HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード53

対テロ組織混成チームが結成した。その事実は世界にまで伝わって早数日が経過した。

その間、一誠と交流を持っている強者たちは自分を売り込んでテロ組織チームに参加するなど小規模な組織と成長をする。しかし、まだ学生の身分であるリアスたちは事件の発覚前かその後にしか動けない。それまでは変わらぬ学生生活を送る事になるのは当然。

 

「何度見ても、この組織のメンバーはまるでこの為に用意されたもんだと思ってしまうな」

 

職員室でアザゼルが持つ紙に書かれた対テロ組織混成チームのメンバーを見て漏らした。

 

 

所属メンバー

 

サイラオーグ・バアル眷属 冥界

 

リアス・グレモリー眷属 冥界

 

ソーナシトリー・眷属 冥界

 

シーグヴァイラ・アガレス眷族 冥界

 

教会(リーズヴァイフェ・ストリンドヴァリ、レティシア・J・D・ルーラー、

   紺野木綿季、紫藤イリナ、ゼノヴィア)天界

 

式森和樹 人間(魔法使い 式森家)

 

神城龍牙 人間

 

カリン・ル・ブラドン・ド・ラ・マイヤール(魔法使い)

 

葉桜清楚 人間

 

兵藤家 (兵藤悠璃、兵藤楼羅)

 

アカメ 人間

 

クロメ 人間

 

金剛姉妹 (金剛、比叡、榛名、霧島)

 

川神学園(川神百代、エスデス、魔人シオリ)

 

織斑恋姫 悪魔

 

兵藤一誠ファミリー 人間、悪魔、吸血鬼、妖怪、蜘蛛、エルフ、ドワーフ、

          ヴァルキリー、神(神滅具(ロンギヌス)幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』)

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン) オーフィス 

 

三日月の暗黒龍(クレッセント・サークル・ドラゴン) クロウ・クルワッハ 邪龍

 

黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン) ヴリトラ 五大龍王

 

 

総勢三十人は超えている。その上、誰一人として普通じゃない。オリンピックでも

目指せるんじゃないかって思うほどの一誠奪還メンバーが集ったのだ。

 

「さらにヴァーリたちも加わるとなれば・・・・・もう、英雄派はヤバいんじゃないか?」

 

一誠というイレギュラーな存在がいようとも、この壮絶なメンバーの前では流石にとアザゼルの感想だった。

しかし、足りない部分があった。

 

「リーダーを務めてくれる奴は誠か一香にして欲しかったが・・・・・」

 

二人は各神話体系との繋がりを持っている故に他の神々と交渉役。なので未だに決まっていないリーダーやサブリーダーなどの重要な席は空席のまま。これに懸念しているアザゼルは唸るように漏らし眉根を寄せて悩んでいた。

 

「その上、どれだけ凄い奴らが集まったところで一人一人が弱いんじゃ話にならん」

 

となれば、『師』が必要になる。一誠が今まで世話になった超常の相手の誰かの中で―――。

 

「―――アザゼル先生、そろそろ時間ですよ。早く行きましょう」

 

「おお、もうそんな時間だったか」

 

催促の声が掛かり席から立ち上がり、誰もいなくなる職員室を後にするアザゼル。

川神学園が崩壊して幾日が過ぎたある日。川神学園に在籍していた全校生徒たちに突然の通達が送られた。

その内容は目を張り驚くものだった。

 

―――国立バーベナ駒王学園に転属―――

 

悪魔、天使、堕天使、人間が共存し、交流する光陽町にある学園で通う通達だった。

駒王学園の制服や教科書までも一緒に送られているので本当に違う学園で残りの学校生活を過ごすのだと思い知らされた。戸惑い、困惑、動揺はするものの、学園側の決定事項であることなので生徒たちは着慣れない違う制服を身に包み、鞄を持って駒王学園へと向かった。

 

「アタシたちが駒王学園に通うことになるなんてね」

 

「天使の可愛い子がいたら堕ち無い程度に可愛がってやるぞーお姉さんは」

 

「モモ先輩。友達ができたら俺様にも紹介してくれっ!」

 

「異種族と一緒に勉強かぁ・・・・・緊張するよ」

 

「にしても、この制服は可愛いな」

 

「川神学園とは違う制服を着るのって新鮮だね」

 

「しかも俺たちが通う学園は寄付金を出しても自由な服装で登校なんてできないからな!」

 

「ああ、不死川あたりのお金持ちは駒王学園の制服で登校しないといけなくなるな」

 

仲の良いグループの姿も登校する。

 

