 

「これが本当に卵だとすれば中身がどんな化け物が出てくるのか分からないものだぞ」

 

全長三百メートルもある無機質に真っ白な表面は生物の卵だと彷彿させる。

 

「どんな化け物が出て来ようが俺たちが倒せばいいだけだろう」

 

コンコンと殻を軽くノックをする感じで叩く兵藤に叱咤する。

 

「おい!迂闊に触れるな!(ピシッ)―――っ!?」

 

「あ、どうした?」

 

叩いた殻の表面に罅、亀裂が生じた。式森は反射的に魔方陣を展開した矢先に―――。

 

『作戦開始だ』

 

卵から聞こえる声と共に全体に広がる亀裂。そして・・・・・甲高く全ての卵が砕け散ったのだ。

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

孵化した巨大なモンスターが立ちあがって咆哮を上げる。兵藤と式森は臨戦態勢の構えをする。

 

「巨大な化け物を確認!これから迎撃に入る!」

 

「攻撃開始だっ!」

 

対テロ組織とモンスターの戦いが火蓋を切って落とされた―――。

 

東西南北、国会議事堂を囲む巨大な卵から巨大な生物が姿を現し建物を破壊しつつ

国会議事堂に進んでいく。

兵藤と式森の対テロ組織がそれを阻止しつつ攻撃を仕掛けるが与えたダメージが直ぐに

治癒、再生して効果はいまひとつだった。政府の呼び声に駆けつけた

神器(セイクリッド・ギア)の所有者も現場近くにいるが、

 

「ひぃぃいいいいっ!?」

 

「おいっ、どこに行く!」

 

戦闘経験や心が弱い所有者は敵うわけが無いと逃げ出してしまう。

率先に戦うのはやはり兵藤と式森。

その中には駒王学園の生徒である兵藤や式森もいた。

絶叫や怒号、悲鳴など戦場は阿鼻叫喚に包まれる。

味方の被害を出してでも倒す試みで動いているのだが―――。

 

「巨大な化け物から小型のモンスターが生まれたぞっ!」

 

「なんだとっ!?この化け物めが・・・・・!」

 

巨大な生物の身体から出てくる小型の異形のモンスター。

分身を産み出す巨大な生物を相手に思うように戦況を有利にできず

 

「くらえっ!」

 

小型モンスターに式森の魔力弾が炸裂すれば、異形の小型モンスターが大きく口を開けて魔力弾を吸いこんで無力化する驚きの光景。

 

「なんだとっ!?(ドンッ!)ぐあ!?」

 

一人の式森がモンスターに捕まった。モンスターは人間一人呑みこめるほど大きく口を開けては

アナコンダのように丸呑みしたのだった。すると、背中に異様な盛り上る際に丸呑みされた

式森がモンスターの肉の繭に包まれた状態で姿を窺わせる。

 

ギュッ!ギャハッ!ギィィヤアアアアアッ!

 

気持ち悪い声を発するモンスターが背中の肉の繭を輝かせると、オーラがモンスターを包み口から魔力での砲撃を放って建物を破壊した。

 

「こ、こいつ・・・・・!魔力を吸い込む、式森を取り込むだけじゃなく、式森の魔力を吸収して放つのかっ!?」

 

異形のモンスターの特殊な能力に戦慄し、畏怖の念を抱く。

 

「式森の連中に伝えろぉっ!小型のモンスターは式森を取り込んで魔法を放ってくるぞぉっ!」

 

カッ!

 

上空に巨大な魔方陣が突如として出現。対テロ組織がその魔方陣に見上げると魔方陣の上に乗っている学生服の上に漢服を着込んでいる少年少女たちがゆっくりと舞い降りる。

 

「良い感じになっているようじゃないか」

 

「レオナルドと兵藤一誠の創造によって造られた魔獣が兵藤と式森を圧倒しているな」

 

「僕たちが出る幕なんてないんじゃない?」

 

「つーか、魔獣共に苦戦しているぐらいだから弱いんじゃねーのか?」

 

―――英雄派、降臨―――

 

魔獣たちは英雄派の登場にも拘わらず兵藤と式森を率先に襲いかかっている。その中でも兵藤と式森は英雄派に敵意を向ける。

 

