HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
「さーて、
アザゼル先生が説明するからよーく聞けよ」
「はーい」
ホワイトボードの前に立つアザゼルが一誠やヴァーリ、朱乃、オーフィスに先生のように知識を披露する。
「まず、
神が作りだした『システム』によって人間、もしくは人間の血を流す種族のみ宿るという
摩訶不思議な能力だ。現にイッセーとヴァーリには
一誠とヴァーリはコクコクと頷く。二人ともドラゴン系統の
「
俺たち『
絶対に
「なんでなの?」
「摩訶不思議な力があると気付かないことが多いからだ。しかも、あることを知っていても
さらにその発動条件も様々だ。いつどうやって
なるのか時の運次第が多い」
感嘆の声を漏らす一誠たち。そう言う事なら自分たちは運がいいということになる。
「まっ、過去の偉人たちも
語り告げられているわけだ。さて、質問はあるか?」
「はい、アザゼル先生」
「なんだイッセー」
挙手する一誠はアザゼルに問いかけた。一誠の問いは単純なものだった。
「一番強い
「現在一番強い
神を滅ぼすことが可能とされている―――そういう類いの神すら滅ぼすことが可能な力を
持つと言われる特殊な
それは現時点で15種が確認されている」
「
「そうだ。
ヴァーリが持つ
「へぇー、そうなんだ」
「主な能力は『半減』。相手の力を半分にした力は自分の力に糧とするチートな能力だ」
「うわ、それ絶対に負けないんじゃない?」
「相手に触れないとその効果は発揮できないがな。触れなくてもできるがな」
「どっちなのさ?」
さらにアザゼルは『
『
『
「と、他の
「ん、分かった。でも今日はタンニーンと修行の日じゃないよね?」
「ああ、お前はタンニーンと砲撃や火炎球の合戦をしているが魔力は砲撃が芸だけじゃないんだ。
魔力は他にも様々な使い方がある。それをお前はとある悪魔に教わることになっている」
「誰?」
アザゼルは敢えて教えず、一誠だけ魔方陣で共にその悪魔の許へと赴いたのであった。
―――そこは石造りの城だった。リアスの家よりも遥かに大きいかもしれないと
一誠は思ったが反応は薄かった。
「どうした、驚かないか?」
「なんか、こういう家ばっかり見ているから見慣れた」
「ああ、そういうことか。そんじゃ俺は帰るぜ」
「え?」
一緒に来てくれないの?と視線をアザゼルに向けたが魔方陣の光と共にいなくなった。
そんな自分を置いてけぼりにしたアザゼルと擦れ違う感じで城から一人の女性が現れた。
「いらっしゃい、あなたが兵藤一誠くんね」
「・・・・・誰?」
「私はアスモデウス。五大魔王の一人よ?フォーベシイさんと同じ魔王と言えば分かるかしら」
長い翠の髪、金色の瞳、整った輪郭、豊満な身体の持ち主の女性が口元を緩ましながら言う。
「フォーベシイおじさんと同じ魔王?」
「ええ、そしてあなたに魔力の扱い方を教える先生でもあるの。さ、こちらにおいで」
踵返すアスモデウスに続く。城の中に入り、壁に画や甲冑が所々に飾られている廊下を歩き、
一誠はとある部屋の扉を開け放って入るアスモデウスの背を追いかけると、
「いらっしゃい、待っていたわよ」
「こんにちは兵藤一誠くん」
「来たな」
「・・・・・はい?」
見知らぬ女性たちが一誠を出迎えたのだった―――。
「えっと、兵藤一誠です。お姉さんたちは誰?」
自分を知っている人物たち。この三人も先生なのかもしれないと一誠は自己紹介した。
「私はルシファー。フォーベシイさんとアスモデウスと同じ魔王よ。この三人も五大魔王の一人」
血のように真っ赤な髪に黒い瞳の女性が一誠を見下ろしながら名乗る。
「私はレヴィアタン。よろしくね兵藤一誠くん」
青い長髪に紫の女性が一誠と握手を交わしながら名乗ると
最後に黄色のロングストレートに鋭い翠の瞳の女性が口を開く。
「ベルゼブブだ。私は魔法より剣術を教えることができるから魔力に関しては
この三人に訊いて欲しい」
「じゃあ、何でここにいるんだろう?」と思わずにはいられない一誠。
だが、魔力の扱い方を教えてくれるのは確かでありそうだ。
「それじゃ、軽く自己紹介を終えたことであなたに魔力の扱い方を学んでもらいましょうか」
「ん、よろしくお願いします」
