HIGH SCHOOL D×D ―――(再)――― 作:ダーク・シリウス
水上体育祭は平穏で終わり、休日の日は家族たちの要望に応えるとある対応に追われていた。
「「イッセー、ここに工房を作って欲しいのじゃ」」
ドワーフのユーミルとエイリンの仕事場である工房の創造。新たに一誠の家族となった小さい種族の願いを叶える一誠が今いる場所は一階のとある部屋。そこはまだ空き部屋で、年上な二人は学校に行かずとも、ドワーフとしてできることをこの家の中でやる。それはいいのだが―――と胸の内で漏らした言葉を次は口で言い続けた
「何かを作るのは良いけど材料とはかどうするんだ?」
「ダークエルフの長が魔法で届けてくれるのじゃ」
「作っては売って、金が貯まれば店を開きたい。ドワーフの商品や武器や防具など売ってドワーフの良さを知ってもらい」
妹のエイリンの話を付け加えるように姉のユーミルは自分の思いを打ち明けた。
創造の力で次々と工房らしく作り続ける一誠は質問を口にする。
「二人は武器が作れるんだ?」
「当然じゃ。わしらは父や同族の傍らで見聞もしてもいれば、実際に自分の手で作っていることもある」
つまり経験はあるんだと胸を張ったユーミル。金属を加熱する大きな炉、加熱された金属を置く為の鉄床、鍛冶の為の設備を昔、修行の一環だと連れて来られた秘境の地、ドワーフが住んでいる場所で一年間過ごした時に自分も体験した鍛冶の経験を思い出しつつユーミルとエイリンの要求を聞きつつ創造する。
「じゃあ、魔法の剣とか作れる?」
これみたいな武器とかと、エクスカリバーを見せ付けたら返ってきた返事はNOだった。
「わちらは武器を作るだけじゃ。武器に魔法が付加されているのは精霊や魔法を扱える種族たちの特殊な方法によって出来上がる」
「それでも魔法が付加されている武器に負けない強い武器は作れるのじゃ。例えば素材次第で属性付きの武器とかの」
「属性付きの武器?火、風、雷、氷とか?」
「ああ、そうじゃ。属性付きの武器もある種の魔法の剣みたいなものじゃが、それの素材となる物は様々じゃ」
「錬金術で加工したり、モンスターしか得られない素材が必要になる」
錬金術・・・・・と興味深そうに耳を傾けた。
「まぁ、ドワーフのわしらが作れるとしたら属性攻撃ができる武器じゃ」
「その魔法の剣から精霊の力を感じるのじゃが作る者によって作る物が違う。じゃからイッセーが思うような武器は作れんぞ?」
「んー、分かった。それで、こんな感じか?」
「「うむ、ありがとう」」
話している間に鍛冶の為に必要な設備を創造した一誠に感謝する。
「・・・・・この量は何だ」
「整理していたらこんなことになった」
とある某国の出身、エルザ・スカーレットは一誠を呼び部屋に招くと・・・・・数多の鎧で埋め尽くされた部屋が一誠の目に飛び込んだ。わずかな歩くスペースとベッド、机と椅子、タンス、棚と生活用具が一ヵ所に集めていて殆どのスペースは鎧で一杯になっていた。圧巻に似た気持ちを一誠は抱き、見たことのない鎧を博物館と化した少女の部屋から視線をエルザに変えた。
「この色んな鎧、着る機会があるのか?」
「殆ど無い。それに魔法空間内な無限に貯蔵できないのだ」
・・・・・それを分かっててどうしてここまでの鎧を、そう思わずにはいられなかった。
一度はエルザの華奢で瑞々しい身体に纏い幾重の攻撃から守り、様々な冒険を共にしてきた鎧―――のはず。
片手では数えきれない鎧が部屋の中に鎮座していて既にここは物置き部屋。
「エルザ、何時も装着している鎧はどのぐらいある?」
「十種類以上はあるが特に―――」
一誠の目の前で戦闘時に装着している鎧・武具を見せ付けた。感嘆、驚き、称賛と一誠をそうさせる鎧や武器。
そして自身の鎧を紹介し終えるエルザに対し、
「この鎧、全部処分だな」
「なに!?」
使わない鎧はただの鉄の塊。一誠はそう悟った。
「待て待て!処分とは捨てるというのか!?この鎧たちは私の思いででもあるのだぞ!中にはお前と一緒に任務をした時に装着した鎧もあるんだ!」
目を丸くし、一誠に掴みかからん勢いの必死なエルザに無表情な顔で言われた。
「捨てるわけじゃない。でも、この国は戦闘なんて日常茶飯事に起こるわけがないからこの鎧は使う機会がそんなに無いわけだから」