「テロリストどもがっ!ノコノコ俺たちの前に現れたな!?」

 

「良くも日本を、世界を騒がせたな。兵藤と式森の力を思い知るがいい」

 

二人は魔獣たちを掻い潜り、曹操たちの前にまで迫った。誰も動こうとはしない。

その中で曹操は口を動かす。

 

「―――一誠」

 

バッ!と黒い影が曹操たちの背後から現れ、兵藤と式森に飛び掛かった。相手が誰なのか把握する前に、現れた影によって――気と魔力を根こそぎ奪われ地面にひれ伏した。

 

「・・・・・弱い、これが兵藤と式森?」

 

「そして私たちを捕まえようとする対テロ組織だよ。―――さて、皆。思う存分に暴れようじゃないか」

 

『おうっ!』

 

―――○●○―――

 

アザゼルたち混成対テロ組織チームが国会議事堂の周辺に現れた時は一足遅かった。

町並みは廃墟と化し、数多の異形のモンスターと複数の巨大な生物が国会議事堂を

囲んでいた。

 

「何、あのモンスターは」

 

「おそらく、『魔獣創造(アナイアレインション・メーカー)』・・・・・神滅具(ロンギヌス)の能力で生まれた魔獣かもしれん」

 

「あれが全部神滅具(ロンギヌス)で創られた魔獣なんすか!?」

 

「候補に挙げるとすればそれしかない。しかもどうやら兵藤と式森の連中を

蹂躙し尽くした後のようだな」

 

人っ子一人もいない廃墟と化した町。警備していた警察や兵藤、

式森は全員・・・・・魔獣によって倒された。その事実に一成は声を震わせる。

 

「お、俺たちだけであの魔獣たちを、兵藤と式森を倒した魔獣を倒せるんすか」

 

「倒せるんじゃない。倒すしかないんだよ。式森の皆の仇を、僕が取らなくちゃ」

 

「一応、私たちもね」

 

「ええ」

 

和樹の言葉に悠璃、楼羅も同意と闇を、影を纏う。全員が戦闘態勢の構えになると

 

『気を付けて。小型の異形のモンスターたちは魔力を無効化するどころか、式森を取り込んで魔法を放つわよ』

 

突如現れた小型魔方陣からナヴィの声が聞こえる。

式森の皆が取り込まれている!?和樹はその事実に驚きを隠せなかった。

 

『大型の魔獣は小型の魔獣を生み出し、治癒と再生能力を持っていて生半可の攻撃は効かないわ。小型の魔獣の方は魔法を吸収、魔力を持っている対象を取り込む能力があるわ。事実、兵藤家の人間は取り込まず、片っ端に倒したら一ヵ所に集められているわよ』

 

「そいつらは無事か?」

 

『一人も死者はいないわ。式森の人間たちを助けるには背中の肉の繭から取り出せば大丈夫。それと魔力での攻撃は極力しないで物理的な攻撃が必要よ』

 

魔獣の攻略方法を告げるナヴィ。巨大魔獣の方は魔力を吸収する能力は無いと言うことも分かり、アザゼルたちが

これからするべき事が把握した。

 

「大型はともかく小型の方は面倒だな。倒しながら助け出さないといけないなんてよ」

 

「やらなければ式森家の者たちの命は危ないですよ」

 

物理的な攻撃―――となると、アザゼルは味方に視線を向ける。

 

「イザイヤ、白音、一成、レオーネ、アカメ、クロメ、龍牙と言った武器、肉体で戦う奴は小型の魔獣に捕らわれている式森の救出にあたってくれ。火力が自信のある奴はこれ以上小型の魔獣を産み出させない為に大型の魔獣を撃破だ。おい、ガーゴイル」

 

『なによ』

 

「あの議事堂の中を調べているんなら敵がいるかどうか分かっているんだろう?

どうなんだそこは」

 

ナヴィに尋ねたアザゼル。返答を聞く前にリアスが声を発した。

 

「アザゼル、小型の魔獣が動きだしたわっ」

 

「なに?」

 

視線を動き出す魔獣に向ける。小型の魔獣は突然、取り込んだ式森たちを吐きだした。

その行動は不明過ぎてアザゼルたちはただただ見守ることしかできない。

様子を見ていると―――。

 

ギャッ!ギャッ!ギュアッ!