一誠の魔力に関する修行は五大魔王の内の四人の指導のもとで始まるのだった。
「魔力を大きな球にできるかしら?」
「球?」
「タンニーンにビームを放っているでしょ?あれを今度は球にするの」
どうしてそんな事を知っているのか不思議だったが、言われた通り魔力を球状にして見せた。
「ちょっ、そんな大きくしなくて良いのよ!?」
「まだ子供だというのにこの魔力量は・・・・・」
「中々ではないか」
「ただ魔力を放つだけしか芸はないことを教えないとダメね」
部屋の天井まで届きそうなほど大きな赤い魔力球を作りだす一誠。
魔力を少なくして小さくし、手の平サイズにしたことで次に進む。
「それじゃ」
レヴィアタンが手の平に何もない場所から水を具現化させた。
「・・・・・マジック?」
「違うわよ。彼女は魔力で水を操ったの。まだ子供の一誠くんにはわからないでしょうけどね」
「魔力って凄いんだねー」
「そうよ?慣れれば慣れるほど、火や水、雷だって操ることができる。
キミもできるその可能性を秘めているわ」
目を輝かす一誠。明るい顔を浮かべ、「頑張るぞー!」とやる気を出した。
「子供ね、可愛いわ」
「うん、数年後したら格好いい男の子になるよねきっと」
「その頃、さらに強くなっているだろう」
「育て甲斐があるわね」
四人の魔王は笑みを浮かべ、教えを乞う一誠にあれこれと魔力の扱い方を教えていく。
―――○●○―――
「・・・・・おいおい、何してんだお前」
とある日のこと。アザゼルは目の前の光景に驚きを隠せないでいた。
広い敷地で氷の銅像が立ち並び、その前に一誠がいた。
「あ、アザゼルのおじさん。見て見て、こんなことできるようになったんだよ」
「・・・・・完全に魔力を遊び道具にしているな。・・・・・しかもこれ、俺か?」
自分に似た銅像があることを知り、手鏡で自分の顔と見比べるアザゼルだった。
あまり完成度は高くないが、ここまで上達した一誠に気になって問うた。
「お前、どこまで教わってできるようになった?」
「ん?火や水、雷を操ることはできたよ。面白いねー魔力って。
ビームみたいに撃つ他にもこんなことができるなんて凄いや」
楽しげに今度は氷の人魚を象った銅像を創り上げた。
「(魔力の才能・・・・・というより想像力が長けているのか?)おい、一誠」
「なに?」
「本当に操れるようになったのかちょいっと俺に見せてくれや」
「いいよー?」
アザゼルの言われた通り、一誠は巨大な火炎を発現し、火炎に雷を帯びさせ、
火炎と雷ごと凍らせた。
「はい、できたよ?」
「・・・・・子供って意外と成長が早いんだな」
「僕に魔力の扱い方を教えてくれたアスモデウスお姉さんたちも驚いていたよ。
もう教えることが少なくなったって」
「ああ・・・・・そうなんだ」
目に浮かぶ五大魔王の驚き顔。一誠の凄まじい学習能力に舌を巻いたはずだ。
それと同時に新たな力を得た一誠はまた一段と強くなった。
「イッセー、魔力をコントロールできるのがいいが、それを人間界では絶対にするなよ。
お前は人間じゃないドラゴンだ。人間界を騒がしちゃあいけない。わかったな?」
「ダメなの?うーん、分かったよ」
本当に分かってくれたのか怪しいところだが、後で一誠のメイドにも
言っておこうとアザゼルは思った。
「そう言えばアザゼルのおじさんって
「なんだ?それがどうかしたか?」
「うん、そのことをアスモデウスお姉さんたちに話したらさ。こんなものをくれたんだけど」
―――――それはアザゼルにとって最も黒歴史に等しい代物だった。
『☆ぼくが考えた最強の
「なまえ あざぜる」
ってタイトルで長々と設定が書かれていた上に自筆らしいイラストまで添えて
アザゼルの名前も記されていた。
「これ、元々天使だったアザゼルのおじさんが書いたものだってくれたんだ。
この|閃光と暗黒の龍絶剣《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》
って
子供のころから
純粋に褒めてる一誠。だがしかし、当のアザゼルは身体を震わせ顔を真っ赤にし、
「そ、それをよこせぇっ!俺の唯一の黒歴史ぃっ!」
「な、何でぇっ!?」
せっかくもらったものを無理矢理奪おうとするアザゼルから逃げ出す一誠。
「待て!その資料を俺によこせ!」
「やだっ!これは僕のだから絶対にあげない!」
