HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

92 / 109
エピソード51

曹操たち英雄派の食生活は一変した。その根本的な理由は一人の少年による手料理だった。

ガツガツと頬張り、幸せそうに口の中に料理を掻き込む少年少女たち。

少なくない数の大人数の食事の食費はどこにあるのかも一人の少年によって改善され、

曹操やゲオルクといった幹部以外の構成員はあっさりと少年を受け入れた。

 

「おかわり」

 

「・・・・・」

 

呂綺やセカンド・オーフィスがお代りを求めにほかほかの炊き立てのご飯に向かう。

 

「曹操・・・・・」

 

「なんだ?」

 

「彼、給仕係でいいんじゃないか?」

 

「うん、私もそう思うようになってきたところだ」

 

バイキングのように様々なでき立ての料理がテーブルに置かれている。

全て一人の少年が作り上げたのだ。肉料理や魚料理、苦みを取り除いたサラダ。

しかも甘い物好きな男女にとっては嬉しいデザートまでより取り見取りに揃っている。

 

「でもね」

 

「うん?」

 

「・・・・・女としてのプライドをこうも容易く壊されると」

 

「ああ、それ以上言わなくて良い。だから泣きそうな顔をするな」

 

本当に攫って来てから自分たちの首領は変わってきているとゲオルクは複雑な心情だが、

これはこれで面白いと自己完結した。

 

「彼は良いお嫁さんになるだろう」

 

「―――間違いなく婿だからな?」

 

天然ボケに突っ込んでしまうゲオルク。

 

「やらないからな」

 

「いらないからな」

 

つーか、狙っているのか俺たちの首領は。呆れつつコンソメスープを飲む。うむ、美味い。

そして一人で豊富な料理を作った少年は―――曹操の隣で静かに食べているのだった。

 

 

 

「ぐおぉっ!?」

 

巨躯の男が突き出された少年=一誠の拳によって吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた。

 

「つ、つぇ・・・・・!」

 

「ヘラクレスの神器(セイクリッド・ギア)を真正面から食らっても平然と攻撃を繰り返すなんてね」

 

吹っ飛ばされた大男、ヘラクレスに一誠の戦いを見ていた幹部クラスのテロリストたち。

興味深そうにジークフリートは顎に手をやって簡単を漏らす。

場所はレーティングゲームを応用した異空間。新たに参加した者に対する腕試しを

目的とする行いをしていた。現在、幹部クラスのヘラクレスが一撃で吹っ飛ばされた。

よって一誠は必然的に幹部クラスの実力者だと認められたところだ。

 

「まぁ、当然だろうね」

 

ジークフリートは当たり前のように受け入れ、今度は自分もと帯剣していた剣を鞘から抜き放つ。

 

「兵藤一誠、今度は僕も良いかな?」

 

「・・・・・」

 

戦意のある相手に一誠も応じ、亜空間からエクスカリバーを取り出して構える。

 

「いいね・・・・・第二とはいえ折れる前のエクスカリバーと戦えるなんて面白いじゃないか」

 

深い笑みを浮かべ、ジークフリートは地を力強く蹴った。今まで培ってきた剣の腕を目の前のイレギュラーにぶつけることでさらなる高みを目指せると思えば楽しくなる。

 

「―――神器(セイクリッド・ギア)も使っているジークに対して自前の剣の腕でやってのける彼は凄まじいな」

 

仕舞にはジークフリートの剣は殆ど聖剣と対する魔剣。その魔剣をフルに振るっている仲間を対等に渡り合っている。

 

「もう、曹操のレベルと同じじゃないか?」

 

「私の右腕か。ふふっ、それはとても嬉しい事だ。今度はキミが相手をしてみるかい?

