HIGH SCHOOL D×D ―――(再)―――   作:ダーク・シリウス

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エピソード49

ドンッ!

 

異空間から姿を消した、はずの一誠が穴の向こうから何かに弾かれ再びアザゼルたちの前に戻された。目を張るアザゼルたちは空いた穴から姿を現す深く全身を覆うローブ姿の三人に空いた口が塞がらなかった。

 

「誰だ・・・・・?」

 

誰もが突如、一誠を穴から蹴り飛ばして現れた三人組。内一人は子供なのかオーフィス並みの身長だった。

 

「あの三人から有り得ない力を感じる」

 

「そうだね」

 

龍化した一誠をあっさり蹴ったのは誰だか分からないが、別の意味で緊張がアザゼルたちの間に走る。

 

『グルルルルルルッ!』

 

唸り声を上げだす。目の前の三人はアザゼルたちよりも脅威だと判断したのか、初めて臨戦態勢の構えをする一誠に謎の三人組が一斉に動き出す。一人の小さな人物は一誠の身体に走ってあっという間に頭部にいるオーフィスの前に到着したと同時に手元を光らせ、魔力の砲撃を放って一誠から遠ざけたら小さな手を固く握りしめて赤い頭部に叩きつけた。

 

「はっ!?」

 

あの龍神が吹っ飛び、一誠を殴った。とんでもない光景だった。

 

「お前、誰だ」

 

無傷で自分を吹っ飛ばした人物にオーフィスは訊ねた。小さな人物は何も答えず、オーフィスの前に現れては

抱き絞めるように身体全体で動きを封じた。

 

「離れる」

 

しかし、離れなかった。その間にも他の謎の二人の人物は一誠に攻めていた。

一誠が嵐を呼び起こしてもその嵐を難なくかわし、懐に飛び込めば二人揃って足を突き出して蹴り飛ばして

赤い魔力を放った。

 

「―――おい、今の魔力」

 

「何かの冗談だ、と思いたいね」

 

「だけど、間違いない」

 

アザゼル、フォーベシイ、ユーストマが謎の人物たちの放った魔力に何かを察した。

 

「だが、有り得ない。なんで同じ魔力が存在する」

 

「それに加えて、一誠ちゃんと対等に戦っている」

 

「何者なんだ、あいつらは」

 

その正体は直ぐに分かった。一誠が真空刃の咆哮を放って二人とオーフィスにしがみ付いている小さい人物のフードを切り刻んだ。ズタズタになったフードが三人の顔を露わにするのだった。

 

『―――っ!?』

 

何かの見間違い、冗談だと思いたい気持ちが一致した瞬間だった。謎の三人の内二人はこの場にいる面々が良く知っている顔だった。

 

「我・・・・・?」

 

オーフィスの目の前に自分と同じ容姿の少女が見詰めていた。

 

「お前、誰」

 

「我はお前、お前は我、我はオーフィス」

 

弾くようにオーフィスはもう一人のオーフィスと離れた。もう一人のオーフィスは謎の人物の肩に乗っかった。アザゼルたちは居ても立ってもいられなくなり、三人に近づいた。

 

「お前ら、何者だ」

 

光の槍を突き付け問いだたす。周りも真っ直ぐ視線を三人に向ける。誰彼もその顔と瞳は真剣の色が浮かんでいる。場は緊張に包まれる中、一誠が動き出す気配に感じてアザゼルたちから視線を逸らす。

すると、三人が真紅と漆黒の光の奔流と化となって一つになり始める。その中で、三人は呪文のような言葉を呟きだす。

 

「我、夢幻と龍神の子の者なり」

 

「我、夢幻を司る真龍『真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッド」

 

「我、無限を司る龍神『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス」

 

「我は無限を認め、夢幻の力で我は汝を誘い」

 

「我は夢幻を認め、無限の力で我は汝を葬り」

 

「我らは認めし者と共に生く―――」

 

「我らは認めし者と共に歩む―――」

 

2人の呪文のような言葉の後にもう一人も呪文を唱えた。

 

「我は夢幻を司る真龍と無限を司る龍神に認められし者。

我は愛すべき真龍と龍神と共に我等は真なる神の龍と成り―――」

 

「「「我等の力で全ての敵を倒そう。そして我等の力で汝等を救済しよう―――」」」

 

 

「「「D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)!!!!!」」」

 