一誠は人差し指と親指を鳴らした。それに呼応してエルザの部屋中の鎧たちが光り輝き、そして弾いた。
「コンパクトに仕舞うだけだ」
光が弾き、消失するとヒラヒラと鎧の数だけのカードが床に散らばった。
「取り敢えずカードにしておいた」
「カ、カード・・・・・・」
「魔法空間は無限に貯蔵できないんだろ?だったら別の形で貯蔵するだけのこと。ああ、カードに魔力を込めれば自由に・・・・・」
そこで言葉を止めた。一誠の中である考えが過ぎり、顎に手をやって思考の海に飛び込んだ。
「・・・・・」
「イッセー?」
呼び掛けにも反応しない。考えることに集中しているようだが、一拍遅れるようにエルザへ顔を向けた。
「エルザ、お前の魔法空間って武器や鎧以外にも何か収納できるか?」
「衣服とかならできるが、他は無いからわからない。それがどうかしたのか?」
「んとだな。お前の意志で鎧や武器が呼び出せたり、持ち替えることができるなら」
床に散らばったカードを一枚手に取り、
「もしもこのカードも魔法空間内に収納でき尚且つ何時も通り換装できるなら、入り切れない鎧と武器も収納&換装が可能になるんじゃないか?鎧とカードの質量は段違いだからな」
「・・・・・なるほど」
一誠の考えに理解しエルザは感心した。魔法空間に収納するカードと化となった鎧ならば鎧や武器丸ごと仕舞うより収納できる容量は格段に違いが出る。魔法空間で装着したいカードの鎧を換装できるとならばそれは嬉しい限りだ。
「流石私が認めた男。まるでカナの魔法の札みたいだ」
「それは今ギルドにいる?」
「ああ、大切な家族の一人だ」
酒豪と過言ではないほど酒好きな少女を脳裏で思い浮かべた。今でもきっと相変わらず酒を飲んでいるだろう。
必然的にエルザの家族たちの姿も思い浮かべる。
「では、イッセー。私に協力してくれるか?他にもそうして欲しいんだが」
「・・・・・まだ、鎧はあるというのか?」
「その通りだ。実はリーラさんに空き部屋を五つ借りて全部鎧の収納庫として仕舞っている」
エルザの発言に心底、一誠は呆れ返った。―――やはり、物理的に処分した方が良さそうではないかと
また思わずにはいられなかった。
エルフ、アレインは困り果てていた。
明らかに年下の自分と同じ青い瞳、腰まで伸びた金髪、エルフの証でもある長く尖った耳の少女に
目を輝かせて好奇心ありありに問い詰めてくる。
一誠の家に住みついて数日は経つが、このルクシャナと言うエルフに住んでいた故郷にいるエルフのことを興味身心で顔を合わせる度に訊いてくる。ルクシャナだけではなく、シャジャルやティファニアもエルフとしてアレインの口から出るであろう言葉を静かに耳を傾け待っていた。
「そう何度も毎日、私のことやエルフのことを聞かれても面白くは無いと思うが」
「私にとっては面白いのよ!イッセーもイッセーだわ。他のエルフと一緒に過ごしていただなんて言って欲しかったわ」
当時のルクシャナは一年間その場に止まる一誠より風の如く世界中に行く誠と一香について行くことが多かった為、一誠の傍にはリーラとオーフィスしかいなかった。なので、アレインとは初対面なのだ。
アレインを見た瞬間、ルクシャナの好奇心がどこまでもくすぐり良くも悪くもルクシャナの学者としての血が騒いだ。
「それよりもイッセーはどこだ?」
「リビングにいるか、自分の部屋にいるか、トレーニングルームにいるか、外にいるかって感じで今どこにいるか把握できないわ。この家大き過ぎするしナヴィなら知ってるんじゃないかしら」
「ナヴィ、彼女のことか」
自己紹介時に相対した悪魔と人間のハーフの少女。何時も部屋に籠って仕事をしていると知っているので
ナヴィの部屋に訪れることにした。
「失礼する」
ノックをして、侵入の了承を得た直ぐに入る。広々とした空間だが半分だけ機械で埋め尽くされている部屋でもあった。アレインにとって見たこともない無機物の塊にいる少女を見つけることは容易かった。
指を忙しなく動かし、カタカタと断続的に音を鳴らし「何か用?」とアレインに顔を向けず訊ねたナヴィ。
「イッセーの居場所を知りたいんだが」
「あー、イッセー?イッセーならトレーニングルームでオーフィスとクロウ・クルワッハと特訓してるわよ」
「そうか、ありがとう」
「入る時は気をつけなさい?ドラゴン同士の戦いは凄いんだから」