 

小型の魔獣たちが一斉に大型の魔獣たちに群がって元の身体の一部へと還っていく。

唖然と見ているアザゼルたちはさらに驚いた。巨大な魔獣たちもそれぞれ融合をし始め、やがて一体の魔獣になったのだった。

 

グオオアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

 

魔獣は嫌な音を周囲に轟かせ肉体や骨格を変え、白い巨人へと変貌していく。

 

「『魔獣創造(アナイアレインション・メーカー)』の真骨頂ってか!」

 

「デ、デカい・・・・・っ!」

 

極太の両足に極太の両腕と両手、全長五百メートルは優に超えた怪物が顕現する。

 

「だが、あんなの他の歴代の『魔獣創造(アナイアレインション・メーカー)』の所有者でもできなかったはずだ。何か別の力が加わったような感じがするな・・・・・」

 

―――その時だった。ぬるりとした生温かい霧がどこからともなく発生してやがて霧が足元まで、町の至るところにまで広がると一行は辺りに警戒する。この霧は何なのだろうと怪訝に

「アザゼル、これは?」とリアスからの尋ねに警戒しつつ返答する。

 

神滅具(ロンギヌス)に間違いないな。それも上位種『絶霧(ディメンション・ロスト)』だ」

 

霧の正体が把握出来たところで敵が現れた。

一行の前方から方天戟を携える赤い髪の少女、呂綺が―――。

 

「お前は!」

 

直ぐさま警戒する。それに呼応して全員も臨戦態勢の状態に入る。

 

「その格好からして、お前は英雄派だな?」

 

「恋は呂玲綺」

 

「・・・・・悪い、どっちが名前だ?」

 

「呂玲綺」

 

改めて名を教えてもらったところで、場に緊張が走る。

 

「今回の目的はなんだ?って、テロリストが教えてくれるわけないか」

 

「兵藤と式森を倒す。もう終わった」

 

「・・・・・素直に教えてくれるとは意外だな」

 

対テロ組織に加わっていた兵藤と式森の撃滅が目的とした騒動だとあっさり教えてもらった。

 

「で、俺たちの前に現れたのは挨拶でもしようと?」

 

「うん、そう」

 

「・・・・・本当に素直に言うな。テロリストとは思えない純粋さだ」

 

「恋、偉い?」

 

純粋無垢な瞳を向けられる。誰もが呂綺に困惑する、戸惑っていた。

 

「話し合えばなんとかなるんじゃない?」

 

「俺もそう思ってきているんだがな・・・・・」

 

如何せん。相手はテロリストだ。話に応じてくれるとは思えない。試しに聞いてみた。

 

「一つ聞く。兵藤一誠は元気か?」

 

「ん、元気。毎日美味しいご飯を作ってくれる」

 

「・・・・・何やっているんだあいつ」

 

洗脳されてテロリストにされているんじゃないのか。

そう思っていたアザゼルの予想を斜め下な事実を知らされたのだった。

 

「お前は何をしにここにいる」

 

「敵を倒すため」

 

得物を構える呂綺。結局はこうなるんだなと悟って一行め臨戦態勢になる。

 

「そこまで悪いヤツとは思えないが、俺たちに協力する気はあるか?

お前の望むままの物を与えてやるぞ?」

 

「・・・・・いらない。恋は美味しいご飯を作ってくれる兵藤一誠がいてくれればそれでいい」

 

とある人物の名が挙がったことでリアスたちから発する何とも形容し難い、

言い難いものを不思議そうに呂綺は感じ取った。

 

「その兵藤一誠は今どこにいるのかしら・・・・・」

 

「教えちゃダメと言われているから教えない」

 

「そう・・・・・ならいいです」

 

ルーラーが禁手化(バランス・ブレイク)となって剣の炎を滾らせる。

 

「力尽くでも聞くだけです」

 

「無理、倒せない。負けない」

 

「・・・・・大した度胸ですね。たった一人で私たちの前にいるというのに緊張すらしないのですか」

 

 

「―――当然だ。彼女は英雄の魂を受け継いでいる者の一人だからね」

 

 