式森の血を流しているから良い魔法勝負ができると思うが?」

 

と言うとゲオルクが「・・・・・また今度にしよう」と小さく笑った。

 

「川神学園にはいつ襲撃をする予定でいる?」

 

「そうだな。三日後にしよう」

 

「その理由は?」

 

「うん、皆の回復を待つ為だ」

 

―――一誠の実力を知ろうと数十人(幹部クラスも含め)の構成員が倒れて地獄絵図状態である。

明日、明後日では支障が出るだろうからそれを見越しての三日後だと告げた曹操に「分かった」

と告げるゲオルク。

 

「あ、ジークが倒された」

 

「やるな、兵藤一誠。・・・・・何故かこっちを見てくるのだが?」

 

「分かるぞ、お前と魔法勝負をしたいとそんな視線をヒシヒシと感じる」

 

「ああ・・・・・あの無表情なのに目をキラキラと輝かせてくるのはなぜなんだ」

 

「これでは挑まなければいかなくなるではないか」と嘆息して一誠の前へと歩んでいく

ゲオルクを見て面白可笑しそうに見守る曹操。ゲオルクと擦れ違うように

ジークフリートが近づいてきた。

 

「どうだった?一誠の剣の腕は」

 

「ストラーダ猊下やクリスタルディ猊下に鍛えられているだけあって強い強い。魔剣は始めてだろうに動物的本能で察知して避けられるんだから大変だよ」

 

苦笑を浮かべるものの、どこか楽しげに語っているジークフリートだった。

 

「何も問題が起きない限り兵藤一誠が味方でいてくれるととても今後が楽しくなりそうだ」

 

「正義の味方が悪側になった時の瞬間やその時の心境はどうだったジーク?」

 

「他人事のように思って受け入れていたかな?ただ、やり方や進む道が違うだけで人は変わるんだと実感はしていたね。まだ教会の戦士としていたら、刺激的な生活や人生を送っていなかっただろう」

 

「そうか。ならば、一誠もお前と同じ気持ちでいるかな?」

 

数多の魔方陣を展開しては魔力の弾幕戦をやっていた。一つの魔方陣で複数の魔方陣を操作してゲームのように

相手の魔方陣を全て撃破するまで魔力弾を放っているのだった。

 

「洗脳しているのに意志はあるのかい?」

 

「記憶を弄っただけで一誠の意志や気持ちを慎重している。だからこそ今の彼が英雄派と成っているわけだ」

 

「にしても口数が少ないようだけれど?」

 

「復讐心と憎しみがそうさせている」

 

そう断言した曹操。

 

―――○●○―――

 

襲撃当日。その日は川神学園の全校集会が第一グラウンドで行われていた。

全校生徒は何時もの学校生活を送っている。誰一人、今日、テロ攻撃に襲われるとは露にも思っていない。

 

「国立バーベナ駒王学園がテロリストによる攻撃を受け、負傷者以前に死者は誰一人出すことなく撃退した。

建物の損害はともかく、あの学園の行動力と団結力はわしらも見習うべきだと考えておる」

 

壇上に上がっている川神鉄心の言葉に紳士に耳を傾けている者がいればそうでもない者もいる。

テロリスト相手にそんなことできるのは悪魔や堕天使、天使、神器(セイクリッド・ギア)の所有者もいるから可能にしたのだと思いや気持ちが多かった。

 

「武装したテロリストだったら私たちでも撃退できるね」

 

「お姉さまがいれば千人力よっ」

 

「私も私の正義で悪を根絶やしにするぞ」

 

武術に心得がある者や気の強い者、戦場を駆け抜けた者たちは来るなら来いとばかり意気揚々と醸し出していた。

しかし、相手がただのテロリスト集団であれば可能だっただろう・・・・・。

駒王学園が相手をしていたテロリストは―――。前触れもなく、現れては襲撃を始める。

 

そう―――。

 

目の前で轟音と共に爆風や爆熱が発生して崩壊する川神学園もテロリストの襲撃と出現の合図。

学園の敷地内にある建物が爆発で木端微塵と成り、避難する場所を制限されてしまう。

自分たちの学び舎が突然の崩壊。全員が悲鳴と驚愕、呆然としてしまうのは必然的だろう。

 

「まさか・・・・・」

 