ナヴィの言葉を聞きながら部屋を後にし、真っ直ぐ階段の裏にあるエレベーターへ乗り込んで地下に繋がる機械を操作し、一誠がいるトレーニングルームへ。
「(ドラゴン同士の戦い・・・・・か)」
見たことのない戦いが始まっているのか、かつて一誠の師でもあったアレインは数年の間に成長した弟子の(ロキの件)戦闘振りを見て感嘆を漏らした。
『アレインお姉ちゃん!』
「ふふ・・・・・」
まだまだ幼く可愛に自身を姉と慕っていた時の過去を思い出しつい口元を緩ました。
生まれてこの方、感じたことのない感情、気持ちを始めて抱かせた一誠に対し、
アレインの中で大きい存在となっていた。やがてエレベーターは停止し、両開き目的の空間と繋がった。
その一歩、足を前に踏みしめてさらに足を動かしトレーニングルームに入り、一誠を直ぐに見つけ出した。
クロウ・クルワッハとオーフィス、唯一一誠と同じ種族であるドラゴンに見守られている中で、瞑目して何かしようとしている一誠を。
「・・・・・」
声を掛けようと思ったアレインはオーフィスとクロウ・クルワッハに目を向けた。―――何をしているんだ?と視線で訴えて。返ってきたのは人差し指を唇に当てて、「静かに」と目で訴えられた。
集中をしているのか、胡坐を掻いて据わっている一誠は微動もしていない大した集中力。
アレインも見守ることしばらくして。徐に瞑目していた一誠が目を開き立ち上がった。
「イメージトレーニングを終わったようだが完成したのだな?」
「ああ」
短く相槌を打った一誠。アレインに視線を向けるものの一瞥して瞳に真剣の色を帯び、両手を固く握りしめ、
一誠は力を溜め始めた。
「はぁああああああああああああああああああっ!」
気合の入った叫び声に呼応して真紅の魔力のオーラが迸り、周囲に散らす風は徐々に強さを増し、オーフィスたちの髪や服も激しく靡かせる。
「これは、何を・・・・・」
「イッセーの新しい力の開発」
「開発に成功したその瞬間を立ち会えるのはとても楽しいものだ。―――今回もそれだ」
二人の話を耳に入れながら一誠の様子を視界に入れる。迸る魔力は足から段々と鎧と化となって少年の全身に覆っていく。
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はははっ。あー、やっぱり魔力をかなり使うなこれだけで」
鎧越しに苦い声が聞こえてくる。肌でも感じる『力』。とても正常とは思えない荒々しさがオーフィスたちが指摘するほどだった。
「完成、に近い状態だな。魔力の流れが正常ではない」
「二つの力を融合、難しい」
「まだまだ調整の余地があるか」
一分も経たずに鎧はガラスが割れたような甲高い音と共に砕け散り消失した。生の一誠が肩で息をしている姿を見つつ訊ねた。
「何をしていたんだ?」
「ん、とあるコピーした力を融合の試みをしていたんだ。本来有り得ない力の融合をな」
「それで失敗したのか」
納得したアレイン。どんな力を融合させようとしていたのかは分からないが、一誠は今の現状を満足しておらず、傲慢、怠惰などしてないことに嬉しく思った。
「やー、完成したらクロウ・クルワッハと特訓してもらう予定だったんだけど、まだかー」
「首を長くして待っている。焦る必要は無い」
「ん、あとちょっとでできる、と思う。頑張る」
「二人とも、感謝感謝」
それで、とアレインに話しかける一誠。
「どうしたんだアレイン。何かお願い事でもあるの?」
「ああ、久々に弟子のお前の強さを直で知りたいと思ってな」
かつての師の言葉の意図を察し、不敵の笑みを浮かべた。
「師を超える時が来たかな?」
「そう易々と抜かす程、私は緩くないぞ?」
「なら、抜かされないほど硬くしてくれ。―――もうあの時の俺とは違うからさ」
「当然だ」
まずは体術とばかり、どちらからでもなく引き寄せられるようにアレインと一誠は拳を突き合いだした。
「あの、リーラさん。私たちヴァルキリーなのですが・・・・・」
「郷に入っては郷に従えという諺がございますので」
「しかし、やはりあなたと同じ服を着るというのは」
「ヴァルキリーは英雄や勇者をもてなす役割を担っていると存じ上げております。英雄と勇者は人、ならば人をもてなすことに関しては―――メイドも同じことなのです。ですので、お二人もこの家に同居するのであれば一誠さまの身や周辺の世話をするのは当然のことです」