女の声がどこからともなく聞こえた。その声は呂綺の背後からだった。全員が注意、警戒しその場所へ視線を送っていると向こうから、複数の気配が現れる。薄い霧の中から人影が幾つも近づいてきて、アザゼルたちの前に姿を現す。

 

「はじめまして、アザゼル総督、そして兵藤一誠と関わりある者たち」

 

あいさつをくれたのは学生服を着た背中まで伸びた黒髪の女性だった、学生服の上から漢服らしきものを羽織っていた。手には槍を持っている。その槍を見てリアスたち悪魔、ルーラーたち教会がそれぞれ違った反応を示す。

女性の周囲には似たような学生服を着たのが複数人いる。若い男女ばかりだ。その中に―――一誠の姿は見当たらない。アザゼルが一歩前に出て訊く。

 

「おまえが噂の英雄派を仕切っている女か」

 

アザゼルの問いに中心の女性が肩に槍の柄をトントンとしながら答える。

 

「曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫―――一応ね」

 

何の因果か。中国で曹操の子孫がテロリストとしてアザゼルたちの前に姿を現した。

 

「先生、あいつは・・・・・?」

 

視線を曹操から外さずに皆に向けてアザゼルは発した。

 

「全員、あの女の持つ槍には絶対に気をつけろ。最強の神滅具(ロンギヌス)黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』だ。神をも貫く絶対の神器セイクリッド・ギアとされている。神滅具(ロンギヌス)の代名詞となった原物。俺も見るのは

久し振りだが・・・・・よりにもよって現在の使い手がテロリストとはな」

 

『―――ッ!?』

 

アザゼルの言葉にリアスたちが酷く狼狽した。女の状態よリもあの槍に驚きの視線を向けていた」

 

「あれが天界のセラフ方々が恐れている聖槍・・・・・っ!」

 

イリナが口元を震わせながらそう口にする。ゼノヴィアも低い声音で続ける。

 

「私も幼いことから教え込まれたよ。イエスを貫いた槍。イエスの血で濡れた槍。―――神を貫ける絶対の槍っ!」

 

フェンリルの神を噛み殺す牙に似ている特性だった。

 

「あの聖槍の使い手がテロリストなんて・・・・・」

 

「悪用されている。聖槍が・・・・・」

 

「ああ・・・・・危険だな」

 

ショックを隠しきれない教会組。

 

「おや・・・・・」

 

曹操が一人のメイドに注目した。―――リーラ・シャルンホルストだ。

 

「これは驚きだ。リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの手によって亡き者にされていたはずなのに甦っているなんてな。これもあの異世界からやってきた兵藤一誠の力かな?」

 

「一誠さまを返してください曹操さま・・・・・」

 

自分のことより大切な男を思うリーラに一息。

 

「昔、私もあなたに世話をして貰ったこともある。恩を仇で返すのはいささか心苦しい、が―――私は彼と約束したことがあってね。それは無理だ」

 

約束・・・・・?それは一体何をとアザゼルたちは怪訝な面持ちでいると、笑みを浮かべ曹操は朗らかに述べた。

 

「―――古の英雄や勇者のような凄い人間になる―――。まだまだ純粋の子供だった頃の私の願いを彼は、一誠は―――目を輝かせて応援してくれた。羨ましがってもくれた。自分は人間じゃないから人間でしかできない事を私がするんだと。だから―――自分の代わりにその願いを果たしてくれと、彼は私にそう言ってくれた」

 

「・・・・・だから、今のあなたがいると」

 

「そういうことですよ。ですので、私は彼の代わりに果たそうとしている。英雄の子孫として過去の英雄のような偉業を果たす。人間の敵である敵を倒して蒼天を目指す」

 

聖槍の切っ先を天に向かって掲げた。

 

「今日は堕天使の総督たちの前に現れたのは挨拶をしに来たようなものだ」

 

「一つ聞く、お前たちが誘拐した学園の生徒たちはどうした」

 

「一誠をどうした―――の間違いでは?」

 

挑発的な笑みで指摘したところでアザゼルから無言の催促をされた。

 

「偽物の英雄には実験台になってもらっていますよ。死んではいない。これからも私たちのために利用する予定なので」

 

「義経たちは偽物ではないわっ!」

 

上空から第三者の否定の声が聞こえた。上に視線を向けるとヘリコプターから飛び降りてきた九鬼揚羽が降臨を果たす。

 