 

眩い閃光が三人から弾け、視界を真っ白に塗られる。視界が回復した頃に目をゆっくりと開くと面々の目の前に―――。立派な角が生えた頭部、胸に龍の顔と思われるものが有り、

特に胸の龍の顔は意思を持っているかのように金と黒の瞳を輝かせる。

瞳は、垂直のスリット状に黒と金のオッドアイになっていて、

腰にまで伸びた深紅と黒色が入り乱れた髪。

 

「なん、だと・・・・・!?」

 

「グレートレッドとオーフィスが・・・・・」

 

「一つになって鎧と化した・・・・・!?」

 

それだけではない。鎧を纏った者から感じる凄まじいドラゴンの波動やプレッシャーは優に一誠を超えていた。

一誠は目の前のイレギュラーに禍々しいオーラを身に纏って警戒心を最大にしている。

 

「我が、合体した」

 

『おまえもできる』

 

「我も?」

 

胸の龍から聞こえるもう一人のオーフィスの声。

 

『お前は我、我はお前、だからできる』

 

それだけ言い残して謎の人物が歪ませた空間から一誠と同じ封龍剣を取り出して、一誠に飛び掛かった。

対して禍々しいオーラを身に纏う一誠は口から黒と紫が入り乱れた魔力を放つ。

 

「マズい、あれはゾラードの消滅の魔力だ!」

 

アザゼルが焦心に駆られて叫びだす。謎の人物はそれを百の承知の上だとそのまま飛び込んだ。

消滅の魔力は狙いを違わず謎の人物に直撃した―――と思ったら、何時の間にか一誠の遥か上空に跳んでいて

 

ザンッッッッッ!

 

一気に落下しながら無数の軌跡を残して一誠の身体に傷を負わせた。

 

『グオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』

 

激しい激痛に絶叫を荒げる。だが、一誠に対する攻撃は止まらなかった。

一誠の背中に跳び乗って駆けながら翼を両断。それから身体の至る所に大剣を振るい続け、斬り付け、無情にも片目を切り裂いたそのあと懐に飛び込んで鋭いアッパーをして巨大な体を数十メートルも浮かせれば、手を突き上げた。

 

「ロンギヌス・スマッシャー」

 

手から極太の真紅の魔力による砲撃が放たれ、宙にいる一誠も極太の真紅のエネルギー砲を放った。

愕然とその戦いを見守っていたリアスたち。拮抗する二人の魔力だが、謎の人物の魔力に更なる力を込めて放てば一誠の魔力が徐々に押されついには―――呑みこまれた。少しして、巨体が地面に墜落。激しく鈍い音が地面を揺らし戦いの終幕を告げた。

 

「・・・・・終わった、のか」

 

危険極まりなかった一誠を容易く倒した謎の人物。未だに信じられない気分でいるアザゼルや他の面々。

未だ元の姿に戻る気配のない一誠にオーフィスが近づく。

 

「イッセー?イッセー?」

 

ペチペチと小さな手が赤い鱗に何度も叩く。しかし、気絶しているのか反応は当然ない。

そんな一誠に謎の人物が封龍剣を携えて近づく。そして徐に大剣を振り上げて一気に下ろし―――。

 

ガキンッ!

 

ルーラー、ゼノヴィア、エルザ、ユウキが振り下ろされた大剣を剣で受け止めた。

 

「彼に、これ以上傷つけさせはしませんっ」

 

「例え、師匠の顔が同じお前でも屍に鞭を打つようなことは許さんっ」

 

「家族を止めてくれたことに感謝はするが」

 

「お願い、もう止めて!」

 

四人の剣士がそうしている間に後方から魔力を展開している面々。

 

「そう言うこった。お前には後で色々と聞きたいことが山積みだ」

 

「武装を解除してもらおうか」

 

「魔王としてこれ以上の暴挙は見過ごせないよ」

 

勢力のトップたちも本気で止めようとしている。しかし、謎の人物はポツリと漏らした。

 

「まだ、戦いは終わって無い」

 

それが証拠であるかのように気絶していたはずの一誠がムクリと起き上がり、力のない咆哮をあげた。

全身は血で汚れ、片目は潰されて片目しか空いていない顔がとても痛々しい。

 

「イッセー!もう止めて!」

 