ある予想に考えついた矢先、川神鉄心や百代など気を探知できる者だけが探知できた。

大量の煙から人影が浮かび、その影の正体が信じられない者である事を全校生徒の前に現れるまでは誰も思いもしなかった。煙から赤より鮮やかな真紅の髪を歩くことで揺れ、猛禽類のような垂直のスリット状の金色の双眸、瞳は感情の色を浮かべていないまま真っ直ぐ鉄心たちを見据える。その威風堂々とした態度と立ち振る舞いからは何事にも臆しないと雰囲気で醸し出す。

 

「お主は・・・・・!?」

 

黒一色の服の上から腰当、胸当、肩当など中国武将が身に包んでいたような鎧を部分的に身につけて現れる。今ではある意味有名的に成っている少年―――一誠が十メートルぐらいの距離で立ち止まれば、背後から続々と人影が現れて一誠の肩に並んだり後ろに立ち並んだりするモルドレッドたち英雄派。

 

「お主、これはどういうことだ・・・・・」

 

まるで、いや、これは完全に敵として現れている一誠に色々な感情が混ざってしまい、冷静に問いだたす。

百代やエスデス、シオリなど一誠と交流をした面々も鉄心の横や背後に移動して信じられないと顔に出す。

 

「お前、なんだそいつらは」

 

「家族」

 

「家族だと・・・・・?リーラさんたちはどうしたんだ」

 

百代の素朴な疑問に眉間に皺を寄せて「誰?」と信じられない返事をして。

 

「誰って・・・・・お前のメイドのことだろう」

 

「メイド・・・・・?」

 

理解不能とばかりに鸚鵡返しした。覚えていない―――?いや、あり得ない。

 

「一誠!どうして学校を壊したのよ!?」

 

「そいつらは何なのだ!返答次第では許さんぞ!」

 

リーラはずっと一誠の傍で生き続けた。一誠が忘れるわけがないリーラなのだ。しかも付き合っている者同士なのだから当然だ。けれど、今の一誠が纏う雰囲気もどこか儚げで、不気味さを感じる。いつもの一誠が纏うものではない。

 

「・・・・・さっさと終わらせよう」

 

スッと・・・・・一誠は左腕を天に向かって伸ばした時、赤い閃光が迸る。左腕に覆う金色の宝玉がある赤い籠手が光と共に装着を果たした。

 

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

『Transfer!!!!』

 

 

宝玉から音声、光が発し、モルドレッドたちに照らす。それは赤龍帝の倍加の能力だった。対象を何倍にも一時的に強くする。

 

「モルドレッド」

 

「オレかよ?」

 

たったそれだけのやり取りで分かり合えた。モルドレッドが作戦開始の号令を発してくれと一誠の気持ちを察したのだ。

 

「お前の方が似合っている」

 

「・・・・・そうか」

 

照れてこそばゆいと思いつつも、内心は嬉しく思った。腰に帯剣していた剣を鞘から抜き放って眼前に突き付ける。

 

「オレたちは英雄派という。オレたちの目的はそこにいる英雄のクローンの鹵獲だ」

 

「英雄派?何だか知らないが義経たちを誘拐する気か!」

 

絶対に許さん!クリスが青い瞳に怒りの炎を孕ませ気高く吠えた。対してモルドレッドは淡々と言う。

 

「オレたちの首領の考えではこうだ。英雄の偽物が自ら英雄を名乗っているのは遺憾である。クローンとはコピーだ。英雄の子孫や末裔、魂を受け継いだ者でもないのに自分たちを差し置いて英雄として存在している。―――と、そんな感じで首領は英雄の偽物である源義経、武蔵坊弁慶、那須与一を捕えることを決断した。英雄の存在意義を守る為、維持する為にな」

 

「ふざけるなっ!義経たちは義経たちだろうが!」

 

激昂。英雄の偽物と決めつけるモルドレッドに抗議の意を唱える者たちに

 

「オレはアーサー王伝説に出てくるモルドレッド―――。そのモルドレッドの末裔だ」

 

自分の素性を明らかにしたが百代たちは怪訝な面持となっていた。

 

「それがどうしたと言うんだ。名前は名前だろう」

 

「そうだな。だが、名前にも意味がある」

 

と、言い続けようとしたモルドレッドだが「何を冷静で熱くなっているんだ」と自分に呆れ、改めて言い直した。

 

「源義経たちの鹵獲が目的だ。大人しくオレたちと一緒に来てもらえれば楽でいいが―――」

 

ザッ!