「こういう時だけ頑固になるんじゃねぇー!」
逃走する一誠を追いかけるアザゼル。建物の中に入り、アザゼルと同じ堕天使たちを横切れば
「なんだ?」「どうした?」と一誠を追いかけるアザゼルに不思議がるが
当の本人たちはそれに気付かない。
「なんだですか、騒々しいですね」
その時、一人の堕天使が一誠の目の前に現れた途端にアザゼルが叫んだ。
「シェムハザか!一誠を捕まえろ!」
「は?」
「助けてー!アザゼルのおじさんに襲われちゃうー!」
シャムハザと呼ばれた堕天使は一瞬だけ一誠を選ぶかアザゼルを選ぶか脳裏で考えた。
「アザゼル、子供に大人げないですよ」
「はぁああああああああああ!?」
一誠を庇い。アザゼルを捕まえたシェムハザ。
同胞に庇われる一誠を捕まえようともがくアザゼルだったが、
シェムハザだけでなく他の堕天使たちにも「総督がご乱心だ!」と抑えられてしまい、
それは難しくなった。
「待て!俺はイッセーじゃなくてイッセーの手にある物に用があるんだ!」
「奇遇ですね。私もアザゼルに用があったのですよ」
「お前の用件は後回しにしてくれ!俺の黒歴史が再び再発されたくないんだぁ!」
「おかしなことを言いますね。あなたの何の黒歴史なんですか?」
「これ」
と、一誠がシェムハザに設定資料を見せた。それを見た途端にシェムハザは良い笑みを浮かべた。
「ああ・・・・これですか。懐かしいじゃないですか。
ねぇ|閃光と暗黒の龍絶剣《ブレイザー・シャイニング・オア・ダークネス・ブレード》総督?」
「お、お前ええええええええええええええええええっ!」
顔が羞恥心で真っ赤になるアザゼルとアザゼルを抑えていた
堕天使たちが生温かい視線を送っていた。
「なんだ、アザゼルが叫んでいるではないか」
「なになに?」
アザゼルの叫びが他の堕天使たちを呼びだす水の波紋と化となった。
「あら、一誠くんじゃない。その紙は何?」
キリッとした切れ長の目、薄紫の長髪の女性が一誠と視線が合うように跪き
設定資料に興味を抱いた。
「見せてくれない?」
「いいよー」
「み、見せるな一誠ぃいいいいいいいっ!」
アザゼルの切なる想いが籠った叫びは空しくも―――。
「―――アッハッハッハッハッ!まだこんなものがあったなんてあの時を思い出すわ!」
「ベネムネ、何を見て笑っている?」
「これよこれタミエル。いやー、ハッハッハッ!
ダメ、久々にツボがッ・・・・・・!」
ベネムネと呼ばれた女性から受け取った紙を見てブロンドの髪に装飾が凝った
ローブを纏う男性も笑みを浮かべた。
「ハハハ、なるほど。笑う価値があるなこれは」
「おいゴラ!?人の黒歴史を見て笑う価値があるとはなんだ価値とは!」
「これはキミのかな?ああ、大事にとっておきなさい。
今分からずともアザゼルをからかう時は必ずやってくる」
「無視すんな!ふざけんな!そんなこと俺がさせるかぁっ!」
「ほら、お姉さんと一緒に逃げよっか。こんなこわーいおじさんに捕まれたら
何されるか分からないしねー?」
一誠を抱きかかえて逃げるといいつつもゆっくりとした歩調で去るベネムネだった。
『てめらぁっ!いい加減に俺を放せ!』
『アザゼル、私の用件を終わらせてからでも遅くはないですのでダメです』
『そうだな、私も丁度アザゼルに用があったんだ』
『絶対にないだろう!今適当なことを思いついたって顔をしているし!』
『『・・・・・レッツゴー』』
『『『はっ!』』』
『あからさまな反応をして俺をどこかに連れていくなお前らぁっー!嫌だやめろ!
俺はまたあんな恥ずかしい思いはしたくないんだぁッッ!』
どこかへ連れて行かれるアザゼルを一誠は見た。
「お姉さん、どうしてアザゼルおじさんはあんなに必死なの?」
「一誠くんは気にしなくて良いことよ。それよりその紙を他の皆に見せて回りましょ?
きっとアザゼルも悦ぶわ」
「ん?お姉さんがそう言うならそうしよっか」
「ふふふ、可愛いわねー!お姉さん、一誠くんのその純粋が好きだわ!」
後日。堕天使の領土ではアザゼルの呼び名がもう一つ増えたことになったのは別の話。
「ちくしょおおおおおおおおおお!悪魔と戦争じゃああああああああああああああ!」
「「「「止めんかこのバカ!」」」」
「その言葉を俺はずっと待っていたぞ!さぁ、戦争だアザゼルゥッ!」
「「「「お前もだこのバカ!」」」」