リアスは叫ぶ。もうテロリストたちに戦っていた時よりも力強さを感じさせない。既に瀕死の状態だろう。

これ以上戦い、傷を負えば今度は一誠が死に至る恐れもある。

 

『リーラァァァァ・・・・・ッ』

 

それでも弱々しくても一誠は叫ぶ。

 

『リーラァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!』

 

両断されたはずの翼が再生したようで生やしだし、フラフラと宙に浮かび始める。

 

「あいつ、まだ力が残っていたのか」

 

だが、アザゼルたちだけでも対処できるほどの弱さになっていた。翼を生やし追いかけようと試みた矢先、空間に大きな穴が開き、そこから―――もう一匹のグレートレッドが現れては一誠の行く道を防ぎ、抱き締める形で抑え込んだ。

 

『見ていて痛々しくて敵わん。大人しくしていろ』

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

地面に叩きつけ、覆い被さって抑えつけた。それでも悪足掻きをする一誠が最後の力を振りしぼってグレートレッドに魔力の砲撃を放った。同じ龍の攻撃を食らっても、グレートレッドの体の表面に煙を立たせるだけで殆ど無傷だった。

 

『ウウウウウ・・・・・リーラァ・・・・・』

 

それを最後に一誠は今度こそ力尽き意識を失った。

 

「グレートレッド」

 

『オーフィス、お前がいてこの状況は何だ』

 

「イッセー、大切なもの失った。心も固く閉じた」

 

『ドラゴンとはいえ、まだまだ未熟か。・・・・・それとアレは何だ?』

 

謎の人物に金色の双眸が向けられる。自分と同じドラゴンの波動とオーフィスの波動を感じる謎の人物に。

 

『オーフィスと我、それに兵藤一誠がいるだと?何の冗談だ』

 

「我も分からない」

 

取り敢えず、その謎の人物はアザゼルたちに囲まれているのだが、状況は大して変わらないだろう。

そんな状況下にこのバトルフィールドに幾重の魔方陣が出現し、大勢の一行が現れた。その中には誠と一香の姿が。

 

―――○●○―――

 

「そうか・・・・・そんなことが遭ったのか」

 

「リーラ・・・・・」

 

事情を知った二人は悲しげな面持ちで現実を受け入れ、龍化のままの一誠にも目を配った。

 

「そりゃ当然だよな。常日頃から共に生きていた愛おしい女が目の前で殺されちゃ心の均衡がどうなるなんて火を見るより明らかだ」

 

「この場にいてやれなかったことに口惜しく、歯がゆい思いだわっ」

 

「・・・・・すまん。俺たちがいてこの様だなんて」

 

アザゼルの謝罪に誠と一香は無言で見詰め、聞くだけで何も答えなかった。

不意に誠はアザゼルから顔を逸らしてある人物に目を向ける。

 

「ところでアザゼル、あの子は誰なんだい?間違いなく一誠・・・・・みたいな子だけど」

 

リアスたちが囲むように警戒している一誠に酷似した謎の人物。他にもう一人のオーフィスと真紅の髪の女性が億劫そうな態度をしていた。

 

「俺も知りたいところだ。急に現れては暴走したあいつを倒したんだからな。グレートレッドとオーフィスが鎧に具現化してよ」

 

「うわっ、なにそれ、ちょー見たいんだけど」

 

だろうと思った。アザゼルは息を一つあからさまに零す。

 

「あいつは間違いなく心に深い傷を負った。お前ら、一誠をどうする気だ」

 

「どうもなにも・・・・・親子として接するしかない」

 

「リーラの代わりになる女性なんてもういないもの」

 

これから先、一誠はどう生きていくのか誠と一香ですらわからない。リゼヴィムに復讐心を抱き、生き続けるか深いショックで部屋に閉じ籠ってしまうのか。それとも悲しくても受け入れ前向きに進むのか。できれば後者であって欲しい。

 

「さて―――」

 

っ!?