 

モルドレッドは見た。戦意を醸し出す態度で百代たちは臨戦態勢の構えをしたことで、「やはりこうなるか」と他人事のように溜息を吐いた。

 

「一誠、魔人とその他の相手を頼めるか?」

 

「ん、分かった。そっちも頑張って」

 

一誠の姿がぶれたかと思えば、数人の一誠が分身として出現。戦いの準備はできた。残るは―――。

 

「全員、戦闘だ。―――はじめよう」

 

それが開戦の宣言と成り、モルドレッドの言葉を訊いた途端に一誠は地を蹴って百代たちに飛び掛かった。

 

「一誠・・・・・っ!」

 

「邪魔をするなら容赦しない」

 

 

 

 

「誰だいあんたたち」

 

銀髪の老婆、黒いゴスロリの出で立ちで自分を含む数人しか知らない大広間―――クローン製造室に数人の少年と少女たちがいた。

 

「部外者のあんたたちがどうやってこの場所を突き止めたのかを教えて欲しいところだね」

 

「俺たちはテロリストなのでね。俺たちの存在意義を危ぶむ事をしてくれたあなたたちの周辺は何時も調べていた。九鬼家が関わっていること全てを。必然的にこの大扇島への海底トンネルも関わっていた事も知り、どこで英雄のクローンなどと生産をしているのかも探した結果・・・・」

 

漢服の上に魔法使いみたいなローブを身に包む眼鏡を掛けている青年は「灯台もと暗しとはこのことだ」と漏らした。

 

「九鬼家全体がこの事は知らないことを考えれば上層部、幹部クラス辺りなら把握している可能性はあるか」

 

「やれやれ・・・・・最近の若い者は嘆かわしいと思っていたが、まだまだBOYやGIRLのテロリストにそこまで見抜かれ、突き止められているとは嘆かわしいね。で、ここにいたと言う事はあたしに用があったんだろう?」

 

「いいや、俺たちの目的はこれ以上俺たちの存在を危ぶむ要素を消す事。つまり―――この工場の破壊だ」

 

青年の目的に老婆を顔を顰めた。

 

「さっきからあんたたちの存在を危ぶむってのはどういうことなのか説明をして欲しいね」

 

「そうだな。では、自己紹介をしよう」

 

ドガァアアアアアアンッ!ガッシャアアアアアアンッ!

 

青年が指を鳴らすと同時にそれが合図だとばかり培養カプセルの、クローン製造工場の破壊が始まった。

 

「―――我々は英雄派。英雄の子孫や末裔、魂を受け継いでいる者たち我構成しているテロリストだ英雄のクローンなど、そんな英雄の偽物をこれ以上生産されてはこちらは困るというものだ。よって二度と生産できぬよう徹底的な破壊活動をさせてもらう」

 

「英雄派・・・・・子孫や末裔だって?やれやれ・・・・・とんでもない連中に目を付けられたようだね」

 

「あなたの存在もここで抹消させてもらう」

 

霧が発生し老婆を包みこもうとする矢先、床がいきなり開いては老婆が落ちた。

 

「食えない星の図書館だ。こんな仕掛けも事前に用意していたとはな。だが、目的は達成した。次の計画に移行しよう。―――こちらは終わった。そっちも初めてくれ」

 

通信式魔方陣を展開して仲間に告げた。

 

 

 

「・・・・・わかった」

 

スタスタと深紅の髪の少女は九鬼家極東本部に歩み寄った。世界最大の企業で財閥らしい大きな建物。片手に身の丈を超える方天戟を手中にしている。

 

「―――斬る」

 

得物を振るい五つの軌跡を残しての一閃。常識を遥かに超えたその斬撃で―――建物はゆっくりと崩れ始める。

 

「ゲオルク、終わった」

 