「一誠が通っていた学校か・・・・・」

 

百代はこれから行く学園に対して呟く。一誠がいない学園。通っていた学園とは違い、

人間だけじゃなく、悪魔や天使、堕天使もいて普通の人間とは違う戦い方をする種族に期待を抱く。

 

「あっ、ここね!」

 

吸い込まれていくように駒王学園の生徒について行く形で足を運べば、悪魔と天使と堕天使を象った巨大な門を発見した。潜れば林の道に進んで抜け出ると噴水がある広大な敷地に辿り着く。真っ直ぐ進めば玄関が生徒たちを出迎える他、左右に進むと運動用のスペースに出れるのだ。

 

「おお、広いな」

 

「東京ドーム十個分の広さほどだから当然だけど」

 

「ああ、実際に来ると広い」

 

「本当に凄いな」

 

駒王学園の広大さを感嘆、称賛しこれから通うこの学校に胸を弾ませて玄関に向かう。そのまま駒王学園の教師に体育館はへ案内され全校集会が始まった。ステージのところに視線を、目を、顔を向ければ三人の中年男性が仁王立ちして川神学園の生徒たちに真っ直ぐ声を飛ばした。

 

「やぁ、川神学園の生徒諸君。私はこの国立バーベナ駒王学園の理事長の一人で冥界の魔王をやっている魔王フォーベシイだよ」

 

「同じく理事長で天界じゃ神王をやっているユーストマだ。よろしく」

 

「私は八重垣正臣。魔王フォーベシィと神王ユーストマと同じ駒王学園の理事長を勤めている者だ。きみたち川神学園の生徒を歓迎しよう。ようこそ国立バーベナ駒王学園へ」

 

三人の理事長が朗らかに出迎えた。

 

「キミたちの学園が復興するまでの間はこの学園で通って貰う事を川神鉄心殿と話し合いの末に決まった。前の学園と勝手は違うところもあるだろうが、柔軟な姿勢で受け入れ残りの学校生活をここで送って欲しい」

 

「それとお前たちのクラスは川神学園の生徒用にこの学園とは別にもう一つクラスを増築しておいたぜ」

 

「以前のクラスとほぼ同じ作りにしてあるから対して緊張もしないだろう」

 

何時の間にそんな事をしていたのだろうかと疑問と驚きが顔に浮かぶ。それから川神学園の生徒に色々と説明をし、最後に注意事項など伝えると自分たちのクラスへと戻した。

 

「二つの学園分の生徒の人数だと結構な数になるな」

 

「長年切磋琢磨した学園だから放っておくこともできないししょうがないよ」

 

「それに川神学園の生徒の中には戦力になる者がいる」

 

正臣の言葉の意図は神器(セイクリッド・ギア)の所有者がいるという含まれていた。

百代やエスデス、シオリなど逸脱した力の持ち主も。

 

「もう、この学園自体が対テロ組織になっているんじゃねーか?」

 

「失礼な言葉だけど、人間の政府より大分力があるよこの学園は」

 

「そんな戦力と同等の戦力を兵藤一誠くんが有している可能性があるから彼は末恐ろしい」

 

「「私(俺)の自慢の義理の息子だから当然!」」

 

胸を張って威張る二人の王に何とも言えない気分となる正臣。その頃、体育館を後にした三年の百代たちは三階の廊下に歩いて駒王学園の三学年の教室とは反対側にある自分たち専用の教室を見詰める。

 

「凄いな、ビリビリとこの肌に突き刺さるぐらいの強い気配を感じるぞ」

 

「覚えのあるものだな。確か、サイラオーグとかいう悪魔だったはず」

 

「ああ、彼ね。それにこの階でも悪魔、天使、堕天使がいるみたい。流石は異種族共存と交流を象徴する学園だわ」

 

それじゃ、とシオリは自分のクラスへと足を運ぶ。エスデスも同じく足を運び、百代はFクラスに入った。

 

「いやー、まさか私たちがこの学園で通うことになるなんてびっくりしたよん」

 

「弓道部はあるといいで候・・・・・」

 

背中まで伸びた黒髪の少女と眼鏡を掛け、古臭い語尾を発するクールビューティーの少女の話を聞き、

百代は相槌を打つ。一方、二学年の方では

 

「うおおおおおおおおお・・・・・!?なんじゃこの教室、女子しかいないじゃねぇーか!?」

 

岳人が女子しかいない教室、駒王学園の扉が開けっぱなしの教室の中を覗いていた。

絶えまなくフラッシュを発し、女子たちの姿を撮る小柄な男子も鼻息を荒くしている。

 