 

何時の間にか、謎の人物が誠たちの傍にいて声を掛けてきた。リアスたちに目を向ければ何時の間にと目を大きく見開いて驚きの雰囲気を醸し出している。

 

「俺たちは帰らせてもらうよ。目的も達成した」

 

声も一誠に似ていた。本当に何者だろうか。

 

「待て、お前は一体誰で何者なんだ。目的も説明しろ」

 

「・・・・・やっぱり?」

 

「ああ、そうだ。じゃなきゃ、全力でお前をここで食い止める」

 

アザゼルの本気の様子に謎の人物は息を零した。

 

「信用してもらえなさそうだなぁー」

 

「目の前の現実を信用する方でな。安心しろ」

 

「本当?じゃー教えるなブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード総督」

 

『・・・・・』

 

場の時間が停止したような感じを覚えた。するとアザゼルに向け言われた言葉だと悟り、火が点いたように顔が一気に赤くなった。

 

「お、おおおおおまっ!?」

 

「ふっふっふっ。どうしたんだブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード総督?」

 

「そ、それ以上ここで言うんじゃねぇーッ!?俺は堕天使の総督じゃー!」

 

「いいじゃん、格好良いよ羨ましい名前だブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード総督」

 

「三度も言うんじゃねぇ―!」うがぁっー!と喚きだすアザゼルにニヤニヤと愉快そうに笑む謎の人物。

 

「うん、間違いなく誠と同じ顔ね。特に悪戯とか何かを思いついたような顔をしている時だもの」

 

「息子が二人かー。何と言うか何とも言い難い気分だ」

 

アザゼルをからかう謎の人物にほのぼのとする。

 

「まぁ、からかうのはここまでにして俺が答える範囲なら全部答えるよ」

 

「こ、このっ・・・・・」

 

「落ち付いてアザゼルちゃん。せっかく答えてくれると言うんだから」

 

「愚痴なら後でいくらでも聞いてやる。酒を飲みながらよ」

 

フォーベシイとユーストマに慰められる堕天使の総督。落ち着いたところで質問を始めた。

 

「あなたの名前は?」

 

「イッセー・D・スカーレット。偽名だけどな」

 

「偽名?じゃあ、本名は兵藤一誠?」

 

「ああ、一度死んだんでね」

 

「死んだ・・・・・まさか、サマエルとか言う存在に?」

 

イッセーは驚いたように目を丸くした。それが肯定だと悟り、質問を続ける。

 

「あなた、この世界の人間じゃないわね?」

 

「同じ二人、同じドラゴン、同じ力がこの世に二つも存在するわけがない。当然の反応と質問だな。答えはYES」

 

「―――異世界から来た兵藤一誠だと!?」

 

驚くアザゼル。だとすれば一誠を倒した実力に納得もできる。

 

「キミの目的とはなんだ?」

 

フォーベシイの質問に嘆息した。

 

「とある神さまがこの世界の兵藤一誠が暴走した、だから俺たちの力で鎮めてくれと言われたんだ」

 

一誠の暴走の鎮圧。と言ったイッセー。これで殆ど合致したと言えるだろう。

 

「その神の名前は?」

 

「転生を司る神ミカル」

 

―――っ!?

 

「まったく、あの神には困ったもんだ。俺もあの神には散々な目に遭わされたんだからな」

 

「と、言うと?」

 

「うーん、異世界に飛ばされて数十年間その異世界で暮らしていた」

 

異世界に数十年間暮らされた。その事実に誰もが絶句する。

 

「一応、この世界の兵藤一誠もどこかの異世界に跳ばされるだろう。その阻止はできない。受け入れるしかないぞ」

 

「・・・・・そう、なら、その神の居場所を知ってる?」

 

「いや、俺も知りたいところだ。もう永い間顔を見てないからな」

 

「残念だ。ちょっとO・HA・NA・SHIをしようと思ったのに」

 

うっすらと冷や汗を流すイッセー。二人からのプレッシャーに肌で感じ取った。怒らせてはいけない人物はやはり健在だった。

 

「お前が存在していると言うとそっちの世界はどうなっている?」

 

「この世界との時間の差が違う。だけど、良い世界だよ」

 

「そうか。そっちも同じか聞けて嬉しいぜ。―――ところでだ」

 

ガシッ!とユーストマがイッセーの肩を掴む。反対側の肩にもフォーベシイが掴み、

 

「「娘と結婚しているか!?」」

 

「あ、それも知りたいわ。息子の家族構成」

 

「悠璃ちゃんと楼羅ちゃんと結婚しているかな?」

 

親として知りたいベスト5。―――その話を耳を大きくして聞き耳を立てる女性たちがいることに尻目で確認するイッセー。少し恥ずかしげに言った。

 