用は済んだと告げ、轟音を響かせながら崩壊した建物を一瞥して踵を返す少女に霧が包み込んで風が吹けば少女はいなくなった。後にテロリストの襲撃と世界中に報じられ、負傷者が大勢出たものの死者は0人と奇跡が起きた。

 

―――○●○―――

 

「アザゼル、急に呼び出してどうしたって言うのよ。しかも授業中に」

 

「話は後だ。今は急がなきゃいけないんだよ」

 

「このメンツでどこに・・・・・?」

 

オカルト研究部に集うグレモリー眷属やシトリー眷属、サイラオーグたち。

呼び出した張本人のアザゼルの顔に焦心の色がハッキリと浮かんでいる。

そんな堕天使の総督を珍しいと思う中でリアスは口を開く。

 

「冥界で何か起きたの?」

 

「冥界じゃない、川神学園だ」

 

「川神学園って・・・・・」

 

「説明は後だって言っただろう。―――よし、行くぞ」

 

堕天使の転移式魔方陣で一時駒王学園からアザゼルの行く目的地まで跳んだ。

あっという間にその目的地に辿り着き、魔方陣の光と共に姿を現したリアスたちの目に―――。

 

「これは・・・・・っ!?」

 

川神学園が姿も形も変わっていた。校舎が爆発の影響で崩壊したような瓦礫と化していた。グラウンドでは嵐が過ぎ去った爪跡が残っていて、多くの負傷者を手当てしている大勢の人が忙しなく動いていた。その中には警察や消防の人間も学校の状況を把握、分析を収集していた。

 

「アーシア、お前は回復能力で負傷者の手当てをして来い」

 

「は、はいっ」

 

最初からそうしたかったのか、アーシアは直ぐに行動をしたのだった。その間、アザゼルについていく形で

真っ直ぐ―――負傷者が収納されている簡易式のテントについた。そこにはベッドの上で仰向けに寝転がされている川神鉄心や川神百代、エスデスがいた。

 

「爺さん。来てやったぞ」

 

「・・・・・おお、来たか。体育祭以来じゃの」

 

顔だけ動かし目でアザゼルたちの姿を捉える。声も弱々しく、かなり衰弱している様子だった。

 

「気が全く感じません」

 

白音がポツリと呟く。目立って傷も無いのに弱っているのはそういうことかと理解した。

 

「爺さん、これは誰の仕業だ?」

 

「アザゼル、あなたが知っているからここに来たんじゃないの?」

 

アザゼルの言葉に疑問をぶつける。

 

「俺はハーフのガーゴイルから直接聞いただけなんだよ。川神学園がテロリストに襲撃されているってな。詳しいことは聞いていない」

 

「っ!?テロリストって・・・・・まさか、リゼヴィム?」

 

一誠とリーラに不幸のどん底を陥れた現魔王の弟。この凄惨な状況を生み出したのがリゼヴィムであれば納得する。

 

「違うわ」

 

第三者の声がアザゼルたちの真後ろからそう指摘した。テントの入り口には魔人シオリが立っていた。

目立った傷はなく無事の出で立ちをしていた。

 

「違うって・・・・・」

 

「あなたたちには酷な現実でしょうけれど、私が言う言葉には嘘偽りではない事を前提で訊いてちょうだい」

 

真剣な面持ちで一区切りついてからリアスたちに衝撃の告白を告げる。

 

「この状況を作ったのは英雄派―――一誠よ」

 

『なっ!?』

 

「一誠は私たちの敵として学園を破壊し、邪魔をする者には徹底的に容赦もなく牙を剥き、英雄のクローンの源義経、武蔵坊弁慶、那須与一の三人を連れ去った」

 

これが全てであるとシオリは口を閉じた。

 

「・・・・・そうか、一誠の奴が」

 

神妙そうにどこか悟って漏らすアザゼルにリアスは反射的に尋ねた。信じたくない現実を少しでも否定できることがあってほしいと願い。

 

「アザゼル・・・・・まさか、本当に一誠がこんなことをしたって言うの・・・・・?」

 