「駒王学園の女子は全員レベルが高いって話を聞いたことあったけどマジだな!」

 

「ああ、この教室に入れば否が応でもハーレム確実だぜ!」

 

しかし、ハーレムなど儚いどころか絶望だった。自分たちの教室を覗きこんでいる見知らぬ男子に気付き、

敵意と警戒が籠った視線と顔に出して―――。

 

『なに見てんのよこの変態!』

 

『誰が覗きこんで良いと言ったのよ!』

 

『そこのチビ!そのカメラを寄こせ!さっきから私たちを撮ってんじゃないわよ!』

 

美しい花には棘があると言うが、駒王学園の女子は棘どころか槍や剣並みに鋭かった。

川神学園の生徒たちは知らされていた女子しかいない二年D~Fの教室に一切立ちよっては

いけない事を。だが、女好きの男子たちは注意されたにも拘らず無視した結果、

女子たちは男に対して嫌悪、敵意や警戒、殺意までも抱いて襲いかかり始める。

 

「ひえっ!?」

 

「ちょっ!なんでそこまで怒るんだ!?」

 

駒王学園の女子から感じるプレッシャーに戦慄して素早く自分たちの教室に逃げ込んだ。

逃げられ、一人の女子がビシャンッ!と物に八つ当たりする感じに勢いよく扉を閉じた。

 

『まったく、他の学園の男ども皆変態だったなんて信じられない!』

 

『やっぱり男なんて信用できないわ!』

 

『男なんてみんな死んでしまえ!まだ、兵藤一誠の方が―――』

 

と、教室から聞こえてくる怨嗟の声が。命の危険性を感じ、命からがら逃げてきた二人の男子に呆れる友人の女子学生。

 

「あんたら、この学校の女子の教室に近づいちゃダメだって理事長先生に言われたじゃない」

 

「そうですよ二人とも!」

 

「頭ン中は女のことしか考えていない獣なんだからしょうがなくね?」

 

岳人と男子学生が反論。

 

「ちょっと見ただけだ!」

 

「俺はこの学園を来た記念に写真を撮っただけだ!」

 

「サルの方はただ、女子を撮りたいだけでしょーが」

 

と、女子学生が呆れているとこの教室に見知らぬ女子が「失礼する」と入ってきた。

それから視線を周囲に見渡し、ピンポイントにカメラを持つ男子を見つければ近寄るのだった。

 

「お前か」

 

「へ?」

 

「お前に写真を撮られた女が『私できっと変なことに利用するかもしれないからお願い。

回収か壊してきて!』とせがまれてな」

 

あっさりと男子学生は黒と金が入り乱れた長髪の女子にカメラを奪われ、

両手で強度など感じさせずバキバキッ!と圧縮、捏ねまわし、最後は丸い鉄屑と化した

カメラを渡された。

 

「この学園には不要な物を持ってくると風紀員に没収されるので気をつけろよ?」

 

それだけ言い残して女子学生は教室を後にした。そして、思い出したかのように言葉を発する川神学園の生徒。

 

「あ、ああ・・・・・っ!小遣いを数カ月分、この日の為に前借りして買った俺の

カメラが・・・・・っ!?」

 

「サルの自業自得よ。だけど、どんな怪力の持ち主なのよ・・・・・」

 

「不要な物って俺さまのプロテインも没収されるのかよ!」

 

「まさか、僕の食料も・・・・・?」

 

不要な物を持ってきている学生たちは戦慄した。駒王学園は川神学園よりフリーダムにはできないと。

 

 

「OH・・・・・イッセー・・・・・」

 

机に突っ伏し、寂しげに漏らす金剛の隣に無言で読書をするパチュリー。

姉を心配する三人の妹たち。

 

「ううう・・・・・イッセーがいないと寂しいデース」

 

「しょうがないじゃない。彼、テロリストになってしまったのだから」

 

「NO!イッセーはきっと洗脳されてテロリストになってしまったのデースヨ、パチュリー!」

 

「それはそれで厄介でしょう。彼、結構強いのはあなたが良く知っているでしょ?」

 

本に目を落としたままのパチュリーにコクリと頷きながらYESと答える金剛。

一誠がいなくなってから一カ月が経とうとしている。男子がいなくなって清々したと女子たちはそんな反応と態度はしなかった。少なからず、言葉にしないが一誠を受け入れていた様子にそれをパチュリーは感じ取っていた。

金剛の言う通り、洗脳されているから―――と思っているに違いない。

 