「ん、まぁ・・・・・うん。晴れて結ばれた。子供も生まれたし」

 

「「―――っ!!!!!」」

 

声にならない叫びがユーストマとフォーベシイの口から発せられた。

 

「でも、何人か知らない女の子がいるな。誰だ?」

 

「あら、そっちの世界には存在していない子がいるのね」

 

「ああ、特にあの赤髪の悪魔の女の子」

 

ガーンッ!とリアスがショックを受けた。

 

「ってのは冗談だ。彼女とも結婚してるし」

 

歓喜極まって嬉しそうにガッツポーズをしたリアス。感情が代わり易い少女だった。

 

「では、そちらの世界の情報をもうちょっとだけ教えてくれないか?」

 

「別にかまわない―――いや待て」

 

急に耳を抑え出すイッセー。誰かと話しているのかたまにウンウンと首を振る。そして肯定の言葉を発した。

 

「悪い。帰らないといけなくなった」

 

「転生の神がそう言っているのかい」

 

「そうだ。最後に俺から聞きたい事、して欲しいことはあるか?」

 

これが最後だと雰囲気が伝わり、誰もが思考の海に飛び込んだ。

 

クイクイ・・・・・。

 

イッセーの裾を引っ張るオーフィスに視線を向ける。

 

「もう一人のイッセー。リーラ、死んだ」

 

「・・・・・」

 

「イッセー、きっと悲しみ続ける。我、悲しむイッセーは見たくない」

 

これからどうすればいい?と問いを求め縋るオーフィス。

 

「・・・・・そうだな」

 

オーフィスの頭を優しく撫でる。

 

「わかった。そうしよう」

 

イッセーはリアスたちに近づき、

 

「この世界のリーラの髪の毛でもいいからあるか?」

 

「・・・・・どうする気なの?」

 

「決まってる」

 

イッセーの全身が光り輝きだす。神々しい輝きに包まれ、金色のオーラは龍を模した金色の全身鎧へとイッセーの身を包み背後には、口に『魔』『聖』『命』『万』『運』の文字がある珠を咥えている金色の龍が姿を現す。

 

「俺の力でリーラを復活させるだけだ」

 

金色の杖を片手にして当然のように発する。そんなイッセーの問いに咲夜が大事そうに布の切れ端と一本の銀色の髪を持って近づいてくる。

 

「本当に、可能なのですか?」

 

「俺は不可能を可能にする。できないならこんなこと言わないさ咲夜」

 

「どうして、私の名前を」

 

「俺の世界にはお前も存在しているからだ。この世界の兵藤一誠をリーラ共ども支えてくれ。俺と同じできっと心が弱いからさ」

 

イッセーの背後に浮かぶ金色の龍が咥えている『命』の文字が光り輝く。すると―――龍の口から『命』の珠が離れて咲夜の手の中にあるリーラの証を包みこみ宙に浮いた。

 

「本来、違う世界に住む俺がこんなことしちゃいけないだろうがミカルは目を瞑ってくれるだろう」

 

意味深なことを言うイッセーを余所に光る珠が一瞬で弾いた。

 

「・・・・・じゃなきゃ、アイツが見たい物語が見れなくなるからな」

 

弾けた光は時が戻るようにして人の形に成っていく。目の前で起きている現象を周囲にいる面々に釘づけさせ―――突如に発生した霧一誠が取り囲んでいた面々を驚かせてくれた。

 

「なにっ!?」

 

「この霧は・・・・・っ」

 

一誠の近くにいたリアスたちが目を張る。アザゼルたちも驚愕の声を聞き霧を見た途端に怒りに満ちた顔を浮かばせた。

 

「野郎・・・・・っ!飽き足らずこのタイミングであいつもか!」

 

「野郎とは失礼じゃないか堕天使の総督」

 

霧の中から聞こえてくる少女。姿は現さない。

 

「誰っ!?」

 

「姿を見せたら彼のご両親、兵藤誠と兵藤一香に捕まってしまうからね。この形で告げさせてもらおうよ」

 

一拍して少女の声が発した。

 

「兵藤一誠は貰い受ける」

 

霧は完全に一誠を包みこんだ。少女の声はどこか楽しげだった。

その声は誠と一香、オーフィスが知っていた。

 

「あなた・・・・・曹操ちゃんね?息子をどうする気なの」

 

「今の彼なら色々と御しやすい、と言えば察してくれるでしょうか?」

 