「この状況を作ったのがリゼヴィムの野郎ならば納得する。だが、一誠を連れ去ったのは人間でテロリストだ。心に深い傷を負った人間に付けこんで味方に引き込むことだって容易いはずだ。特に一誠は目の前でリーラを殺された。

多分だが、甦ったリーラを知らないはずだ。そこを曹操が『リゼヴィムに復讐』、なんて甘言でテロリストに成ってしまったんだろう」

 

「そんな・・・・・でも、こんな破壊活動はイッセーの復讐と何の関係もないじゃないっ」

 

涙目で悲痛に発するリアスはどうしようのない悲しみと英雄派に対する怒りに身体を震わす。

明らかに一誠は利用されている。復讐心を付けこんで望んでもいない事をさせている。

 

「でも、それだけじゃないみたい。こことは別に英雄派によって破壊された建物もあるの。それも英雄のクローンを産み出した世界最大の派閥の建物よ」

 

「明らかに英雄のクローンを産み出した者に対しての破壊活動・・・・・もしくは私怨か?」

 

「あいつらはそんな私怨で動くとは思えないんだが」と首を捻っていれば一成が訊いてくる。

 

「あの、どうして英雄派は英雄のクローンに拘るのですか?クローンでも一応は人間ですし」

 

「英雄の末裔や子孫、魂を受け継いでいる自分たちがいるのに英雄のコピーなんて紛い物の存在は許せない。ってモルドレッドっていう女が言っていたわよ」

 

「クローンと一緒にされたら堪ったもんじゃないってか。なるほど、分かり易いな」

 

そして人間らしい考えだとも漏らす。

 

「だが、そうか・・・・・一誠の奴。敵に成ってしまったか」

 

「アザゼル・・・・・私たちはどうすればいいの・・・・・?」

 

「決まっている。洗脳や操られているのであれば倒すだけだ。そうでなかったら全身全霊、全力で一誠を正気に戻しかつ倒すしかない」

 

「倒すって・・・・・どっちにしろ私たちは一誠を倒して止めないといけないってことじゃない」

 

「こっちにはオーフィスとクロウ・クルワッハという最強のドラゴンがバックにいるんだ。できなくはないんだぜ?」

 

一誠の置き土産は凄過ぎる。取り戻せる要素を改めて知り、リアスたちは力強く頷いた。

 

「そうね・・・・・イッセーを取り戻しましょう」

 

「そうですね。彼がいないと物足りなさを感じてしまう自分がいる事に気が付きましたから」

 

「形がどうであれ、兵藤一誠と全力で戦えるのであれば俺も全力で倒そう」

 

リアス、ソーナ、サイラオーグの頼もしい発言に笑みを浮かべるアザゼル。

 

「魔人シオリ。お前さんの力も貸してもらうぜ」

 

「別にいいのだけれど、百代とエスデス、学園長のあの様は魔人の力を使ったからよ。多分、オーフィスじゃないと触れられたらお終いよ」

 

「・・・・・魔人の力はやっぱり驚異的だなおい。やっぱり、現代兵器に頼るしかないか」

 

「効かないと思うわよ彼。多分、核爆発の中でも生き延びそうだし」

 

ああ・・・・・全力で否定できない自分がいる事に、兵藤一誠という存在の凄まじさは神クラスかと突っ込みたくなるアザゼルであった。

 

「さて、この事をあいつらにどう報せればいいのやら・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「お帰り、どうやら問題なく遂行できたようだね」

 

「兵藤一誠の存在が大きかったからな。殆どの奴、実力がある者は一誠に襲い掛かってくれたからある程度楽だった」

 

「これで兵藤一誠はテロリスト―――と認識されただろう」

 

「あいつを取り戻そうと躍起になったんじゃないか?」

 

「しばらくは動かないつもりだよ。その間、彼から得る様々な恩恵の力を研究や開発に集中する」

 

「肌を重ねたってのに利用する考えは変わらないんだな」

 

「公私混合はしっかりしないとね。それで、彼は?」

 

「セカンド・オーフィスと呂綺に料理を作ってくれって強請られた」

 

「ああ、それだけで十分理解した」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。