ヴァルキリーのロスヴァイセとセルベリアがリーラと同じメイド服を身に包んで佇んでいた。
一誠の付き人となって以来、二人はこの家に住みつくようになってからリーラが二人をメイドとして仕立て上げていた。勇者公認とされた一誠を護衛、または世話をする二人は学校に行かれてはどうしようもなく、帰ってくるまで家で留守番することが必然的多くなる。それまで二人は何もすることがないとメイド歴が長いリーラはその日、ロスヴァイセとセルベリアをメイド職に就かせようと考えついたのだった。
「無論、お給金は支払います。休日も週に二日。一誠さまが帰ってくる間家で何もしないでいさせるほど私は優しくございません」
「・・・・・お給金とはどのぐらいでしょうか?」
恐る恐ると訊ねるロスヴァイセにアッサリと口にした。その額はロスヴァイセにとって破格な給料。
セルベリアも「ヴァルハラにいたころと段違いだ」と思わず漏らす。
「ヴァルキリーとメイドの役割は同じです。一誠さまのお世話をするだけのこと。どうですか、悪くない話ではないでしょう」
「それは・・・・・」
「家事だけではなく戦闘の面でもお二人には動いてもらいます。その時にヴァルキリーとして一誠さまの傍にいて下さればそれで構いません」
言い終えた途端、リーラが深々と頭を下げたことで二人は驚いたように唖然としてリーラを見た。
「私のような非力なメイドでは、女性では一誠さまを守ることはできません。私の代わりにどうか、一誠さまを守ってください。最近になってあのお方は無茶をすることを躊躇もしないと理解しました。誰かが傍にいて見守らないと一誠さまはきっと」
リーラからのお願いに顔を見合わせた二人は分からされた。この家に住む新米の自分たちよりずっと深く、そして高く一誠のことを思っている。もしかしたら彼女の方がヴァルキリーとして似合っているのかもしれない。
「あなたの願いは真摯に感じる。それになんとなくだが、オーディンさまがヴァルキリーになって欲しい気持ちも頷ける」
「恥ずかしいです。勇者一誠さまのヴァルキリーになれたというのに。私たちよりあなたの方が・・・・・」
二人の発言を耳にし、顔を上げたら擦れ違うようにリーラに跪いていたロスヴァイセ、セルベリア。
「「一誠さまのヴァルキリーとして、あなたのその願いをしかと心に刻みます」」
「ありがとうございます」
では早速、とリーラは告げる。
「この家の構造を把握し尚且つ、家事、洗濯、清掃、他にも色々と教えてさしあげます」
美の女神フレイヤは外出していた。傍らには一誠がいて一誠にエスコートされている真っ最中。
オーディンが自由奔放と言うほど―――。
『・・・・・』
いや、ある意味自由奔放なのかもしれない。そこに立つだけで老若男女問わず自分に身惚れさせるフレイヤの『美』は留まることを知らない。美が具現化したような姿で表に出て惜しみなく美を晒す彼女に一誠は一言漏らす。
「皆、フレイヤお姉ちゃんに見惚れちゃってる」
「私はそう言う女神よ?」
綺麗に微笑むフレイヤを見ても周りの人たちのように魅了されない一誠。
いくら朴念仁でも美しいという概念が備わっていればフレイヤの美に魅了しないわけない。
一誠もその一人であるはずが、平然と普通の態度で肩を並べ共に歩く女神に魅了されない。
不思議と、明らかな抵抗感をしない、その様子を窺わせない一誠にそっと手を出した。
自身の指を一誠の指の間に難なく滑り込ませ、恋人のように手を握ってみて隣にいる少年の反応を見やると。
嬉しそうに笑みを浮かべ、そっと優しく握り返してくれた。それだけではない、フレイヤ特有の力である魂を見ることができるので一誠の魂の変化が起きていることにも気付いた。桃色の花弁を満開させる木々が
フレイヤを見させているそれは全てを虜にしかねない美の女神が唯一、虜になっているのは一誠の魂であった。これはきっと嬉しいという表現、光景なのだろうか?フレイヤの瞳に映る一誠の魂は子供のようにコロコロと景色を変え、表現として表す。
「フレイヤお姉ちゃん、何だか楽しそうだけどどうした?」
「楽しいから、よ」
「そっか」
特に追及も気にもせずに二人は町中を歩き続ける。フレイヤは一誠にどこか楽しいところへ連れてくれることを期待して。