フッと霧が霧散して包みこんでいた一誠ごと消え去った。完全に曹操の手中に収まった事実に一誠を慕う家族や少女たちが様々な感情を露わにする。

 

「殺しはしませんよ。彼には色々と役立ってもらいますので」

 

それだけ言い残して霧は―――誠が突き出した手から逃れるように消失した。

 

「・・・・・曹操ちゃん、これだけは言っておくよ」

 

誠は言う。

 

「必ず、俺たちの息子の家族がお前たちを倒して一誠を取り戻す!」

 

 

―――Boos×Boos―――

 

 

「これで完全に異世界の存在が明らかになったな」

 

「異世界の兵藤一誠から最後に渡されたこの資料を参考にしてこの世界を良くしよう」

 

「流石にこれから何が起きるのかその情報は記されてないか」

 

「だが、注意人物の名だけが記されている。―――リゼヴィム・リヴァン・ルシファー、そして、ユーグリット・ルキフグス。他にも有名な名前が記されているじゃないか・・・・・」

 

「曹操・・・・・一誠をどうするつもりだ」

 

「いま直面している最大の危険要素・・・・・」

 

「この先どう待ち構えるべきか検討をするべきだね」

 

 

―――devil×devil―――

 

 

「異世界が実証されたぜぃ!やっぱ坊ちゃんを利用して正解だ!」

 

「では、今後どうしますか?」

 

「当然、異世界に侵略でしょ!その為にまず―――グレートレッドが邪魔だ」

 

「グレートレッド、とんでもない方針をお考えですな」

 

「んーふふふっ!グレートレッドと同じ黙示録の獣でも見つけて倒してもらおうじゃん」

 

「まさか、居場所を知ってるのですか?」

 

「知らないってば。これから探すんだよ。その為には神滅具(ロンギヌス)を利用しない手がないし」

 

 

―――Hero×Hero―――

 

 

「悪魔のあいつら、とんでもない発見をしたね」

 

「ああ、異世界から来た兵藤一誠・・・・・・しかも、グレートレッドとオーフィスを鎧に具現化させて身に纏った。その力は優に兵藤一誠を超える」

 

「もしもこの世界の兵藤一誠が同じようにしたら俺たちはやられるのではないか?」

 

「それを超えるのが人間の相場ではないか。寧ろ私はそれを臨むよ」

 

「ところで、あの偽物の英雄のクローンはどうする気?」

 

「そうだね。利用して使い捨てるのも悪くないか。今度は本命を狙ってね」

 

「彼女―――かい?」

 

「私の大先輩にあたるからね。一度接触してみよう」

 

「それで彼はどうする気なんだい?」

 

「当然、私たちの役に立ってもらうよ。そして―――」

 

 

―――???―――

 

 

『ありがとうございました。最後は問題が起きましたがこれでいいでしょう』

 

「いいのか?攫われたあいつは洗脳されてあいつらの敵にされかねないが?」

 

『あの世界にいるあなたたちは弱くありません。きっとなんとかしてくれるでしょう』

 

「んじゃ、俺の手助けはもう必要ないか」

 

『はい、お疲れさまでした』

 

 

―――family―――

 

 

「・・・・・」

 

「落ち込むな、お前のせいじゃないんだ」

 

「そうです・・・・・悪いのはテロリストだと言うことは明白なのです」

 

「はい、その場にいなかった私たちも悔しい思いで胸が張り裂けそうです」

 

「あの方のヴァルキリーと名乗る私たちが何の役にも立たなかった」

 

「奪われたのなら取り返せばいいだけよ。あの時のように」

 

「イッセーを奪い返す」

 

深く、そして見たことのない落ち込みようの銀髪のメイドに話しかける年上の女性たち。喜びが糠喜びとなって一誠の誘拐にメイドことリーラは一誠の部屋で意気消沈のところクロウ・クルワッハたちに励まし、宥められていた。

 

「私の死で一誠さまは・・・・・リゼヴィムさま、曹操さま・・・・・っ」

 

悔むリーラの瞳に悲哀と一誠に対しての愚行をしたリゼヴィムに憎悪、一誠を連れ去った曹操に対する怒りが入り乱れ窺える。

 

「一誠さま、待っていてください・・・・・このリーラ、必ずやあなたさまを・・・・・」

 

 

 

 


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