「パチュリーは一緒に協力しないのデスカ?」

 

「私は魔法を使えないのよ?そんな役に立たない人間がいてもしょうがないでしょう」

 

「でも―――」

 

「でも?」

 

「噂だけどパチュリーはアザゼル先生と密会しているって聞いたのデスガ?」

 

それはどうして?金剛の疑問の指摘に一瞬だけパチュリーの目に動揺の色が浮かんだ。

 

「それは気のせいよ」

 

「そうデスカー」

 

「ええ、気のせいよ」

 

話はコレでお終いと本のページを捲るパチュリーから醸しだした。だが、これで終わらせようとするパチュリーに金剛がそうは問屋が卸させなかった。真正面で笑みを浮かべ言った。

 

「―――直接先生本人に訊いたら、魔力を扱えるようになりたいと言って来たと教えてもらいマシタよ?」

 

「―――」

 

口の端がヒクリと引き攣った。直ぐに反論の言葉が出ず、その沈黙は肯定である事も金剛は察し、嬉しそうに発する声を弾ませた。

 

「パチュリーも一緒にイッセーを奪還するのデース!」

 

「・・・・・」

 

秘密をバレたパチュリーは恥ずかしげに羞恥で顔を赤く染め、明るく話しかけてくる金剛に見詰められる。

―――実際、読書しているパチュリーが持っている本は自分の持病について調べる参考書の本だった。

そこまで気付かれていない事に安心すればいいのか分からないが、一誠の事心配している事実を知らされたのは明らかにされた。

 

―――○●○―――

 

「―――曹操、川神学園と駒王学園が一つになった」

 

「ん、戦力が一つになった組織と考えるべきか」

 

「狙いは対処しやすくするため動きやすく集めたのだろうな」

 

「そうか。レオナルドのアンチモンスターも一誠のおかげで大幅にパワーアップしたところだ」

 

「彼の神滅具(ロンギヌス)の創造とレオナルドの創造が合わさると驚異的なモンスターが創れるな」

 

「ふふっ、二つの神滅具(ロンギヌス)の創造がこんな形で組み合わすことができるなんて面白いじゃないか」

 

目の前で行われている一誠とレオナルドの思考錯誤の実験。思わず目を覆いたくなるような生物も創られていて、

曹操は愉快そうに見守り続ける。

 

「これならリゼヴィムも倒せるのではないか?」

 

「多分ね。だが、それはまだ早い。一誠はまだまだ私の傍にいてもらわないと困る」

 

顔に笑みが消え、真剣な顔と変わってゲオルクに言う。

ゲオルクとしても今ここで一誠が敵になっても困るのは同意見であった。

今では英雄派にとって兵藤一誠の存在は必要不可欠となっている。洗脳されているが一誠の能力は凄まじい。

 

―――主に家庭的な意味で。

 

「知ってるか曹操」

 

「ん?」

 

「兵藤一誠を狙っている同士がいることを」

 

曹操の反応はゲオルクが予想していた通りだった。ゲオルクに反射的な速度で振り返り、信じられないと目を丸くしていたのを確認すれば面白可笑しそうに口角を上げてしまう自分がいる事を自覚しつつ問われた言葉に答えた。

 

「・・・・・本当か?」

 

「実際に訊いたわけではないが、そういう同士が少なからずいることを確認している」

 

「むぅ・・・・・」

 

困った顔で唸る曹操。仲間同士の恋愛は気にしていない曹操だが、狙っている異性が狙われていることを改めて知って複雑な心境で信頼している仲間からの言葉を耳に傾ける。

 

「その中にはヘラクレスやジークもいるぞ?」

 

ピシッッッ!!!!!

 

あっ、変な音が聞こえた。ゲオルクは他人事ごとのように思って付け加えた。

 

「まぁ、それ冗談―――って、曹操?」

 

何時の間にかいなくなっていた首領。どこに行ったのだろうかと考えるがアッサリと止めた。

 

『・・・・・ヘラクレス、ジーク。ちょっと来てくれないか?』

 

『あ?どうしたそんな怖い顔をしてよ』

 

『何かあったのかい?』

 

『ああ、ゲオルクが面白い事を聞かせてくれてね。ちょっと私と稽古試合をしようじゃないか』

 

『別に構わないけれど―――どうして禁手化(バランス・ブレイク)になるんだ?』

 

『ていうか、なに殺気立っているんだお前・・・・・』

 

『ふふっ。ふふふっ・・・・・フフフフフフッ!!!!!』

 

『『そ、曹操・・・・・っ!?』

 