「いえ、彼女らは偽物だ。クローンで顕現した紛い物だ。

何故、英雄のDNA でクローンを産んだ。時を、時空を越えて現在の英雄の子孫や末裔、

魂を受け継いだ者たちに冒涜、侮辱を与える行為だ」

 

「・・・・・」

 

「彼女たちだけでない。星の図書館の手によって現世に多くの英雄のクローンがさらに

顕現されようとしていた。九鬼揚羽。クローンはクローンでしかない。

彼女らは英雄のコピーだ。それに生まれた瞬間、自分の周囲にいるのは腹を痛めた

母親、遺伝子を分けた父親、どちらでもない全くの関係ない研究者たちと責任者だ」

 

「・・・・・」

 

「お前たち九鬼家は英雄を、軽々しく命を弄んでいる最低な人間だ。だからこそ、

あのような形で警告した」

 

揚羽の家の破壊行動。それはこれ以上、英雄のコピーを生産するなという。

英雄派は義経たちの存在を許せないでいる。

 

「―――レオナルド、一誠との思考錯誤で完成したアンチモンスターを頼む」

 

小さな男の子、レオナルドに頼む曹操の意志に従った。―――途端、レオナルドの足元に不気味な影が現れて広がっていく。影はさらに広がりその影が盛り上がり、形を成していく。腕が、足が、頭が形成されていき、目玉が生まれ、口が大きく裂けた―――優に百を超えるモンスターたちが。

 

「その子供が―――『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』の所有者だったか」

 

アザゼルがボソリと呟くと曹操がアザゼルの言葉に笑んだ。

 

「ご名答。そう、その子が持つ神器(セイクリッド・ギア)は『神滅具(ロンギヌス)』の一つ。私が持つ『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』とは別の意味で危険視されし最悪の神器(セイクリッド・ギア)だ」

 

神滅具(ロンギヌス)―――。まだ小さい男の子が神を屠ることができる可能性を秘めている神器(セイクリッド・ギア)の中でも上位種の一つを有している事実に一般人とも言える直江大和たちが目を丸くする。

 

が―――。モンスターたちの足元にまで伸びる氷の道に触れた途端にと氷化となった。

 

「どれだけモンスターを作っても私の氷で直ぐに凍らせてやる」

 

「ほう・・・・・氷系統の神器(セイクリッド・ギア)だったね。使い手次第では神滅具(ロンギヌス)に数えられてもおかしくないほど強力な力だ」

 

エスデスの仕業である事を曹操は余裕の笑みを浮かべる。

 

「だが、レオナルドのアンチモンスターは氷に耐性がある」

 

氷漬けになったモンスターたちが激しく震え、自らの力で復活した。

 

「一誠の修行の経験を利用してレオナルドにも過酷な場所でアンチモンスターを作らせてきた。極寒の雪国の中で耐えてモンスターを作り続けた彼の努力の賜物だ。マイナス数十度の水の中でも魚型のモンスターとかも作って氷の態勢を身に付けた」

 

「子供になんて事をしているんだお前たちは・・・・・」

 

呆れ返るアザゼルに曹操は不思議そうに首を捻った。

 

「そうかい?私としては一誠の方が凄く過酷な修行だったと思うけれど?砂漠の中で三日三晩飲み物も食べ物も無しで歩き続けさせたり、極寒の地に住むドラゴンや化け物と戦わせる彼の両親に感嘆の一言だよ」

 

『・・・・・』

 

修行の一端を聞かされ、ここにはいない一誠に向けられる思いが憐れみも含まれていた。

 

「あいつら、自分の息子に何をさせているんだよ・・・・・」

 

「スパルタな修業じゃないか?まぁ、結果的に彼は強くなったからいいと思うが」

 

曹操とアザゼルの会話のやり取りに約二人の悪魔が顎に手をやって考える仕草をしだした。

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

「「私たちもそのぐらいの修業を、眷属の向上になる修業を―――」」

 

「「さぁ部長(会長)っ!目の前にいるから敵を早く捕まえましょう!さあさあさあッ!」」

 

二人の眷属悪魔が必死に意識や話を反らして開戦を臨んだ。それが開戦の言葉となった―――。


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