二人の同士が阿修羅化した最強の神滅具(ロンギヌス)の所有者に追いかけられていると目撃者が後を絶たず口々に恐怖の色を顔に浮かべてゲオルクに報告したのは別の話である。

 

「「ゲオルク、お前かぁぁああああああああああっ!」」

 

「ああ、すま―――(バキッ!)」

 

後に、元凶にも天罰が下ったのだった。テロリスト『英雄派』は今日も賑やかに

一日を過ごす―――。

 

 

魔王リゼヴィムに国を滅ぼされた少女、リースは自分のからだの変化を確認している。

目の前にいる一誠が聖杯を使ってリースを別の種族に転生させたばかりなのだ。

二人以外に幹部クラスの面々も突っ立って新しく入ってきた一誠が勧誘した少女を様子見する。

 

「ん、どう?」

 

「特に変わった感じがないけれど・・・・・」

 

「これから変わった自分を感じ、実感すればいい」

 

一誠にそう言われ、素直に頷くリース。

 

「しかし驚くな。まさか『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』に対象を別の種族に転生させる能力があるとは」

 

ゲオルクの言葉に一誠はこう答える。

 

「これコピーした奴だからオリジナルじゃない」

 

「オリジナルじゃない?じゃあ、オリジナルの聖杯は誰が所有している?」

 

「・・・・・」

 

ジークの質問を眉間に皺を寄せて答えを言い辛そうにしていた一誠が突然片手で頭を抑えて頭痛に耐えるような仕草をする。

 

「ジーク、兵藤一誠の家族を彷彿させる連想を与える言葉は言うな」

 

記憶を封印し、洗脳している一誠。敢えて記憶を消去じゃなく封印という形で

手元に置いている曹操。

封印した記憶に切っ掛けとなる言動や光景を与えれば施した封印に影響が及ぶ。

リースはどうして一誠がテロリストになっているのかは知らない。

ゲオルクが一誠の頭に魔術的な施しを与えると頭痛が収まったのか表情が和らいだ。

 

「彼の家族って?」

 

「すまない。これは幹部の者しか教えられないんだ」

 

新米のキミには教えられない、と暗に言われたリースに小さな謎が抱く。

 

「一誠、その聖杯で対象を転生だけじゃなく強化もできるかな?」

 

「・・・・・やったことがないからわからない。試して良い?」

 

「ああ、捕虜の三人にでも試してくれ」

 

「ん、分かった」

 

曹操との会話のやり取りを終える一誠は即断即決と捕虜の許へと向かった。

ついて行くように呂綺やセカンド・オーフィス、モルドレッドまでも一緒に続く。

 

「曹操、強化とは言ってもどんな強化をしてもらうんだ?」

 

「できれば、魔力無効化の強化が欲しいかな?」

 

「魔法使いの天敵な能力だな。身体能力も視野に入れているのだろう?」

 

「そうだね。まぁ、できればの話だ」と述べる曹操。

 

「さて皆」

 

曹操は朗らかに面々の顔を見渡してから言った。―――そろそろ私たちは動こうと。

 

「ようやくかっ!」

 

ヘラクレスは嬉しそうに拳を自分の手の平に打ち付ける。ジークも不敵の笑みを浮かべ、ゲオルクは眼鏡の位置の調整と動かし、レオナルドは無表情で頷く。

 

「相手はリアス・グレモリーたちか?」

 

「いや、それはメインディッシュといこう。まずは私たちと対抗を望んでいる日本の政府、対テロ組織だ」

 

「主に兵藤家と式森家がいる組織か。相手にとって不足ないだろう」

 

「兵藤家は一誠にとっても因縁がある。丁度良い相手じゃないか」

 

リースは何も言わない。悪に身を堕としてでも復讐したい相手がいる。望んで一誠と共に来た場所はテロリストの潜伏地。テロリストがする行いは悪逆非道。

本来ならば身を滅ぼしてでも止めるべきなのだろうだが、

そんなことすれば復讐はできない。それに兵藤一誠は何か事情があるようだ。

それを調べる必要がある。その為には―――。

 

 

「・・・・・曹操」

 

「なんだ?」

 

「彼女、リースは危険だと思うよ」

 

「なんでだい?」

 

「今は問題は無いだろうが一応、彼女については俺に任せて欲しい」

 

「わかった。お前がそこまで言うなら任せる」

 

 

そして―――テロリストの襲撃は日本政府に定まった。

 

 

「さぁ、始めようか。英雄たちの凱旋を」

 

『おうっ!』


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